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7.EP2―③ ~ドーパント・ゲーム~

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作者:しょうきち

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 『グリーニー』と呼ばれる薬品がある。
 名前の通り緑色のカプセルが特徴のこの薬は、服用すると興奮状態となり、集中力アップ、疲労回復、沈痛作用等の効能があると言われており、日米プロ野球界においてその名が知られている。
 グリーニーの主成分は、アンフェタミン類似構造を持つクロベンゾレックスという物質である。クロベンゾレックスが体内に摂取されると、服用者には代謝によってアンフェタミンを接種した場合と類似の作用がもたらされる。因みにアンフェタミンとは覚醒剤の事である。
 世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は2004年にクロベンゾリックス、即ちグリーニーを禁止薬物として指定している。
 日本プロ野球界においては、こうした薬物への規制が緩いメキシコやグァテマラ等の中南米出身の外国人選手らによる持ち込みが時折見受けられる。そして、小遣い稼ぎやお裾分けのような軽い感覚で同僚の日本人選手へ譲ったり売ったりしているのだ。
 多くの選手はこうした薬物の使用に対し抵抗感を持っており、勧められたからといっておいそれと服用、まして常用するような事はそうそう無いが、生き馬の目を抜くような激しい競争に晒されているプロ野球界にあっては、藁にでもすがる思いから隠れてこうした興奮剤やアナボリック・ステロイドを始めとした筋肉増強剤、すなわちドーピングに手を染めてしまうケースは枚挙に暇が無い。
 グリーニーは麻薬取締法の適用対象となってはおらず抵抗感も幾分か薄れる為か、重度使用者などは一般人の感覚で言うところのレッドブル等のエナジードリンク感覚で接種する者もいる程だ。カフェインとの相性が良く、コーヒーに溶かして飲むことが多い。
 NPBにも一応ドーピング検査はあるが、流石に年間何百試合も行われる中では全試合で義務付ける事は出来ず、シーズン中の実施は一部試合に限られる。近年にあってもドーピング検査で陽性反応が出た選手のニュースがスポーツ新聞の一角を賑わす事があるが、これはいわゆるひとつの氷山の一角と考えられる。

「沙希ちゃんのお友達、随分手慣れてるよねえ。今時の女子高生はみんなそうなのかな?」
 高樹が呟いた。沙希は無言である。
 レストルーム内のベッド上。ペタンと座り込む沙希は、先程から隣のベッドで行われている同級生の性奉仕に目を奪われていた。
 背後からは沙希の背中に密着するように座った高樹の野太い腕に抱きすくめられている。
(ああ……朝日奈さん。あんなところまで舐めて……。……信じられない……)
 隣のベッドでは天澤がM字状に脚を開いて寝転んでおり、その股間では夕子がうっとりとした表情で舌を限界まで突き出し、菊座へヌチャヌチャと抜き差している。そうしておいていきり立つ巨茎に指を絡め、キュッキュキュッキュと上下に扱いていた。
 目の前で繰り広げられているまるで現実感の無い光景を前に、沙希は徐々に淫らな世界へと飲み込まれ始めていた。頭がモヤモヤとしてきており、今目の前に見えている光景が夢なのか現実なのかが最早分からなかった。
 そして目の前の痴態に没頭し抵抗するそぶりを見せない沙希に対し、高樹はより攻勢を強めていった。
 プリーツスカート越しに双臀を撫でさする。息を荒げ、熱く猛る男性自身をぐいと腰の辺りへ押し付けてゆく。
 高樹の指が沙希のヒップの割れ目に沿って淫靡に這い回り、そのたびに沙希の身体がピクリと反応する。
 沙希は下腹部の辺りに熱い昂りを感じていた。
(ああっ……どうして……? 私の身体……、別の人になっちゃったみたい……)
「フフフ、沙希ちゃん。初心そうな顔してるけど、本当は結構男好きするタイプでしょ?」
「えっ……!? あ、あの、そんな事無いですって。私なんてモテないし、あんまり女っぽい体型してないし……」
「いや~、沙希ちゃんくらい可愛い子がマネージャーなら、絶対裏ではモテてると思うね。年頃の男子高校生なんてヤりたい盛りだからさ、みんな沙希ちゃんとセックスしたくって夜な夜なオナニーしまくってるよ。マジで」
「そ、そんな事ありませんっ。みんな、甲子園目指して本当に真剣に、真面目に頑張って……」
「フフフ、本当にそうかな? 野球部男子なんて、一皮剥けば獣だよ。真剣に野球に打ち込んでいるように見えて、本当のところは大会で活躍して沙希ちゃんの気を引いて、あわよくばモノにしてガッツリ犯したいんだって、みんな思ってるんだよ。むしろそれしか頭に無いよ」
「そんな……そんな事……!」
「『汗と涙とド根性! 飛び出せ、セーシュン!!』なんてのは昭和の話でさ、野球部なんて上を狙えるレベルになればなるほど爽やかな青春なんて代物とは程遠い、打算と欲望にまみれた世界なのさ」
「それは、そうかもしれませんけど……」
 今まさに沙希をガッツリ犯そうというリビドーを隠そうともしない自身を棚に上げての発言であったが、野球エリートの最高峰である高樹の言葉は、異様な説得力を持って沙希の脳内に染み渡っていった。
 こうして言われて考えてみると、確かに普段の練習の時も、夏の合宿の時も、試合の時も、自身へ向けられる熱の籠った視線を常に感じてきた。野球部員達の夜のオカズにされていたのかもしれない。爽やかな笑顔で共に甲子園を目指してきた仲間達が本当は自身へ熱く滾る獣欲を向けていたのかと思うと、汗と涙の宝石のようだった三年間が急に汚らわしい、下卑た何かであったかのように思えてくる。
 長い睫毛を伝わり、一筋の涙が溢れた。これまで信じていた何かが、粉々に崩れ去ってゆくように感じた。

「沙希ちゃん、ちょっと持ち上げるよ?」
「きゃあっ!?」
 高樹はベッドに腰掛けて座った。そして、沙希のウェスト辺りを掴んでひょいと身体を持ち上げ、自身の腰の上に座らせるように下ろした。
 反り上がり脈打つ逞しい肉棒の感触が、沙希のパンティ越しに敏感なところを刺激する。
(うう……。何か変な感じ。おちんちん、私から生えてるみたい……)
「ホラ沙希ちゃん。握ってごらん?」
 沙希は言われるがまま手を伸ばすと、高樹の肉茎をそっと握りしめた。
 左右にエラが張り出した亀頭がパンパンに隆起し、淫猥にてらてらと光っている。まるで美術の課外授業で行ったガーギー展で見たようなグロテスクな造形に、沙希は畏怖に近い感情を抱いた。
(はぁ……わぁあ……、太いわ……。それにピクンピクンって動いてる……。こんなのが入ったら……)
「フフッ、沙希ちゃん。コレが沙希ちゃんのオマンコにブチ込まれるところ、想像しちゃった?」
「ち、ち、違っ!?」
 図星を突かれ、かっと真っ赤になる沙希。
「フフ、違わないよ。沙希ちゃん本当は、ぶっといチンポをハメハメされて悦ぶ変態女子高生だったって事だよ」
「私が……変態……?」
 思わず口をついた問いには答えず、高樹は沙希の耳元へ息を吹き掛けながらセーラー服をたくしあげ、ブラジャー越しに乳房を揉みしだいた。
「あっ……ふぁんっ!」
 沙希の身体がピクンと跳ねた。心臓が早鐘のように鳴り、背筋から子宮にかけてゾクゾクと電流にも似た快感物質が駆け巡る。
「ヒヒヒ、イヤらしい声、出せるんだね」
「あっ……あああ」
 高樹は沙希のブラジャーを押し下げ、生の乳房をムギュリと掴んだ。蕾の固さと、まだ熟しきっていない柔らかさが甘美な揉みこごちとして手のひらに伝わってくるのだ。
「駄目っ……。弱いの、そこっ……」
「可愛いらしいオッパイだね。小ぶりだけど形がいい」
 10代少女のピチピチとした双乳を好き放題に揉みしだく高樹の指は、先端の突起をコリコリと捏ねるようにねちっこく弄り回していた。時折絞り出すように上下から力を加えると、沙希は腰の奥辺りがキュウンと震え、たまらず「あぁんっ」と哀願するような鼻にかかった甘ったるい呻きが意思と無関係に溢れた。
「いい声出すね~。嬉しくなってくるよ」
 沙希の反応に気をよくした高樹は、乳房への攻めをより激しくしていった。
「ああ……」
 まるでそこだけ心臓が露出してしまったかのように、乳首がズキン、ズキンと熱くなっていた。白い肌にねっとりと汗が浮かび、沙希は切なげに太股をよじり合わせた。
「感じてるんだろ? 欲しそうな顔してるの、分かるかい?」
 高樹は耳元で囁き、火照った頬に口づけする。
「あっ……やぁん……高樹さん……私、私……」
 沙希は悩ましげに身体をくねらせている。ショートカットがフワリと跳ね、甘い媚香を振り撒いていた。
 高樹は大胆に沙希のプリーツスカートをたくし上げた。純白のパンティにはべっとりと愛液の染みが浮かんでおり、内部へと指を滑り込ませてまさぐると、薄めの陰毛に包まれた花弁はぐっしょりと蕩けていた。
「ふふっ、モミモミされるだけでこんなに濡らしてたんだね」
「あぁ……だ、駄目ですっ……」
「まだ素直になれないみたいだね。ほら、これでも飲んでみて」
 傍らから緑色のカプセルを取り出した高樹は、朦朧とする沙希の唇の隙間へスルリと押し込んだ。沙希は思わずそれを呑み込んでしまっていた。
「い、い、今、何を飲ませたの……?」
「素直になれる、魔法の薬さ。気づいてなかったかもしれないけど、とっくに沙希ちゃんは同じモノ飲んでるんだよ?」
「えっ、ええっ……!? 」 
「ここで出してる飲み物ね、全部これ入れてるんだ。薄めてるけどね。いやあ、効いとる効いとるって感じでさ、みんな良い盛り上がりっぷりを見せてくれたよ」
 屈託の無い笑顔に沙希はゾクリとした。
 先程からずっと感じていた、どこか現実感の無いふわふわした感覚は、憧れのプロ野球選手に会えた興奮や身体をまさぐられる性的興奮が原因と言うわけではなく、この緑色の薬によるものが大分を占めていたという事である。
「本来は試合日程がハードで疲れを取りたい時や、集中力が欲しいここ一番の勝負の時に飲むんだけどねえ。ヤる時に飲んだり飲ませたりしても効果はてきめんでさ、みんな悦んでヒィヒィ哭いてくれたよ」
「そ、そんな……そんな事って……」
 総毛立つものを感じ、血の気が一気に引いた。
 実のところ高樹の素行や女癖の悪さは、昔から札付きなのであった。中年男性向け娯楽系週刊誌などでは醜聞が乗った事も一度や二度ではない。
 だが、TV番組などでは球団親会社への忖度によってこうしたニュースが扱われる事は無いし、沙希の愛読する『週刊ベイスボール』では余程の事がなければそうしたスキャンダルが誌面に載る事はない。そのため沙希はこのような事をされていても尚、高樹の事を純粋に憧れののプロ野球選手として信じていたのである。
 しかしその幻想は粉々となった。昨期シーズンにおいて中継ぎでありながらリーグMVPに選ばれたのも、薬の力を借りた結果なのかもしれない。そう考えると沙希が受けたショック、そして失望もひとしおであった。
「……うっ……。あ、あっあっ、あぁあああーっ……」
 沙希の中で先程から感じていた何かが無限に増大していき、そして弾けた。
 血液の流れに乗って何かが全身を駆け巡る。ガクガクと肢体を震わせ、毛穴という毛穴から一気に冷たい汗が吹き出し、天地が逆転し、世界がグルグルと回っていた。
「ん? おーい、沙希ちゃん、沙希ちゃーん?」
 沙希は白目を剥いて、意識を失っていた。

 高樹陵介を中心とした若手メンバーによって開かれているこの会であるが、更に言うなればその運営面は高樹の個人的な後援者、所謂タニマチが担っていた。
 会場や参加者の確保に始まり、セッティング、料理、飲み物の手配といったところもタニマチに依存しているところである。
 タニマチとは、本来は相撲界の隠語で「贔屓にしてくれる人」「後援してくれる人」といった意味であるが、転じて野球界においては反社会的勢力を含む、悪質な取り巻きを指すケースが多い。高樹が愛用するグリーニーの調達を仲介しているのも、このタニマチである。
 高樹のタニマチは、都内でキャバクラやガールズバー、風俗店等を手広く経営する男であった。今回の会に参加している女性は皆、普段はこうした夜の店で働いている嬢やその伝手で集められた女性ばかりである。
 集められた女達は皆プロであり、チップ次第で過激なサービスを施し、さらにフィーリングが合うようであればアフター、つまりお持ち帰りも厭わないよう申し送りされた上でこの会に参加している。
 実際、そこらのサラリーマンとは段違いに金払いのいいプロ野球選手は、嬢達にとって大事な太客なのであった。皆あわよくば玉の輿を……と邪な思いを抱いているため、奉仕にも熱が入る。
 しかし、この日はたまたま直前になって一人ドタキャンが発生しており、主催の高樹からの命を受けたシンがこの会に参加してくれそうな女性を探していた、というのが実際のところである。
 そのためこの会場内においては、沙希ただ一人が何も知らされず、かつロハで参加していたのであった。

「……おいっ? 沙希ちゃーん、沙希ちゃんっ?  ……ちっ、駄目か。完全に落ちちまったか……。クソっ、しょうがねえな……」
 高樹は携帯電話を取り出すと、通話履歴の一番上にある番号をタップした。
 5コール程で電話口からの応答があった。
 相手はシンである。欠伸を噛み殺した、眠たげな声であった。
「ふぁ、何すかぁ、陵さん」
「おいっ、シンっ。お前が連れてきた女の子なぁ……」
「ええ……何か粗相でも有ったんすか?」
「いやあ、具合は中々良い娘だったよ。でも例の薬さ、追加でブッ込んだら飛んじゃってさあ。悪ィんだけど連れて帰ってくんない?」
「陵さ~ん……。オーバードーズは止めといてくれって前にも言ったじゃないっすかぁ。ただでさえ女の子は、先輩みたいなプロアスリートと比べて肝臓小せえんスから」
「悪ィ悪ィ。次から気を付けるよ」
「んったく、もぉ~」

「ふぅ……」
 沙希を連れ帰ってもらった後のレストルーム。ある者はアフターの為に会場を後にし、ある者は一戦を終えて微睡んでおり、室内は静まりかえっていた。
 コーヒーを飲みながら一人佇む高樹に、背後から女の声があった。筋肉質な背中を、悪戯っぽくつんつんと指でつついてくる。
「ね、ね、ね。お兄さん、お兄さん」
 夕子である。先程まで濃厚な肉棒接待を受けていた天澤は、喉奥へと大量の熱い粘液を発射し終え、そのままベッド上で微睡んでいた。
「ねっねっ、ソレ、どうするの?」
「……ん、コレの事?」
「それそれ。このままじゃ辛いでしょ?」
 夕子が悪戯っぽく指差した先、沙希の粘膜を貫こうと猛り狂っていた怒張は、ターゲットを失った後も勢いを失う事なくそのまま屹立していた。先端からは先走り汁が垂れており、てらてらと黒光りしている。
「ねっ、よかったら、あたしが相手してあげよっか? そのかわりサービス料、弾んでよねっ」
 夕子はペロリと舌なめずりしながら言った。それを見た高樹は、にんまりと頬を歪めたのであった。

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