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9.EP2ー⑤ ~フォーリング・ダウン~

アクセス数: 580

作者:しょうきち

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 青みがかったショートヘアが、9月の夜風を受けてパタパタと揺れていた。セーラー服を通り抜ける秋風は心地よいものがあり、このままずっと眠り続けていたかった。
 沙希は夢を見ていた。
 うだるような熱帯夜。沙希は神宮球場に居て、野球の試合を観戦していた。ただし観ているのは高校野球の地方予選ではなく、プロ野球の方である。バックネット裏からナイターゲームを観戦していた。
 試合は終盤、九回。沙希の応援するチームは3ー1でリード中。この回を守りきれば勝利。こうした状況下において、週ベで表紙グラビアを飾ったこともある、沙希のお気に入り選手が登板する。
 その選手は登板するや否やバッタバッタと三振の山を築き上げていた。見事セーブをあげ、試合後はヒーローインタビューを受けていた。
 フラッシュライトが焚かれ、堂々とインタビューを受ける。そんな中、ある記者が「初セーブおめでとうございます。今日の勝利は、誰に捧げたいですか?」と尋ねた。
 その選手は「最愛の……大事な人に捧げますッ! 虹野さん、俺と、俺と結婚してくれッ……!」と、全国放送網で中継されている中、沙希へプロポーズを敢行したのである。まるで160キロど真ん中ストレートであった。
 その選手の目線の先、バックネット裏で観戦する沙希へカメラが向けられた。俄に衆目に晒される事となった沙希は、戸惑い、はにかみ、涙しながらも「はい……幸せにして……ください……!」と答えていた。
 球場内に、『And I will always love you』が大音量で響き渡ったような気がした。
 その夜、沙希は男と夜の街へと消えていた。
 二人きりである。予め予約されていた高層ホテルのレストランで食事を楽しんでいた。月曜放映ののトレンディ・ドラマで見た様な、三十何階かから見下ろす東京の夜景に沙希は呑まれていた。うっとりとした顔で、夜景と彼を交互に見回す。夢のようなシチュエーションである。
 自分でも驚くほど無防備にトロンとした顔を晒し、沙希はおねだりするような目を向けた。
「部屋、取ってるんだ。このあと、来てくれる……よね?」
「はいっ……!」
 間髪入れず首肯した。頭の中は妙に冴え渡っていた。これからの展開を想像し、ありとあらゆる恥ずかしい想像が、胸を激しくかき乱していた。
 レストランを出て、二人で宿泊階へ向かった。沙希は黙って、男の大きな背中を見つめながらついていった。
 部屋に入った。奥のカーテンを開くと、都心のネオン街が一望できる筈だ。だが沙希はそんな窓辺には一瞥もくれず、部屋の真ん中にあるキングサイズベッドにちょこんと腰をおろした。
「来て……」
 沙希はベッドの上で小さく尻を弾ませ、何かを期待するような目線を男へ向けた。
「沙希ちゃん……。可愛いよ」
 男はうなづき、沙希の隣へと腰をおろすと、唇を重ねた。
「……うぅんっ!」
 沙希は大胆にも自分から口を開き、ぬるりと舌を絡めていった。心臓の鼓動が聞こえてきそうだった。
 沙希は男の手で、服を一枚一枚脱がされていった。残すはパンティ一枚である。
「沙希ちゃん、そこに仰向けになってくれるかい?」
 沙希はコクンと頷いた。
 最後に残ったショーツを引き下ろされ、開かれた両脚の間に男が陣取っていた。沙希は、赤く染まった顔を両手で隠した。
 男は沙希の両腕を捕まえ、両サイドにそっと下ろすと露になった唇に、そっとキスをした。顔が熱くなっていた。緊張で体が硬直しきっていた。
 男の唇が、耳や首筋へと移動していく。唇に触れられた箇所は、蝋燭で灯されたように熱を帯びてゆく。体温が急上昇してゆき、腋にじんわりと汗がにじみ、息が弾み出す。これから始められる行為が、嫌が応にも想起される。
 次の瞬間、男の生暖かい舌の感触が沙希の一番大事なところに襲いかかっていた。
「んあんっ!」
 沙希は思わず声をあげていた。手足をジタバタと暴れさせたが、それは無駄な抵抗に終わった。男が沙希の両腕を捕まえ、そうしておいて太股の中心へと顔を埋め、脚を閉じることがどうしてもできず、どう動かしてもぶつけられる対象物がなかったためである。
 男の舌がペロペロと動いた。下から上、上から下に、生温い感触がねばりつくような感触で這ってくる。沙希はイヤイヤと身をよじった。一番近いところで匂いを嗅がれるのも味を知られるのも死ぬほど恥ずかしく、顔から火が出そうになる。
 しかし、それらを軽々と凌駕する勢いで、快感が総身を震わせていた。はじめは何が何だか分からなかった。しかし、それは言語にしたら快感としか言いようがないものであって、沙希を未踏の境地へといざなってゆくものであった。
 下腹部の一番深いところが熱く溶けていた。焚き火で焙られたチーズのように、トロトロに溶け出しており、舌の這っているところから溢れだしていく。発情の証である粘液を大量に漏らしてしまい、それを啜られる度に電流のような快感が頭の天辺から足の爪先まで走り抜けるのだ。
「あああんっ!」
 最も敏感なところに舌先が到達すると、沙希はしたたかにのけぞった。敏感過ぎて自身でも触れるのが憚られるような箇所であった。
 煮えたぎり、マグマのように押し寄せてくる快感に、沙希は焼かれた。みるみるうちに全身が焼けつき、溶けて全身が気化してしまったようであった。 重力を失った世界に放り出され、何かにしがみつかないと恐ろしくて堪らないのに、しがみつくところがどこにもない。ようやくのことでシーツを握り締めるものの、宙に打ち上げられた感覚は押さえきれない快楽をもたらす。全身の肉という肉が痙攣し、身体中から生汗が吹き出てくる。きつく閉じた瞼の裏からは、熱い涙が溢れ出す。
 叫び出したい気分だった。
 しかし、それより一瞬早く男の囁きが沙希の耳に響き渡っていた。
「我慢しないで、イッちゃえよ」
 イク!? イクって何処へ?
 言葉の意味は分からなかったが、男の舌はそんな思考さえも塗り潰し、かき回してゆくようにじゅぶじゅぶと音を立てて淫らに動き続けている。息も絶え絶えに、シーツを掴む指先に力が込められていく。下腹部から始まった大波が、沙希の全身を呑み込んでいく。
「イッ……イクっ! イッちゃうのぉおっ!」
 意味も分からぬまま、沙希はその言葉を叫んでいた。言葉が勝手に喉元にせり上がり、口をついて放たれたようであった。
  同時に、背中が弓なりに反り返り、髪を振り乱して頭を振っていた。腰が自分の意思とは無関係にいやらしくくねり、開いた股間を突き上げ、汗でびっしょりと濡れた乳房を上下に弾ませていた。
 頭の中は、暫くの間真っ白になっていた。
 やがて靄が晴れてきた時、男は沙希の上にのしかかっていた。
「さあ、沙希ちゃん。いよいよだ。もう十分ほぐれただろ?」
「あ……ああっ……。私、恥ずかしいわ。はじめてなの……。優しくして……くれる?」
「何言ってるんだ。初めての訳ないだろ。あれだけ激しいイキっぷりを晒しといて」
「え……?」
「沙希ちゃんの処女は俺が喰ってやったんだからな。お前は俺の女なんだよ」
「え……、ああっ!?」
 沙希好みのイケメンプロ野球選手だと思っていた男の顔は、気づくとシンの顔となっていた。細マッチョな体つきをしており、少なくとも顔においては好みのタイプのイケメンであることに違いはなかったが、夢から現実に引き戻されるような感覚を覚え、汗が一斉に引いていた。

「んん……」
(私……何をしてたんだっけ……? 憧れのプロ野球選手がいっぱいいるパーティーに誘ってもらって、高樹さんとお話してて……そしたら、朝日奈さんがエッチな事をしてて……。あれれ、でもナイター観戦してたような……? それから私、私……どうなったんだっけ……?)
 夢見心地のまま、意識が混濁し、現実味の無い記憶が脳裏に浮かんでは消えてゆく。思えば今日の出来事は、始まりから終わりまで全てが夢のようであった。
「ぁっ!?」
 シンの背中を枕にして眠り続けていた沙希は、突如ビクンと身体を跳ねさせつつ目を覚ましていた。ここが普段寝ている寝床であればビョンと飛び上がり、勢い余ってベッドから転がり落ちているところだったが、タンデム用ベルトで固定されている状況がそれを許さなかった。
 後部席で突如勢いよく暴れられた衝撃に、シンはバランスを崩し危うく転倒しそうになったが、ギリギリのところで持ち直していた。
「んあ……っ!? わ、わたし、何を……?」
「ふぅ、おおっと、危なかった。大丈夫かい、沙希ちゃん?」
「え、ええと、はい……。ここは……?」
「今走ってるのは環八下り線。この辺りは……ええと、世田谷区に入ったあたりかな。沙希ちゃん、 キミはね、タワマンホームパーティーの途中で眠っちゃったんだよね。俺は主催の高樹さんから丁重にお家に帰らせるよう言われて、沙希ちゃんを乗せて流してたところさ。さあ、沙希ちゃん家はどっちの方だい? もう遅いから、近くまで乗せてってやるよ……って、ん?」
「あ、あの……」
 先ほどまで見ていた夢の内容は、既に朧気となり忘れかけていた。また、意識を失う前に見聞きしていたこともあまりに現実感のない光景であったこともあり、既に沙希の脳内の記憶からは消え去ろうとしていた。
 しかし、この時沙希は、それが何だか分からないものの、脳裏を駆け巡る電流の残滓と、下腹部に残る淀んだマグマ、その二つに突き動かされていたのである。
 有り体に言うと、発情していた。
 沙希は震える指先をシンの肩口から伸ばし、おずおずと斜め45度の方角へ向けた。 
「あの、あっち……」
 沙希の指差した先には古ぼけた看板があった。そこにはデカデカとした矢印と共に『REST¥3000~ STAY¥8000~』と書かれており、 そのまた更に向こうにはチープなピンク色をした城のような建物がそびえ立っていた。
「あん? 沙希ちゃん、あれは……」 
 沙希はコクリと頷いた。後部座席で俯く沙希の表情はハンドルを握るシンから伺い知ることは出来なかったが、耳まで真っ赤になっており、発情しているのは明白であった。
 シンはにんまりと頬を歪めた。
「さっきの……続き……」
「あん……? それってどういう……」
 沙希の震える言葉を聞いたシンは、パーティー・ルーム内で寸前まで行われていた行為の続きをしたがっているのだと思った。しかし実際のところは、沙希は夢の続きを見たくて出た言葉であった。だが、どちらにしてもこれから行われる行為に違いはないのであった。
「ま、いいか。しっかり捕まってろ……よっ」
 シンかスロットルを傾けると、二人の乗るバイクは横路に逸れていった。向かう先はラブホテル『over the rainbaw』である。

 二人を乗せたバイクがラブホテルに到着した。
 シンは沙希の手を引き、手慣れた様子で部屋を選ぶと、矢のような早さでこれから性行為を行う為の個室へと駆け込んでいった。
 急いだ理由は一秒でも早くセックスしたいがため……というわけではなく、制服姿のままの沙希を連れているため、声でもかけられたら危険という事情もあるためである。
 尤も、万が一咎められたりした場合は『コスプレ風俗の待ち合わせコースで~す』といった感じの方便を用いるだけなのだが。

「ん、んムゥン……」
 部屋に着くなり、沙希はシンの体にしがみつくように抱擁し、唇を重ねた。弾む吐息をぶつけ合い、舌を吸い合った。
「んっぷ……フフン、大胆じゃねーの」
 シンの腕が沙希を包み込むようにグルリと回され、その指はプリーツスカートを腰の辺りまでたくし上げ、露出したパンティごと尻肉をギュムリと握りしめていた。そして下腹部の辺りではズボン越しに猛り狂う男根が押し当てられており、渦巻くような熱量が感じられる。猛烈なセックス・アピールに、沙希はクラクラと気絶しそうな感覚に襲われ、秘部はパンティ越しにも分かる程どうしようもないくらい濡れてていた。
「あ、あぁうう……」
「沙希ちゃん、ここまで来たんだ。途中でやっぱナシって言っても聞かないぜ?」
 沙希は無言で頷いた。頬は羞恥によって紅に染まり、 大きな瞳の端は微かに震えている。
「ホラよ。沙希ちゃんがお膳立てするんだ。さっきのパーティーでしてるところ、いっぱい見てたもんな?」
 沙希の眼前に仁王立ちしたシンは、ボロンとペニスを露出させた。
 眼前にに突きつけられているのは、かつて自身を女に変えたそれである。しかしあの時は訳も分からないままに全てが終わっており、こうして至近距離でまじまじと見つめるのは初めてであった。
 もうどうにでもなれといった心境で、沙希は顔から火が出そうになりながらひざまづき、赤黒い先端に恐る恐る舌先を這わせていった。
「フフフ。いい子だ」
(はぁ……はあぁ……。凄い……。大きくなってきてる……。それにこの前は訳が分からなかったけど、凄い匂い……。変な気持ち……頭がクラクラしてくる)
 唇に咥えた男根は、みるみる内に信じられない程の勢いで肥大化していった。男性器特有の雄臭が鼻につく。しかし、不思議と以前のような嫌悪感は無かった。雄の匂いを感じとるだけの余裕が生まれた、ということもある。
 沙希は、自身でも驚くほど情熱的に男を求めていた。AVさえも見たことないくらい初心な沙希であったが、つい先ほどこれ以上無いくらいの濃密なお手本を眼前で見せつけられた為であろうか、どんなところを舐めるとどんな反応が返ってくるか、男に喜んで貰えるのかが手に取るように分かった。舐めていく程に興奮が高まっていく。倒錯的な行為に耽る自身に興奮し、知らず知らずの内に雌としての本能を呼び起こされていた。
 精一杯に口全体を使って頬張ると、大きさ、長さ、硬さが増してゆき、口腔の奥にまで到達した。たまらず「んっ……」という呻きと共に吐き出す。赤黒い先端から唇の先との間に粘つくアーチが出来ているのを、沙希は靄がかかったような意識の中でじっと見つめていた。
 そして沙希は硬く、熱く勃起しきったそれを、丹念に舌を使ってペロペロと舐め回した。ヌラヌラと唾液まみれにして手と口でしごき立てる。そうしている内に次第にそれが無性に欲しくなってきて、両脚の間がじゅくじゅくと熱く疼くのだ。
「んっんっ……んあっ……ぷはっ。んっんっ……」
「フゥ、フゥーッ……。ああ……いいよ、沙希ちゃん。おしゃぶり上手だね~。男の喜ぶポイントを熟知してるって感じだ。それとも運動部のアイドルっていうのは、チンポのマネージメントもお仕事なのかな?」
「……んんっ!? そ、そんな事!?」
「フフッ、ほんの冗談だったのに、随分焦るんだね。さては、妄想したことあるね?」
 シンの言葉に、沙希は胸の内側がかあっと熱くなるのを感じた。図星であった。
 多くの女子がアイドル歌手や俳優に憧れ想いを抱くように、沙希にとっての憧れの星は幼少期よりスポーツ選手、とりわけプロ野球選手であった。
 テレビ番組で、プロ野球選手の家族の特集がされていた事があった。『名選手の影に良妻あり』という言葉があるが、実績を残す大選手の妻は、元選手の実績を活かし夜な夜な夫相手に本格的な打撃指導を行っていたり、夫の食生活を支えるために管理栄養士の資格まで取得していたりするものである。
 幼少期の沙希もそうした内助の功に憧れ、小学生の頃は将来の夢欄に「プロ野球選手のお嫁さん」などと書いたり、誰よりも深く野球の勉強にのめり込んだり、料理の勉強を始めたりしていたものである。
 多くの女子は、思春期を経て現実との折り合いを付けて芸能人と付き合うだの結婚するだのといった非現実的な目標を捨て、同級生やバイト先といった手軽に手の届く範囲で彼氏を作り、高三ともなるとあちらこちらでサクッと初体験を果たしてゆく。
 プロ野球選手に憧れる沙希ではあったが、よくプロ野球選手の妻の職業として挙げられる、女子アナやCAを目指したりするような器量はさすがにない。こうした職種に就くには美貌は勿論の事、周囲を押し退け自分が輝こうとする積極性、あるいは意図せずとも衆目を集めてしまうカリスマめいた何かが必要であろう。
 藤崎詩織や鏡魅羅といった学年でも指折りのハイランク美少女であればそうした未来もあり得るのかもしれないところではあるが、沙希にはそのどちらも無かった。尤も、相応の数を誇る沙希に想いを寄せる男子からすれば、そうした『誰からでも手が届きそう』なところが沙希の最大の魅力なのだと言われている。
 沙希にとっては現実的に意識しそうになる相手と言えば、やはり毎日顔を合わせる野球部男子なのである。そうした男子と男女の関係になることを、妄想したことすらないかと言われると嘘になる。
 それでもついこの間まで、処女だった時代まではそうした妄想もふわふわした実感の伴わないものであったが、今は年上のヤリチン男によって現実の男の味を知らされてしまっている。同級生や教師も、町を歩く人達も、テレビで見る芸能人やタレントも、そして、憧れのプロ野球選手たちも、影では裸になって性器を擦り逢わせているのだ。17才という微妙な年頃の、大人の入口に差し掛かっている沙希は、そういった妄想を常に脳裏に浮かばせているのであった。

 シンによって図星を突かれた気恥ずかしさを覆い隠すように、沙希はうっすらと涙を浮かべつつ、一心不乱に口腔奉仕に耽っていた。
 部屋の壁は一面が鏡張りとなっており、後頭部を押さえつけられながらフェラチオに耽る自分自身が大写しとなっている。あの部屋に多数いたプロ彼女たちのように、自ら男を誘い、セックスを求めているという倒錯したシチュエーションである。まるで別人になってしまったような自分自身に、狂おしいまでの興奮を感じていた。
「ああ……シンさん……イイのっ……。んっんん……」
「沙希ちゃん……、沙希……。そろそろ入れてやるからさ、あっちの方に行こうぜ」
 秘部の疼きは最高潮に達し、『もう、欲しいの』とか『早く挿れて』といった恥知らずな懇願の台詞が、喉元まで迫ってきていたタイミングでのシンからの誘いであった。
(私の考えてる事、全部筒抜けにされてるみたい……)
 一般に女という生物は自身の事を理解してくれていると感じた異性に対し、共感、そしてその延長線上に愛情を感じとる事が多い。性欲という本能に最も直結した箇所において、沙希はシンにその全てを握られていた。
 沙希は物欲しそうに瞳を潤め、糸引くペニスから唇を離すと、夢遊病患者のようにシンに付き従いベッドへと向かった。

 ベッド上に引き寄せられた沙希は、いよいよ再びシンと交わろうとしていた。先程まで着用していた制服や下着は無残にもそこら中に脱ぎ散らかされ、ベッド上では純白の裸身が輝いている。
 獣のような下卑た笑みを浮かべ、その上に覆い被さるシン。赤黒く輝く亀頭が、クレバスの中心に押し付けられていた。
(ああっ……私……私っ……)
 愛情か、性欲か、それらを一纏めにした狂奔か、様々な想いが浮かんでは消えてゆく。いや、より正確を期するならば、自ら求めたセックスへの期待と、そこから生じる興奮に凡そ全てが塗り替えられてゆく。頭の中は只、灼熱で満たされていた。
「ヒヒヒ、綺麗なオマンコしてるね。あれから結局、他の男を咥え込んだりはしてなかったってワケだ」
 秘口に切っ先がめり込む。
「い……あぁっ……!」
 甲高い悲鳴が響いた。
 シンが沙希の腰をぐいと引き寄せると、それは粘膜からヌプヌプと卑猥な音を立てながら奥へ、奥へとめりこんでゆく。
「いただき……まーす」
「あぁ……うぁあン、ンッ!」
 挿入が深まってゆくと、脳天から爪先までを快楽物質が走り抜けた。男に媚びた娼婦のような艶声が、意思とは無関係に漏れ出す。
「いい声で哭くねえ。ほうら、見えるかな? 沙希ちゃんの膣中に生ズップシだ。まだ動かしてもいないのに、グイグイ締め付けてくる。余程セックスに飢えてたんだね。ま、今日から沙希ちゃんは俺の女だ。これからは何時でも何度でも好きなだけハメハメだ。嬉しいだろ?」
「あああ……うっぅん」
 沙希は訳も分からずにウンウンと頷いた。今は只、終わり無く分泌される快楽物質を噛み締めていたかった。
 シンの繰り出す反復運動は、沙希の敏感なところを的確に刺激していた。それもそのはず、未だシン以外の男を知らない沙希にとっては、シンによるセックスの作法がそのまま沙希にとってのスタンダードなセックスとなるようインプリティングされているからである。
 そして刷り込みは、今も正に現在進行形で行われている。
 痛みと嫌悪感しかなかった一度目のセックスと違い、今の沙希は自ら積極的に快楽を求めていた。求めに応じて舌を突き出し、脚を絡め、無我夢中で背中を掻きむしる。ほんの小一時間前の自分からすれば信じられなかったような艶声で哭いているのだ。
「もうすっかり俺のチンポに馴染んで来たね。沙希ちゃんはセックス大好きドスケベJKなんだね」
「嫌ぁン。言わないでェっ……。アン……い、いやっ、ち、違うのっ! もっと言って! 沙希の事、無茶苦茶にしてぇっ!」 
 シンから非道い言葉を投げ掛けられても、それらは沙希の脳内で興奮を加速させるスパイスへと変換されていた。倒錯的な快楽を求め、どこまでも堕ちていきたい、そんな刹那的な衝動が沸き起こる。
 灼けつくような膣肉は、沙希の意思とは無関係に次から次へと止めどなく粘液を分泌し、侵入してきた肉塊をぐいぐいと引き込んでいた。
 愛らしい瞳が官能に染まり、少女然とした柔らかい頬が、男の味を知ってなまめかしいピンク色に上気している。
「そらそら、もっと啼いてみろよ。エロい声、聞かせてくれよ」
「ンッ……いや……あぅん、あ、あああ……ダメっ……!」
 蜜部に深々と打ち込まれた男根は、遂に膣壁の行き止まりまで到達していた。そして子宮口をコツンと一突きした後、一気に入口付近までズルリと引き抜き、間髪入れず大きなピッチでストロークを打ち込んでゆく。そうした前後運動を繰り返す度に性器同士の一体感が強まっていく。
 沙希の身体を抱きすくめるシンは、突如として前後運動を中断させると、少しだけ身を起こした。沙希の瞳を正面から射すくめ、そしてさわさわと頬に掌を擦り合わせる。
 あとはひたすらに絶頂まで登り詰めてゆくのみ、というタイミングでの中断に、沙希は困惑の表情を浮かべた。
「え……あの……、シン……さん?」
「すっかりエッチな顔になったね。沙希ちゃん。セックスが、男のチンポを咥え込むのが何より大好きって感じのメスの顔だ。沙希ちゃんのオマンコ、ザーメンを搾り取りたくってビクビクしてる」
「やぁぁ、恥ずかしいの……。そんな事言わないで……」
「フフフ、沙希ちゃん。恥ずかしがらずに言ってごらん。『チンポ気持ちいいっ』、『オマンコ凄くいいのっ』、てね。だって沙希ちゃん、口ではそう言っててもね、身体は随分正直になってるみたいだよ?」
「ああっ、やぁん……」
 沙希は真っ赤になって顔を背けた。
 シンは、そんな沙希の顎先をクイッと掴んで正面を向かせた。
「駄目駄目。沙希ちゃんはもう俺の女なんだから、もう隠し事は許さないよ」
「イヤ、もうっ……。沙希のこと、いじめないで……」
 沙希は愛らしく呟き、シンの胸板へその火照った顔を擦り付けた。甘いフェロモンを含んだ芳香がシンの鼻腔を擽った。
 抽送が再開された。
 先程よりも荒々しいピストン運動を受け、沙希の裸身はベッド上で弾んでいた。
  控えめな乳房はこってりとした愛撫を受けて先端が充血し、明日にも開花を迎えようとする桜の蕾のようである。
 乱れたショートカットを優しく撫でられ、首筋に口づけされる。
 沙希は脳内に残る薬物の残滓とシンによる熟練の愛撫によって脳の容量限界を超えた快楽物質を流し込まれていた。Gスポットを小突かれる度に、粘膜を
起点に放射状に総身が蕩けていくのを感じる。
「フフフ、沙希ちゃん。どうだ、気持ちいいだろ? イキたいだろ?」
「や……あはぁん」
 沙希は恥ずかしげに顎を反らし、悩ましげに目を閉じた。シンのストロークは、ほんの僅か、沙希の一番感じる箇所の手前で絶妙に留められている。
「ちゃんと言わないと、イかせてあげないよ?」
「そ、そんな……。ねぇ、おねがい……」
「さっき教えたでしょ? ナニをどうして欲しいんだっけ?」
「あ、ああ……、だって……」
「早く言ってみろよ。それともこのまま、蛇の生殺しがいいの?」
「う、うぁあん、どうしよう。私、わたし……」
 沙希は切羽詰まった声を絞り出す。
「我慢しないで、言っちゃえよ。我慢とか根性とかさぁ……体に毒なんだよ」
 シンの言葉によって理性という名の防波堤が吹き飛び、沙希は数時間前であれば決して言わなかったであろう卑猥な言葉を絶叫していた。
「う、うわぁぁあんっ! お、お、オマンコぉ、オマンコ気持ちいいのっ! もっとオチンポ、もっと奥まで来てえっ!」
 シンはその狂態を満足げに見下ろし、一際巧みにシャフトを回し始めた。
 きらめき高校内でも片手で数えられる程の美少女が、ベッド上で弾みをつけて裸身を限界まで反り返らせている。エクスタシーに到達し、自身の意思でどうにもならない程に淫らに女体をがくんがくんと震わせる。
「あ……あぁあ、ねえ、来てっ、一緒に、シンさんっ!」
 快楽の坩堝の中、上気して汗まみれになった白い裸身をのたうち回らせ、あられもなく懇願する沙希。
「おらぁ、出すぞっ!」
「うああ、凄いのが来ちゃうのっ……。うああん、アアっ、あっ……!」
「おおおっ、出るっ、まだまだ出るぞっ! 沙希ちゃんのオマンコ、ザーメンでパンパンにしてやるっ! うおおおおっ!」
「ひいっ、いくぅっ!? イイ……イイぃぃぃ」
 シンの雄叫びと、沙希の1オクターブ上がった艶声とがシンフォニーを奏でる。
 沙希は深々と結合した下半身を狂おしくこすり合わせて、灼熱の白濁を受け止めていた。

EP2 おわり

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