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4 百合バイブwithブルマ

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作者:kazushi

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「……あ……ふぁ……」
 部屋を出るなり、欠伸が出てしまう。アイドルらしからぬ姿だが、誰も見ていないのでなかったことにしてもらおうと思いながら、まずは朝食のために階下のレストランへ向かうことにする。
(参ったな……完璧に寝不足になっちゃってるみたい。昨夜あんなモノ見せられたんだもの、それも当然――か)
 思い出すと同時に脳裏に昨夜のイメージ――オマンコにバイブを咥え込んでいる由綺――が浮かび上がりかけ、理奈は歩きながら慌てて頭をぶんぶんと振って、必死にそれを打ち消した。
 今はこれ以上あの淫靡な光景を思い出したくない。なにせ昨夜はそのイメージが消えてくれなかったせいか体が火照って眠れず、仕方なくオナニーして火照りを沈めることでようやく眠れたのだから。
(……ホント、どうしてあんなに体が火照ってたのかな。アルコール、だけじゃない気もする……)
 確かにビールを大量に飲まされたが、それにしては火照り具合が強すぎる。上村の愛撫に体が反応してしまったせいもあるだろうけれど、それだけで眠れなくなるほどになるだろうか。なにかそれ以外に要因があるとしたら、考えられるのは――
(あのビール、もしかしたらバーベキューの串もかもだけど、あれになにか入ってたとか……かな?)
 散々男たちにビールと串を配給されていたが、アレにたとえば媚薬とかその手のクスリを入れられていたとしたら、あの反応の強さも理解できるかも知れない。青山のやり口や上村の言動からもその可能性は十二分にあるだろう。
 だとしたら、もしかしてこれに入ってる可能性もあるのだろうか?
 レストランに到着し取り皿を片手に、さてなにを食べようかと選びかけたところで、思わぬ危険の可能性に思い至りついつい考え込んでしまう理奈。
「……………………」
 そう思って見てしまえば、朝食に用意されたホテルのバイキングビュッフェも怪しく見えるものだ。もちろん考えすぎだと解ってはいるけれど、もしかしたらとの一抹の不安に、手を出すのを躊躇してしまうのもまた事実だった。
 そうして理奈がトング片手で料理を前に動きを止めたままでいると、背後から柔らかな声が掛けられる。
「おはよう、理奈ちゃん。どうしたの? 食欲ないの? あ、もしかして二日酔いとか?」
 体ごと振り返ると、由綺が不思議そうに彼女の顔を覗き込んでいた。その手には理奈と同じようにトングが握られていたが、彼女とは違い既に皿にはサラダが何種類か取り分けられている。
「二日酔い……は大丈夫だけど、昨夜は皆に乗せられてちょっと食べ過ぎちゃったから、どうしようかなって悩んでたところ」
「あ、わかるわかる。私も似たような感じだから、今朝はサラダとパンだけにしようかなって。理奈ちゃんもどうかな?」
「そうね。撮影もあるから抜くのも良くないし、私もそうさせてもらうわ」
 いつもと変わらない無防備な笑顔に目眩を覚えながら、ひとまず由綺にならってサラダとパンを手早く取り分ける理奈。由綺が気兼ねなく取っているなら心配はないだろうと、そう判断をして。それから、由綺とともに二人で手近な席に腰を落ち着ける。
「そういえば、由綺の方はどうなの。二日酔いの方は。青山さんに捕まっていたみたいだったけど大丈夫だった? 私みたいに呑まされてない?」
 目覚まし代わりのコーヒー(ブラック)を飲みながら、探りも兼ねてそう問い掛けてみる。すると由綺はなんでもないような顔で、
「私はそんなに飲まされてないかな。だから二日酔いは大丈夫だけど――実は生理痛が一昨日辺りからちょっと酷くて、そっちの方が大変だったかな。今はピル飲んでるから平気だけど。理奈ちゃんは生理痛軽かったっけ? もし重くてきつかったらすぐ言ってね。まだピル残ってるから」
「ん、ありがと。私はそこまで重くないからたぶん大丈夫だけど、もしきつくなったらその時は頼りにさせてもらうわ」
 声を潜めつつさりげなくピルケースを示してくる。その厚意自体にはひとまず礼を言っておきながら、理奈は改めて目の前の友人の様子を観察する。ピルケースを出すその一瞬だけ、大人のオンナの顔が垣間見えた気がしたけれど、今は少し大人びた感じがするだけのいつもの森川由綺の顔だ。とても半日前にあんな痴態を見せたとは思えないほど、普通の。
 クロワッサンを口に運びながら耳を澄ましてみるが、届いてくるのはホテルが流しているBGMや周りのスタッフたちの声だけで、昨夜耳にした例の振動音は聞こえてこない。それが今はバイブを嵌めていないだけなのか、それとも他の音に紛れているだけなのかは理奈にはまったく解らなかった。
 これが、たとえば動揺していたり理奈の様子をこっそり窺っていたりとか、そういった妙な動きがあればすぐに問い糾す気にもなれただろうけれど、今の由綺の様子にはそんな隙はまったく見られない。あの光景はひょっとしたら夢だったのではないか――そう錯覚してしまいそうなほどに。
(……でも、そんなわけはない。私ははっきりと見て、そして聞いたんだから)
 あの衝撃が夢であるはずがない。だからできればあの行為を受け入れている理由を問い糾したいのだが、平然とした由綺の顔を見てしまうとその気力が削がれてしまう。もちろん、他人(スタッフ)が周囲にいるこの状況では問い糾すことができないのも確かだけど。
 だから理奈もそれ以上の動きを取ることはできず、その後は朝食を食べ終えるまで当たり障りのない会話に終始することになってしまったのだった。

「あ、弥生さん。ごめんなさい、ちょっといいですか?」
「はい? どうかされましたか緒方さん」
 撮影開始までの隙間時間を利用して話をしようと弥生を捜していたところ、幸運にもすぐにロビーで見つけることができたので、さっそく話しかける。Tシャツにホットパンツと軽装の理奈とは違い、振り返った弥生は相変わらずのスーツ姿だ。それなのに汗をかいていないのは、羨ましいを通り越して正直怖い。人間じゃなくてロボットなんじゃないかと思わされるようで。
 だから、たとえば友人として付き合えと言われたら躊躇うくらいに感情を見せてくれない人だけど、昨日の撮影で理奈に容赦なく抗議をしてきたように由綺に対する愛情だけは掛け値なしに本物だから、由綺のことで相談するのに一番の相手なのは間違いない、と。
「撮影開始の時間はお伝えしてあったと思いますが……なにか問題でも?」
「由綺と青山さんのことでちょっとご相談が。他の人には聞かれたくないので、できれば二人きりになれるところでお願いします」
 そう判断を下した理奈は、弥生の了承を得て場所を自室に変えると昨夜見た光景をありのまま報告する。そして、これからどうすべきかの指針も一緒に考えて欲しいことも。
「それは本当……なのでしょうね。緒方さんが、わざわざ私に言ってきたということは」
 話を黙って聞き終えると、弥生は考えを整理するように呟く。いかにも半信半疑な態度だが、話している理奈本人が自分で見てなければ一笑に付すだろう内容だから、それも当然だ。むしろ微かに眉根を寄せたのを見て表情が動いたと、そちらの方に驚いてみるほどだ。
「うん、私も正直目を疑ったけど残念ながら間違いなく本当よ。いつからそうなってるのか、どうしてそうなったのかは解らないけど。弥生さんは気づかなかった?」
「申し訳ありませんが、私もまったく。確かに青山先生が由綺に対し、そうですね、ちょっかいを掛けているところは何度か見ましたが、そんな風になっているとまでは思っていませんでした」
 一番近くにいる弥生ですら感知していなかったのは驚きだけど、気づいていればちゃんと動いてくれていただろうから、それも当然だろうか。それでもこうやって現状を知らせることができたのだから、今からでもきっと由綺を守ってくれるに違いない。
「そっか、やっぱり弥生さんでも気づけてなかったか。青山さんってこういうのは大っぴらにやってるイメージがあったんだけど、今までよく上手く隠し通せてたものね。驚いたわ。――それで弥生さん。これ以上青山が由綺に手を出さないようにするためにはどうすればいいと思う?」
「そのことですけれど、緒方さん。――私としては現状動くつもりはありません」
「…………は?」
 想定外の爆弾発言に理奈の思考が動きごと止まる。
「え? え? あの、弥生、さん……?」
「これが由綺の方から相談を受けたなら話は変わりますが、今のところ由綺からはなにも言われていません。それに私の見たところ撮影についても悪影響はないようですし――コミュニケーション及びコンセプト的には、むしろ良い影響を受けている可能性も考えられます。逆に私が動くことで悪影響が出てしまう可能性もあるかもしれません。ですから、今の段階では私が動くべきではないと判断させていただきました」
「…………弥生さん。それ、本気ですか?」
 青天の霹靂と言っていい敏腕マネージャーの冷淡な対応に、問い糾す理奈の声が思わず掠れてしまう。対する黒髪ロングの美女はあくまで冷徹に、
「当然ですが本気ですね。こんなことで私が冗談や嘘を言うはずはありませんから。
 もちろん緒方さんの懸念も理解できますが、私はあくまでマネージャーです。仕事の補佐はすべて致しますが、プライベートのことまでは干渉できかねますので。……そうですね。どちらかと言えば、それは友人である緒方さんの役目ではないかと思われます」
 協力をあくまで拒否するのだった。その鉄壁の対応に落胆を覚えながら、彼女はそれでも気丈な姿勢は保ったまま弥生に対して謝罪と感謝の言葉だけを口にする。
「そっ……か。うん、そうね。私が気になってるんだから確かに私が動くべきだったわ。弥生さん、わざわざ相談聞いてもらってありがとう。忙しいのに時間を取らせてごめんなさいね」
「いえ、こちらこそお力になれず申し訳ありません。お詫びと言ってはなんですが、緒方さんが由綺とすぐ話し合おうと思っているのでしたら、二人きりになれる時間と場所をセッティングさせていただきますが。そうですね、場所はやはり由綺の部屋が一番でしょうから……今晩八時に由綺の部屋ということで構いませんか?」
「うん。それでお願いしていいですか?」
「承りました。そのように由綺にも伝えておきます。――では、私はこの辺りで。失礼いたします」
 それで話が決まったことを確認すると、弥生はあっさり会話を打ち切って速やかに退室していった。
 あまりに鮮やかな退場だが、それでも最後にはしっかりと助力を与えてくれたことには感謝しても感謝しきれない。それを伝える当人ももういないが、それでも意志は示そうとドアに向かって一礼する理奈。……とはいえ、正直弥生に頼るつもりでいたのですべて自分に任されてしまったのは実際頭が痛いわけだが。
「……まぁ、まずは撮影よね」
 力なく呟き、それから撮影現場に向かうためにゆっくり立ち上がる。すぐ後のこともその後のことも厄介すぎて正直投げ出してみたくなる。けれど、逃げない諦めないのが『緒方理奈』なのだから、しっかりと胸を張って立ち向かうとしよう、と。そんな決意を込めて。

 そして――
「……あの。この格好はなんなんでしょう……?」
 更衣室で本日の衣装に着替えてから撮影現場のホテル中庭へ戻ったところで、理奈は我慢しきれず青山と上村にそう疑問を発してしまっていた。
「なにって……今日の衣装だけど? あれ、もしかして理奈ちゃん。昨日の今日でボクの指示に文句があるのかい?」
「ごめんなさい、その、文句があるってワケじゃないんですけど。この衣装は青山さんがおっしゃってた『大人の女』から外れてるような気がして。どういう意図があってこの衣装にしたのか聞かせて欲しいな、と。ほら、映画撮影とかでも監督と主演とのイメージの擦り合わせって重要じゃないですか」
 雲行きが危うくなりかけたのを察し、速やかに発言の意図を明らかにすることで逆鱗から逃れる。そんな彼女が身に着けているのは、白色を基調に袖口とネック部分に臙脂色の縁取りをした体操シャツに、その縁取りと同色のブルマだった。今にも体育の授業が始まりそうなこの衣装は、好意的に考えても青山の言うコンセプトに合っているとは到底思えない。そう考えての彼女の疑問に当の青山たちはと言えば、
「そう、確かに体操服にブルマって言えば学生のイメージだよね。でも本当にそれだけかい? たとえば大人になってふと学生時代を思い出して、あの頃に戻ってみたいって感覚は誰もが持ってるものだよね。そんな風に思った彼女が押し入れの中から体操服を見つけ出して、懐かしくなり思わず身に着けてしまう。けれど昔は似合っていたはずのそれが今の自分に合わなくなっていることに気づいて、大人になったことを改めて実感する。今回の衣装のテーマはつまりそういうことだから、コンセプトから外れてはいないとボクは思うんだけど。理奈ちゃんはどうかな?」
「まぁ、二十歳越えて間もない理奈ちゃんにはもしかしたら実感はできないかもだね。でも、その手のノスタルジーってヤツは間違いなく需要があるし。ファンとかも二人の昔の姿を垣間見ることができるから、ファンサービスとしてもアリだとオレは思うな」
 二人して巫山戯た答えを返してくる。正直意味が解らないが、それを口に出しても場を乱すだけなのは解る。だから理奈は、この場は素直に引き下がることにした。
「……解りました。そういうことなら、私も納得できます。お時間取らせて、申し訳ありませんでした」
(妙な理屈つけて正当化してるけど、要するに自分たちが見たいだけってことよね。服が妙なことになってるのも、どうせあんたたちの仕業なんでしょ。まったく、ホント好き勝手やってるんだからこの変態たちは)
 彼女が身に着けている衣装は、ブルマこそ――かなりぴちぴちとはいえ――サイズは適正なものの、シャツの方は袖は兎も角丈が短すぎて腹部にも届いていない。だから臍が丸見えになっているのは、青山の狙い通りなのだろう。……ビキニを着てると考えれば露出度はむしろ低いが、そういう問題でもない。おまけに胸元につけられたゼッケンには『83-C リナ』と書かれている。その意味は――
「おはようございます、青山さん、上村さん。……理奈ちゃん、どうかした? なにかあったの?」
「ああ、別になにもないわよ。ちょっとお話ししてただけだから。由綺は気にしないで」
 『80-A ユキ』と書かれている、由綺の体操服につけられたゼッケンを見れば一目瞭然だった。……由綺のシャツもやはりヘソ出しルックになっていることも併せて、目の前の二人は一度地獄に墜ちればいいと思う理奈だった。
(はぁ……とにかく今は撮影に集中しないと。アレを気にするのは後よ後)
 また昨夜の光景がちらつきかけるのを受け流し、平常心を心掛けながら由綺に向き直る。色々考えるのは後のことだと言い聞かせながら。
 そうして始まった撮影は、やはり始めは実に平和なものだった。
 二人で軽く柔軟体操をしあって、背中合わせのペアストレッチで引き締まったウエストと臍の可愛さをアピールしてみたり、股割で柔軟性と脚線美を見せつけてみたり。続いて行われたバドミントンでは、二人ともサーブの時に思いきり仰け反るように言われブラチラさせられる一幕はあったものの、それでも昨夜からのもやもやした気分が少しマシになるくらいには楽しめたと思う。
 久しぶりに着る体操服の気恥ずかしさも、いざ撮影に入ってしまえばそこまで大したものではなかったし、運動するのにはやはり向いているからその点ではありがたい。もちろん、ヘソ出しとブルマに対するスタッフたちの視線の熱さは怖いくらいに感じていたけれど、昨日の透け乳首に比べればまだ耐えられる程度だったからまともに受け流すことはできる。
 けれど――平和なのはやっぱりそこまでだった。……残念ながら。
「よーし、これで私の勝ち!」
 長く続いたラリーの末に返ってきた甘いシャトルを容赦なく打ち返し、由綺側の陣地に叩きつける。それで理奈の勝利が確定した。撮影用のミニゲームだったけれど、それでも勝負は勝負だから勝つのはやはり嬉しいと胸を張る理奈の耳に、由綺の泣き言が届いてくる。
「あ~、もうひどいよ理奈ちゃん。少しは手加減してってば。理奈ちゃんと違って私、運動そんなに得意じゃないんだから」
「あはは、ごめんね由綺。でも、一応勝負は勝負だから手加減するのは逆に失礼かなって、うん」
「……ま、ボクとしてはいい写真(え)が撮れたからそれで問題ないけどね。でも由綺ちゃんの気持ちも解らなくはないからなぁ。――そうだね、今から罰ゲームと行こうか」
 話に割り込んできた青山はそこで嗜虐的な笑みを浮かべると、
「敗者である由綺ちゃんには、今から勝者である理奈ちゃんのマッサージをしてもらおうかな」
 そんな命令をしてきた。それに理奈が反応するよりも早く、「はぁい、わかりました」とまるで待ち構えていたように由綺が動く。あっという間に距離を詰めると、そのまま自分の体ごと押し倒してきた。
「ちょ、ちょっと由綺!?」
「ダメだよ、理奈ちゃん。ちゃんと大人しくしてくれないと、マッサージできないでしょ?」
 思いがけず強い力に、あっさり芝生の上に組み敷かれてしまう理奈。呆然と見上げる彼女に微笑むと、由綺はその手で理奈の体をゆっくりと揉み始める。と言うより、くすぐり始めた。
「ちょっと、由綺。やめて、やめてって。くすぐったいってば!」
「だーめ。罰ゲームなのに素直に大人しくしてくれないもの。逆らった罰だから、しばらく我慢してね」
 勝者のはずがどうして敗者に責められているのか。これではどちらが罰ゲームを受けているのか解らない。そのことを抗議しかけた理奈だったが、カメラのシャッターを切りながらこちらに向けられた青山の冷ややかな眼差しに、昨日の辱めの記憶を思い起こさせられ動けなくなってしまう。
 そうやって彼女が大人しくなったのに合わせて、由綺がくすぐりからマッサージに移行させる。尤も、さすがに本格的なものではないから、ただ二の腕や太股を揉まれているだけでしかない。気持ちが良いとも感じない。なのに――なぜかそのなめらかな手が触れたところが少し熱く感じてしまう。そこに不意に脇腹を強く揉まれて、
「…………んッ……」
 声が漏れた。ことに慌てて口を噤む理奈だったが、もう遅い。由綺が顔を上げて青山とアイコンタクトを取ると、くすりと笑みを漏らしながら彼女の体に覆い被さってくるなり――唇を重ねてきた。
「――――むぅんんっっ…………!?」
 いきなりの狼藉に思考とともに呼吸まで停止しかけてしまう理奈。一方、由綺は一度唇を離すと小悪魔めいた表情を見せ、再び彼女の体を弄り始める。ただし今度は、性的な意味を込めて。
 まずは剥き出しのお腹に指を滑らせると、無防備な臍を何度も突っついてくる。それに理奈が堪らず顎を上げると、指をスライドさせてゼッケンの上からCカップを軽く揉み始めた。逃げられないように、理奈の長い脚に自分の脚を絡ませながら。
(なに、いったいなにが起こってるの? いきなりどうしたのよ由綺? これも青山さんの指示なの?)
 混乱しながらもどうにか抗おうとじたばたする彼女の耳に、不意に聞き覚えのある振動音が届いてきた。慌てて由綺の顔を見てみれば、その赤く染まりかけた肌に蕩けかけの表情は明らかに発情の兆しを示している。そのメス丸出しの姿に理奈は強引に由綺の顔を引き寄せ、耳元に――誰にも聞こえないよう――囁きかける。
「ちょっと由綺、あなたなに考えてるの。今撮影中なのよ。それなのに――私にキスとかだけならまだしも――、どうしてバイブなんて嵌めてるの!?」
「それは――今が撮影中だから、かな」
 叫びたいのを必死に噛み殺しての金茶髪のアイドルの詰問に、黒髪のアイドルは嫣然と口元を吊り上げながら、そんなよく解らない答えを返してきた。
「そうした方がより色っぽく見えるから、というのももちろんあるんだけど。なにもしてないよりも、バイブでこうやって刺激してもらってた方がよりリラックスできるし、集中もできていいの。理奈ちゃんも、一度試してみたら解るよ」
 そんなの解りたくない――そう言い返そうとした理奈の唇を、由綺の唇が再び塞いでくる。だけでなく、舌が唇を割って口内へ侵入してきた。
「ん、んむむむぅぅぅ」
 押し返そうとした舌を巧みに絡め取られて、期せずして濃厚なディープキスになってしまう。その刺激で抵抗が弱まったのをいいことに、おっぱいへの愛撫が更に激しくなる。その手は体操服の上からだけでは飽き足りず、がら空きの腹からシャツの下へ侵入して今度はブラ越しに責めまくってくる。さらに強くなった刺激に、次第に頭の中が真っ白になっていく理奈だった。そんな彼女の耳に、
「おおっと、由綺ちゃん大胆。思いっきり攻めてきたねぇ」
「ほらほら理奈ちゃん頑張って抵抗しないと、好き放題にやられちゃうよ。ほら、がんばれーがんばれー」
 ヘソ出し体操服にブルマ姿のアイドル二人がくんずほぐれつ状態になっている姿に興奮したのだろう。カメラマン二人が、その百合絡みを撮りながら好き勝手に囃し立ててくる。……弥生もそこからは離れた位置で見ているはずだが、さすがに止めてくれるのを期待するのは虫が良すぎるのか動く様子はない。
(ああもう、なんなのよこれは! ……でも、確かにまずい。このままだと、カメラの前でイッてしまうかも。それだけは、なんとかして避けないと――!)
 もう感じてしまってるのは否定できない。ディープキスと胸への愛撫がもたらす快感に、オマンコが濡れ始めていることに理奈も気づいてしまっていた。撮影陣や由綺自身に気づかれないうちにその手から逃れようとどうにか唇を外し、せいいっぱいもがき続けてみるが、
「――んんっ!」
 由綺の膝でブルマの上からオマンコを刺激され、たまらず快感の声を漏らしてしまう理奈。それを聞いて口元を綻ばせる由綺を、彼女は絶望的な気分でぼんやりと見上げるしかなかった。
「理奈ちゃんも気持ち良くなってくれてるみたいだし、もっと気持ち良くしてあげるね」
 艶を帯びた声で言いながら、その真っ赤な舌を伸ばして首筋に這わせてくる。同時に両手はシャツを捲り上げてブラを露出させた上で、その上からおっぱいマッサージを行う由綺。そしてトドメに股間同士を合わせる、いわゆる貝合わせの体勢まで取ってきた。
 瞬間、ブルマ越しなのにバイブの振動が思いきり伝わってきて、理奈の腰が思わず跳ね上がってしまう。
(やだ、なにこれっ!? ダメこれ、こんなのダメダメダメダメ――!!)
 脳裏に明滅し始める危険信号(シグナル)。頭の中で鳴り始める警告音(アラート)に、首を左右に振ってどうにか逃れようとする理奈だったが、快感に力を奪われた体では由綺の魔の手からは逃れられない。なのに由綺の腰が淫らに動くせいでバイブの刺激も縦横無尽に陰部を刺激してくれた上に、いきなり振動の強さが一段階跳ね上がっては、それ以上耐えきれるはずもなかった。
「~~~~~~~~~!!」
 辛うじて声を出すことだけは堪えたものの、あっけなく達してしまう理奈。呆けたように脱力する彼女にもう一度軽くキスすると、由綺は――意外なほどあっさりと――股間を離してくれる。横たわったままその体を見上げると、おそらく途中で彼女も絶頂したのだろう。ブルマの中央部分が濡れたように変色していて、隙間から垂れた一筋の愛液が太股を汚してしまっている。
 ――そこで撮影終了が告げられたのは、理奈にとっては紛れもなく救いだった。もしこれ以上撮影が続いて由綺に責め続けられたら、きっと最後には耐えきれずカメラの前で声を出してイカされていただろうから。そんな無様を晒す可能性がなくなったことに、彼女はそっと安堵の吐息をついていた。
 そんな風にブラを露出させたままずっと芝生の上に横たわっている彼女を見かねたのか、一旦立ち上がっていた由綺が腰を下ろして、まくり上げられていたシャツを丁寧に戻してくれた上に手を差し伸べてくれる。その手に理奈が素直に手を伸ばして、二人の指が秘かに絡め合わされる。
 そうしてようやく立ち上がった理奈にそっと顔を近づけると、
「――ごめんね理奈ちゃん。でも理奈ちゃんも青山さんに×××もらったら、きっと解るから。早くそうなるといいね」
 囁いていった由綺の言葉が、彼女が離れていった後もずっと、いつまででも理奈の耳に残されていた。

 5 “見てしまった彼女”に続く

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