作者:ブルー
「はぁはぁ……」
カメラの前に置いた肘掛け付きの椅子にぐったりと身を沈め、詩織は体操シャツの肩を上下させている。いつもの輝きは消え去り、激しい運動をした直後のように肌が汗ばんでいる。
「すこし休憩しようか。最高の画が撮れた」
店長は手に持っていた電動マッサージ機を机に置いた。
それを使って詩織にアクメの味を教え込んだばかりのところだ。
(なんだったの、いまの感じ……目の前が真っ白になって全身に電流が走ったみたいになったわ……)
恥ずかしい姿を撮られたショックよりも、自分の肉体に起きた変化を受け止めきれないでいる。水色のブルマはぐっしょりと濡れて大きなシミができていた。
「目の肥えたマニアも大満足まちがいなしだ」
「はぁはぁ……まだ体が熱いわ……」
「ちょっと刺激が強すぎたかな。女の子は一度電マを知ると病みつきになっちゃうからね。詩織ちゃんも見ただけで股を濡らすようになるよ、グヒヒ」
店長は下卑た笑いを浮かべる。
電マを使えば詩織のように経験の浅い女子高生を性的に追い込むなど簡単だ。
まだ緩慢な動きの詩織に近づくと、片手をブルマの淵からスルリと入れる。濡れそぼったクレバスに触れた。
「あ、あっ……だめぇ……!?」
椅子に座ったまま、詩織が息を吹き返したように腰を浮かした。
快感に顔を歪める。
「すごい熱だ。グチュグチュだね。イッた直後に触られるとたまらないだろ」
「はあっ、ああっ……っぅ!!」
「ほんと詩織ちゃんは反応が初々しくていいね。ブルマを売りに来た女の子とは思えないリアクションだよ。オナニーの経験もあんまりないのかな。いままでパパ活は何人ぐらいしたの?」
「くっ……私はそんなこと一言もっ……」
詩織がパパ活などするはずがない。すべて濡れ衣なのだが本当のことを話せば潜入目的なのがバレてしまう。
「やらしい顔だ。しっかりカメラを見てごらん」
「ァァ……」
「ほら、ヌルヌルのオマンコに指が入っていく」
「あ、くっ……!!」
「すごくキツいね。入り口からキツキツだ。まるで本物の処女みたいだよ」
「これ以上入れないでください……私、こわいわっ」
「怖い? こんなにネトネトなのにかい。指がやけどしそうだ。もうすこししたらここに詩織ちゃんの大好きなオチンポをハメてあげるからね」
店長の何気ない一言に詩織は青ざめた。
(この人……最後までするつもりなんだわ)
いくら親友の手がかりを得るためとはいえ、これ以上の猥褻行為を許すわけにはいかない。
「くっ、もう終わりに……」
「おっと、先にこいつをナメナメしてもらおうか」
「はっ!?」
「忘れないようにフェラチオ場面も撮影しないと」
店長はズボンを下げると、勃起したペニスを真横から詩織の顔に近づける。半ば強引に咥えさせた。
「ンンーー!! ングウウ!!」
あっという間の出来事に詩織は喉を鳴らして目を白黒させた。
「ハアハア……詩織ちゃんの唇に私のチンポがズルズル飲み込まれてゆくよ」
「ムウウ、フウーー!!」
「ゆっくり呼吸をしてごらん。歯を立てないように。まさかフェラ経験がないわけじゃないだろう?」
あくまで詩織のこと経験済みと信じて疑わない。
嫌がる詩織の頭を両手で掴んで腰を進める。
こうなっては詩織に選択権はなかった。
男の物をあきらめて口に受け入れる。
(ううう!!……信じられない、男の人のを口に入れるなんてっ!)
詩織も知識として知ってはいたが、まさか自分がすることになるとは夢にも思っていなかった。ましてや相手は好きな男子でもなければ彼氏でもない。ブルセラショップの店長なのだ。
嘔吐感がこみ上げてくるのを、詩織は長いまつげの両目をつむって必死に耐えた。
息がうまくできない苦しさに肘掛けの部分を強く握りしめている。
(早く終わってちょうだい……すごく汚いのに……!!)
自分の体の一部を性的な道具のように扱われる屈辱。
呼吸困難も重なって頭の奥が痺れる。
その一方で詩織のブルマは人知れずじわりと濡れていた。
「ハアハア、喉の奥まで入ってるのがわかるかな。お口の中気持ちいいよ」
「ううっ……ふぅ、ふぅぅ!」
「やばい! 興奮する! 一気に出そうだ!」
「ぷはっ! ……ううっ……お、おぇっ……」
「ハアハア、顔にかけてあげるね」
「えっ……」
大事な商品の体操シャツを汚すわけにはいかない。
店長は唾液がからまったペニスを自らしごくと、咳き込んでいた詩織の顔にそのまま射精した。
「きゃあっ……!!」
「ハアハア、いっぱい出た。詩織ちゃんの清純なお顔がザーメンまみれだ」
「なによ、これ……ドロドロしてすごく臭いわ……」
「精子も知らないのか?」
「これが男の人の精液なの」
「カマトトぶってるつもりかな。汚れをティッシュで拭いたらいよいよ本番だよ」
「待ってください……やっぱり私っ帰りますっ」
「ハアハア、知ってるよ。詩織ちゃんもエッチな気持ちになってるんだろ」
「痛いっ! 手を放してください!」
「一発目はブルマ姿にするか。そのあとできらめき高校の制服姿だ。思ったより経験がないみたいだからいろんなエッチを撮影してあげるよ」
「いやあーっ!」
店長は嫌がる詩織の腕を掴んで床のマットに押し倒した。
ハラリと長い髪が広がる。
「グヒヒ。いまさら叫んだところで手遅れだよ。下着を売りに来た女子高生は、みんなここで私にハメ撮りされてるからね。すぐに涙目でヒィヒィヨガるようになる」
店長が体ごと覆い被さる。詩織の両腕を押さえつけて唇を奪った。
「ウ、ううーー!!」
「ハアハア、甘くて柔らかい唇だ」
片手で体操シャツをめくってブルマをずり下げはじめた。
詩織はバタ足を動かして、どうにか逃げようと最後まで抵抗している。
「いいかげんおとなしくしろ!」
「たすけてっ……公人!」
「意外と気が強いな。そういうプレイが希望かな」
興奮した店長が詩織の横っ面を引っぱたいた。
壁を隔てた店側から詩織を呼ぶ声が聞こえた。
ハッとしてドアを見る、詩織。
馬乗りになった店長の動きも同じように止まった。
「公人っ! 私はここよ」
「詩織っ! すぐに助けてやるからな!!」
返事があるやいなやドアを突き破って体力自慢の公人がなだれ込んできた。勢い余って床にもんどり打つって倒れる。
いつまでたっても詩織の連絡がないことにしびれを切らして店へ踏み込んできたのだ。
おくれて好雄が顔を見せた。
「詩織ちゃん!」
「好雄くん! 公人っ!!」
「おまえっ! 俺たちの詩織ちゃんに何しやがってるんだ!!」
好雄が店長に飛びかかる。
しかし、あっさりと返り討ちにあって壁に顔をぶつけた。
「うおおお!!」
日頃からサッカー部の練習で鍛えている公人が雄叫びをあげて店長にタックルした。
もつれるようにしてマウントポジションを取ると、怒りにまかせて右拳を振り下ろした。
「アガッ!! バジャ……!!」
「このブタ野郎っ!」
「グハッ! グエエエ!!」
「ぶっ殺す!! 詩織を泣かせた罰だ!!」
次々と店長の顔面にヒットする。
その間に詩織はいそいで床の制服をかき集めた。
あわてて公人を止めに駆け寄る。
「ストップ! ストップよ、公人」
「放せよ、詩織」
「これ以上殴ったら本当に死んじゃうわ」
あざだらけになった店長の顔は倍近く膨らんでいた。
「ハヒィ……た、たふけぇてぇくらさい……もお、なふらないれぇ」
「ほら、もう十分懲りてるはずよ」
「こんぐらいで許せるかよ! 腕をへし折ってやる!!」
「私の言うことが聞けないの? もし公人が殺人者になったらおばさまに合わせる顔がないわ。それにメグのことを聞く必要があるでしょ」
「……詩織はなんともなかったのかよ。こいつに変なことされたんじゃないのか」
「まあ、危なかったのは危なかったけど。見ての通り無事よ。公人も冷静になりなさいよ」
「本気で心配したんだぞ。まったく人には注意するくせに自分はいつも無茶ばっかりしやがってさ」
「いつもありがとうね、公人。おかげでたすかったわ」
「おい、お前っ! 美樹原さんについて知ってることを全部話せ!」
「ふぁい、はなしまふ」
店長は詩織と公人の前に正座をさせられた。
大の大人がシュンとうなだれている。
「--メグが1人じゃなかったっていうのは本当なの?」
「ハイ、サラリーマンふうの若い男がいました……店でそいつがほとんどしゃべってました」
「それはいつの話なの?」
「先々週の火曜日」
「メグが行方不明になった前日だわ。男の人の名前は?」
「たしか山田太郎……」
「おい、適当なことを言ってんじゃねえぞ」と公人が店長の頭をこづいた。
「ほ、本当です」
「バレバレの偽名だろ」
「すこし公人は黙ってて。その人は常連客なの?」
詩織に追求に店長はブルブルと首を振った。
「はじめて見る顔でした……」
「ねえ、好雄くん。そっちはどうかしら?」
詩織はパソコンを調べていた好雄の方を見た。
「データベースにそれらしい名前があるけど、住所や携帯番号はおそらくフェイクだろうね」
「……メグを助けるためにどうしても情報が必要なんです。どんな些細なことでもいいので教えてくれませんか」
詩織の頼みに店長がぽつりと口を開いた。
「……他にサンプルを持って来たから買い取ってくれないかと」
「サンプル?」
「そこのラックに」
机の横にあるタワー状のDVDラックがあった。
「これかな」と、好雄がその中から1枚のDVDを見つけた。
白い録画用DVDのラベルにマジックで【K高校 M・M】と書いてあった。
「これにメグを監禁してる男が映ってるのね」
「はひ。後はこっちから連絡するからって言われたんです」
「……そう」
詩織は手渡されたDVDを真剣な表情で見つめた。
危険な目にあったが、そのかいがあった。犯人の顔さえわかれば居場所を突き止めるのはそれほど難しくないはずだ。
(まっててね、メグ。私がもうすぐたすけてあげるわ!)
詩織はあらためて強く思った。
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