スポンサーリンク
スポンサーリンク

8.素人ナンパ天国

アクセス数: 2466

作者:ブルー

<< 前  ボルスター (8/14) 次 >>

 水曜日、学校帰りに好雄の家で対戦ゲームをした。
 予想以上に盛り上がってしまい家に帰ったのは夕方過ぎになった。
「好雄の奴、本気なってたな。……あれ、あの車は?」
 家の手前に差し掛かったところで黒のワンボックスカーとすれ違った。
 ちょうど家の前に制服姿の詩織が立っていた。
「詩織っ」
「あっ、公人くん」
「いま帰りか?」
「う、うん」
「詩織がこんな遅くに帰るなんてめずらしいな。今日は部活もなかっただろ」
「ちょっと寄り道してたの」
「寄り道? いまの槍地先輩の車だよな」
「そうだけど」
「もしかして一緒だったのか」
「……うん」
「どこに寄り道してたんだよ、こんな遅くまで」
「えーっと……」
 口もとに手を当てて詩織が答えづらそうにしていた。
「映画館よ。その帰りに送ってもらったの」
「なんの映画を観たんだ?」
「えっ、あれはたしか」
 詩織がまた答えづらそうに考えていた。
(なんかウソっぽいな。俺に言えない事でもあるのか?)
「それじゃあ、またね」
 詩織は逃げるように家の玄関に入っていった。
「なんだよ、結局答えずじまいかよ」
 俺はなんだか釈然としないものを感じた。

 夜、散歩がてらに立ち寄ったビデオショップのアダルトコーナーで『素人ナンパ天国』の8月号が売られているのを見つけた。
「最新号が出てたのか」
 何気なく手にとって目を疑った。
 特集記事の頁紹介に【K高校のスーパー美少女 Sちゃんのナンパ記録 続報!!】と書かれていた。
 俺は「まさか」と思わずつぶやいた。
 急いでレジで会計をして家に帰った。
 自分の部屋に入ると、紙袋を破って本を確認した。
 見間違いではなかった。
 俺は恐る恐るページをめくった。
 【特集 Sちゃんの秘密の放課後】というタイトルと共に、詩織がホテルの一室っぽい窓際に制服姿で立っている写真が掲載されていた。両手を体の前で重ねて、にっこりと微笑んでいる。
『前号にて大好評だった美少女を今号でも特集。公園でのゲリラ撮影の後、このまま逃してなるものかと本誌ライターが撮影続行を交渉。しぶるSちゃんを無事説得してビジネスホテルへ。インタビュー中、まだ男と付き合った経験がないと教えてくれた。これぞガチナンパの醍醐味といえる』
 次のページでは、ホテルの椅子に座った詩織が緊張した様子でピースサインをしている写真が使われていた。
『初ホテルの記念にぎこちないピースサインをしてくれた、彼女。普段の放課後は部活で汗を流して、家では予習復習をしっかりしているらしい。ためしに荷物を見せてもらうと教科書やノートがあるだけで、化粧品類などは一切入ってなかった。体操服入れにはその日の体育の授業で使ったというブルマと体操シャツが。流行に敏感な女子校生らしく最新のスマホを使用していた』
 3ページ目には、上半身だけ下着姿になった詩織が写っていた。
 制服のスカートは履いている。その恰好で片手を背中で横にして、淡いピンク色をしたブラジャーの肩紐が少しずれていた。肩にかかった髪が窓の明かりで夕焼け色に輝いて見える。少し寂しそうに、やや首を右に傾けて視線を床に落としていた。
『Sちゃんは恥ずかしがってなかなか脱いでくれずかなり手こずったが、根気強く説き伏せてようやく制服のリボンをほどいてくれた。清楚そうなブラジャーから発育したおっぱいが今にもこぼれそう。ライターが何センチあるの? と尋ねても、照れて小さく首を振って答えてくれなかった。下着姿を見られるのもかなり恥ずかしいらしく終始うつむいていた』
「詩織、下着姿も撮られていたのか。俺にはそんな素振りをまったく感じさせてなかったのに」
 俺は写真を目の当たりにしてもまだ信じられなかった。好雄が盗撮したデータとは意味合いが違う。
 詩織は自分の意思で制服(上)を脱いで下着姿を撮られているのだ。
 そんな俺の気持ちに追い打ちをかけるように、次のページではブラジャーを取った詩織が両手で胸を押さえている写真があった。いわゆる手ブラ写真だ。
 頬を染めた詩織は、どこを見ていいのかわからなそうに視線を横に逸らしてたいた。
『Sちゃんもだんだんと撮影に慣れてきたのか、ブラジャーを外して欲しいというライターの要望に素直に応じてくれた。手でしっかりと隠しているのがいじらしい。普段は絶対にこんなことはしないというが、これこそが彼女の本性だ』
「いったいどこまで撮られたんだ」
 記事はそれで終わっていた。俺はまだ詩織の事が書いてあるじゃないかと本を最後まで読んだ。
 窓の外に詩織の部屋が見える。
 部屋は電気が消えてカーテンが閉まったままだった。

<< 前  ボルスター (8/14) 次 >>

コメント

タイトルとURLをコピーしました