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4.カラオケボックスにて

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作者:しょうきち

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      1

 新学期が始まった。
 クラス替えによってシャッフルされた新クラスの面々を見回した好雄は、はぁ……とため息をついた。
 高校入学したての頃とは違い、高校三年ともなるとクラス替えに心踊らせたり、一喜一憂したりといった事は最早あまりない。
 以前であればクラスの可愛いどころの女子に目をつけては、連絡先やスリーサイズ、 彼氏の有無といったパーソナルデータ密かに調べ上げたりしていた。そうして収集した情報をもとに声をかけたり、場合によっては公人を始めとした男友達にその情報を売ってちょっとした小遣い稼ぎをしたりしていたのだが、高校生活も丸二年間が過ぎると人間関係が固定されてくる関係上、調べてみたら可愛いどころは既に彼氏持ちだったり、場合によっては悲しいことに貫通済みだったりして空しさすら覚えることもある。
 そして更に根本的な、何より大きな問題がある。それは他クラス、他学年も含めて美少女情報を収集し続けてきた結果、もう校内の美少女の事は粗方調べ尽くしてしまってしまっていたのである。
 そんな中迎えた新クラスの隣の席には、今さら調べるまでもない、女子の中でも最も見知った顔が座っていた。
「やっほー、好雄くん。中学以来だっけ? 今年は同じクラスだし、よろしくね。そのうちまた授業ブッチしてさ、カラオケでも行こうよ」
「あ、ああ……」
 同じ中学出身の女子、朝日奈夕子である。
 新学期に入ると初め席順は名簿順、つまりは五十音順で男女互い違いに並べられる事となるが、「あ」行の夕子は女子一列目の先頭に、「さ」行の好雄はちょうど男子二列目の先頭となっていた。
 中学時代はあまり女を意識することもなく、よく男女グループでカラオケに行ったり、ファミレスでだべったりしていた仲だったが、高校に入ってからは別クラスだったこともあってあまり話していなかった。
 それにしても……。
 赤みがかった派手な髪色に、コーラルピンクのマニキュア。巻き上げて短くしたスカート、バッチリキメたメイクといい、暫く見ない間にすっかりギャル然としたものだ。

 変わったのは装いだけではない。同級生女子より一回り前に突き出た胸の膨らみ、それと反比例するかのようにきゅっと括れたウエスト、そしてむっちりと肉の詰まった太股……。この2年ちょっとで随分と成長し、見違えるほど女の匂いを振り撒くようになっていた。

(夕子のやつ、やっぱもう処女は捨てちまったのかな……?)

 見た目に違わず夕子は昔からかなりの遊び人で、男の噂は絶えない。だが、少なくとも中学卒業時までは処女だった筈だ。当時、遊び仲間内では結構下ネタOKな雰囲気があったので、そういう事を聞くこともできた。

 だが、さすがに今そういうことを聞くことは憚られた。中学の時のように「やーねぇ、男子ってほんっとエッチなんだから」などとけらけら笑って叩いてくるくらいならまだいい。高三女子ともあればそれなりの割合が恋愛を経験しており、更には男を知っている可能性もある筈で、もし本当に経験済みであった場合は返ってくる答えが生々し過ぎてショックがでかいからだ。
 頬を赤らめて、「実は一昨年の夏にね……」などと言われたらちょっと耐えられる自信がない。別に夕子とそういった関係になりたい訳でなくとも、である。あるいは、そういった男子特有のナイーブな部分については、たとえ童貞を捨てたとしてもそう簡単に変わるものではないという事なのかもしれない。

      2

 新学期に入り、早くも三週間が過ぎていた。
 世間はGWに沸いており、クラスメイト達は遊びに行く予定を話し合っていたり、受験のため予備校の講義スケジュールをチェックしたりしていたが、好雄はひとり焦っていた。
 密かに始めた風俗スカウトの仕事だが、いまだ結果が芳しくないためである。放課後や休日は街に繰り出しナンパに精を出すものの、未だに箸にも棒にも引っ掛からずにいた。
(こうなったらこの週末は新しい場所を開拓して……)  
 中野、府中、新大久保……。この三週間、好雄なりにチョイスした若い女に人気のスポットを色々と回ってみたものの成果は一向に上がらず、上田からはこれ以上成果が上がらなければ容赦なく取り立てを始めると釘を刺されていた。
 その期限は月末。この土日までである。
 それまでに裸の仕事が出来る女を探し出し、なんとかして上田の元へ連れていかないといけない。さもなくば返済能力無しと見なされ、身の破滅が訪れる。
(ぐうううっ……畜生っ……。やっぱ俺って、才能ねえのかな……)
 昼休み。懊悩としながら昼食の焼きそばパンを齧る。すると突然、背中に衝撃があった。
「ぐえっ! な、なんだあっ!?」
「どーしたの、好雄くん。辛気くさい顔しちゃってさ」
 夕子であった。平手で強かに打たれた背中がジンジンと痛む。
「痛っ……てーな、夕子っ! 何すんだよ!」
「あー、痛かった? ごめんごめん」
「んったくよお……」
「ごめんごめん。悪かったってば。だってさ、こんなにいいお天気の日に、あんまりにも辛気くさい顔でお昼食べてるんだもん」
「お前はいいよな……。悩みなんか無さそうな顔してよぉ……」
「あっ、ひっどぉーい。あたしだって色々悩んでるのにぃ」
「へっ、お前の悩みなんてどうせGWに何処に遊びに行こうかとか、精々そんなモンだろ?」
「あーっ、そんな事ないわよぉ。あたしだってちゃんと考えてるんだから。今日どこで遊ぼうとか、今日はなに食べようかとかさ」
「呆れた……」
 好雄は焼きそばパンと牛乳を口の中に押し込むと、席を立ってその場を離れようとした。
「待ってっ!」
 後ろからシャツの裾を捕まれていた。
「なんだよ?」
「好雄くん、午後これからヒマ? 空いてる?」
「ヒマなにも、授業があるだろが」
「授業なんてブッチしちゃってさ、カラオケでも行かない? 暗い顔しちゃって、そういう気分がノらないときはさ、パァーっと気分転換」
「はぁ~っ? お前と、俺とでか?」
「うん。ほら、カラオケのクーポン券、今日までなのよ。平日昼間のフリータイムだともっとお得だからさぁ、ね。お願ぁい」
 夕子は唇をとがらせ、すがるような目を向けてくる。
「はぁ……しょうがねえなあ。今回だけだぞ……」
「やったぁ。 行こっ、行こっ!」
 確かに夕子の言うとおり、このところジリ貧だったので気分転換が必要かもしれなかった。
 もちろん、女らしく成長した夕子と遊びに行くことに多少の下心があった事も否定できない事実である。

     3

 午後の授業はサボる事にして、夕子と二人で繁華街のカラオケボックスへと向かった。
 巨大な赤い看板が目印のチェーン店だ。
  平日日中の店内は思いの外空いており、二人きりだというのに五、六人は入れそうな広い個室に通された。外は暑苦しかったが、個室内はガンガンに冷房が効いていた。
「ここ、最低でもワンドリンク頼まないといけないんだってさ。好雄くん、何にする? あたしカシスオレンジに……」
「ちょっ、待て待て待てっ! アホかっ! 俺たち、まだ制服だってこと忘れんなっ!」
「んもー、冗談だってば……。コーラでいいよう……」
 そうは言うものの、目が本気で悔しがっていた。きっと咎めなければアルコールを注文していたに違いない。
「じゃあ、俺もコーラでいいや。なんか食い物も頼むか? 唐揚げにフライドポテト、マルゲリータピザもあるぜ」
「いらないっ、ダイエット中だもん」
 ぷいっと首を横に振る夕子は、こうして改めて見るとやはり胸の大きさといい腰のくびれといい、実に男好きするスタイルをしている。絶対にダイエットなんて止めた方がいいと言いかけたが、直前で止めておいた。以前妹に似たような事を言った結果、プロレス技の実験台にさせられて半殺しの目にあったからだ。
「あ、来た来た。乾杯っ!」
 コーラが2杯分届くと、とりあえずグラスを合わせた。一息に半分ほど飲み干すと、夕子も喉が乾いていたのか、豪快に4分の3程を飲み干したところであった。ダイエットはどうしたんだという言葉が喉の先まで出かかっていた。
「……ふぅっ」
「あ~、あったあった。おい夕子。リモコン、こっちにあったぜ。ほらよ」
 好雄は夕子にタッチパネル式のリモコンを渡した。前に遊んだ人間のマナーがなっていないのか店員の仕事が雑だった為なのか、リモコンは所定の位置にはなく床に転がっていたため、探すのに難儀した。
 だが、夕子は受け取ったリモコンをテーブルの上に置いた。
「おい夕子、とっとと歌入れちゃえよ。フリータイムっつってもよぉ、歌わずにいるなんて時間がもったいねえだろうが」
「う~ん……。歌うのはちょっと後でいいかな……」
「ハァ? 歌いに来たんじゃねえのかよ」
「……実は折り入って、好雄くんに相談したいことがあるの……」
「はぁあ……?」
 何冗談言ってやがる、と言おうとしたが、止めた。夕子の表情がいつになくシリアスなものだったからだ。
「相談って言うのはね、……その……」
「んだよ、遠慮なんかすんなよ。気の効いた事言えるかどうかは分かんねえけど、聞くだけは聞いてやるぜ」
「将来の……進路のことなんだけど……」
「うっ……!」
 進路。好雄にとっても耳の痛い話題である。
「こないださあ、進路希望調査出せってプリントが回ってきたじゃん? それであたし、将来の事なんて特になんにも考えてないし、遊んで暮らせればいいかなって思ってさ、第一希望フリーター、第二希望もフリーター、第三希望もフリーターって書いて出したんだけど……」
「職員室に呼び出し食らっちまったって訳か」
「そーゆー事。結構ヘコんだわー。あたし勉強なんて全然してないし、もうどうしよっかなーって思っちゃってさ。友達は試しに聞いてみるとみんな普段イケイケドンドンで遊んで回ってるように見えてもちゃんと勉強してて、大学とか就職の事とか真面目に考えててるみたいで、あたしだけ何も考えてなかったんだーって思っちゃって……」
「それで、なんで俺なんだよ。女友達とか、もっと勉強できる奴とかいるだろ。自慢じゃねえが、俺だって将来の事なんてそんな……ちゃんとは考えてねえよ」
「いや~、下には下がいるって安心したくて……」
「……っざけんなっ!」
「じょ、冗談っ! ウソウソ! 冗談だよぉ……。怒んないでぇ、好雄くん……。好雄くんなら気兼ねなく話せるって思ったからなのぉ……」
「……ったくよ……。お前な、なんか高校卒業してからやりてぇ事とかねえのかよ。就職にせよ進学にせよ何にせよ、まずはそっからだぜ」
「う~ん、美味しいもの食べてぇ……、色んな所で遊んで回ってぇ……、車の免許取って……あ、海外旅行なんかも行ってみたいっ!」
「それじゃ、今と大して変わんねえだろ……」
「う……」
「大体、お前のやりたい事ってのはつまるところ金、金、金。とにかく金が要るんだよ。それも沢山な……。先立つもんがねえとそんなの一つたりとも出来やしねえんだよ。いや……うーん、待てよ、そう考えたらとりあえず就職志望って事になんのかなぁ……? 夕子さあ、お前、何かやりたい仕事ってあったりすんの?」
「ん~、なんでもいいけど、お金ががっぽり稼げて、時間に融通が利いて、超楽なのがいいっ!」
「おいおい、そんな仕事なんて……」
 ある訳ねえだろ、と言おうとしたところで、好雄の脳裏にはひとつの単語が浮かんだ。
 風俗。
 だが、流石にその言葉を口にするのは憚られた。同級生女子相手にそのような事を言った日には、一応あった筈の男女間の友情めいた何かが音を立てて跡形もなく崩れ去るであろう。
「ねえねえ好雄くん、今何か隠したでしょ? 割のイイお仕事、知ってるんでしょ? 教えて教えてっ!」
「い、いや……これはちょっとお前には向かないって言うか、教えたくないって言うか、ぶっちゃけして欲しくないって言うか……」
「なによう、勿体ぶっちゃって。お願いお願いっ、一生のお願いだから、教えてよお……」
 潤んだ眼で見つめてくる。好雄の心がぐらついた。
「フ、フーゾク……」
 瞬間、好雄は身構えた。同級生の女子相手に、頬を張られても文句は言えないような最低の発言である。しかし、夕子のリアクションは予想外のものであった。
「フーゾクってアレよね。男の人のアレをコレしてあげたり、エッチさせてあげたり……。やっぱソレしかないのかなぁ……」
 好雄は眼を丸くした。夕子の表情は真剣そのもので、満更でもなさそうである。
「お、お前……いいのかよ。フーゾクでも……」
「だって他にないんでしょ。楽して儲かる仕事なんてさ。そりゃ何処かにはあるかもしれないけど、そういうのって子供の頃からいっぱい勉強して、一流大学とかに入って、それでもって何十年も寝る間もないくらい働いたら、とかの話でしょ?」
「そりゃ……そうかもしれないけどよ……」
「あたしは若いうちに色んな事やったり、 色んなところにいったりして人生満喫したいの! 難しいことはそれから考えたいのよ。花の命は短いんだから……」
「だからって……本当に分かってんのかよ。仕事でセッ……おほん、エッチな事をするってことはよ、100キロもあるような臭ぇピザデブとか、お前の親より年上の脂ぎったオッサンとかも相手しなきゃならねえんだぞ?」
「な、なによう……見てきたように言うわね……。そんなのやってみなくちゃ分かんないじゃない。意外とやってみたら向いてるかも」
「大体そもそも、お前って経験なんてあんのかよ? 処女の風俗嬢なんて聞いたことねえぜ」
「ううっ……、じゃ、じゃあ好雄くんはさあ、あるって言うの? 経験」
「うっ……」
 好雄は言葉を返せなくなった。あるにはあるが、経験しているのはまだあの〈ヒヤシンス〉での一回だけである。いわゆる素人童貞であった。
 夕子もまた、勢いでかなりきわどい質問をしてしまった事が後から恥ずかしくなってきたのか、ひどくバツの悪い表情でしばらく押し黙ってしまっていた。

      4

 コーラを飲みきってすっかり空になったグラスから、氷を取り出してガリガリと噛っていた。すると夕子が席を立ち、好雄の座るソファへと身を寄せてきた。上目使いで見つめてくる。
「な、なんだよ……夕子……」
 薄暗い室内ではあるが、色白の小顔が真っ赤に上気しているのが分かった。夕子がもたれかかってきた。体重を預けられたので、反射的に抱き締め返した。レモンのような甘酸っぱい香りが鼻孔をくすぐる。
 突然の衝撃に、口内に残っていた氷を飲み込んでしまっていた。
「うぐぅ……、げほっ、ごほっ……」
 こちらが咳き込んでいるのにも構わず、夕子はぐいぐいと胸へ額を押し付けてくる。心臓の鼓動が丸聞こえになっているような気がして、ひどく落ち着かなかった。
「ねぇねぇ……教えて。好雄くんってさ、経験済み? いつの間にか彼女いたの……?」
 「ま、まあな……」とか、「ノーコメント」とか適当な事を言ってごまかそうかとも考えたが、出来なかった。見上げてくる夕子がいつものおちゃらけた感じではない、本気の切迫感を滲ませていたからだ。
「い、いや、正直言うと、彼女はいねえし、まだ出来たこともねえ……。でも、セックスはした。一度だけ……」
「それって……ナンパ? ワン・ナイトってやつ?」
「いや……」
「……どういうこと?」
「お前にこういう事言うのはどうしようもなく情けねえんだけどさ、フーゾクだよ、風俗。金払ってはじめてのセックスを経験してきたんだよ。ちょっと前━━春休みの終わりにな。ほら、今年から18歳が成人だっていうだろ? 世間からは一応大人扱いされてる事になってるってのに、未だに童貞だっつーのがどうしようもなく我慢できなくなってきて、居ても立ってもいられなくなってさ。はは、軽蔑したろ。笑ってくれてもいいんだぜ」
 夕子は首を横に振った。
「笑わないよ……」
「えっ」
「そんな事……笑ったりなんてしないし、軽蔑もしないって言ったの。ねえ、好雄くん……」
「な、なんだよ……?」
「さっき、あたしにセックスしたことあるかって聞いてきたよね……?」
「別にそんな、もう……んんっ!?」
 夕子の顔が近づいてきて、唇に柔らかく、生暖かいものを押し付けられた。
「教えてあげよっか。今、ここで━━」
 その瞬間、好雄の中で決壊が起こった。まるで今まで見えているのに見えないふりをしてきた何かが壊れ、雪崩を打って溢れ出していくようであった。
 唇を吸い返す。欲望のままに舌を差し出し絡めあった。ひどくいやらしい気分になった。体の一番奥深いところで、雄の本能がムズムズと蠢き出した。
「ぅんんっ……ぅむむむっ……」
 夕子は積極的に舌と舌を絡めてきた。甘えるような舌使いに、好雄の股間は熱くなった。
 唇を離すと、互いの間に唾液のアーチが出来ていた。夕子をこちらに抱き寄せると、勢い余った夕子が上から倒れこんできた。抱き合ったまま二人でソファ上に転がる格好となる。上になった夕子の顔を見ると、恥ずかしそうに眼の下を朱く染めていた。痛いくらいに勃起したペニスが、夕子の腰骨の辺りに当たっていた。ヒップに手を回し、固くなったモノをぐりぐりと股間に押し当てた。
「あっ……! な……なんかちょっと、こういうのって……照れちゃうよね……」
 耳に触れそうなほど唇を近づけて夕子が囁く。身動きのとりづらいソファの上で、抱き合いながらも器用に自らセーラー服を脱ぎ捨てていく。いてもたってもいられなくなり、好雄も慌てて服を脱いだ。
 ここがカラオケボックスの個室であることなど、とうに忘れていた。どうせこちらから内線電話を入れなければ従業員はやってこない。いや、もしかしたら来るのかもしれないが、そうなったらその時はその時だ。こうした緊張感も今の二人の間では興奮をあおるスパイスとして働いていた。
 興奮のあまり無我夢中で背中に手を回し、ブラジャーのホックを外しにかかった。慣れない作業に難儀したが、なんとか外してカップをめくりあげる。
「あっ……」
 淡いピンクのブラジャーの下から、白い乳房が現れた。結構大きい。予想以上に丸々としている。着痩せするタイプなのかもしれない。先端の乳首は清らかなピンク色だ。
 好雄は乳房に顔を埋めると、先端の乳首を吸った。
「やぁ……あぁん……。好雄くん……ダメ。やめてっ、くすぐったいよォ……」
 やめるなんて出来そうになかった。ボリュームで言えば先日〈ヒヤシンス〉で相手したユミの方がよほど大きかったのだが、 今触れている身体は毎日ように顔を見ており、日常的に身体つきをも眺めている相手のものなのである。そこには多大なギャップがあり、こうして肌を擦りあわせる感動はケタ違いのものがあった。
 やめられない理由はもう一つある。吸うほどに彼女の乳首は硬く尖ってきており、次第に切なげな吐息を漏らしはじめてきたのである。つまり、夕子も感じている、興奮しているということだ。
「やさしく……して……」 
 いつも元気な彼女の声が、消え入りそうなくらい小さかった。
 プリーツスカートをたくし上げ、右手をショーツの中に忍び込ませようとすると、夕子は祈るような顔で訴えてきた。好雄はうなづきつつ、指先で繊毛を撫でた。思ったよりも濃い。綺麗に整えられていたユミのそれよりも濃いかもしれない。
 さらに奥へと指を這わせていった。茂みの向こうを掻き分けていくと、くにゃくにゃした柔らかい肉の感触があった。じっとりと湿り気を帯び、淫らな熱気を放っていた。
 ふるふると睫毛を揺らしながら切羽詰まった目で見つめてくる。視線を絡み合わせながら、局部をそっといじった。柔らかい肉ビラが左右にほつれ、奥からは熱い粘液がとめどなく溢れてくる。それを潤滑油にして、少しずつ中指を肉穴の奥にねじ込んでゆく。
「んんっ……、くぅうぅっ!」
 夕子があえぐ。きつく眉根を寄せ、唇を震わせている。好雄は息を呑んだ。指に絡み付く蜜の量は刻一刻と増していくばかりで、ショーツの中の熱気もすごい。
 好雄は中指の角度を微調整しつつ奥の方をねちっこく掻き混ぜながら、親指を使ってクリトリスを擦った。まだ包皮を被ったままのそれを刺激しながら、しつこく中で指を動かす。
「んんんんっ……、はぁあぁあっ!」
 夕子が喜悦に歪んだ悲鳴をあげる。眉根を寄せつつ、自ら腰を淫らにローリングさせていた。好雄の指を自分から迎えにいっているような感じだ。
(そろそろ、いいのか……?)
  以前したときは風俗店でプロの風俗嬢相手であったため、ほとんどお膳立てがなされた中で(最後、無理矢理挿入したことを除いてだが……)のセックスであった。だが今は、女の性感も自分の勃起も、そして挿入のタイミングも自ら決めなくてはならなかった。
 それはあたかも、地図やコンパスを持たず、遥か遠くの目的地以外なにも分からない中で荒野を往くような感覚である。
 踏み出さなくてはならない、次のステップへと。夕子は苦しそうに身を捩り、ガクガク、ブルブルと下半身を震わせている。
 そしてそれより何よりも、もう股間が苦しくてしょうがなかった。いきり勃ったペニスはまるで別の生き物のように言うことを聞かず、早く女の中に収まりたいと狂ったように熱い脈動を刻んでいた。
「そ、そろそろ……い、いいか? 夕子……?」
 夕子は応えず、ただ涙目で見つめ返してきた。
 夕子を仰向けにさせ、ショーツを引き下ろした。好雄は真っ赤に染まった表情とベトベトに濡れた草むらを交互に見やりながら、トランクスを脱ぎ捨てた。夕子の両脚の間に身体を滑り込ませ、ペニスの切っ先を濡れた花園にあてがった。思考回路はショート寸前である。
 ヌルリとした感触が背筋をゾクゾクと震わせる。喉がカラカラに渇いていた。
「いくぞ……」
 なんとかそれだけ言葉を絞り出した。
 好雄は夕子を見つめながら、腰を前へ送り出した。アーモンドピンクの花びらを巻き込み、亀頭を割れ目へと沈めていく。ヌメヌメとした感触に息を呑んだ。早く奥まで入っていきたいという欲望と、できるだけじっくり長くこの挿入の瞬間を楽しみたいという欲望とが、体の奥で火花を散らしていた。
「むううっ、うううううっ!」
 勝ったのは早く深く繋がりたいという欲望の方であった。
 ずんっ、と奥まで突き上げてやると、
「はぁっ、はぁああああああーっ!」
 夕子は甲高い悲鳴をあげ、総身をのけぞらせた。助けを求めるように両腕を伸ばしてきたので、好雄はそれに応えるように身体をぎゅっと抱きしめた。素肌と素肌が密着すると、結合の感動が一際高まった。
「んぁああっ……、はぁあぁあっ……」
 夕子が腕の中で身をよじる。好雄は喘いでいる唇を唇でふさいだ。舌と舌を絡めあわせながら抜き刺しを繰り返してゆく。
 緩急など何もない、最奥まで貫いては抜ける直前まで引き抜く、無我夢中のフルピッチである。
 キスを続けていられなくなり、夕子が腕の中で激しくもがく。ぐいぐいと押し込まれるピストン運動に応えようとしているのか、好雄の送り込む腰の動きに合わせて、クイッ、クイッと腰をくねらせ始める。
 実にいやらしい動きであった。
 小鼻を赤く染め、ひどく恥ずかしそうな表情をしている。今にも泣き出しそうな顔で好雄にしがみついてくる。汗にまみれた乳房を押し付け、腰の動きをこちらのフルピッチとシンクロさせてくる。体の震えが伝わってきた。五体の肉という肉を淫らに痙攣させて、赤いボブカットを激しく振り乱す。
「あああっ、凄いぃぃっ、凄いのォッ……!」
「うっ……おおおおっ!」
 好雄は息を止め、渾身の連打を放った。一打一打ごとに濡れた蜜壺が絡みついてくる。 ずちゅりにちゃりと卑猥すぎる肉ずれ音をたてて、摩擦の快感をむさぼり抜いた。
「あぁあぁあっ……、いっ……イクッ!」
 夕子の身体が一瞬きゅうんとこわばり、次の瞬間、ビクン、ビクンッと跳ね上がった。腰を中心に壊れそうな程身体中を震わせて、絶頂へと駆け上がっていった。
 好雄の方も、耐えがたい程の射精欲がもうすぐそこまで来ていた。痙攣する彼女の腰を押さえつけ、歯を食いしばって無我夢中で腰を叩きつける。
 そのときであった。エクスタシーに達した夕子の蜜壺が、にわかに締まりを増した。すさまじい密着感となった。突けば突くほど、奥へ奥へと引きずり込むような吸着力で男の精を吸い出そうとしてくる。
「うああっ……出るっ、 イクぞっ……夕子っ!」
「ああっ、出してっ!」
 身体中を痙攣させながら、夕子が叫ぶ。
「おあああぁっ……、夕子ぉっ……!」
 好雄は渾身の一打を夕子の中心に叩き込んだ。熱く、硬く、パンパンに膨れ上がった男根から、煮えたぎる欲望のエキスがドピュッと噴出した。
「はうっ! あぁあぁぁぁん!」
 夕子が白い喉を突き出してのけぞる。ドクンドクンと男の精を吐き出していくたびに、下半身をガクガクと震わせて激しく身をよじる。痺れるような快感が、男根の芯から体の芯へ、そして頭のてっぺんから爪先まで走り抜けていく━━。

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コメント

  1. ユリーシャ より:

    4話目お疲れ様です。
    なかなか可愛らしい夕子でしたね。自分の中の夕子のイメージはもっとイケイケな感じで馴れた感じのエロエロなエッチをする感じでしたがこんな可愛い夕子もいいですね。続き楽しみにしています。

  2. しょうきち より:

    ユリーシャ様。コメントありがとうございます。
    ご指摘の点、まさに本話で意図していたところでして言及いただき嬉しく思います。
    仰るとおり(二次創作の)夕子はイケイケでH慣れしているイメージで、実際自分も何作かそういう夕子を書いてたりするのですが、今回は
    ・あえて変化をつけたかった。
    ・公人ではなく好雄を主役に持ってきた関係上、夕子のヒロイン度を割り増しするため。
    ・原作のキャラ味をもう少し際立たせるため。
    などの理由から、単なるヤリマンビッチ⇒奔放だけど経験少なめ。くらいのキャラにしました。

    それでは、次回もお楽しみいただけますと幸いです。

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