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1.気づく時

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作者:メルト

「はい、彩花おねーちゃん!チャレンジ、チャレンジ」
 花梨はそういうとミルクティーの入ったカップを手に持ち座っている彩花姉の後ろから近づき彩花の二の腕を掴むと胸の谷間を強調させるポーズをさせる。
 「ちょっ!花梨何を・・・・・・っ!」
 「はいはい、用意ースタート!」
 そして混乱している動けないでいる彩花の胸の谷間にカップを乗せストローを咥えさせる。
 「うっわ、やっぱり彩花おねーちゃんもできるんだ」
 「で、花梨これは一体何なんだ?」
 スマホのカメラで、胸の上に置かれたミルクティーをこぼさないように必死に飲む彩花姉を撮影している花梨に俺が問いかける。
 「……んっ」
 「えっとね、水泳部でタピオカチャレンジが成功する人が何人いるかっていう賭けを行っているの」
 「なんだってー、水泳部ではそんな素晴らしい賭けが行われているのか」
 いつの間にか、近くにいた横に幅のある肥満体の秀明が高そうなカメラを構えて写真を撮っていた。
 「一番近い数字の人が学食の一番高い食券をゲットできるんだ」
 「で、何人がチャレンジしたんだ?」
 「えっとね、優花おねーちゃんも含めてできそうな人を七人ほどピックアップして、その人達にチャレンジしてもらったの」
 「って、優花姉ーも」
 「うん、事情を話したらノリノリでやってくれたよ!ちなみに余裕だった」
 「優花姉ー!仮にも教師なんだから、立場的に一応止めなきゃだめだろう」
 優花の行動に呆れて、頭を抱えている俺を尻目に笑顔で動画を撮り続けている花梨。
 「ーぷはぁ……ようやく飲み終わった」
 ようやくタピオカを全部飲み終え、ストローを口から離し胸を挟んでいた両手を開放すると花梨に怒気を孕んだ視線で睨みつける。
 「花梨、覚悟はできているんだよね」
 「あっ、やば!」
 危険を感じた花梨は、じりじりと後ずさむと俺に良い笑顔を向け
 「とりあえず、目的は達成したから後はよろしくね、お兄ちゃん!」
 「って、こらー!色々とやらかして逃げるな花梨―!」
 花梨の逃げ去っていた方向を呆然と見つめていた俺は、後ろの彩花の怒りがなんとなく俺に向かってきそうな気配を感じたので避難を開始しようとしていると。
 「さーてと、そろそろ準備をしないとな」
 「……ねえ、康輔!ちょっとこっち振り向いてくれない」
 「はっ、はい!
 敷かれたビニールシートから立ち上がり、後ろを振り向かず屋上の出口へと向かおうとしていた俺に彩花が声をかけてきた。
 「ねえ、見てたよね!私が困っているのに、どうして助けてくれなかったの?」
 彩花姉の威圧をもろに受け、動けないでいる俺は隣にいる秀明を巻き込もうと視線を向ける。
 『いないよー!』
 肥満体はいつの間にか姿を消していた。
 「康輔、いい! いつも言っているけど康輔は花梨に対して甘すぎなから!」
 「……はい」
 「花梨がいけない事をしたら、必ず怒るようにしてよね」
 「……はい」
 それから俺は、午後の授業の開始のチャイムが鳴るまで永遠と彩花のお説教を受ける羽目になった。

 「それじゃあ、失礼します」
 そう言って、職員室の扉を閉めるとあくびをする口に手を添えながらゆっくりと玄関口へと向かい歩きだす。
 「ふわぁ……あ、ようやく終わったか」
  何度も繰り返すあくびに抵抗をつづけながら歩いていると、視線の先に廊下の階段を上がって来る競泳水着姿の彩花姉を見かけた。
 「おーい!彩花姉ー!」
 彩花姉は、俺の声に気づかず階段を上っていく。
 「あれ、聞こえなかった? 少し遠かったかな?」
 そんな彩花姉の事を考え立ち止まっていると、今度はラクビーのユニフォームを着た筋肉質の男子生徒達が、彩花姉と同じように階段を上がる。
 「うーん、なんでラクビー部がこんなところに?」
 疑問に思った俺は、階段に駆け寄りラクビー部の連中に近づく。
 「おーい、ラクビー部のメンバーがどうして校舎内にいるんだよ」
 彼らに近づき声をかけたが、彼らは俺を無視しただ階段を上がっていく、
 「おいってば!」
 彼らの中の後ろにいた奴の肩を掴んでこちらを向けさせた俺はある事に気づいた。
 「こいつら、目の焦点があってない」
 虚ろな瞳をした彼らは、力ない動作で階段を上がっていく。
 俺は、彼等にいたずらや痛みを加えて反応を見るがまるで無反応だった。
 そして、そんな彼らを追いかけていくと屋上へ向かう通路の奥にある開かずの教室に彼等は入っていく。
 「あそこって、確か鍵がかかっていて開かずの教室になっている場所なんじゃ」
 その事を思い出しながら、俺は彼らの後を付けて教室へと入っていく。
 ―――うっわ、ガラクタだらけだな
 と思い辺りを見回す。そこにあったのは使わなくなった跳び箱や、大量のサッカーボールが詰まった籠に人体模型
等ボロボロになった物がそこらかしこに無造作に置かれていた。
 そんな中を、歩いていくラクビー部の連中たちは、アコーディオンカーテンで仕切られた場所につくと横並びに並ぶと部長らしき男が声を出した。
「ラクビー部レギュラー内、七名到着しました」
 しばらくするとカーテンが音を立て開き、一人の男が顔を出す。
  ―――あいつは、確か理事会の一人の神田川の爺じゃ……
 一応、生徒会に所属している康輔は目の前にいる男の事を知っていた。
 神田川 国昭、都内にいくつものホテルを持つ金持ちで、宝石の付いた指輪をつけて学園にやってきては優花姉や生徒達にセクハラをするエロ爺。
 そんな奴が何で、ラクビー部の連中なんかを……。
 「ふぉふぉ、それじゃあ、いつものように準備をしていてくれたまえ」
 物陰に隠れてこっそりと様子を伺っていた俺に気づきもしない神田川はそういうと 懐から取り出した瓶を開けその中から出した錠剤を一人一人に渡していく。
 男達は、それを受け取ると錠剤を持った掌を口に付け飲み込みとジャージを脱ぎ下半身を露出し立ち尽くしている。
、――――なんじゃこりゃ
 思わず、目をふさぎたくなる光景を我慢しながら見つめていると、奥から神田川が現れた。
 「さあ、入っていおいでお姫様がお待ちかねじゃぞ」
 そういうと、男達は一人ずつ部屋の中へ入っていく。
 ―――全員入ったか。
 男達が入ったのを確認すると物音を立てずに、こっそりとアコーディオンカーテンに近づき中を覗く
「えっ!」
「……ああっ、あっ……あああっ」
 中にいたのは、競泳水着姿の彩花姉が後ろから神田川に抱きしめられ股間を弄られている姿だった。
「彩花姉―」
「誰じゃ」
 おもわず声を出してしまったオレは、慌てて口をふさ俺の元へ、ドタドタと複数の足音が迫ってくる。

 「くっそー離せ!離せよ!」
 「ふぉふぉふぉ!でかした、でかしたの」
 下半身素っ裸のラクビー部員に床に組み敷かれた俺の元に近寄り視線を下ろす神田川の爺。
 「おや、おまえさんは神薙の弟君じゃないか」
 「くそ、お前ら早く俺と彩花ねぇを解放しやがれ」
 その時、俺は気づかなかった男達の下でジタバタと抵抗する俺を見ている神田川の口元が歪んでいくのを。

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