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13.電話とウソ

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作者:ブルー

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 昼に好雄から電話がかかってきた。
「よお、好雄か」
「お前、何してるんだ」
「なにって、マンガ読んでたけど」
「そんなのんきなことしてて大丈夫か。さっきショッピング街で詩織ちゃんを見かけたぞ」
「詩織なら今日は予備校の体験授業に行ってるはずだぞ」
「疑うならこいつを見ろよ」
 好雄から写メが送られてきた。
 そこにはオレンジのシャツにデニムのジャケットをはおり、黄土色のキュロットスカート姿の詩織が写っていた。花柄のポーチを持って、車の助手席に乗ろうとしていた。耳にイヤリングして、唇に薄いピンクのリップを塗っているのが目についた。学校だとまず見られない。
「この車、ヤリチンの車だろ」
 好雄に言われるまでもない。見覚えのある車体に頭から血の気が引く気がした。
「ほんとに何も聞いてないのか?」
「ああ」
「詩織ちゃんばっちりおしゃれしてるじゃん。どう見てもデートだろ」
「とにかく詩織に電話してみる」
 好雄との電話を切ると詩織の携帯にかけ直した。
 でも、一向に繋がらない。
 そのうち携帯の電源が入っていないか電波の届かない場所にいますとメッセージが流れた。
 俺はあきらめずにLINEを送った。
 しばらくして携帯が鳴った。
 詩織からだった。
「もしもし、詩織」
「公人。電話くれた?」
「いまどこにいるんだ」
「いったでしょ、予備校よ」
 まるで俺に「忘れたの?」とでも聞き返すような口調だった。
「……1人なのか? 誰か横に居るんじゃないのか」
 思い切って核心を突いた。
「その……A子がいるの」
「A子?」
「中学で同じだったでしょ。覚えてる? 偶然予備校で一緒になったの」
 声のトーンは普通に聞こえた。
 俺は自分を落ち着かせるように「何度も携帯鳴らしたけど出なかったろ」と追求した。
「授業中に出れるわけないでしょ」
「A子にかわってくれよ。俺もひさしぶりに話してみたいからさ」
「えっ、A子? 声の調子が悪くて電話に出られないみたい。風邪かしら」
 急に詩織の声が怪しくなった。
「ちょ、ちょっと……ダメです、いま電話中っ」
「どうしたんだ詩織?」
「なんでもないの。隣でA子がふざけてて」
 通話口を手で押さえるような雑音がした。
 ウソがバレバレだ。そんなに先輩といることを俺に隠したいのかと思った。
「ごめんなんさい。授業がはじまるから切るわね」
「おい、何時に帰ってこれるんだ?」
「えっと……たぶん夕方になるかしら……家に帰ったらまた連絡するわね」
「詩織っ?」
 名前を呼んでも返事はなかった。

 10分ほどしてメールが届いた。
 メールには、【A子に撮ってもらったの】という短いメッセージと一緒に、駅前の〇×予備校をバックに詩織が写った写メが添付されていた。好雄が送ってくれた写メとまったく同じ服装をしていた。
(まるでアリバイメールみたいだな)
 詩織に対する不信感はますます強くなった。この写メだってヤリチンが撮ったに決まっていると思った。
 視線の先にヤリチンがいるかと思うと、居ても立ってもいられなくなる。
(頼むから携帯に出てくれよ。普通にデートしてるだけなんだよな??)
 それならそうと素直に教えてほしかった。
 俺はLINE【いまどこなんだ?】とメッセージを送った。
 でも、いつまでたっても返事はなかった。
 俺はイライラして何度もLINEをチェックした。
 唐突に携帯が鳴った。俺は慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、詩織」
「LINE送ったでしょ?」
「あのさ……いまどうしてる?」
 その質問をするのにもかなりエネルギーを使った。
「授業が終わってA子とカフェで休んでたところよ」
「どこのカフェだ? いますぐに詩織に聞きたいことがあってさ」
「……」
 急に詩織が黙った。俺はもしかしてほんとはカフェじゃないんじゃないかと思った。カフェにしては静かだし、なんとなく詩織の声もいいわけっぽく聞こえる。
「ごめんなさい。まだ寄るところがあって帰るのが遅くなりそうなの」
「遅くなるって夕方には帰れるっていってただろ」
「そうなんだけど、ちょっと急用が。家には自分で連絡するわね」
「おい、詩織」
 一方的に通話は切れていた。
 打つ手もなくただ時間が過ぎるのを待っているとメールが届いた。
 てっきり詩織からだと思ったら知らないアドレスだった。
 メールには動画ファイルが添付されていた。タチの悪いウィルスを警戒しつつも再生しないわけにはいかなかった。
 画面にスマホで撮影したと思われる室内が映った。
 淡いピンク色のムードランプと橙色の壁に囲まれた内装。部屋の中央にはスイッチ類が並んだ大きなベッドがあり、2つのクッションが意味深に置かれていた。他にはテレビとソファーとティッシュ、小さな冷蔵庫とエアコンがあって窓がない。
「なんだここは?? どことなくラブホテルっぽいような」
 なんとなくそう思った。好雄が貸してくれるAVでよく見る。
 画面はソファーをズームアップする。見覚えのあるデニムのジャケットと黄土色のキュロット、オレンジのシャツがあった。どれも詩織が着ていた服だ。その横にはお揃いのショーツとブラジャーがあった。色は白で、どれもいまさっき脱いだみたいに置かれていた。
 気配を感じたみたいにカメラが横に動いた。
 水の流れる音が聞こえる。扉があって壁がすりガラスになっていた。
 気持ち良さそうにシャワーを浴びている女の子が中世のステンドグラス状に写っていた。特徴的な髪色といい背格好といいほぼ詩織に間違いない。
(なにのんきにシャワーを浴びてるんだよ。どこかわかってるのか)
 悪夢を突きつけられた気がした。さっきの電話もラブホテルからしていたと考えれば辻褄が合う。
 シャワーの音が止まりすりガラスのシルエットが動いた。おそらく体を拭いている。
 ドアが開いて、体をバスタオルで隠した女の子が出てきた。
「先輩、なに撮ってるんですか?」
 しとやかな赤い髪、耳慣れた澄んだ声。
 詩織だ。詩織本人だ。愛らしい瞳を揺らして、不思議そうにこちらを見ていた。トレードマークのヘアバンドに、シャワーでわずかに濡れた髪。バスタオルの結び目を気にするように片手で押さえている。
 真っ暗闇の道でいきなり車のヘッドライトに照らされたような衝撃があった。
「早いじゃん」
「今日はあんまり時間がないし」
「ラブホに来るのはひさびさだろ」
「知らない。それよりスマホで撮らないでください」
 詩織が画面に手を伸ばして奪おうとした。
「残念でしたァ」
「顔は写さないで」
「へへへっ、バッチリうつってまーす」
「もう」
 詩織がちょっとムッとした顔をする。といっても本気で怒っているのではなくよくするふりだ。
「ここんとこ会わなかった仕返しだぜ」
「そんなこといわれても勉強とか部活が忙しいし」
「ほんとか。他の男と遊んでただろ」
「ごかいです」
「あいつもしつこいよな。何回も電話してきて。いまごろ心配してるぜ」
「公人は私が予備校にいってると思ってるから」
「また騙したわけだ。藤崎も悪い女だな」
「べつにそういうわけじゃ」
「時間ないんだろ。バスタオル取れよ」
「えー、どうしようっかなー」
 口ではそういいながら詩織はハラリとバスタオルを外した。
 笑顔で生まれたままの姿をさらす。瑞々しい肌がしっとりと濡れていた。
(男の前であっさり裸になって恥ずかしくないのかよ。先輩が相手だと別人みたいに素直だな)
 照れくさそうにかんでいた。右肩のところに片手をやって体をやや横に傾ける。詩織が親しい友人に話しかけるときに良くするポーズだ。
「ヒョー、いつ見てもビンビンにそそられるー」
「やだ。先輩は私の裸を何回も見てるじゃないですか」
「さすが高校のアイドル様だよな」
「見つめられると困るわ」
「隠すなよ」
 画面の下から浅黒い色をした筋肉質な腕が伸びて、ピンク色をした乳首を指で弾いた。
 それだけでおっぱいが弾むように揺れる。
「あんっ!」
「へへっ、エロイ声」
「指で弾かれたら痛いわ」
「ウソつけ。やらしい乳首しやがって、反応もやらしくなってきたな」
「先輩のせいですよ。……こんなのじゃなかったのに」
「ぶりっ子ぶんな。家オナニーしまくりなんだろ」
「ちがうわっ、それは先輩が」
「渡したピンクローター使ったか。見ててやるからここでしてみろよ。上手く出来たらクンニしてやるぜ」
「せっかくシャワーを浴びたのに」
「してほしくないのか? 尻の穴までベロンベロンに舐めて欲しいだろ」
 詩織がため息をついた。無言でベッドに歩く。
 小気味に揺れるヒップラインの後ろ姿が哀愁を帯びていて同い年の女子とは思えないほどセクシーに映る。
 悲しげな表情でベッドの端に座り、やや控え気味に両脚を開いた。左手を胸に右手の指先を股間にあてがう。早くも詩織のアソコがわずかに濡れているのが見えた。
「へへへ、ビチョビチョになるまで派手にマンズリしろよ」
「はずかしいです、先輩」
「いいから手を動かせよ。今日こそ藤崎の処女マンにぶち込んで、俺の女にしてやるぜぇ」
「あん、それだけは許してください。せめて口で。他のことならなんでもしますから」
「おしゃぶりはしても処女は卒業するまで守りたいってか。まるで処女ビッチじゃん」
「ひどい」
「速攻襲ってやってもいいんだぜ。どうせ邪魔な奴はいないしな」
「……おねがい。脅かさないで」
 怯えた様子でこちらを見つめる。左手で片乳房を持ち上げるように揺さぶり、右手がゆっくりと割れ目をいじりはじめた。グチュリと音がする。この間見た盗撮映像の再現だ。
 うつむき加減で、「ンッ」とわずかに声を漏らす、詩織。
 俺は呆然として言葉も出ない。
(どうしてそんな奴のいうことを聞くんだ。いつも俺にしてるみたいに本気で怒れよ!)
 詩織が膝をさらに開いた。股間に添えられた指使いにだんだんと熱がこもってきた。乳房を揉む手も思いっきり掴んで乳首を夢中になっていじりだす。
「ああん、気持ちいいっ。私、感じちゃうわ、先輩っ!」
 涙目になった詩織が切なげな息づかいで、スマホのスピーカー越しでもはっきりわかる声でそう叫んだ。
 そこで動画は終わっていた。

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