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2.こんな友人はいやだ

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「こんな藤崎詩織はいやだ」を発売中(note:500円)

作者:ブルー

 あの一件以来、詩織がやさしくなった気がする。
 よく下校するようになったし、授業でわからなかったところも教えてくれる。
 教室で他の女子と話してると、どこからともなくやってきてまるで彼女みたいに存在をアピールしている。たまに俺の脇腹を肘でつく。
 このあいだ詩織と遊園地に行った。メリーゴーラウンド・観覧車・ジェットコースターと、子供みたいにはしゃいでいた。来週はボウリング場に行く予定がある。
 このままいけば幼馴染の関係からステップアップできそうな気がしてきた。

 放課後の教室。
 帰宅するクラスメイトを見送る詩織の姿があった。
 みんな「ばいばーい」や「またね」と声をかけている。
 机の上には学生鞄が置いてある。
「おまたせ」
 下校の準備をして詩織のところにいった。
「帰りに本屋に行こうぜ。参考書を探しに行きたいってたろ」
「そうしたいところなんだけど……好雄くんに頼みごとをされてて」
「へー、どんな」
「写真コンテストのモデルになってくれっておねがいされてるの。グラビア雑誌に応募するみたい」
「あいつ、写真が生きがいみたいなところがあるからな。被写体が詩織なら賞は確実だろ」
「うん――」
「浮かない顔だな。なにか問題でもあるのか?」
「カメラマンが好雄くんでしょ」
 結局のところ、そこが一番引っかかっているのだろう。
 好雄はクラスのお調子者だ。
 オレンジ色の髪に軟弱な顔つきをしていて、勉強はさっぱりだが情報ツウで女子のことならなんでも知っている。
 悪いヤツではないのだが、とにかく口が軽くてノリがいい。暇さえあればスマホで女子を隠し撮りしている。
 そのため女子ウケはかんばしくない。
「好雄くんって、女の子をいやらしい目で見ている気がするわ」
 当たってると思ったけど口には出さなかった。
 好雄は隠し撮りした女子の写真を、裏で男子生徒に売りさばいて荒稼ぎをしている。
 1番人気は詩織なのはいうまでもない。レアなスクール水着の写真はプレミア価格で取引されているほどだ。 

「ったく、ちょっとテストが悪かったぐらいで職員室に呼び出してよ」
 頭をかきながら好雄が教室にもどってきた。
 俺は好雄を呼び止めた。
「おう、なんか用事か」
「詩織から聞いたぞ」
「へへへっ、話が早い。おまえからも詩織ちゃんを説得してくれよ」
「撮影って今日なのか?」
「そうだよ。レンタルスタジオを予約してあるからな」
「自分の趣味になると仕事が早いな。掃除だとやる気がないくせに」
「思ったがイチジクっていうだろ」
「イチジクじゃなくて吉日だろ」
「へー、勉強勉強。詩織ちゃん、準備できた?」
 好雄はすでに撮影するつもりでいるみたいだ。
 なにからなにまで自分の中心で物事を進める。
「どんな撮影があるのかわからないし」
「制服姿を撮るだけだよ。高校生活がテーマだからね。軽いサービスショットもありでさ」
「えっ、サービスショット」
 詩織が心配そうな顔をする。
 俺の知るかぎり、テレビも教養番組をたまに見るぐらいで芸能界に興味はないはずだ。
 グラビアに対してネガティブなイメージがあったとしても不思議はない。
「校則違反になるようなことは絶対にダメだわ」
「そこまで過激じゃないよ。それに学校にバレなければ平気だよ」
「そういう問題じゃ」
「インパクトがあったほうが賞を狙いやすいからね。詩織ちゃんのビジュアルなら完璧」

「こっちに来いよ」
 俺は好雄の腕を引っ張って教室の後ろに連れてった。
「いてて、邪魔すんなよ」
「だいたいどういう写真コンテストだよ」
「雑誌の『制服美少女を探せ!』ってやつ」
「ほんとか? アダルトな雑誌じゃないだろうな」
「へへへ、年齢層はすこし高めかもな」
 悪びれた様子もなく白状した。
「やっぱりな。詩織のエロい写真を撮るつもりだろ」
「問題あるか? べつにおまえは詩織ちゃんの彼氏でも保護者でもないだろ」
 それをいわれると痛い。
 幼馴染といっても、クラスメイトに毛が生えたようなもんだ。
 そういう意味では好雄と大差ない。
「おまえも見たいだろ、あこがれの詩織ちゃんのセクシーショット」
「それは……興味がないといえばウソになるけど」
「同好の士として邪魔するなよ。それとも詩織ちゃんのブルマ写真でシコってるのをバラされてもいいのか」
「ど、ど、ど、どういう意味だ!!」
 俺だけじゃない。みんな購入してると思う。
 詩織の制服姿・体操服姿・スクール水着の写真は、きらめき高校の男子生徒にとって三種の神器だ。
「協力してくれれば、撮ったブツを特別にわけてやるぜ」
 好雄は白い歯を見せてニカっと笑った。
 こういうヤツだ。目的のためなら平気でウソをつくし、友人を利用する。
 アイドルオタクの女の子好きで、コンテストを口実に詩織の性的な写真を撮りたいだけだ。

「二人でなにをコソコソ話してるの?」
 詩織がすぐ近くにいた。
 もしかして好雄との会話を聞かれたんじゃないかとあせった。
「コンテストでグランプリを獲ったら、学校の宣伝にもなるって話だよなあ」
 俺は「お、おう……」と話しを合わせた。
「学校の宣伝?」
「入学希望者も増えるよ。ここは学校のためにさ」
 詩織はきらめき高校を心から愛している。
 学校のためだといえば断りづらい。
 勉強はできないくせにこういう悪知恵だけはほんと働く。
「ねえ、なおと、どうしたらいいと思う?」
 詩織は判断に迷っている様子だ。
 俺がダメだっていえば断るつもりだろう。
 好雄が俺の脇を肘で突っつく。
「詩織のグラビア写真を見たいかな。詩織もきらめき高校の知名度があがったらうれしいだろ」
「それはそうだけど……撮影中は好雄くんとふたりきりになるのよ? このまえみたいになるかも」
 詩織の言葉にこのあいだの記憶がよみがえった。
 密室に同級生の男子とふたりきりというだけでも危ないのにグラビア撮影は不安すぎる。
 しかも、相手は好雄だ。なにをするかわかったもんじゃない。
「俺もついていくよ。それならいいだろ」
 好雄に条件を出した。
 いざというときは俺が止めに入って撮影を中止すればいい。
「チェッ。しょうがないな」と、残念そうな好雄。
「なおとがいてくれるのなら私も安心だわ」
 詩織はホッとした様子で答えた。
「そうと決まったら時間もないし移動しようぜ」
「うん……自信はないけど」
「詩織ちゃんは俺のいうとおりにしてくれればいいからさ。まってて、荷物を取ってくる」
(いつもなら即答で断りそうなのに)
 好雄が荷物を取ってくる間、頭の片隅で引っかかっていた。
 あの日の帰り道で詩織が見せた、清楚な中に潜んだ悪戯っぽい笑み。
 勘のいい詩織が好雄の魂胆を見抜けないことがあるだろうか??
 ・
 ・
 ・

 学校前のバス停でバスに乗り、3人で隣町の繁華街へと向かう。
 好雄につれられて来たのはごく普通の雑居ビルだった。
 三階で受付を済ませる。
 レンタルスタジオの室内は教室の半分ほどの広さで、奥側の壁には背景用の巨大な白い布がかけてあり、そこを照らすように撮影用の照明が設置してある。あと小道具としてシングルサイズのベッドが置かれていた。
「荷物はその辺に置いて。詩織ちゃんはそこに立ってみてよ」
 機材を設置して、好雄は愛用の一眼レフカメラを覗き込む。
 制服姿の詩織にピントを合わせた。
「立ち姿が画になるなあ。表情がすこし硬いかな。いつも教室でしてるみたいに」
 前髪に手をあてて、詩織はやさしくほほ笑む。
 俺が見ても、緊張しているのがつたわる。
 いきなり笑えっていわれてもむずかしいだろう。
「左腕は腰の後ろで横にして、右手を口元にあてる感じで」
「こう」
「左足の膝を軽く曲げて。体を斜めに目線はカメラだよ」
「撮影っていそがしいのね。立ってるだけかと思ってた」
「だんだんモデルらしくなってきた」
 はじめはごく普通の撮影だった。
 好雄はとても手際がいい。テキパキと指示をして、休んでいるときがないんじゃっていうぐらい詩織のことを褒め続ける。
 感心した。
 将来、プロのカメラマンになれるかもしれない。グラビア専門だけど。
「いいね、その表情。本物のアイドルみたい」
「好雄くんって撮るのがうまいのね。学校とは別人みたい」
「被写体がいいからね、今日はとくに。撮っててすごく萌える」
「またそうやって、私をおだてようとする」
「マジマジ。詩織ちゃんは最高のモデルだよ。顔もイケてるしスタイルも抜群だし、その辺の女子とはレベルがダンチ」
「もう、また」
 詩織の表情がリラックスしてきた。
 胸のリボンに指先でふれて、自然にはにかんだりしている。
 以前、好雄がいっていた。女子は本質的に写真を撮られることが好きらしい。
 撮られるということは注目を浴びるってことで、存在価値が認められるってことだ。コツはお姫様のように褒めておだててはやし立てて、たえず自尊心をくすぐることらしい。
 詩織もモデル気分に浸ってきているようだ。
 表情がアイドルっぽくなってきたというか、男子の視線を意識している女子っぽさが増してきた気がする。
「片手で髪をかきあげてみて。すごくいいよ」
 好雄が詩織との距離を詰める。
 さりげなくカメラの位置が下がった。
「どこを撮ってるのよ!」
 気づいた詩織がスカートを手で押さえた。
「どうしたの?」
「スカートの中が見えちゃう」
「いいじゃん、それぐらい」
「ダメに決まってるでしょ」
 俺は「詩織がこまっているだろ」と好雄に注意した。
「部外者はひっこんでろよ。ここは撮影の現場だぞ」
「好雄のくせにえらそうに」
 学校のときとは打って変わって態度がでかい。
 プロのカメラマンのつもりかよ。
「これぐらいで騒いでたらモデルは務まらないよ。学校のため」と、好雄は撮影の続行を訴える。
「う、うん……わかったわ」
 責任感の強い詩織は納得した様子だった。
(詩織のまじめな性格に付け込んでローアングルで撮影しやがって)
 好雄の身勝手なふるまいにすごく腹が立つのに、戸惑いの表情でカメラの前でポーズをしている詩織を見ているとなぜかドキドキしてしまった。
「軽くでいいから制服のスカートをたくしあげてみてよ」
「え……」
 詩織の動きが止まった。
「はじめにいってたよね、サービスショットありだって」
「でも……」
「ちょっとエッチなぐらいなほうが詩織ちゃんの魅力がアップするよ。審査員の受けも良くなるからさ」
「ほんとうにするの?」
「みんなしてくれるよ。夕子なら楽勝」
 好雄の作戦勝ちだ。
 ほかの女子の名前を出して、詩織の対抗心をあおった。
 詩織はスカートの裾を握りしめるとスルスルとたくしあげた。
 ピチピチとした色白の太腿があらわになる。
(詩織、サービスしすぎだろ!!)
 俺も思わず生唾を飲み込んだ。
 もう少しで下着が見えそうだ。
 好雄の場所からだと見えているだろう。
 詩織の顔が赤くなる。
「色っぽい!! これぞシャッターチャンス!! 学校のアイドル、詩織ちゃんのパンチラショットだ!!」
 好雄は興奮気味にシャッターを連射した。
「ここまでやったんだし、もっとサービスしてよ」
「これ以上は見えちゃう」
「なにが見えるのかな」
「もう、好雄くんのエッチ」
 詩織がもうおしまいといった感じでスカートを下げた。
 でも、本気で怒っている感じはない。
 詩織のはじらいに染まった表情を見ればわかる。
 むしろぶりっ子っぽく演じて好雄を挑発している??
「へへへ、いいじゃんいいじゃん、その顔!! ほら、勇気をだして」
「だって……」
 詩織がチラリと俺を見た。
 嫌な空気を感じる。
 好雄が撮影を一旦中止する。
 こちらを振り向いて「悪いけど、スタジオから出ててくれるか」といってきた。
「話がちがうだろ」
 俺は猛抗議した。
「空気を読めないのか? 撮影の邪魔なんだよ。詩織ちゃんの気が散るだろ」
「俺がいたほうがいいよな? 詩織」
「なおとは外でまってて。私、もうすこし撮影を頑張ってみるわ」
 カウンターパンチを食らった感じだ。
 まさか詩織にいわれるとは思わなかった。
「好雄くんは友だちでしょ。なおとは信じられないの?」
 絶対わざとだ。
 ようやく詩織の意図が読めた気がした。
 このまえみたいに俺の反応を楽しんでいる。
「多数決で決定な。とっとと出た出た」
「おい、押すな! まだ詩織と話が!」
 好雄によってスタジオから追い出されてしまった。
 バタンとドアが閉まった。

「開けろ、好雄!」
 ドアを叩いた。
 中からの返事はなかった。
「部屋の鍵までかけやがった」
 問答無用で締め出されて俺はイライラとした。
 廊下を行ったり来たりする。
 別の入り口がないか探してみた。
(……中を覗けそうな窓もないし。どうしよう)
 詩織に連絡を入れてみた。
 応答はなかった。スマホの電源をオフにしているかマナーモードに設定しているみたいだ。
 完全にふたりきりの密室だ。
 こうしているあいだにも、好雄の指示で詩織がポーズを取っているかと思うと焦燥感がつのる。

 ・
 ・
 ・
 ながい、ながすぎる!!
 そのうち終わるだろうと思っていたが、写真を撮影するだけにしては時間がかかりすぎだ。
 ドアに耳をくっつけてみた。
 中からほんのわずかだが声が聞こえた。
「……だめよ……」
「ハアハア、目線はカメラだよ。」
「……こんな写真、はずかしい」
「いいじゃん……あいつは見てないんだし……俺と詩織ちゃんの秘密」
「……やめてぇ……おねがい……ぁぁ」
 ところどころ聞こえないが、詩織の声がとても切ない。
 それに好雄の息づかいが荒い気がする。
 俺はドアノブをガチャガチャと回した。
「詩織、なにかあったのか?」とドアの向こう側に声をかけた。
 急に部屋の中がシーンとなった。
 自分の唾を飲み込む音が聞こえるぐらいに静かになる。
 中から詩織の声で「心配しないで。なんでもないの」と聞こえた。
「とりあえずここを開けてくれ」
「ダメよ……まだ撮影中なの」
「本当に撮影してるだけなのか? 心配だよ」
 俺の質問に短い沈黙があった。
「……あん……好雄くんがふざけてて……足の裏をくすぐって……はあはあ……こんなのはじめて」
 足の裏をくすぐられたわりにはすごく色っぽい声だ。
 まるで必死に我慢しているように聞こえる。
 撮影で息を切らすようなことがあるか?? だいたい足の裏をくすぐるってどんな体勢だ?? 立っていると無理だろ。
「詩織ちゃんの……が濡れて……」
 今度は好雄の声だ。
「ああ……体がおかしくなる」
「俺にまかせて。我慢しなくていいからね」
「あぁーー、だめ、おねがいやめてぇ」
「へへへ、最高の一枚になるぞ」
「はぁはぁ……好雄くんのいじわる」
 絶対におかしい。
 俺はドアにへばりついた姿勢で、ハアハアと興奮した。
 控え目だが詩織の喘ぎ声だ。
 モヤモヤと頭に浮かんだのは、ベッドに寝かされて胸や大事な場所を好雄に悪戯されている詩織の姿だ。
 もしかするとパンチラどころかヌードまで撮られているかもしれない。
 考えれば考えるほど頭が変になりそうだ。
 胸が苦しくなって足が震える。
 またあの感覚がぶり返してきた。
 

 しばらくするとドアが開いて、好雄に連れられて詩織が出てきた。
「詩織、だいじょうぶか?」
 詩織はぼーっとした様子で遠くを見つめていた。
 風呂上がりのように熱っぽい。
「ごめんなさい。なんだかとっても疲れちゃって……」
 おくれて返事をした。
 まだ足元がおぼつかない感じだ。
「好雄に変なことをされなかったか?」
「……う、うん……なにもなかったわ。普通に写真を撮ってもらっただけよ」
「そのわりに時間がかかってたけど」
「なおとの気のせいよ」
「もしかして、好雄に体を触られたんじゃないのか?」
「えっ……」
 詩織が口ごもる。愛くるしい視線が一瞬揺れた。
 俺が予想していた中でもかなり悪い部類の反応だ。
 予想が的中したのを直感した。
「そんなことあるわけないよね、詩織ちゃん」
 隣の好雄が口を挟む。
 余裕たっぷりの態度が癪にさわる。
 ニヤニヤとしてまるで見下されているような気がした。
「う、うん……」
「詩織ちゃんのおかげでお宝ショットがたくさん撮れた。あとでおまえにも見せてやるよ」
 そういうと好雄は、詩織の制服の胸にタッチした。
 俺の見てる目の前でモミモミと揉んだ。
「なっ!!!!」
 俺はおもわず目を疑った。
 強烈な平手打ちの一発でもくわえるはずの詩織が、怒るどころか顔を赤くしてモジモジしている。
 制服の胸が淫らに歪む。
「だめよ、好雄くん……なおとが見てる」
「へへへっ。ごめんごめん」
 詩織の注意を受けて、好雄がヘラヘラと手を放した。
 あきらかに撮影前とは二人とも態度がちがった。
 ・
 ・
 ・

 スタジオからの帰りに近所の公園に寄った。
 子供のころ、詩織とよく遊んだ思い出の場所だ。
 すでに空は茜色に染まりはじめていた。
 ベンチに並んですわった。
 俺がお願いだから事実を教えてくれと懇願すると、詩織はスタジオで起きたことをポツリポツリと話しはじめた。
「なおとが出ていってすぐに、好雄くんが制服のスカートを大きくめくれっていってきたわ」
 俺はドクンと心臓が跳ねた。
「好雄のいうとおりにしたの?」
 俺の質問に詩織は静かにうなずいた。
「ど、どのぐらいの高さまでめくったの?」
 緊張で口がうまく回らない。
 先を聞くのが怖い気がした。
「お腹の位置ぐらい」
「そんなに……」
「好雄くんはすごく喜んで……。下着が見えてる写真をいっぱい撮られたわ」
「そのつぎは?」
「……セーラー服を首のところまでめくって」
「ブラジャーも見られたの?」
 詩織はポウッと頬を染めた。
 たぶん思い出してはずかしさがこみあげてきているのだろう。
「好雄くんにきれいだねとか、かわいいよっていわれ続けて、体がフワフワしててよくわからなかったの。そうしたら急に好雄くんが近づいてきて……」
 詩織は言葉を選ぶように慎重に話している。
 そのときの感情を思い出したみたいに愛くるしい瞳が潤んでいた。
「うしろから私の胸にさわったわ」
 俺は頭が真っ白になった。
 いままでで一番情けない顔をしていたと思う。
 片思いの女子の胸にさわるのを友人に先をこされた悔しさ。
 足元がガラガラと崩れていくような気がした。
「ブラの上から? まさか直接じゃないよな??」
「あたりまえでしょ」
 とりあえずホッとした。
 そのときの情景が目に浮かぶ。
 カメラの前に立って、背後からバストを揉みしだかれる詩織の姿が。
 ブラジャーの肩ひもがたわむぐらい力強く揉まれたはずだ。
 すぐ視線の先にある、黄色いリボンに隠れた制服の胸を見た。
 いますぐ死ぬほど揉みたい。
 悔しくてしかたないのにドクンと興奮する。
「て、抵抗はしなかったの?」
「……このほうが写真を撮るときに魅力的だからって……おかしいなって思ってたけど、私も頭がこんがらがってて……」
「ハアハア」
「なおと、興奮してる? 私が好雄くんに悪戯された話を聞いて」
「好雄のヤツ、ぶん殴ってやる」
「いいのよ、むりしなくても。なおとも共犯だったんでしょ」
 詩織はクスっと笑った。
 はじめからすべてお見通しだったわけだ。
「俺は説得するのに協力しただけで」
「いいわけばっかり。最低よ。好雄くんと変わらないわ」
「ごめん。でも、あいつの暴走は本当に」
「ふ~ん。聞きたい? そのあと私がどうなったか」
 詩織は口元に手をあてて、俺の反応をうかがっている。
 俺が苦しめば苦しむほど、詩織の中で意地の悪い部分が目覚めている気がする。
 この感じ、子供のころにもあった。
「き、聞きたい」
「かんちがいしないでね。最初はモデルを断るつもりだったのよ。まさか、あんなことまでされるって思わなかったし」
「ハアハア……あんなこと?」
「好雄くんの指示で、ベッドに仰向けになって……大事なところを手で。もちろん下着の上からだけど」
「ぐあ、ハア、ハアア」
 ショックで思わず変な声が出た。
「私もびっくりしちゃった。いきなりだったし逃げる暇もなくて……思わず大きな声が出たわ」
 詩織がはずかしそうに告白した。
 下着の上からってどのぐらいだろう??
 肝心な部分がブラックボックスになっている。
 指でなぞる程度なのか、繰り返し上下に擦られて一番敏感な場所に刺激を受けたのか。
 これでドア越しの声と繋がった。
「私も何度もやめてってお願いしたのよ」
「もしかして、その姿も写真に撮られたのか」
 詩織の返事はなかった。
 無言でうつむいて頬を赤く染めていた。
 好雄のことだ、無防備な詩織の写真を撮りまくったのだろう。
 スタジオから出てきたときに疲れ切っていたわけだ。
 詩織はいわないが、きっと下着を濡らしたはずだ。
「私、すごくエッチな顔してたかも。詩織ちゃんって奥手なのに体はすごく早熟だねって、好雄くんにいわれたわ」
「ハアハア」
「ねえ、私のこと嫌いになった? イメージとちがうって」
「悪いのは好雄だ。詩織はまったく悪くない」
「よかった。あと、心配しないでね……はじめては守ったわ」
 詩織もすべてを話して胸のつかえが取れた様子だ。
 詩織はウソをついていない。
 そうだと信じたい。
「これからは好雄に話しかけられても無視したほうがいいよ。俺からもつたえとく」
「教室でも?」
「教室でも」
「なおとのいうとおりにするわ」
 詩織はなんだかうれしそうだ。
 表情が明るくなった。
「家に帰るまで腕を組んでいい? なおとに心配かけたおわび」
 おたがいの家までの道を歩く。
 まるで恋人になったみたいな気分だ。
 俺の肘に詩織の胸のやわらかい感触が当たっていた。

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