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作:ブルー連絡
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2018/10/15
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 金曜日の夕方――。
 サラリーマン風の男は高校近くの通学路で、ある少女が通りかかるのをじっと待ち続けていた。
「南ちゃん」
 男が声をかけると、学校帰りの浅倉南が足を止めて振り返った。
 フワリとしたセミロングの髪が揺れ、つぶらな瞳が注がれる。南は明青学園3年生で、新体操の大会で優勝して以来ちょっとし有名人だ。ちょうど周りに他の生徒の姿はなかった。
「はい? どなたですか?」
「おじさんは南ちゃんのファンだよ」
「もしかして南を見にわざわざ学校まで?」
「どうしても噂の南ちゃんに一目会いたくてね。先月号のヤングサ○デー見たよ」
「あー、あれ」と、南は思い出したように返事をする。
「巻頭グラビア、すごく評判だよね。とくに体操服のカットがお気に入りだよ。若さと健康的でグッときた」
「校長先生が学校の宣伝になるからって勝手に仕事を受けちゃってて。だから南はしょうがなく。それに南はカメラマンさんに言われたとおりにしてただけだし」
「すごいよ。それであれだけ魅力的なんだからさ。さすが新体操界のニューヒロインって呼ばれるだけある」
「おおげさだなぁ。ちょっと照れくさいかも」
「実物の方が写真より細くて女学生って感じだ」
「そんなふうに言われたのはじめてかも」
「制服姿のおかげかな」
「あー、なるほどなるほど」
「じつはおじさん趣味で写真を撮ってるんだけどさ、ぜひ南ちゃんにモデルになってほしいんだよ」
「えっ、南が?」
「雑誌で見かけてから、どうしても南ちゃんを自分で撮りたいと思ってね。ほとんど一目惚れだよ」
「どうしよう、南……今日は部活は休みだけど……」
 口もとに手を当てて南は男の提案に思い悩む。
「簡単だしすぐ終わるよ」
「困ったなぁ。帰ってお店の手伝いをしないと、南」
「そこをなんとか。モデル代も払うからさ」
「モデル代?」
「南ちゃんなら特別に5万円」
「そんなに?? ……でも、ちょっと怪しいかも」
「心配しなくても普通の写真だよ、普通の。制服姿とかレオタードとか、雑誌のグラビアと一緒一緒」
「ほんとかなぁ。見た目は悪そうな人には見えないけど」
 疑うように男を見る。普段であれば相手にしない南だが思わぬ金額に心が動いていた。
「いままでたくさん女の子を撮影してきたけどみんな喜んでくれたよ」
「へぇー。写真撮るのうまいんだ」
「時間さえあればレンズばっかり覗いてるからね。ほんとすぐに終わるからさ」
「うーん……」
「そうだ。お腹減ってない、南ちゃん? 終わったらレストランでご馳走してあげるよ」
「ほんと?」
「美味しいパスタのお店が近くにあるんだよ」
「パスタかぁ。じゃあ、ちょっとだけなら……」
 男の熱心な勧誘に納得した様子で南は承諾した。
「ここだと人目があるし、落ち着いて撮影できる場所に移動しようか」
 男は停めてあった車の助手席に南を乗せると、駅前にあるビジネスホテルへと走らせた。
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