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【アンケート実施中】 2018年 ノベル部門 投票
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作:ブルー連絡
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2018/07/16
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 それから毎日動画が送られてくるようになった。
 明日奈が男のモノを熱心にしゃぶっている姿や、学校帰りに雑居ビルの非常階段で壁に両手を着いて後背位でされている姿、体操着姿で巨乳を使ってパイズリをしている姿。中には見慣れたSAOのコスプレ衣装を着て男の上に跨がり、長い髪を振り乱して一心不乱に腰を振っている映像もあった。品行方正な明日奈が日に日に性に対して奔放になっていく様子が克明に記録されていた。

 ひさしぶりにALOにダイブした。
 街の広場にある噴水のところにアスナの姿があった。
 俺に気づいたアスナが笑顔で小さく手を振った。いつもの白と赤の軽装備でレイピアを腰に携えていた。はた目には以前とどこも変わりがないように見えた。
「元気にしてた?」
「うん」
「こうしてALOで会うのもひさしぶりね」
「……そうだな」
「最近、学校を休んでるから心配しちゃった」
「……」
「ダメよ、ちゃんと学校に来ないと。クラスのみんなも心配してるわよ」
「アスナは元気そうだな」
「まあね。私はいつも通り普通よ」
「へぇ……」
「ねえ、ところで相談があるんだけど」と、アスナが言いにくそうに切り出した。
 俺は嫌な予感がした。
「あのね、結婚を解消してほしいの」
「!? いきなり何を言い出すんだ、アスナ!」
「だから結婚を……」
「そんなこと、はい、そうですか、なんて言えるわけないだろ。だいたいおかしいぞ、最近のアスナは」
「ちょっと落ち着いてよ。それに結婚って言ってもゲームのシステム上の話でしょ」
「システム上って、アスナはすごく喜んでたろ」
「それは、そうなんだけど……」
「もしかして他に好きな男ができたのか」
「……ううん、そんなんじゃないの」と、アスナは右手で髪の毛を触っていた。
 そわそわとした視線が心がここにないことを物語っていた。
「ウソだ」
「ウソじゃないわよ。ほら、来年は大学受験もあるし、ALOにダイブする時間も減るでしょ」
「そのぶん学校で会えるだろ」
「……私、Aランクの私立大学に進学しようと思うの。キリトくんは東都工業大学でしょ」
「べつに大学が違っても関係ないだろ。会おうと思えばいつでもこうして会えるわけなんだし」
「それはキリトくんの都合で。私は普通の生活に戻りたいっていうか……とにかくALOでの結婚を解消して欲しいのよ。はっきり言うわね、私たちもそろそろ将来について真剣に考える年齢だと思わない?」
「考えてるさ。俺だって。だからアスナ、もう一度考え直してくれないか」
「……そう言われても。黒づくめの服ばっかり着て、剣で攻撃するときに必殺技の名前を叫ぶような人は中二病っていうか」
「はあ?」
「要するにキリトくんは子供なのよ!」
「ア、アスナ」
「私からはシステムに結婚解消のプロトコルを送信したから、あとはキリトくんが承認するだけよ」
「くっ……ほんとにもうダメなのか?」
「お願いだから同じ事を言わせないでよ。私も辛いのよ」
「……俺はアスナのために命がけで戦ってきたのに」
「全部ゲームじゃない」
「SAOはリアルだ!」
「ごめんなさい、私……」
「頼むから、あと1回俺にチャンスをくれ」
「……キリトくんなら他にいい人が見つかるわよ。リズとかシリカとか」
「俺にはアスナが必要なんだよ」
「そういわれても……いつまでもゲームばかりしてるわけにはいかないと思うの。これ、返すわね……」
 アスナが差し出した右手には、俺の贈ったエンゲージリングが握られていた。
「じゃあね、キリトくん。バイバイ」
「アスナっ!」
 俺が名前を叫んでもアスナは一度も振り返ることはなかった。
 どんどんと小さくなっていく背中を目で追っていると広場の出口のところで町人風の男と合流した。
 すぐにアイツだとわかった。
 一言二言言葉を交わした男はアスナの肩を抱いて宿屋のある通りへと二人で歩いて行った。
「クソッ! ……白昼堂々ふざけやがって!!」 
 俺は残された指輪を地面に叩きつけた。
 跳ね返った指輪は蒸発するように消滅した。
 ウィンドウが自動で開いて、『結婚を解消しますか?』という問い合わせを表示した。
 俺は『承認しない』の項目を連打した。
「……俺は負けたのか、あんなクソオヤジに。デュエルなら絶対負けない自信があるのに」
 膝を着いてうなだれた。
 力任せに地面を拳で殴った。
「おい、大丈夫か? 坊主?」
「うるさい」
 俺は声をかけてきた通行人の手を払った。
「人が心配してやってるのにやつ当たりかよ」
 男は舌打ちをしてどっかに歩いて行った。
 俺は自分がとても惨めな気がした。
 ポタポタと黒い跡が石の上に残った。
 この胸を抉るような悔しさもすべてバーチャルだと言うのか?
「うわー、あれってブラッキーじゃない。ほんとにいっつも黒づくめなんだ」
「どうして泣いてるの?」
「もしかして閃光のアスナにフラれたの?」
「ゲームでマジ泣きとかダッサー……」
「VRとリアルが完全に混同しちゃったタイプよね」
「ネトゲー中毒? あーなったらおしまいだわ」
「つーか、二つ名を持ってる時点でダサいよな」
 噴水広場に集まってきた他のプレイヤー達が好き勝手なことをしゃべっているのが聞こえた。
(こいつら……)
 かさぶたが割れて血が滲むように怒りがこみ上げてきた。
(1人で街の外も歩けないようなモブキャラのくせに……誰がこの世界を救ったと思ってるんだ)
 俺は無言で背中の両手剣に手をかけた。


 おわり
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