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2 白水着×シャワーバトル=透け乳首(ヘア)
作:kazushi連絡
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2017/12/06
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 南国の空は日本のものよりも遠く高く、鮮やかな青を湛えていた。そのただ中に浮かぶ太陽が強烈な光を地上に投げ掛けている。撮影初日に相応しい好天に、理奈は上空を見上げながら眩しそうに目を細めた。
(油断しないで気を引き締めておかないと。あいつはなにをしてくるか、解ったものじゃないんだから)
 由綺からは曖昧な言葉しか返ってこなかったが、既に青山から性的嫌がらせを受けているのは間違いない。ましてやその魔の手を由綺から遠ざけるだけでなく、自分のことも守る必要があるのだ。警戒をしておくに越したことはなかった。
 そして、その青山はといえばIV担当の上村とともに撮影のセッティングのため、スタッフに指示を送っている真っ最中だ。その指示に応じて、それまでただのホテルの中庭だったところが俄に賑やかな撮影現場に変わっていく。
 一方でその片隅では、メイクさんが由綺のメイクを整えている、一種不思議な光景があった。
(……まぁ、今の私が文句を言える立場じゃないのは解ってるんだけど。それでも、やっぱりやりきれないなって思ってしまうのよね。どうしても)
 一足先に準備を終えて、バスローブに身を包んでデッキチェアで待機中の理奈はその光景を見ながら、渋い表情を見せた。
 本来ならそれぞれ専属のメイク担当がつくところだが、今の彼女にはそれさえも望めない。だから由綺より先にメイクをしてもらったのだが、雑とは言わないまでも手抜きされていたのは、由綺のメイクの本気度を見れば察しがつく。とは言えそれ自体は最初から予想できたことなので、思うことはあってもとやかく言うつもりはない。
 問題なのはむしろメイクそのものの方向性――具体的には化粧が若干濃すぎな点にあった。一概にそれが悪いわけではないのだが、少なくとも方向性がこれまでの清楚や上品なものから離れて、妖艶や華美といった――まるで娼婦みたいな――ものに近づいているのは確かだろう。
 なによりも理奈が不本意だったのは、リボンを付けるのを認められなかったことだ。青山曰く、今回の撮影のコンセプトは『少女から大人の女への脱皮』だから今まで付けていたリボンだと少し子供っぽいし、なによりもイメージが従来のものに引きずられるから撮影に合わないのだと――そう拒絶されてしまった。
(……癪なのは、あいつの言うことが間違ってはいないってことなのよね)
 コンセプトそのものには物申したいが、それを考慮に入れなければ青山の態度は正しい。だからこそ理奈もそれに対して反対はできなかった。悔しいのは復帰に向けての第一歩を踏み出すために、初心に返る意味であの赤リボンを付けてきたのが無意味になってしまったこと。そして、髪型も括るでも纏めるでもなくストレートなままでいく理由が、合同撮影もあるのだから統一感を出すために、由綺と同じ髪型にしてほしいからだということだった。
(それって、要するに私は由綺の添え物ってことよね。ま、否定できない現状だもの、仕方ない……のかな)
 諦めにも似たため息が唇からこぼれ落ちる。
 由綺のデビュー以来、彼女と比べられるのはもう慣れっこだ。兄や冬弥のように最初から負けていることもあったけれど、それでも挫けずに頑張ってきた。けれどそれは自分が一線で戦っているプライドを持っていたからで――干されている今もそうあれる自信は、正直ない。
 それでも――彼女がアイドル緒方理奈であり続けるためには、闘う他ないのだ。
「――準備OKでーす! 由綺ちゃん、理奈ちゃん入ってください!」
 スタッフの合図に後ろ向きな思考を打ち切ると、理奈はチェアから立ち上がりバスローブを脱ぎ捨て、水着に包まれたその体を晒す。そのまま堂々とした足取りで青山たちのところに向かったところで、由綺とも合流する。
 やはり由綺も彼女と同じく、白のレオタード水着姿だった。二人とも平均的なグラビアアイドルほどに巨乳ではないので、胸の辺りはそう強調されてはいない。むしろ目を引くのはハイレグになったその股間で、その切れ込みの深さは少し動いただけで具が見えてしまうと錯覚できるほどだ。
 一線で居続けられていたなら、身に着けることもなかっただろう過激な衣装に気分が沈む。けれど、撮影が進むにつれてさらに過激な衣装も用意されるかもしれないことを考えれば、これくらいでへこたれるわけにもいかない。実際、今回にしても白水着だけでなく――
(……水着を渡された時点で予想できたけど、やっぱりそう来るわよね。ま、事前に対策済みだから問題はないはずだけど……)
 スタッフたちがシャワーのホースを準備しているのを見て、理奈は事前の予想が当たっていたことに複雑な感情を覚えてしまう。念のため準備していた対策が役に立ちそうなのは嬉しいけれど、必要な状況を作られたことは望ましくはないのだから。さらに加えるなら、対策が取れているのは理奈だけで、由綺の方はおそらくなんの準備もできていないことも気がかりだ。
 かと言って、由綺にそれを伝えるのは今更すぎる。だから、
「理奈ちゃんよろしくね」
「ああうん、お互いに頑張りましょう」
 無邪気な笑顔を向けてくる親友に、彼女はそう声を掛けることしかできなかった。
 そして肝心の撮影は――はじめの内はなんの問題もなく順調に進んでいった。そこまで過激なポーズを要求されることもなくむしろ和気藹々と――まるで普通のグラビア撮影のように。
「っと、小手調べはこんなモンでいいかな。それじゃ、アレ始めよっか」
 青山の号令でセッティングされていたホースが伸ばされ、シャワーのヘッド部分が理奈と由綺にそれぞれ手渡される。
「それじゃ、二人で水を掛け合ってもらおうかな。楽しくじゃれあってる感じだけど、でも真剣勝負もしてるってイメージで。ああ、念のためだけど。スタッフやカメラは狙わないでね。高いから故障されると困っちゃうし」戯ける青山のポーズに、笑い声が重なる。「そんなワケでお互いだけを狙うようヨロシクね。それじゃ、バトルスタート!」
 宣言と同時に反射的に身構えて、とりあえずレバーを全力で押し込んでみる理奈。そうするなりノズルから水流が一気に吹き出してしまい、その勢いに思わずヘッドを取り落としそうになるのを慌てて掴まえる。
 その間隙を突くように、程よく絞られた由綺の一撃が理奈の顔面を直撃した。
「あ、理奈ちゃんごめんなさーい」
「……やってくれるじゃない由綺。どうやら手加減はいらないみたいね」
「えっと、その。……私としては、お手柔らかによろしくしたいかな」
「問答無用。いいから黙って神の裁きを受けるがいいわ」
 怯えを見せる由綺にわざとらしく高圧的に振る舞ってみせると、理奈はそのまま由綺を追いかけ始める。悲鳴を上げながら逃げ惑う由綺だったが、それでもちゃんと反撃してくる辺りは演出をちゃんと心得ている。
 そうしてしばらく銃撃戦が繰り広げられた結果。最初の内は腹だったり脚だったりにも当たっていたから変化はなかったけれど、胸や股間付近への命中数が多くなるにつれて、水着のその部分がどんどん透けていき始める。特に顕著なのが由綺のバスト部分で、赤い先端がうっすらと浮き出てるどころか、布地が肌に貼りつき始めたせいで――理奈よりも小振りな――胸のラインも露わになりかけている。その一方で――
(ああもう、やっぱり丸見えになってるじゃないの。しかたない、私ができる限りカバーしないと)
 理奈も同じくらいに胸の部分は濡れているのに、一向になにも透けてこない。それは彼女がしていた事前対策――具体的には水着の下に付けていたヌーブラ――の賜だった。その効果の高さに内心でほくそ笑んでいると、不意に青山の大声が響き渡った。
「ちょっと待ってちょっと待って! 理奈ちゃんなにやってるの!? 水着の下なにか付けてるよね!? 誰がそんなことしろって言ったの!?」
「――ヌーブラを付けてます。指示は誰からも受けていません。私が自分の判断で付けました」
「へぇ、そっか。理奈ちゃんが自分で『勝手に』付けたわけだ。成程ね。……なんで?」
 その剣幕に周囲の誰もが動きを止めて黙りこくる中、問い詰めてくる青山の威圧的な視線を正面から受け止めると、理奈は一度唾を飲み込んでからはっきりと言葉を返す。おそらくここが分水嶺になるとわかっていたから――
「それは――『緒方理奈』にはここまでの露出は必要ないと思ったからです。確かに厳密にはヌードじゃないですけど、水着越しとはいえ乳首が透けて見えたらもうそれは脱いでるのと変わらないですよね。大人の女ということで化粧が変わったりきわどい衣装が増えるのは理解できますけど、それだって一定の線引きが必要じゃないでしょうか。少なくともここまで過激な路線は、これまで『緒方理奈』を支えてくれたファンに対する裏切りになると思うので、乳首を見せるのはNGにさせてください。お願いします」
 頭を下げて抱えている思いをストレートに吐き出す。もちろん、これが簡単に受け入れられると思うほど甘くはないつもりだが――それでも楔の一つくらいは埋め込めたらと思って。
 けれど、
「ふうん、過激な路線は『緒方理奈』のファンに対する裏切りだから乳首を見せるのはNG?だから指示もないのにヌーブラを勝手に付けた、と。――甘えてるんじゃないよ、おい」
 鋭い刃で一刀両断に斬り捨てられる。
「あのさ、なんのために髪型変えてもらったと思ってるわけ。その時も言ったでしょ。従来のイメージに引きずられないようにしたいって。理奈ちゃんもそれでOKしたよね。だったら――髪型以外もイメージを変えようとするのが本当なんじゃないの? それがたかが乳首が透けて見えるくらいで文句をつけるってのはどうなのかな。大人の女に変わろうっていう自覚と覚悟が足りないとしか言いようがないよね」
「基本は青山センセイの言うとおりで、それはオレも同意見だから重なる部分はカットして、補足だけさせてもらうけど。映像を撮る身として、なによりもアイドルファンの一人としては今回の白水着で乳首が透けてないってのは、正直がっかりでしかないよね。見せないなら水着の色を変えろ、白で行くなら見せるのが当然ってね。そう思うのがあたりまえだと思う。だからまぁ、監督として言わせてもらうなら、余計なものは付けずに自然なありのままの姿を見せて欲しいかな」
「……由綺だって勇気を出して大人の女になる決意を固めましたのに、緒方さんがそういう態度を通されますと、折角の由綺の頑張りが無駄になってしまいます。ですから、私としては緒方さんの態度に賛同はいたしかねますね。率直に言えば由綺に迷惑ですので、今すぐ止めていただきたいと思います」
(……く。まさか弥生さんまで言ってくるなんて、想定外だけど。でも、ここで折れるわけには……!)
 三方向からのダメ出しにさすがに怯みかけてしまう理奈だったが、それでも歯を食い縛って足掻き続けようと試みかける。が、青山はそんな彼女にトドメを刺すように――
「だいたいさ、さっきから『緒方理奈』『緒方理奈』うるさいけどさ。キミが思ってるほどもう『緒方理奈』の価値は高くないんだよね。成程、確かにまだ一定数のファンはいるかも知れないね。だからこそ彼ら目当てで写真集とIV出そうってんだから。でも、業界的にはどうだろう。本当にキミが思うほど『緒方理奈』に商品価値があるのなら、今キミが干されてるってこの現状はありえないんじゃないのかな。少なくとも、ボクとの仕事なんて簡単に断れるはずでしょ」
 容赦ない現実を突きつけてくる。反論しようと口を開き掛ける理奈だったが、「…………ぁ」どうしても言葉が出てこない。だって、そんなことは今更青山に言われるまでもなく解っていたから。今の『緒方理奈』にかつてのような力はないと、なによりも彼女自身が。だからこそ無様でも抗ってみたけれど、結局現実を思い知らされるだけだったらしい。
「それでもボクたちの言うことを聞けないっていうのなら――今すぐ辞めてもらって結構。仕事よりも自分のプライドを優先する相手とは、ボクだって仕事したくないからね。ただし、その場合はホテルの部屋や帰りのチケットのキャンセル料とか、掛かった経費は違約金込みで請求させてもらうことになるだろうからそのつもりで」
「そんなのっ、払えるわけがっ――」
「だから、キミの事情なんてボクたちは知ったことじゃない。ボクたちはただプロとしてコンセプトを遵守しようとしてるだけだからね。理奈ちゃんも本当にプロなら、自分がどうすべきか解るよね?」
 冷酷な鞭の後に差し出される猛毒を含んだ飴に、どう対応すべきか解らなくなって口ごもる。あくまではね除けるべきか、それとも受け容れるべきか。結論を出すこともできないまま、「私、は……」理奈の唇が勝手に開いて言葉が形になりかけたところで、
「いいかげんにしてください!」
 突然の由綺の叫びがすべてを吹き飛ばした。
「み、みんなで、そんなに理奈ちゃん一人を責めないでもいいじゃないですか。まるでイジメているみたいで、見ててその、辛いです」
「あー、その由綺ちゃん」困ったように声を絞り出す青山。「これはイジメとかそう言うのじゃなくてね」
「……青山さんたちの理屈は理解できてる――と思います。私もこれでも一応プロのつもりですし、だから今の格好も納得しています。でももしも理奈ちゃんがどうしてもそれが嫌でこの仕事を辞めるんだったら、私も一緒に辞めさせてもらいます。だって、私がこの仕事を引き受けた一番の理由は理奈ちゃんと一緒の仕事だったから――意味がなくなってしまうので」
 理奈を庇うように前に進み出て、思い詰めたように爆弾発言を口に出した親友に、理奈は金属バットで頭を殴られたような衝撃を受けた。同時に浮かび上がるのは、「……それに、もしかしたら代わりになるものも見つけられたかもだし」と愁いを帯びながら呟く由綺の顔。
 これまで自分のことだけしか考えてこなかったけれど、今回は由綺も一緒の仕事なのだ。彼女に迷惑を掛けてまで、果たして自分のこのワガママは通すべきものだろうか。……以前ならそうしていたかも知れない。自信と気力に満ち溢れていたあの頃なら。では――今は?
「……ごめんね、由綺。それと、ありがと」
 由綺を後ろから軽く抱きしめると、理奈は立ち位置を入れ替えて再び青山に対峙する。
 それから、ゆっくりと頭を下げた。
「今回は私のワガママで撮影の流れを乱してしまい申し訳ありませんでした。すぐに脱いできますので、撮影の続行をどうかお願いします」
「……OK。良くできました、と言いたいところだけど、それだけだと60点だよ。解るね?」
「はい。以降の撮影について私、緒方理奈はコンセプトの遵守を行い、青山センセイと上村カントクの指示に従うことを誓います。……これでいいですか?」
 姿勢は二つ折りに近いまま変えることなく、ただ気配と視線だけで様子を窺う。間を置かず青山が承諾の態度を見せたことに安堵しつつ、理奈はもう一度大きく頭を下げてから、その場を矢のように飛び出すのだった。


 ――だから、彼女は気づかなかった。彼女が頭を下げ続けていた間、目の前にいた男と背後にいた女の間で満足そうにアイコンタクトが行われていたことを。そして、彼女がその場を離れた後に、男がもう一人の女に彼女を追いかけるよう指示したことを。




「……あーあ、まったくバカみたいね」
 簡易に設置した更衣室に入ったところで、自嘲の言葉が勝手にこぼれ落ちてしまう。
 あまりに無様で情けなさ過ぎて、このまま消えてしまいたいと思ってしまうほどだ。
 それでも――目からこぼれ落ちそうになるものを止めるために、理奈は胸元からヌーブラを剥ぎ取りながら頭上を見上げる。ここまで撮影を止めておいて、その上再メイクで時間を取らせるなんてプロとしてありえないことだから、と。気持ちが落ち着くまで動きを止めて、ただじっと天井を見上げていた。
 そうしてどうにか動揺が消えたところでヌーブラを自分の着替えの山に放り込み、撮影現場に戻ろうとしたところで――
「ごめんなさい。失礼します」
 なぜか弥生が入ってきた。戸惑い動きを止めてしまった理奈に、微かに唇を吊り上げてみせると長い黒髪を揺らして頭を下げてくる。
「……先程は少し感情的になってしまったようで、いささか言葉が過ぎました。申し訳ありません」
「いいわよ。私だって由綺の事なんて全然考えもしなかったんだから、由綺のマネージャーである弥生さんが怒るのも当然だもの。ただ私がバカだっただけ。……それを言いにわざわざ?」
「いえ、それはついでです。私は青山センセイに頼まれてこれをしに来ました」
 淡々と言ってくる弥生の手には、ドライヤーが握られていた。
「……ホント、悪いわね。由綺の方の仕事もあるのに私の方をやってもらって」
「構いません。緒方さんのマネージャーも含めて私の仕事ですから。それより、水着が乾くまでの間。もし手持ち無沙汰でしたらこちらをどうぞ。……気分も落ち着きますし」
 熱風が理奈には直接当たらないようドライヤーを上手く操作しながら、弥生が示してきたのは魔法瓶だった。その厚意に感謝して受け取り、蓋に中味を注ぎゆっくり味わってみる。
 入っていたのはレモネードのようだった。くっきりとしながら爽やかでもある味と喉を通り過ぎる冷たさに頭がすっきりする。ただ、少しだけ混ざりが悪かったのか、飲み込む時に少し引っ掛かった感覚がしたのだけが残念だった。
 ただ、そんな些細な瑕をわざわざ告げて、折角の厚意を無為にするのも忍びない。だから理奈はなにも言わずおかわりも飲み干すと、弥生に感謝の言葉とともに魔法瓶を返した。その頃には水着も乾いていて透ける部分がなくなっているのを確認したところで、二人は速やかに現場へと戻る。
「二人とも水着OK? よっし、じゃあ始めよっか。時間押しちゃったんで巻き巻きでお願いします」
 ADの号令とともに再びシャワーヘッドを渡される。由綺の姿――ドライヤーの影響か肌が少し上気しているように見えた――を確認すると水着が元通り乾いていたから、シャワーバトルの最初からやり直すということだ。肩紐の位置を直して無防備な胸元を不安そうに一瞬だけ見やり、それから理奈は心配そうに覗き込んでくる由綺を安心させるために笑顔を作ってみせる。どれだけ自然にできるか不安はあったけれど、安心したように由綺も微笑んでくれたからほっと胸を撫で下ろす。
 そうして撮影が――シャワーバトルが無事再開される。
 さっきと同じように、否、さっきよりも激しく、楽しそうに撃ち合ってみせる。そうなると、当然濡れるペースも速くなってくるからあっという間に赤いものが胸元に浮き出てき始める。由綺と、理奈とその両方に。
 途端にシャッターのスピードが上がることに呆れながら、理奈は大人の女らしく、恥ずかしがる様子も見せずにただ由綺を狙ってレバーを押し続ける。その間にも露出度は徐々に大きくなっていったが、我慢して笑顔を維持し続ける。
 そして――
「見ろよ、あの濡れ透け具合。ヘア丸見えだぜ」「うわ、由綺ちゃん思ったより濃くね? 手入れあんましてねぇのかな」「理奈ちゃんはちゃんとカットしてる――てか、もしかして全部剃ってる? パイパンかよ、流石。ああでも、こっからだとマンスジまでは見えそうもねぇな。くっそ」「それよりやっぱおっぱいだろ。乳首だけじゃなくて形までくっきり見えるってありえねーよ。もうこれはヌード解禁と言っていいレベルでは?」「てゆーか、由綺ちゃんもしかして乳首勃ってんじゃね?」「うわ、マジだよ。理奈ちゃんは……よくわからねーな。残念」
 次々に飛び込んでくるスタッフたちの品評会(こえ)は意識して耳から遠ざけ、聞こえないふりをしながらあたりまえのように演技を続ける理奈。けれどその内心は、水着越しとはいえ乳首も股間も大勢に見られてしまっていることに対する羞恥と、それをテンション高く品定めされている屈辱とで、さすがに激しく煮えたぎるものがあった。
 それでも彼女一流の鉄の自制心を持ってポーカーフェイスを保つと、できる限り由綺をかばうような動きは続けたまま、最後まで撮影をやり遂げたのだった。


 ――そんな風に他のことに気を取られていたから、気づかなかったけれど。彼女の耳には、やはり昨日と同じようにブブブと、小さな虫の羽音のような奇妙な音が届いていた。


 3 “妖しい気配”に続く
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