イラスト・小説投稿サイト
登録者数: 51
today: 366
total: 2128091
lion
作品閲覧
【アンケート実施中】 向坂環に似合う衣装は?
1
作:クマ紳士連絡
create
2017/11/16
today
1
total
1688
good
11
1 2 3 4 5 6 7

何度見ても、現実味のない光景ね。

そう独りごちた私の前で眩い光が舞い、幻想的な光景が広がっていく。

周りの木々がざわめき、突風が辺りを舞い、土煙を上げる。

風は一点に集まって行き、私の前に立つ小さな影がその光を、風を身に纏うかのような姿を見せていた。

小柄な身体は白い衣装に身を包み、日常では見せないように真剣に……けれど、どこか楽しそうに口元を緩ませている。

トレードマークの左右に縛った髪が大きく揺れ、僅かにスカートが捲れ上がる。

……このみ、生き生きしてる。

柚原このみ。私の妹分。実の妹のように可愛がっていた子が、幻想的な力を纏って表情を生き生きとさせていた。

「このみ、薙ぎ払え!」

私の後ろに控える彼、タカ坊も普段あまり見せないような自信に満ちた表情を見せる。

言葉だけを聞けば、何事かと耳を疑う。少なくとも、数ヶ月前の私なら、この子達のこんな姿を想像も出来なかっただろう。

「了解でありますよ! 隊長〜!」

後ろを振り向いたこのみは、私とタカ坊にいつもの笑顔を見せる。

けれど、その手に持っていた不思議な光を纏った杖は……まるで刃のようなギラギラとした禍々しい形になっていた。

「このみ、よそ見しちゃダメよ! 前を向きなさい!」

私が叫ぶと同時、私達と対立していた三つの影が一斉にこのみに飛びかかった。

正面、左右と三方に別れての同時攻撃。

ある影は鋭い爪を、ある影は手に持った鈍い光を放つ刃を、ある影は両手に抱えた鋭い槍を……このみに向け、一斉に襲い掛かった。

私は両手に持っていた盾と剣で、せめて壁になろうとこのみの前へ出ようとする……しかし、

「マジカル〜スラ〜ッシュ!!」

このみの手に握られていた杖。そこに宿っていた鈍く輝く光が、更に輝きを増し……このみが杖を横に払うように大きく振ると同時、光の束が何条にも広がり、眼前に襲い掛かってきた相手に降り注いだ。

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ」

断末魔の叫び。それ以外に表現しようがない。三つの影を包んだ光はゆっくりと収束し始め、やがてその輝きを消した。

その光が消えた先には、三つの影が姿形も無くなってしまっていた。

僅かに焦げた匂いがし、微かに煙が立ちのぼっている。

「やったでありますよ〜! 隊長〜!」

明るいいつもの笑顔で、このみが無邪気に抱きついてくる。

私は笑顔を崩さないよう注意しながら、無邪気に喜ぶ彼女を褒めた。

「まああんな雑魚なら余裕だろ。レベル上げには丁度いい相手だったな」

タカ坊もごく自然に私達の横に並び、戦果を見る。

このみが放った光は、まるで熱線のように周りの草木事、″敵″を焼き払った。

跡形もなく、″彼女達″は消え去ったのだろう。

「タマお姉ちゃん、見てた? このみ、強くなったでしょ?」

「……うん。流石このみだわ。私、びっくりしちゃった」

このみは笑顔をこれでもかと輝かせ、えへへ〜と後ろ頭を掻きながら照れていた。

その仕草は、素直に可愛いと思う。

このみは、強くなった。けれど、その強さはこの世界のものだ。

「お、タマ姉。レベルが3上がったよ。クラスチェンジまで、あと少しだ」

タカ坊も以前と変わらない笑顔を私に向けてくれる。

この辺りの地図を広げ、さらに探索するか迷っているようだ。

そんなタカ坊に後ろから抱きつき、このみは甘えるように奥へと進むよう進言していた。

……ゲーム、なのよね。この世界は。

一迅の風が私の髪を凪ぎ、突き抜けていく。

広い広い高野。僅かに草木が茂った大地。見渡す限りの地平は、ほんの一部分でしかなく、既に私達は色々な場所を旅して来た。

最初の遺跡のような塔から始まり、暗い暗い森林の奥深く、古代の古戦場のような場所、他にも様々な場所を歩いて来た。

ゲーム、ゲームのはずだった。

私はゲームと言う物をよく知らないが、最初はまーりゃん先輩が持ち込んだテレビゲームのはずだ。

それが奇妙な光に巻き込まれたと思えば、あの場にいた全員がこの大地に立っていた。

集団催眠? いや、違う。明らかに味覚、触覚、視覚、嗅覚、聴覚……人間の五感全てがこれが現実である事を示している。

ただ現実のようで、ゲームでもある。

先ほどタカ坊が口にした、レベルだ。

タカ坊達、男の人にはないが、私達女性には強さを表わすレベルが存在する。

私には見えないが、タカ坊にははっきりと見えるらしい。

タカ坊が言うには、私のレベルは13。クラスはファイターだ。

大きな盾を左手に持ち、腰には80cmはある剣。両刃の、簡単に命を奪える武器だ。

私的には動きにくい肩と腰に付いたアーマーと動きやすさを重視してか、太ももと胸元が開いた大胆なハイレグ衣装が今の私の格好だった。

タカ坊以外の男性は、ほぼ見かけないので気にする必要はなかった。

そもそもこの世界には、男が居ない。

タカ坊や雄二、そしてこのみの友達の保護者の男性の方、3人しか見た事がない。

この世界を旅して、しばらく経つが、3人以外の男性を……本当に見ないのだ。

「えへへ〜。タマお姉ちゃんとタカ君はこのみが守るでありますよ〜!」

ぴょんぴょん飛び跳ねながら、笑顔を輝かせるこのみ。

タカ坊が言うには、このみのレベルは64。クラスはマジカルプリンセスだ。今の私の遥か上のレベル。

レベルは強さを表していて、力や打たれ強さ、素早く動けるかなどレベルによって大きく違う。

それぞれのクラス……職業によってその強さのバラつきはあるが、ここまでレベルの開きがあると、差は歴然だった。

この場所に来るまでに遊びと称して腕相撲をしてみた所……今の私はこのみに手も足も出ない。

「タカ坊、本当に″レベルリセット″なんて必要だったの? 私、足でまといは嫌よ」

私達がこの世界で唯一拠点にしているキャンプ地の建物では、タカ坊と私達の同意でレベルを任意の数値まで下げる事が出来る。

そうするとレベルリセットされた者は、強さや技をマイナスされ、弱くなってしまう。

かく言う私も先ほどレベルリセットを受け入れ、レベル1まで下げられた。

この世界に迷い込んだばかりの時と同じ状態に戻ったのだ。

こうした不思議な力をいとも簡単に出来てしまう所が、現実味を無くしゲームのようだと考えてしまう部分だ。

私が不満そうに少し拗ねたように言うと、タカ坊は困ったような顔を見せた。

「タマ姉、ちゃんと説明したでしょ。レベルリセットすると、戻したレベルによってステータスが上がる割合が増えたりするんだ。タマ姉に、もっと強くなって欲しいんだよ」

タカ坊はそう言ってくれたが、私の目を見ていない。

何かを隠しているようにも見え、私はタカ坊へと近づき、疑いの眼差しを向ける。

「タカ坊、お姉ちゃんに何か隠してるでしょ」

問い詰められたタカ坊が目を白黒させて、な、何も!? と慌てて手を振るが、明らかに何かを隠しているのが分かる素振りだった。

もう一度、タカ坊〜? と詰め寄って尋ねると、観念した彼が口を割った。

「た、タマ姉の格好がさ……ちょっと、刺激が、その……強すぎると言いますか……」

口をもごもごと動かし、はっきりしない彼に少し苛立つ。

相変わらず私から目を逸らす彼は、逃げ腰で言い訳ばかりを口にする。

「タカ坊、男なら、はっきり口にしなさい!」

厳しい口調で叱ると、タカ坊が謝ってきた。

私はため息を一つして、彼の言葉を待つ。

私とタカ坊の問答に付き合わされてるこのみは、私達を見比べながら、辺りも警戒してくれていた。

このみには後でお礼を言わなければならない。

「タマ姉の格好がさ……」

「私の?」

ようやく話す気になったのか、タカ坊がたどたどしい口調で話し始める。

私の格好と口にした彼の言葉に、思わず今の自分の姿を見る。

ファイタークラスである私の初期装備。肩と腰にアーマー。全体の衣装としては胸元を開き、太ももを大胆に露出させたハイレグ衣装だ。

アーマー部分が無ければ、水着と言ってもおかしくない格好。

「違くてさ、今のタマ姉じゃなくてレベルリセット前の……だよ」

「リセット前のクラス? 侍?」

私がレベルリセットされる前のクラスはファイターではなく、侍だった。

レベルリセットされると、強制的にレベルに合わせたクラスに戻される。

ファイターの上のクラスの一つが、侍だが……。

「タマ姉の侍衣装、ほとんど……は、裸じゃないか……。俺、見てられなくてさ……ごめん」

「裸って……確かに生地は少なかったけど、隠すべき所は隠していたと思うけれど?」

タカ坊の言う通り、肌の露出は高く、素肌に薄い生地の布を纏った衣装ではあった。

口にした通り、大事な所を隠していたに過ぎないとも言えた物だ。

しかし、強さを手に入れるには恥も捨てなければならないと思う。

人の生き死にも、大いに関係ある事だった。タカ坊の考えも分かるが、私の裸一つで皆を守れるなら、そんな事は些細なことだ。

……それに、私の侍衣装よりよっぽど危ない子もいるのに。

例えばるーこちゃんのウィッチ衣装。彼女のそれは、裸に黒マントを掛けただけの物。

私がアウトなら、彼女はどうなのか。

「タカ坊、私の格好だけ見てられないって、どういうこと? 私より大胆な格好してる人だっているわ。それに、タカ坊には酷かもしれないけど、格好を気にして強さを捨ててたら……この先やって行けないわ」

我慢出来ず、私は説教のような台詞を口にしてしまう。

こんなつもりじゃない。もっと優しく口にしてあげたい。

けど、口から出た言葉は取り消せないし、タカ坊に苛立ってしまったのも事実。

ゲームのようでいて、現実でもある、この世界。

先ほどのような魔物、あの女の子の姿をしたモンスターが襲ってくる世界なのだ。

中には話せる者もいたが、大抵は問答無用で襲い掛かってくる。

私の目の前で、このみや他の子達が傷つくのを何度も見てきた。

それに対して、自分が何も出来ない無力な存在になってしまうのが……とても悔しく、口惜しい。

その理由が、タカ坊の恥ずかしさからだと知ると情けなくもある。

「タカ坊が恥ずかしがる必要ない。私が命を張って戦っているの。確かにまたレベルが上がれば、前より強くなれるかもしれない。けど、そんな気の長い事してる間に、誰かが傷ついたらどうするの? 私より、他の皆を強くしてあげて、タカ坊。私はいくら傷ついても構わないから。タカ坊は気にせず、私を盾として、剣として使えばいいの」

このみが少し泣きそうな表情を私に向けていた。

私は自分の言葉で、妹を傷つけてしまった事に胸を痛めた。

私が自分の事を蔑ろにするような言葉を口にしたから、優しいこのみが気にしたのだろう。

確かに今のは言い過ぎた。

私は知らず知らずの内に焦っていたのかもしれない。

このみに守られている自分に、タカ坊に頼りにされない自分に……。

「……駄目だよ」

「え……?」

強く口にしたつもりだった。いつものタカ坊なら、私に萎縮して、私の言葉に従うはずだ。

なのに、私の言葉にタカ坊は怒っているかのように険しい表情を見せた。

「その考え方は駄目だ。そんな考え方の人間は連れて行けないよ。パーティーから外すしかない」

「……なんですって?」

タカ坊の言葉が信じられず、耳を疑う。

睨むようにタカ坊を見据えても、彼は私から目を逸らさず、今度は逃げなかった。

「タカ坊、本気で言ってるの? 」

「本気だよ。タマ姉がその考え方を変えてくれないなら、タマ姉にはずっと留守番しててもらう」

吐き捨てるように言われた言葉に、二の句を告げなくなる。

頭の中のでは、タカ坊に捨てられたと悲しい現実を受け入れたくない自分がいた。

私は何とか、そう……と呟くのが精一杯だった。

悔しいが、この世界のリーダーは彼だ。彼が指示し、彼を中心に皆は集まり、冒険に旅立つ事が出来ている。

巻き込まれた女の子達は、皆彼を好いている子達だから、彼の一声で全てが決まるに等しい。

悔しいがこの世界では、私の力はただの戦力の一つにしか過ぎず……皆を引っ張っていく事は出来ない。

せいぜいがサブリーダーのポジションだろう。タカ坊の言葉には、皆賛同してしまう。

「じゃあ、パーティーから外して。私は居残りでいいわ。タカ坊の考え方と違うみたいだから、足でまといにしかならないもの」

今度は私が彼から目を逸らす。もうこの場に居たくなかった。

パーティーから外されると言うのなら、望むところだ。

一人ででも強くなる方法を探して、皆と距離を置いてでも……力を示すしかない。

「……タマ姉は、本当に頑固だよね」

ため息と同時に吐かれた言葉にカチンとくる。

身体が思わず反応し、タカ坊に鋭い視線を向けると、彼は肩を竦めて苦笑していた。

「何笑ってるのよ。私を外すって言ったの、タカ坊でしょ。私は、それに従うだけよ」

「俺は、タマ姉が考え方を変えてくれないならって言ったよ」

宥めるように言われて、少し拗ねたように口を尖らせてしまう。

優しい笑顔を向けるタカ坊に、たじろぐ。

「なによ……私が悪いの? だって、この世界で恥がどうとか言ってたら、命が幾つあっても足らないわよ」

「この世界から帰った時、タマ姉が露出狂みたいになってたら、俺が困るよ」

また笑うタカ坊。私は現在の話をしてるのに、彼は元の世界に戻った後の話をしていた。

先を見据えているとでも言いたげなタカ坊に、私は出かかった言葉を飲み込み、別の疑問を口にした。

「……なんで、タカ坊が困るのよ」

「タマ姉の隣、歩けなくなっちゃうから」

彼の言葉に目を見開き、絶句する。

体温が上昇し、心臓がうるさいくらい音を立てた。

落ちつきなさい……! タカ坊はきっと、深い意味を考えてはいないわ。私の幼馴染として、一緒に居られなくなる……それだけよ。

高鳴る胸を抑え、自分自身に言い聞かせる。

このみも見ているし、これ以上変な勘繰りはやめよう。

タカ坊の言葉に、簡単に惑わされるなんて……私も隙があると言うことだ。

「それに、皆言わなかったけどさ。タマ姉は身体を張りすぎなんだよ。パーティーに入ってるといつも皆に気を配って、誰かが傷つきそうになると身体を張って止めるでしょ? もっと周りを頼って欲しい」

私を見るタカ坊の瞳は優しく、表情は頼りになる男性の物だった。

肩に置かれた手は暖かく、彼の体温が感じられ、私はそれだけでタカ坊に心を支配された。

気恥しい思いで一杯で、ヤバいと思った時には、顔を逸らして……自分の抱いた感情を否定する。

……この世界で、恋愛感情なんて考えてはいけない。消してはいけないけれど……先に進もうとしては、駄目なのだ。

「……私、そんなに身体を張ってなんて……」

「張ってたよ。俺はいつも見てた。タマ姉が傷つくの。戦えない自分が恥ずかしいって、いつも歯がゆかった」

手を取られ、正面から見据えられる。

タカ坊が、こんな台詞を言うなんて……。戦えなくて恥ずかしいなんて、男らしい事、考えてたなんて……。

彼には私達と違い、武器を取る力も技もない。

レベルによるステータスもなく、力や素早さ、打たれ強さなど目に見えて上がったりはしない。

彼が出来るのは、私達を編成しパーティーを決めて探索へ向かう事と、戦闘中の指示。

細かな所まで気配り出来る彼の、まさにうってつけのポジションだった。

そんな彼が、一緒に戦えなくて悔しいなんて思ってたなんて…知らなかった


私達は当たり前のように、彼の指示に従い、彼を守り、歩いてきた。

「タカ坊も、男の子なんだ」

「今気づいたの? タマ姉、やっぱり時々鈍いよね」

声に出して笑われると、彼への不満がむくむくと再燃してきた。

でも、先ほどまでの暗い感情ではなく、彼をからかってしまいたい欲求に駆られる。

「えいっ!」

「うわっ!? た、タマ姉、ちょっ! む、胸、当たってるから!」

「当ててるのよ?」

我慢出来ず、タカ坊を胸に抱く。

私の胸の間に頭を埋めた彼が、じたばた暴れ始めるが、私は構わず抱きしめた。

すると、先ほどまでの苛立ちが嘘のように無くなり、胸がスーッとして心地よい気分に変わった。

……あぁ、やっぱり私、タカ坊が居ないと駄目ね。

タカ坊の匂いに包まれるだけで幸せで、いつまでもこうしていたい誘惑に負けそうになる。

と、

「タマお姉ちゃん、タカ君、ズルいでありますよ〜! このみも抱き着きたいであります!」

小さな身体を揺れ動かし、我慢していたこのみが私達に抱き着いてくる。

私はそんなこのみを受け入れ、3人一緒に抱き合った。

タカ坊は悲鳴をあげ、や、やめてくれ〜!と じたばた暴れたが、私もこのみも離してあげなかった。

タカ坊に改めて口にされて、自分が無茶して来たのだと思い知らされた。

私の勝手な思いで、皆に心配を掛けてきた。彼はそんな私を見兼ねてレベルリセットを申し出たのだ。

言うなればこれは、皆からの休暇のお誘い。

たまには休めと、暗に言われているのだろう。

そして、タカ坊。

「……タカ坊」

「え……?」

彼も私と一緒だった。誰かの力になりたくて、でも力がない自分が悔しい。

誰かが傷つくのを耐えられない。誰よりもそれを近くで見てきた。

優しい彼がとても愛おしく感じた。

「大好きよ」

この思いは、きっといつまでも消えない。

別の世界に飛ばされ、元の世界に戻れるか分からないとしても……彼が居るなら大丈夫。

私は改めて、それに気づかされた。
作品の感想はこちらにおねがいします
11
© 2014 pncr このサイト上にある画像・文章の複製・転載はご遠慮ください。問い合わせ
since 2003 aoikobeya