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【感想】海がきこえる(ネタバレあり)

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氷室冴子さんの作品(2008年没)
1990-92年にアニメージュで掲載されていた。
93年にアニメ化、95年にはテレビドラマ化。

この作品を知ったのは、YouTubeがきっかけだった。
千と千尋の神隠しの主題歌『いつも何度でも』を聞いてると、たまたま関連動画にこのアニメがあがっていた。
たしか制服を着た男女が海辺を歩いている絵だったと思う。
調べてみると、ジブリ作品にはめずらしい高校を舞台にしたアニメ(非ファンタジー)で、隠れた名作だとか。
残念ながら配信をしているサイトはなかった。
かわりにアマゾンでDVD(Blu-ray)が5000円ほどで売られていた。
好意的なコメントがほとんどで、ジブリの最高傑作とまで書いてる人もいた。
DVDを購入しようかと思ったが、ちょうど高校生を題材にした小説が読みたいと思っていたこともあり、2022年・新装版を購入した。表紙には、白いワンピースの少女が鋭い目つきでこちらをにらみながら、両手で髪を結っている印象的なイラストが描かれていて、この子がヒロインなのだと一目でわかる。

舞台は1990年代。バブル真っただ中。
ネットもスマホ(携帯はあるっぽい)もない。なんならSuicaもない。新宿の都庁が出来たばかり。
杜崎 拓(もりさき・たく)が高知から東京の大学(日大芸術学部)に進学して、臨時のアルバイト先で、高校時代に密かに好きだった武藤 里伽子(むとう・りかこ)と偶然再会する。
話しの途中途中で里伽子との思い出を振り返るわけだが、こう書くと甘酸っぱいラブストーリーのように思えるが、そう単純ではない。

【里伽子はひょい、と顎をしゃくるようにした。頭をさげたつもりらしかった。
薄情そうなうすい唇をぎゅっとひき結んでいて、さぞかしコンブやワカメなんかたくさん食ったんだろうなと思うような、まっ黒な髪をしていた。いつかの感じの読み取りテストに出てきた《漆黒》という字が、ふっと思いうかんだ。
ぼくの武藤里伽子の第一印象は、一にも二にも、まっ黒な髪だった。】

里伽子は一癖ある性格で、東京から高知で一番の進学校に編入(高校2年時に転校してきた)してくるだけあって成績はトップクラス、スポーツ万能、特上の美人と当然のように学校中の話題になるも、高知のことが嫌いだとか高知弁のことをバカ(正確には時代劇みたいと笑う)にする。
おまけに協調性がなくてクラスで孤立。わがままで自分勝手で、本人は親の都合で高知に連れてこられたこともあり、東京に戻りたくて仕方なくて、友達にウソをついて帰ろうとして、周り(=拓)巻き込む。
親しくなったきっかけがお金の貸し借りってすごくね?
高校生で6万円はなかなかの金額だし、このパターンは、はじめて見た。しかも、ありがとうもいわない(のちに理由が判明して納得する)。
東京にはプレイボーイの元カレがいる。17歳でコークハイをがぶ飲み。
作中、拓のことを2度ビンタして、さらに卒業まで口をきかないという、最近の恋愛マンガだと見かけない剛速球の持ち主。

拓にも問題があって、親友(=松野)が里伽子のことを好きなのを知っているため自分の気持ちに素直(遠慮している)になれない。これはまだいい。よくある話なので。
でも、そこで手を出さないのはどうなの?? というシーンが二度三度。
いや、里伽子のことを思いっきりビンタしたけど。
とにかくビンタの応酬。これが昭和なのか。
とある理由で親友にグーパンで殴られて、これまた絶交状態に(完全に拓が悪い)。
卒業を控えた高校3年にして親友と好きな子の両方を同時に失う。
というか、里伽子とまともに口を聞いたのは、高校生活で4回ぐらいしかない。そのうち1回は小旅行なのでかなり濃いけど、それ以外はちがうクラスだったり絶交期間なのでほぼしゃべっていない。なんなら丸1年口を聞いていないのに・・・男ってバカよね~。

【目の前の椅子に座っているのは、パーマをかけて、髪がゆるやかにウェーブしているけれど、きれいに化粧しているせいでみまちがえそうだったけれど、まちがいなく、武藤里伽子だった。
里伽子はワイングラスを持ったまま、ぼくを見つめていた。ぼくと里伽子の間にさざめいていた連中が、まるでモーゼの海みたいにサーっと割れたような気がした。ぼくはゆっくりと里伽子のところに歩いていった。まるでそれが当然のことみたいに。】

女性の作家だけあり、女の子が生っぽく描かれている。
(氷室冴子さんの作品をはじめて読みました)
男の作家だとヒロインを美化しがちだけど、人間らしいところ(=汚い部分)がしっかりしている。
里伽子のわがまま・辛辣さ・気丈なふるまい、すぐ怒る(ヒステリック)、平気でウソをつく。
拓が自分のことを好きなのを知っていて気付ていないふりをするとか。
かと思うと、急に弱味を見せたり。卒業して2ヵ月で完璧に東京の女子大生(調べてみたら、フェリスではなくて東京女子大)になってる。
他の女子生徒も集団で里伽子を吊るし上げるなどリアルっぽい。
その点、男子は全般的に草食系。拓と松野の二人は仙人みたい。こんな男子高校生いる? いた??

すごいなと思った箇所は、拓と松野が親しくなるきっかけの事件。
中学の修学旅行が突然中止になって、拓を筆頭に生徒たちが反発するのだけど、生徒をコントロールしようとする教師のやり方がこすい
まず全校集会で手を上げさせて、つぎに名簿に丸をつけさせて、さらに居残りで理由を書かせるという三段階でふるい落とす。
進学校、内申書を気にする年ごろ(中3)でやられたらみんなお手上げでしょ。これが実体験じゃないとしたら、どうやって考えついたの?
モデルとなった高校は土佐高校らしい。ネットで年間行事を見てみると、たしかに中学校の修学旅行がない。 
高知の学校事情について詳しく書いてあるので、綿密な取材をしてその中で知った事件を取り上げて脚色してる?

読み進めていると、作者の絶対ハッピーエンドにさせねーぞみたいな意思を感じる。
(恋愛小説で主人公とヒロインがハッピーエンドで結ばれて終わるのって逆にレアだけど)
拓はあいかわらずバイトに精を出してて押しが弱いし、里伽子は自由なキャンパスライフを謳歌してるし、10年後か20年後かに、そんなことがあったよね~、ウフフってなりそう。ほろ苦い思い出的な。東京ラブストーリー的な。あれも1988年でほぼ同時期。
一気に読み終わった後、2巻もすぐに注文しました。
長さも長すぎずにちょうどいい文量。
アニメの方も購入したいと思います。

高校時代を思い出して、恋愛小説(?)読んでみたい人におすすめの作品です。
たぶん高校生が読んでも面白さがわからないような気がする。

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