早川沙織からの手紙

早川沙織からの手紙

11.水晶の柱1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -11- 次へ>>  いつものように目を覚ますと、ぼくは濃密な暗闇に囲まれていた。辺りは、深い海の底のように真っ暗でなにも見えない。 かすかに水の流れる音が聞こえる。 ぼくは床にしゃがんで、まぶたを開いたり閉じ...
早川沙織からの手紙

10.沙織3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -10- 次へ>> 「あの日、先輩と待ち合わせをしてたの。神社のまえで」「へー」「先輩に事情を説明したら、新しい浴衣を買ってくれるって。先輩の父親はコンサル会社を経営してるのよ」「そうなんだ」「私、ショックだっ...
早川沙織からの手紙

9.沙織2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -9- 次へ>>  フードコートは、学校帰りの学生たちで半分ほど埋まっていた。 ぼくらの高校の制服はむしろ少数で、H女子高やJ高校、B学園などいろいろな制服がある。 カップルらしき男女もチラホラいる。  ぼくと...
早川沙織からの手紙

8.沙織1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -8- 次へ>>  HRが終わって教室でのんびりしていると、沙織からメッセージが届いた。『まだ教室?』『さっきHRが終わったとこ』『一緒に帰らない? 校門にいるから1分以内に来て』 沙織が誘ってくるなんて、はじ...
早川沙織からの手紙

7.古墳4

<<前へ 早川沙織からの手紙 -7- 次へ>>  1986年の学校新聞に、ヤガミ老人の写真はなかった。 沙織の話によると、生前の写真は、地元の新聞や企業の広報誌にも残っていないらしい。 生徒の質問に答える形で、本人が生い立ちについて語ってい...
早川沙織からの手紙

6.古墳3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -6- 次へ>>  ぼくらの学校では中間テストのまえ、つまりゴールデンウィークのまえにクラスマッチがある。 高校生になったばかりの1年生にとっては最初のイベントであり、2・3年にとっても新しいクラスの団結力がた...
早川沙織からの手紙

5.古墳2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -5- 次へ>>  その夢を見るようになったのは1年前、高校に入学してからだ。 実際のところ、それが洞窟なのか、そうでないのかよくわからない。 夢の中で目を覚ますというのもおかしな話だが、起きるとぼくは真っ暗な...
早川沙織からの手紙

4.古墳1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -4- 次へ>>  ぼくの住んでいるF市は、海に面した中堅都市だ。 背後になだらかな山地があって、三角形をした街の真ん中を一級河川が流れ、東西に新幹線が通っている。 中央駅の北側の山すそに、ぼくの通っている高校...
早川沙織からの手紙

3.転校生3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -3- 次へ>>  バス停で小田桐ヒナを見送ったあと、このまま帰るかどこかで時間をつぶすか考えた。 まだ明るかったし、せっかく来たのだから、3階にある大型書店に寄ることにした。 ヨシオたちは、アミューズメントフ...
早川沙織からの手紙

2.転校生2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -2- 次へ>>  映画が終わると、小田桐ヒナが「私、予備校があるから先に帰るわね」といってきた。 ぼくの横っ腹を肘で突いた。「楠くん、バス停まで送ってくれない?」 ぼくは、「いいよ」と返事をした。 ヨシオと沙...