早川沙織からの手紙

早川沙織からの手紙

21.ぼくは、それを一番おそれている5

<<前へ 早川沙織からの手紙 -21- 次へ>>  数学の小テストで勝負することになったのは、夏期講習の申し込みをした週のことだ。 負けたら相手の要求を聞く、賭けで。学校で、よくある話だ。 これは、はじめから仕組まれた勝負だった。勝負を持ち...
早川沙織からの手紙

20.ぼくは、それを一番おそれている4

<<前へ 早川沙織からの手紙 -20- 次へ>>  駅前にある、大手予備校に下見に行った。 10階建ての立派なビルで、大きな看板を誇らしげに掲げてある。ぼくも場所は知っていた。 名古屋に本部があるK予備校は、テキストと設備が充実していて、学...
早川沙織からの手紙

19.ぼくは、それを一番おそれている3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -19- 次へ>>  日が変われば、沙織の機嫌が直ると思ったのは、ぼくの甘い考えだった。 あれから三日すぎたが、沙織は口を聞いてくれないどころか、廊下ですれ違っても目も合わせてくれない。小田桐ヒナの仲裁も不発に...
早川沙織からの手紙

18.ぼくは、それを一番おそれている2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -18- 次へ>>  女子のダンス動画を撮るから手伝ってくれとヨシオにいわれたのは、その日の午前中のことだ。 沙織とばかり行動していて、放課後にヨシオと遊ぶこともめっきり減っていたので、たまには付き合わないと悪...
早川沙織からの手紙

17.ぼくは、それを一番おそれている1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -17- 次へ>>  昼休憩のヤガミ少尉の部屋で、ぼくらは音楽を聴いていた。 窓を開けて椅子を並べて、イヤホンの片方を沙織に貸して。 自転車に乗っていて、ワイヤレスのイヤホンを片方だけポロッとなくしてしまい、同...
早川沙織からの手紙

16.沙織ふたたび4

<<前へ 早川沙織からの手紙 -16- 次へ>>  喫茶店を出ても、沙織とナオミは、空白の時間を取り戻すみたいにしゃべりっぱなしだ。 薄い青のワンピースの背中で、セミロングの黒髪がリズム良く左右に揺れているのを眺めているだけで、機嫌がいいの...
早川沙織からの手紙

15.沙織ふたたび3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -15- 次へ>>  土曜日の昼下がり、センター街の時計広場に到着すると、すでに沙織の姿があった。 薄い青のシックなワンピースで、頭にはカチューシャをして、いいとこの女子大生みたいな格好をしてた。女子はほとんど...
早川沙織からの手紙

14.沙織ふたたび2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -14- 次へ>>  翌日、沙織はケロッとしてた。 ヤガミ少尉の部屋で、肘掛け付きの木製の椅子に座って、昨日はよく寝たぐらいの感じだ。 まー、元気そうでなによりだ。 それよりもぼくが気になったのは、沙織が着てい...
早川沙織からの手紙

13.沙織ふたたび1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -13- 次へ>>  廊下で、沙織が木嶋と親しそうにしゃべっているのを見かけた。 ぼくは、(意外な組み合わせだな)と思った。 たまに3組の教室を見ることがあるけど、沙織が小田桐ヒナ以外の女子といるのをはじめて見...
早川沙織からの手紙

12.水晶の柱2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -12- 次へ>>  昼休憩になると、ぼくと沙織は中庭で待ち合わせて、図書館の2階にある特別閲覧室で昼食を一緒に食べるようになった。 ぼくらは、その部屋をヤガミ少尉の部屋と呼んでいる。 不思議なことに、部屋の鍵...