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3.Red midnight

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作者:しょうきち

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       6

 時刻は少しだけ遡る。
 ウェンディ・ラスム・イクナートとマサキ・アンドーがお互いの想いを確かめあい、結ばれた後、深夜━━。
(ウェンディ……)
 ベッドの中、マサキはウェンディの胸に抱かれながら、幸せの絶頂を噛み締めていた。
 ウェンディは完全に寝入っており、すやすやと寝息をたてている。心音が聞こえるくらい顔を密着させると、寝ている筈のウェンディが少しだけ微笑んだような気がした。
(ウェンディ……)
 心の中で、もう一度彼女の名を呼ぶ。
 愛しの彼女の鼓動を感じる。
 出会ったときから、憧れの存在だった。
 そんな彼女が自分の事をこれほどまでに、ずっと好きでいてくれて、こうして結ばれる事ができたという事実に、総身が震えるほどの歓喜を覚えていた。
(ウェンディ……)
 三たび愛する彼女の名を心中で呼ぶ。
 背中に手を回し、髪を撫でた。
 柔らかくウェーブした長い髪を指で鋤いてゆく。一緒に流した汗と、ほのかに香る香水の匂いとが入り交じった香りが心地よい。
「ん……」
 ウェンディが身をよじる。寝返りをうって、仰向けとなる。規則正しく呼吸する度に、重たげに実った乳房がたわわに揺れる。
 マサキはウェンディを起こさないように腕枕すると、その美しく甘い香りのする髪を撫でていた。
 そのときである。突如異変が起こった。
(ん、なんだ……?)
 マサキが撫でていた髪の色がサファイアのような青黒色から、突然スタールビーのような赤紫色へと変わってゆく。
「う、うわっ……!」
「うわっとはなんだ。マサキ」
 直前まで目の前ですやすやと寝入っていた筈のウェンディが、くわっと目を見開いていた。まるで別人のように髪色、瞳の色が変わり、眦がきりりと吊り上がっている。更にはそればかりではなく、ラ・ギアス人としてはありえない程の強力なプラーナを発している。
「テ、テューディ……っ!」
「ご明察だ」
 目の前にいる女は、ウェンディであってウェンディではない。ウェンディの精神の中に潜む双子の姉、テューディ・ラスム・イクナートである。
 ウェンディの双子の姉として誕生する筈が、生誕前に死産という形でこの世を去ったテューディであるが、残留思念という形でウェンディの身体の中で生き続けており、ウェンディとは記憶や感情も共有している。
 嘗ては生まれてくることが出来なかった恨み、外の世界を自由に見聞きすることの出来ない憎しみを募らせ、ラ・ギアス全土を混乱の渦に巻き込もうとしていた彼女であるが、紆余曲折を経てウェンディと和解し、こうして時々人格交代して外に出てきているのであった。
 以前のような邪悪なプラーナは鳴りを潜め、一応はマサキ達と共にラ・ギアスの平和のために戦う仲間となった彼女であるが、それが生来の素であるためなのか、ウェンディの鏡写しのような人格であるためなのか、露悪的なキャラクターはそのままである。
「う……うわっ!」
 恐れを感じたマサキは反射的に腕枕していた手を引き抜こうとしたが、できなかった。テューディに手首を掴まれ、動かすことが出来ない。この細腕のどこにこんな力があるのかという強さである。
「こらマサキ、逃げるな。別にとって食おうというつもりは無いよ」
「だ、だってよ……あんたも俺も裸で、その、は、恥ずかしくねえのかよ!?」
「お前はさっき、妹━━ウェンディを抱いたのだろう? 私は妹と同じ顔、同じ身体、同じ声をしているのだから、実質私を抱いたのと同じだろう」
「そ、そうは言ってもあんたはあんた、ウェンディはウェンディなんだろっ!?」
「そう怯えた顔をするな。これで私もな、お前の事は憎からず思っているんだぞ。妹の処女を……おほん、その、望みを叶えてくれたこと、礼を言いたい。それに、身体を共有している私にとっても、お前は始めての男ということになる」
「そ、そういうモンかよ?」
「まあいいから少し、話くらい付き合え。ピロートークという奴だ」
「て、テューディ、お前……」
 強制的に腕枕させられている腕はテューディの首と頭でガッチリと固められている。逃げようにも逃げることは不可能であった。
 テューディがもう一方の腕を取る。掌を頬まで引き寄せると、愛おしそうに頬擦りする。
「で、具合はどうだったんだ? ああ見えて耳年増でドスケベだからな。ウェンディは」
「うーっ、まあ、その、よかったよ」
「よかった? それだけか? お前、妹の処女を食ったんだろう?」
「……」
「言ってみろ。ほら」
「……全身すべすべして柔けえし、汗も何もかも滅茶苦茶いい匂いするし、乳も尻もでけえしアソコは信じらんねえ位ヌルヌルしてよ、マンコの一番奥に一滴残らず中出し決めた時なんて、もうこの世にこんな素晴らしいことがあんのかっていうくらい頭の中が真っ白になっちまったよ。後にも先にも、こんな体験は出来ねえんじゃねえかってくらいさ。死ぬほど幸せを感じだぜ」
「……お、おう。よかったな……」
「なんであんたが赤面してんだよ。聞きたがったのはあんただろ」
「フン、まあいい。妹を愛してくれて、女にしてくれた事、改めて私からも礼を言うぞ。マサキ」
「な、なんだよ。神妙な顔して。てっきりあんたの事だから、嫉妬したり逆恨みしたりし始めんじゃねえかと思ったぜ」
「私をなんだと思ってるんだ、お前は」
「何って……ウェンディの姉さんだろ? 同じ顔してんだからよ、あんただってキツい仏頂面ばっかしてねえで、少しくらい笑顔でいた方が可愛いぜ」
「なっ……可愛い……だと……!? この私がっ?」
「ああ、まあな。とびきりの美人だって事は認めるぜ。お世辞とか抜きにな」
「……っ!?」
「……ん? どうした、テューディ」
 テューディは黙り込むと、無言で目を伏せた。心なしかもじもじと赤面しているようにも見える。
「んだよ、トイレでも行きてえのか?」
 マサキが下から覗き込むようにテューディの顔を見ようとすると、不意打ちのように唇を押し付けられた。
「……っ!?」
 厚い唇が濡れていた。テューディは舌をチロリと出し、マサキの唇の上をヌルリと這わせた。
「お、おい、なんのつもりだよ」
 肩を押してキスを解いた。テューディは挑発的な表情で見つめてくる。
「んふふ、決めた。マサキ、お前の事を私のモノにしてやってもいいぞ。いや、なれ。そうすれば、ウェンディなどよりも余程お前の事を満足させてやる」
「そ、その台詞、前にもどっかで聞いたぞ、おいおい……」
 嘗てテューディがウェンディの身体を使い、ラ・ギアス全土を混乱の渦に巻き込まんと暗躍していた頃、同じ台詞をマサキに向かって投げ掛けてきた事がある。あの頃のテューディは心中に闇しかない、世界の凡てに恨みを向ける危険人物であった。
 しかし、今のテューディからはそうした邪悪なプラーナが感じられない。
 邪悪な企みのような気配が無いということは、迫ってくるテューディの心中には打算など無く、純粋にマサキに惚れてしまったということを意味している。
「テ、テューディ……」
「ククク……愛してるよ、マサキ」
 尤も愛しているなどとは言いつつも、声のトーンは閻魔か魔王のそれである。
 テューディがマサキの手を取り、乳房へと導く。同じ大きさ、形の筈なのに感触が違う。温かさ、柔らかさといい包み込むような母性を感じさせるウェンディと違い、テューディのそれは挑発的にヒクつき、先端は物欲しげに尖っていた。
「は……ふぅん……」
 テューディが切れ長の瞳で見つめてくる。
 マサキは全身が熱くなっていくのを感じた。
「フフフ……マサキ。身体は正直だな。反応しているぞ」
 テューディが蠱惑的に囁く。自身でも気づかない内に下半身が反応していた。テューディはマサキの肉棒に手を添えると、細指をまとわりつかせ上下に揺さぶった。
「うぅっ……あぁあっ……!」
 緩急をつけた手コキであった。
 ソフトタッチで優しく愛撫したかと思うと、今度は突如激しいピッチで肉棒をしごきたててくる。すぐに勃起は最大級の角度まで盛り上がった。
「ほら、お前も触ってみろ。私も……こんなに……、はあぁああんっ!」
 テューディは自ら股を開き、マサキの手指を茂みの中へと呼び込んだ。ねっとりとした分泌液が止めどなく漏れだしており、獣じみた雌臭が漂ってくる。
「んんんっ……」
 テューディがいやらしく身をくねらせる。
「マサキ……」
 テューディは片手でマサキの肉棒を扱きつつ、もう片方の手をマサキの首筋に添えると、耳を舐め始めた。
「は、はうぅっ!?」
  耳孔に舌をグリグリと突っ込んだり、耳たぶを甘噛みしたりしてくる。
 テューディの顔は鼻息がかかる程の距離にあり、性的に興奮しているのが手に取るように分かった。
 いいようにされるがままとなっているこの状況への反発心もあり、不意に目の前の女を無茶苦茶に犯してやりたいという欲望が心中に沸き起こるのを感じた。しかしそれは、ウェンディへの裏切りを意味する。
 そんなマサキの心中を見透かしたようにテューディが呟く。
「マサキ、いいか? これからする事は、ウェンディには内緒にしておいてやる。私とお前だけの秘密だよ。ククク……」
「うぅ……あああ……。まだするって決めた訳じゃねえぞ……」
「ほう、そういう事を言うのか? ……まあいい。マサキ、いい事をしてやる。そのまま寝ていろ」
 テューディは身を起こし、マサキの頭部を跨いで馬乗りになった。マサキの眼前では剥き出しの割れ目が物欲しそうにヒクついており、発情した雌の匂いがムッと立ち上ってくる。
 テューディが唇からてろりと唾液を垂らしてくる。とろみのある唾液が亀頭に触れる感触は信じられないほどいやらしく、マサキは腰をピクンと小さく跳ねさせた。
「んんっ……」
 テューディが唇を大きく開き、男根を口に頬張ってゆく。はち切れそうな程に膨張したそれを、生暖かい口腔でぴったりと包み込み、ねろねろと舐め回してきた。そそり立つ肉茎をあっという間に唾液でコーティングしてきて、野太くみなぎる根元をしごきたてる。
 テューディのフェラチオは、どこで覚えたのかという程の手練手管であった。
 マサキも目の前に広がるアーモンドピンクの花びらにむしゃぶりついていた。舌を使って左右に割り開くと、発情の証であるエキスが溢れてくる。
「あぁあっ……うおあぁっ……」
 テューディが激しく頭を振り立てると、マサキはもう情けない声が漏れるのを堪えられなかった。身を捩りたくなる程恥ずかしく、情けない体勢となっているのに、止めることができない。
 目の前に広がる光景も今ペニスに対して与えられている刺激もまるで現実味がない。ウェンディを抱いたときとはまた別次元の、麻薬的な快楽が脳内に押し寄せてきていた。
「んっふ……マサキ、まだ我慢だぞ。イクのはこの中だ」
 再び身を起こしたテューディはペニスの先端を扱きながら、マサキの腰の上にまたがった。
「あぁああ……」
 テューディがペニスを扱きつつ、その先端を自らの陰核にこすりつける。あと数センチ、いや数ミリだけ腰を前に突き出し、女肉の中で存分に精液を吐き出したいという欲望が沸き起こる。しかし、愛するウェンディの顔が脳裏にチラついた。
 そんなマサキの葛藤を見透かしたかのように、テューディが顔を近づけてくる。
「なんだ、マサキ、ここまでしたのにまだ我慢するつもりか? もしかしてウェンディに操を立てているつもりなのか?」
「わ、悪いかよ……」
「だったら気にする必要はない。もう一度言うが、ウェンディと私は二心同体、同じ身体を共有しているのだからな、私を抱くということはウェンディを抱くのと一緒だし、その逆も然りだ。それとも、愛してるとか好きだとか言いながら、一回抱いたくらいで妹の身体にもう飽きたとでも言うのか?」
「そ、そんな訳ねえだろ。でも、俺、俺は……」
「なんなら、お前にとってもメリットのあるカードを一枚切ってやろうか」
「ど……どういう事だよ?」
「お前、ウェンディに一つ、隠し事をしているな? それを黙っておいてやる」
「な……、俺がウェンディに隠し事だって? そんなもんあるわけねえだろ」
「いや、あるね。あの小娘、リューネの事だ。お前、ウェンディの事を愛しているだとか何だとか言っているが、リューネにも気があるな?」
「な…… !」
「ククク……図星のようだな。お前、よく地上に行って鋼龍戦隊とかいう奴等の手助けしてきてるだろ? リューネと一緒にな」
「そりゃそうだけど、それならウェンディも知ってるぜ。稼働時間は相当落ちちまったとはいえ、もう一度サイバスターを地上でも使えるようにしてくれたのはウェンディなんだからな。サポートのために、リューネと一緒に出ていった事だって、当然ウェンディも知ってるぜ」
「ああ、そうだな。だが、そこは問題じゃない」
「どういう事だよ……?」
「先日もリューネと地上に出て行ったな。二人きりで。そこで何をしてきたのかは知らん。だが、地上から帰って来たときは出て行く前に比べ、明らかに女の顔をしていた。お前ら、地上でやることやってただろ?」
「な……っ! やっ、や、やってねえよ、何もっ!」
「だが、リューネが媚びたような表情でお前に腕を絡めて歩いているのを見たぞ。あれは間違いなく一発終えた後の発情しきったメスの顔だった」
「だからって……な、何もやってねえよ。ほ、本当だっ!」
「ほう、そうか? だが事実がどっちかなど私には興味が無い。お前はそう言っても、ウェンディはどう思うかな……? あいつは大人しい分落ち込む時は激しく落ち込むからな。心の中でお前とリューネの間に何があったのか疑念を延々と囁き続けてみてもいいのだぞ」
「な……あっ、卑怯だぞ……おい」
「卑怯もラッキョウも無い。だが心配するな。こうして身体を重ねたら、お前と私は名実共にもう他人じゃないんだ。お前のためにも妹━━ウェンディを悲しませることは決してしない。約束しよう。なんならリューネだろうが他の女だろうが、誰を抱こうが構わない。最後にこのテューディの横に居さえすればいいぞ。どうだ、悪くない条件だろ?」
「あ、ああ……? いや、しかし……」
「しかしもかかしも無い。さっきからもう……我慢の限界だ。挿れるぞ」
「……あ……っ!」
 テューディが腰を落とした。濡れまみれた花びらで、いきり立った男根を咥えこんできた。一気に根元まで呑み込むと、マサキの腰を左右の太腿でぎゅっと挟みこんだ。
「はぁ……うぁあ……」
「ううっ……ウフフ……。これでお前と私は一心同体だ。ウフフフフフ……」
 結合の衝撃もさることながら、テューディの巧みな体重の掛け方により、下半身は真上に突き上げる以外の動きが出来ないように制御されていた。
 上に乗ったテューディが腰をグラインドさせ始める。互いの陰毛を絡み合わせるような粘っこい動きであった。それが次第にテンポアップしてきて、股間で性器を激しく舐めしゃぶるような動きになる。汗ばんだ胸元を揺らしながら性器をしたたかにこすりあわせる。
 マサキはなんとか自由に動かせる両腕を伸ばし、胸の膨らみを揉みしだいた。テューディの腰振りは悪魔的な快楽をもたらしており、このままでは限界を超えて死ぬまで搾り取られるとあう確信めいた予感があった。
 少しでも主導権を握らねばとの思いから伸ばした手だったが、すぐにテューディのなすがままとなった。
 テューディはマサキの手を取ると、自身の一番気持ちよくなれるポイントはここだ、とばかりに親指と人差し指で乳輪をつまみあげるような形に誘導した。
 乳房が大きいだけあって、乳輪も大きめである。導かれるがままに乳輪を挟みつつ乳肉を揉みしだいていくと、テューディの反応がまた一段いやらしさを感じさせるものとなった。
 汗と共に淫猥なフェロモンがばら蒔かれる。テューディの腰振り運動が一段と激しくなり、あまりに気持ち良くて暴発を堪えるのが精一杯だった。
「んんんっ……あっあっ……はぁおおおっ!」
 テューディの膣内はウェンディのそれよりも更に濡れやすく、さらにフェラの時点で余すところなくヌルヌルとなったペニスが滑らかに膣壁をかき回す。
 硬質なテューディの表情が生々しく歪んでゆき、ピンク色に上気してゆく。マサキはもっと余裕がなく、ゆでダコのような顔色である。
「ど……どうだ? 私の膣は。妹以上の快楽を与えてやると言ったろ?」
「あぁあ……、うぁああ……」
 脳髄がスパークするほどの快楽に、マサキは他の事がなにも考えられなくなっていた。
 マサキの上でリズム良く腰を振り立てるテューディは、ただただいやらしい、エロスの化身としか表現のしようのない存在であった。
 ウェンディが慈愛と優美の化身、女神ヴィーナスであるとするならば、テューディは欲望のままに限界まで精液を搾り取ることしか考えていない夢魔サキュバスである。
 テューディの乱れぶりは尋常のものではなかった。ゆるくウェーブしたロングヘアを激しく振り乱し、細い腰を絶え間なくくねらせ、貪欲に性を貪る。発情した雌の獣の様相で、肉欲に溺れ、歓喜に喘ぎ、恍惚を求めてよがり泣く。
 マサキは怒濤の攻勢を一方的に受けていることに耐えられなくなり、テューディを抱き寄せ、唇を重ねた。少しでもペースダウンさせたいと思ってしたことだったが、テューディはマサキの側から求めてきてくれたと思ったのか、目を爛々と輝かせて更に激しくヒップを弾ませた。
 マサキはなんとかして身を起こそうと試みたが、テューディに先手を取られた。テューディはマサキの上から四つん這いに覆い被さると、マサキにキスの嵐を降らせてきた。
 怒濤のキスが終わると、テューディはマサキに頬を寄せ、上半身の体重を完全に預ける格好となった。そうしておいて、一度腰を大きく引き上げた。結合が解ける寸前くらいまで引き上げたかと思うと、一気に深々と根元まで咥えこむ。
「うぁ……はうぅ……、おっ!」
 マサキはもう果てる寸前で、出来たことは顔を真っ赤にさせてよがり狂うことだけだった。
 テューディの締まりは強まっていく一方であった。餌を狙う女郎蜘蛛のように全身を密着させ、マサキの精液を搾り取るべく、段階的に食い締めを強めていく。
「も、もうダメだっ……!」
 マサキは震える声を漏らした。
「あっ……、はぁーっ、はぁんっ。い、いいぞマサキっ……! もう少しだ。私も……もう少しで……っ!」
 テューディは興奮しきった顔をくしゃくしゃに歪めた。その表情は、嗜虐心、性欲、歓喜、愛情、それらがない交ぜとなったかのような複雑なもので、きっと、そのどれもが嘘であり、本物でもあり、テューディの持つ複雑な人間性の現れなのだろうと思った。
 精神体として存在しているということは、言い替えれば自身の存在を維持する担保がその精神力にしかないということである。テューディが嘗て持っていた激しい憎しみもまた、ただ生きたいと、自身の存在を証明したいという強い想いが向けるべき方向性を間違えてしまっただけなのではないだろうか?
 そう考えると、かつては恐ろしいだけの存在であったテューディが、とたんに愛すべき存在に思えてきた。ウェンディへの愛情が萎えたとか、テューディに対して抱く想いがウェンディへのそれを上回るとかいったつもりは決してないのだが、本当は生まれてこられなかった虚ろな存在であるテューディに、女として生まれてきた悦びを、他者と触れ合うことでしか得られない肉の悦びを味わわせてやりたいと思えてきた。
「っ……おおおおおっ……!」
 最後の力を振り絞って、渾身の連打を送り込む。テューディの腰をがっちりと掴み、息を止めて腰を振り立てた。限界まで互いの身体を密着させ、子宮の奥を乱暴に叩いた。テューディの肌は汗ばんでいて、いくら強く引き寄せようとしてもヌルヌルと滑った。
 テューディはピンク色に染めた顔をくしゃくしゃにしながら、髪を振り乱し、獣のように喜悦の悲鳴をあげている。
「このまま中で出すぞっ。いいなっ!?」
 テューディはハッとして息を呑んだ。そして濡れた目を細め、信じられないくらい可愛らしく微笑んだ。
「いいわ、来て……」
 蕩けるような甘い声が帰ってきた。
「中で出して……、いっぱい出して!」
 マサキはテューディの豹変に驚き、その顔を凝視した。怜悧な仮面を完全に脱ぎ捨てると、そこには女神でも女悪魔でもない、ただよがり、泣きじゃくるだけの女の顔があった。そんな彼女があえぐ姿はどこまでも美しい。まぶしくもあり、初々しくもあり、それでいてエロティックである。
「出すぞっ……!」
 マサキは腰を送り込み続けている。テューディの腰を抱き締め、もっと奥へ、もっと奥へと限界を越えて貫いてゆく。
「わ、わたしも……わたしもッ……! もうっ……イクうぅっ!」
 テューディが白い歯を突き出す。
「おおおっ……、おおおおおっ!」
 マサキは雄叫びを上げ、欲望を解き放った。身体の一番深いところか脈動し、男根の芯を白濁が迫り上がってゆく。
 もう制御などできないそれは、燃え盛る欲望の塊となって女体の最奥へえぐりこんでゆく。
「あぁぁああーっ……はぁああああ~っ!」
 テューディが1オクターブ高い悲鳴をあげてしがみついてくる。オルガズムスに達し、身体中の肉という肉を痙攣させる。蜜壺が激しくうなり、男根に吸着してくる。ドクン、ドクンッと精を吐き出す度に、性器を通じてひとつの生命体になったかのように感じる。
 マサキは最後の一滴までテューディの中に精を発射した。

      7

「っは……、はぁ……、はあああ……」
「はぁ、はぁ……、うふふふふっ……」
 精も根も使い果たし、ぜいぜいと息を荒げるマサキに、これ以上ないくらい雌の顔をした、満足げな笑顔のテューディが抱きついている。
「マ・サ・キぃ……」
「んだよ……、テューディ……」
 マサキは気だるさと共に首だけをテューディの方に向けて、髪を撫でた。
「一休みしたら、もう一回。出来るな、な?」
 目を細め、少女のように屈託のない笑顔を見せながら見つめてくる。
(やべぇぞ、こいつぁ……。マジになっちまうかも……)
 ウェンディに勝るとも劣らない笑顔に、マサキは苦笑しながらキスを返した。

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