参考に雑誌を見せてもらったけど、可愛い子ばっかりね。
私なんかが載っていいのかすこし不安になっちゃう。
マネージャーがいってた通り、週刊ヤングジ〇ンプの巻頭グラビアは新人アイドルにとってすごいチャンスみたい。たくさんの読者に顔と名前を知ってもらえるでしょ。それをきっかけにブレイクしたアイドルもいる。
普通は大手芸能事務所が売り出してるタレントか、よっぽど知名度がある人じゃないと無理みたい。私、そういうのぜんぜん知らなかった。
内容も、ごく普通のグラビアという感じでちょっと安心した。
中高生が買うような雑誌だからあたりまえよね。
◇ ◇ ◇
撮影現場は、都内のスタジオ。
照明やカメラの機材があって、教室のセットが組んである。
「今日はよろしくおねがいします」
控室で準備をして、スタッフに挨拶をした。
「制服姿が似合ってる。あとヘアバンドも。自前だよね。どっちもいつも学校で身に着けてる」
「私もこの制服が大好きなんです」
カメラマンは、口髭を生やしたベテランね。ちょっと芸術家っぽい。
きらめき高校の制服は、水色のセーラー服で大きな黄色いリボンが特徴なの。
今日は、体操服もスクール水着も学校で使ってるを使用する。普段の私というコンセプトよ。
「緊張してる」
「すこし……こういう撮影ははじめてなので」
「リラックスだよ。自然体で、カメラのことは意識しないように。学校に居るようにすればいいから」
「はい」
「じゃあ、まず黒板の前に立って。目線はカメラで」
黒板の前に立って、カメラを見つめた。
「体をすこし斜めにして、片手を後ろにしてみようか。スマイルだよ。いいねぇ」
すごい写真を撮るの。1ポーズに何枚も。
つぎつぎにいろんなポーズをして、その中から実際に雑誌に載るのは数枚だけ。
集中しないといけないから、結構疲れる。
あとすごい話しかけてくる。
褒めるのがとても上手なの。モデルのテンションを保つのもカメラマンのテクニックのひとつなの。
「ちょっと照れた表情も、すごくいいよ。長い髪もさらさらだし、学園ドラマのヒロインみたいだ」
「うふふ」
「詩織ちゃんみたいな美少女、ボクもはじめてだよ。可憐で清楚で画になる」
「うまいですね。カメラマンさんは、みんなそうなんですか」
「ほんとほんと。たくさんアイドルを撮影してきたけど、こんなにビジュアルが優れてるコはお目にかかれない。レンズを通して、オーラが伝わってくる。売れるコは輝いてる。写真はウソをつけないからね。すぐにわかるんだ。このコは売れるなって」
「へー、そうなんだ」
「詩織ちゃんはまちがいなく売れるよ。ボクが保証してあげる」
「うふふ。ありがとうございます」
「よーし、そこの椅子に座って。教室で勉強してる感じ。詩織ちゃんは勉強得意でしょ」
「そこそこ」
「得意科目は」
「英語と音楽かな」
「ボクは保健体育だったよ」
「うふふ。おもしろい」
すっかり打ち解けた感じ。
スタッフに指示を出すのもすごく的確。やっぱりプロってすごいわよね。
あっという間に時間が過ぎていく。
制服のつぎは、体操服の撮影。
控室で、白い体操シャツに、水色のブルマに着替えた。
うちの高校は、いまだに女子はブルマなのよ。ほんとまいっちゃう。
「ブルマ姿が色っぽいね。眺めてるだけで、健康的な太ももを舐め回したくなる」
カメラマンが私のことを、足元から頭の先まで舐めるように眺めるの。
スタッフの人たちの視線も痛いぐらいに感じる。
「やだ、はずかしいです」
「褒めてるんだよ。制服姿とのギャップがあって、ぐっとくる」
「そういうの、よくわからないけど」
「学校の同級生がうらやましい。体育の授業はタダで拝めるんだろ」
「困ってるんです……ジロジロ見られてる気がして」
「まあまあ、男子はしょうがないよ。雑誌を買ってくれた読者も喜ぶと思うよ。詩織ちゃんはシャツを出す派? それとも中に入れる派なのかな?」
「あんまり考えたことないけど、ちゃんと入れる派かな」
「真面目タイプだね。校則をしっかり守る」
「たぶん、そうかも」
体操服姿で、いろいろポージングした。
膝に手をついて身を屈めたり、教卓に頬杖をついてカメラを見つめたり、指でブルマの食い込みを直す仕草をした。
スタッフの人がマットを持ってきて、そこでストレッチをした。
開脚ポーズはさすがにはずかしかったかしら。
カメラのレンズがズームアップでブルマの股間を狙っていたんだもの。
意識して顔がカーって赤くなっちゃった。
カメラマンは、そういうのもピュアな感じが出ててすごくいいよって褒めてくれたけど。
「マットの上に四つん這いになってみようか。髪で隠れないように顔を横にして、こっちを見て」
「はーい」
「もっと腰を高くあげられる? クイッて」
「こうですか?」
「いいよ。最高のサービスショットだ。お腹がちょっと見えるようにした方がいいかな」
カメラマンが四つん這いのポーズをしている私に近づいてきた。
体操シャツをすこしずらす。
そのとき、ブルマに軽くタッチした。
(え……指が触れたような……気のせい??)
びっくりして、固まっちゃった。
「どうしたの、詩織ちゃん。顔が赤いよ」
「……なんでもありません」
「レンズの向こう側に、たくさんの読者が見てるってイメージしてごらん」
離れぎわ、カメラマンの手がブルマの股間を触った。それも、私の大事な場所を上下になぞるように。
(また……今度は気のせいじゃない)
正直、私は困った。
ここでもし怒ったりしたら、撮影は中止になる。そうしたら事務所ががんばって取ってきてくれた雑誌の仕事もなくなる。みんな、すごく喜んでくれてたのに。
それに、こういうセクハラは芸能界では日常茶飯事なの。業界人は大人の男の人ばかりでしょ。いままでも軽くタッチされることはよくあったし。
こんなことでいちいち腹を立ててたら、アイドルなんて務まらない。悔しいけど、我慢するしかないわけ。
「じゃあ、撮るよ。ちょっとアンニュイな表情で」
「あ、はい……」
「いいのが撮れた。すこし休憩しようか。詩織ちゃんはスクール水着に着替えてて」
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控室で、スクール水着に着替えて準備をしてた。
ちなみに、私たちの学校のスクール水着は斜めに白いラインが入ってるデザイン。
すごくフィットしてて、体のラインが出るでしょ。まるでレオタードみたい。
ドアをノックする音が聞こえて返事をすると、カメラマンが入って来たの。
「もう着替え終わった?」
「あの、なにか用事ですか?」
「撮影前に衣装チェックをしようと思ってさ。まだだっただろ。そこに立ってくれる。後ろもどんな感じか確認しておきたいからさ」
ちょうどマネージャーは飲み物を買いに出てたの。控室には私だけ。
スクール水着の私を、部屋の真ん中に立たせて、カメラマンは上から下にジロジロ眺めてた。
あからさますぎて、あきれちゃった。
「スタイル抜群だね。詩織ちゃんみたいにスタイルいいコ、アイドルでもなかなか居ないよ。色白で、手足がすらっとしてて。よくいわれるでしょ」
「たまに」
「なにかスポーツしてる? 学校で」
「いちおうテニス部でした。芸能活動をはじめるときにやめちゃったけど」
「そいつは惜しいことしたな。聞いてれば、テニスルックの撮影もしたのに。詩織ちゃんの清楚なイメージにピッタリ、白のテニスルック。あとアンスコ」
「えっ……」
カメラマンが手を伸ばして、私の胸に触ったの。
それも堂々と、悪びれる感じもなく。
「胸大きいね。何センチぐらいあるの? 90?」
「あの……やめてください」
「いいじゃん、これぐらい。スキンシップだよ」
「スキンシップって……こんなのおかしい」
「詩織ちゃんはモデルだろ。これぐらいで驚いてたら芸能界で生き残れないよ。カメラマンがモデルの体について知るのは、仕事として当然。商品だからね」
「でも……」
私が抵抗しないのをいいことに、カメラマンはスクール水着の胸をモミモミ、両手で……。
私、男の人にそんなふうに胸を触られたの生まれてはじめて。ショックよ。
逆に本当に仕事なのかもって信じちゃう。
「詩織ちゃん処女でしょ。開脚ポーズを要求しただけで、子供みたいに瞳を潤ませてた」
「っっ……!」
「いまどきめずらしいね。今度、ボクがイメージビデオの撮影をしてあげるよ。サイパンかグアムあたりにロケに行って、紐ビキニでビーチを歩いてさ。詩織ちゃんなら1万枚、いや5万枚の大ヒットまちがいなしだよ。事務所にはボクが話を通す。社長とは飲み仲間だからさ」
「困ります。急にいわれても」
「夜は、ボクが大人の遊びをたくさん教えてあげるからさ。手取り足取り」
カメラマン、すごくしつこい。
私がやめてってお願いしてもやめてくれない。
それどころか手がスルスルと降りて来て、スクール水着の股間に触れた。
「そこはダメ!」
思わず顔をしかめて、膝と膝をくっつけて防いだ。
必死でカメラマンの腕を掴んだ。
「あれれ、大事なところがすこし湿ってる」
「ウソです」
「もしかしてお漏らしかな。写真にはずかしいシミが写るかも」
「いいかげんにして、手をどけてください」
自分でもほとんど触れないような場所を……。こんなの信じられない。
だんだん変な気持ちになってきちゃった。本当は嫌なのに。
(だれかたすけて……このままだと何も考えられなくなる)
もうタジタジ。大人の力にはかなわないもの。
ちょうどマネージャーが戻って来て助かったの。
カメラマンは逃げるように退散したわ。
その後も撮影は続いたけど、ドキドキしっぱなしだった。
だって、あんなことがあったばっかりだし、意識するなといわれても無理。
「おつかれさまでした」と挨拶をして、はじめてのグラビア撮影は終了した。
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