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11.エンディング

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「詩織……おい、詩織!」
 教室の窓から外を眺めていた詩織は、公人に呼ばれてハッとした。
「公人! いつからそこにいたの」
「さっきから呼んでたろ」
「ごめんなさい。気がつかなかったわ」
「最近おかしいぞ。今日の授業中も上の空だったし、なんかあったのか?」
「ううん。ちょっと考え事をしてただけよ」
「ははーん。夏休みが近いから遊ぶ予定でも考えてのか」
「そうね、ふふっ」
「思い出したけど、そういえばプールはどうなったんだ?」
「なに、いまごろ」
「ちょっと気になっててさ」
「……べつになにもなかったわよ」
「だったらいいけどさ。あの後、心配してたんだよな」
「心配?」
「ほら、詩織の帰りがやけに遅かっただろ」
「え……う、うん……」
 愛くるしい瞳をした詩織の視線が一瞬、揺れる。
 声のトーンがわずかに下がった。
「もしかしたらなんかあったんじゃないかと思ってさ」
「ちがうの。ウトウトしてて電車を乗り過ごしただけよ」
 詩織はとっさにウソをついた。まさか終電ギリギリまで、ハヤシの部屋で抱かれていたとは口が裂けてもいえるわけがない。何度もイカされて、すべて中出しされた。次の日にはアソコがヒリヒリとして歩くのにも苦労したほどだ。
「詩織にしてはめずらしいな」
「プールで泳いで疲れちゃってたみたい」
「でも、良かったよな。美樹原さんがハヤシ先輩と別れて」
「そうね……」
「どうしたんだよ。あんまりうれしそうじゃないな。あんなに美樹原さんのことを心配してただろ」
「うれしいに決まってるわよ……これでメグが酷い目に遭うことはなくなったわけだし」
「そっか」
 公人は横目で詩織を見る。
 さらさらのストレートヘアが風になびいて、憂いを帯びた横顔が妙に色っぽい。
 大人の階段を登った影響だとは知る由もない。
「どうしたの、公人?」
 公人の視線に気づいた詩織が不思議そうにたずねる。
「詩織の雰囲気が変わったなと思ってさ。うまく言えないけど、大人っぽくなった気がする」
「うふふ。なによ、藪から棒に」
「好雄がさ、詩織に男ができて経験したんじゃないかっていうんだよ」
「えっ……」
「バカだろ、あいつ。いっつもくだらないことばっかり考えてるからな」
「ねえ、もしも……好雄くんの言う通りだったらどうする?」
「どういう意味だ?」
「……公人の知らないところで、私が男の人にエッチなことをされていたら?」
 公人は言葉に詰まる。
 神妙な詩織の表情と声が冗談に聞こえなかった。
「なーんて。びっくりした?」
「お、おどかすなよ。心臓に悪いぜ、まったく」
「うふふっ、公人のいまの顔、ハワイのお土産のお面みたいだったわよ」
「今度の土曜日、映画にでも行こうぜ。プールの埋め合わせをまだしてなかっただろ」
 公人は思い切って詩織をデートに誘った。
 それに対し、詩織は浮かない顔をする。
「えーっと……その日は、ちょっと」
「なんか予定があるのか」
「友達の家に泊りで勉強会をすることになってるの」
「勉強会? たしか先週も泊まりでしてなかったか?」
「う、うん……苦手な教科があるらしくて……なかなか寝かせてもらえないの」
「徹夜で勉強か。それならしょがないか」
「公人が誘ってくれたのに、ごめんなさい」
「べつに詩織が謝ることじゃないだろ」
「そうだけど……」
「またの機会にどっか行こうぜ」
「ええ」
 窓から突風が吹き込む。
 ヘアバンドをしたさらさらのストレートヘアがなびいて、詩織のスカートがヒラリと舞った。
「きゃあっ!」と、あわてた様子で押さえる。
 公人はバツが悪そうに顔をそむけていたが、目を凝らして見ていれば気づいただろう。
 詩織が身に着けている純白のパンティーからはピンクローターのコードが伸びて、いまも低いモーター音を響かせていたことを。

 おわり

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