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2.カラオケボックス

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 夕子に連れられて、詩織は駅前のカラオケボックスに到着した。
「やっほー。おまた~」
 底抜けに明るい声で夕子がドアを開ける。
 暖色系の壁に囲まれた4畳ほどの部屋は、中央にテーブル、左右にソファー、奥に大型モニターがある。
 入って左手のソファーに頭髪がハゲかけた血色のいい小太りの中年男がいた。
「金沼(かねぬま)さんよ。こう見えて会社を経営してるの」
「あの、はじめまして」
 両手で学生鞄を提げて、詩織は小さく会釈をした。
「待ってたよ。よく来てくれたね」
 たるんだニンマリ顔。
 制服姿の詩織を粘着質な視線で上から下に舐め回す。
(なんだか嫌な感じ……目つきがすごくいやらしいわ)
 詩織が生理的に苦手なタイプだ。
 夕子の知り合いというのでエリート風のナイスミドルを想像していたが、ゴルフとビールが好きそうな中高年にしか見えない。
「こいつはたまげた。写真より実物の方が断然美人だ」
「だからいったじゃん。きらめき高校のアイドルで校内にファンクラブがあるぐらいなのよ」
「あれは男子が勝手に」
 詩織が止める。
「二人ともこっちこっち」
 金沼にうながされ詩織は同じソファーに座った。学生鞄を足元に置く。
「喉が渇いてるだろ。好きな物を注文していいからね」
「あ、はい」
「グフフ、近くで見るとさらに可愛いね。本物のアイドルみたいだ」
 横にスライドして詩織と密着する。
「女子高生のいい匂いがする。シャンプーはなにを使ってるの?」
「ちょっと、近いです」
「髪がさらさらだし、制服姿がよく似合ってる。人形みたいに指が細い」
 詩織の手を握り、彫刻のように細い指を一本一本触る。
「若い子に目がないんだから。詩織が困ってるでしょ」
 夕子がすかさず注意をした。
 テーブルを挟んだ向かい側に座って、タブレット端末を使って注文する。
「鶏のから揚げにフライドポテトでしょ。ここのポテマヨコーンピザも美味しいのよね。デザートにチョコレートパンケーキははずせないし。詩織、ドリンクはなににする?」
「じゃあ、レモンティー」
「レモンティー、レモンティーっと。おじさんはいつものハイボールでいいわよね」

 テーブルの上に料理とドリンクが並んだ。
 天井では小さなミラーボールが回り、マイクを片手に夕子が熱唱をはじめた。
「遠慮しないでどんどん食べて。このピザもチーズがたっぷりで美味しいよ」
「あんまりお腹はすいてないかも」
「緊張してる? もしかして人見知りするタイプ?」
「大人の人とカラオケに来るのははじめてで」
「そうだ、おこづかいをあげるのを忘れてた」
 金沼はスマホを取り出す。
 決済アプリを使って詩織のスマホに送金した。
 ペイペイ! と音声がした。
「あの、1万円になってる。5000円のはずじゃ」
「いいのいいの。約束通り来てくれたお礼」
 1万円は高校生の詩織にとっては大金だ。
 こんな簡単に稼げたことにすこし罪悪感を感じる。
「会社を経営って、どういったお仕事ですか?」
「映像関係。ネットの配信番組の制作したり。仕事柄、芸能人の知り合いも多い」
「よくわからないけど、なんだかむずかしそう」
「詩織ちゃんは彼氏いるの?」
「いません」
「こんなに可愛いのに学校の男子がほっとかないでしょ。いたことはあるよね」
 詩織は真顔で首を左右に振った。
 絹のようなストレートヘアが揺れる。
「中学生の時も?」
「はい」
「出会い系とかパパ活の経験は?」
「……ネットとかあまり見ないし」
「ということは処女?」
「えっ!?」
 ド直球の質問に詩織は絶句した。
「もしかして交際経験はないけど、セックス経験はあるとか。それはそれでおじさん興奮するよ」
「ありません!」
 詩織は強く否定した。
「グフフ、顔が赤くなった。ほんとに処女なんだ」
「……セクハラですよ」
「もっと詩織ちゃんの秘密を知りたいな」
 金沼はデレデレとして詩織の初々しい反応を面白がっている。
「あたしの歌どうだった?」
 3曲連続で歌い終わった夕子がコーラをゴクゴクと飲む。
「夕子ちゃん、すごく上手」
「カラオケはあたしの得意科目だし。つぎは詩織の番よ」
「私はいいわよ」
「だーめ。順番でしょ」
 詩織はマイクを受け取る。
 モニターを見て、流れてくるリズムに合わせて体を小さく揺らした。
 恋する少女の気持ちを綴った青春ソングを抜群の歌唱力で歌い上げる。
「いい声だ。さすが吹奏楽部」
「夕子に聞いたんですか? ひさしぶりでちょっと音程がずれたみたい」
「なんていう曲なの?」
「『もっと! モット! ときめき』です」
「詩織ちゃんのイメージにピッタリ。ささやき~、きらめき~って歌うところが、気持ちが入ってて感動した」
「私もこの歌が大好きなんです」
 歌のことを褒められて素直に喜ぶ。
 それぐらい詩織はこの歌をとても大切にしている。
「ほら、これ。いま撮ったの」
 スマホ画面を見せる。
 歌っている詩織の横顔が動画で映っていた。
「よく撮れてるでしょ。TikTokにアップしたら再生回数が伸びると思うよ」
 金沼は詩織の膝に左手を置いた。
 ピチピチの太腿をやさしくなぞる。
「今度、詩織ちゃんの踊ってみた動画を撮らせてよ。高校生の間で流行ってるでしょ」
「私、ダンスは苦手だし、動画をアップするのはちょっと」
「詩織ちゃんのビジュアルなら絶対にバズるのに」
「あの……さっきから手が……」
「ごめんごめん。つい」
 口では謝ってはいるが金沼は手をどけようとしない。
 それどころかスカートの内側に入ろうとしてきた。
 詩織は両手でスカートを押さえて防ぐ。
「詩織ちゃんはどういった男性がタイプ?」
「やさしくて教養があって、外見もスマートで……」
「おじさんみたいな年上はどうかな? 恋愛対象として」
「金沼さん、ですか?」
 詩織の周りにいるのは同世代の男子ばかりだ。
 自分の父親よりも年上の男性を異性として意識したことはない。
「おじさんとイイことしてくれたら詩織ちゃんの欲しい物をなんでも買ってあげるよ」
「いりません」
 詩織はきっぱりと告げる。
 それよりも太腿をねちっこく擦っている手が気になってしかたない。
 
「真面目なんだ。ますます気に入った」
「……夕子ちゃん」
 脚を組んで退屈そうにスマホを眺めている夕子に助けを求める。
「そんなにお触りしたいなら、あたしのを触りなさいよ」
 夕子が金沼の右隣に移動した。
 腕を掴んで、自分の脚に置いた。
「こっちの生足も張りがあってピチピチだ」
「手つきがやらしー。あたし、エアポッツが欲しいの。おこづかいちょうだい」
「夕子ちゃんは欲しがるねー」
「ねー、いいでしょー、お・じ・さ・ん♪」
 詩織にバレないよう夕子はこっそりウインクをした。
「この場でパンティーを見せてくれたら2万円あげよう」
「マジで? 見せる見せる。詩織もしましょう」
「えっ!?」
 夕子の唐突な提案に詩織は愛くるしい瞳をパチクリさせる。
「おこづかい欲しいでしょ。新しいフルートを買うのに」
「私はいいわよ」
「パンティーぐらいたいしたことないじゃん。見られて減るわけでもないし」
「ぐらいって。なにをいってるのよ、夕子ちゃん」
 2万円はたしかに魅力だが、下着を他人に見せるなど真面目な詩織には考えられない。
 しかも、相手は今日会ったばかりの中年男だ。
「またカマトトぶって」
「ちがうわよ」
「なら平気でしょ。あたしもいっしょだし」
「う、うん……」
 結局、夕子のペースに押し切られてしまった。
 一人だとしないような行動も友達となら平気になる思春期特有の心理もある。
 テーブルを動かしてスペースを作り、詩織と夕子は並んで立った。
 それぞれスカートの裾を両手で握りしめる。
 すぐ目の前には金沼が座っている。
「いっせーのーで同時よ」
「ほんとにしないといけないの?」
「いまさらなにいってるのよ。代金もらったでしょ」
「うん……」
「いい? いっせーのーで、ジャジャーーン!!」
 夕子が勢いよくスカートをめくる。
 遅れて詩織も制服のスカートをお腹の高さまでたくしあげた。
 小さなリボンの飾りがついた純白の下着を金沼の視線にさらす。
「こいつはいい眺めだ。夕子ちゃんはレースの刺繍が入った赤いパンティーで、詩織ちゃんは純白のコットンパンティー。紅白で縁起がいい」
 金沼はホクホク顔で、詩織と夕子の下半身を見比べる。
 二人の身長は同じぐらいだが、詩織の腰の位置がやや高い。
 詩織の太腿は色白でほどよい肉づき具合、一方の夕子はそれよりも熟れて日焼けしている。
「スカートを下ろしていいですか」
「まだまだ。10秒も経ってないよ」
「はずかしくて死にそう」
 前髪のかかった細い眉を斜めに下げて訴える、詩織。
 はじらいの表情がスケベな男心をくすぐる。
「下着はいつも白かな。ドキドキする?」
「すごく」
「詩織ちゃんがエッチな女の子の証拠だよ」
「ちがいます」
「隠さなくてもいいよ。女の子はみんなそうだからね。男にエッチな姿を見られて興奮する」
 金沼は身を乗り出し、詩織のパンティーの中央部分に軽く触れた。
「あんっ!!」
 長いまつ毛を閉じてあご先を反らし、ビクッと震える。
「そんなところを触らないで」
 詩織は思わず声を大にした。
(なにいまの?? 体に電気が走ったみたい??)
 未知の感覚に戸惑う。
「動いたらダメだよ」
「だって……触るなんて聞いてないわ」
「マンコのお肉がプニプニだ。オナニーは週に何回ぐらい?」
「し、しません」
「正直にいわないと、罰ゲームとしていつまでもこの格好をしてもらうよ」
「えっと……1回か2回……」
「やっぱりウソをついてた」
「くっ……」
「すこしだけ我慢したら、おじさんがもっと気持ちいいことを教えてあげるよ」
 優等生の詩織を誘惑するように囁く。
 割れ目に沿って指を動かし、パンティーの表面をやさしくなぞる。
 ビクビクと震えた。
「詩織ばっかり、ずるい」
「た、たすけて……夕子ちゃん」
「金沼さん、うまいでしょ。すぐにアソコが濡れちゃうわよ」
 詩織は嫌で嫌でしかたないのに夕子はどこか楽しそうだ。
 ピリピリとした感覚が腰から下全体にじんわり広がる。
 片側の膝を”くの字”に曲げてなんとか耐えている。
「夕子ちゃんも気持ち良くしてあげよう」
「うふふ。そうこなくちゃ」
「大事なところが熱くなって、パンティーがじっとり濡れてきた」 
 左手で詩織の白いパンティー、右手で夕子の赤いパンティー。
 指先を使って二人の美少女の割れ目を同時に攻撃し続ける。
 クチュクチュと音がしはじめた。
「あ、あん……はぁはぁ……」
「この部屋は防音だから大きな声を出しても平気だよ」
「や……変な気持ちになりそう……」
 詩織はトロリとした表情で壁を見つめる。
 だんだんと頭がぼーっとしたきた。
(このままだと本当に危ないわ)
 詩織は残っていた気力を奮い立たせる。
 よろけるようにして身を屈めると、学生鞄を拾って部屋を飛び出す。
 逃げるようにカラオケボックスを後にした。

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