早川沙織からの手紙

16.沙織ふたたび4

<<前へ 早川沙織からの手紙 -16- 次へ>>  喫茶店を出ても、沙織とナオミは、空白の時間を取り戻すみたいにしゃべりっぱなしだ。 薄い青のワンピースの背中で、セミロングの黒髪がリズム良く左右に揺れているのを眺めているだけで、機嫌がいいの...
早川沙織からの手紙

15.沙織ふたたび3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -15- 次へ>>  土曜日の昼下がり、センター街の時計広場に到着すると、すでに沙織の姿があった。 薄い青のシックなワンピースで、頭にはカチューシャをして、いいとこの女子大生みたいな格好をしてた。女子はほとんど...
早川沙織からの手紙

14.沙織ふたたび2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -14- 次へ>>  翌日、沙織はケロッとしてた。 ヤガミ少尉の部屋で、肘掛け付きの木製の椅子に座って、昨日はよく寝たぐらいの感じだ。 まー、元気そうでなによりだ。 それよりもぼくが気になったのは、沙織が着てい...
早川沙織からの手紙

13.沙織ふたたび1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -13- 次へ>>  廊下で、沙織が木嶋と親しそうにしゃべっているのを見かけた。 ぼくは、(意外な組み合わせだな)と思った。 たまに3組の教室を見ることがあるけど、沙織が小田桐ヒナ以外の女子といるのをはじめて見...
早川沙織からの手紙

12.水晶の柱2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -12- 次へ>>  昼休憩になると、ぼくと沙織は中庭で待ち合わせて、図書館の2階にある特別閲覧室で昼食を一緒に食べるようになった。 ぼくらは、その部屋をヤガミ少尉の部屋と呼んでいる。 不思議なことに、部屋の鍵...
早川沙織からの手紙

11.水晶の柱1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -11- 次へ>>  いつものように目を覚ますと、ぼくは濃密な暗闇に囲まれていた。辺りは、深い海の底のように真っ暗でなにも見えない。 かすかに水の流れる音が聞こえる。 ぼくは床にしゃがんで、まぶたを開いたり閉じ...
早川沙織からの手紙

10.沙織3

<<前へ 早川沙織からの手紙 -10- 次へ>> 「あの日、先輩と待ち合わせをしてたの。神社のまえで」「へー」「先輩に事情を説明したら、新しい浴衣を買ってくれるって。先輩の父親はコンサル会社を経営してるのよ」「そうなんだ」「私、ショックだっ...
早川沙織からの手紙

9.沙織2

<<前へ 早川沙織からの手紙 -9- 次へ>>  フードコートは、学校帰りの学生たちで半分ほど埋まっていた。 ぼくらの高校の制服はむしろ少数で、H女子高やJ高校、B学園などいろいろな制服がある。 カップルらしき男女もチラホラいる。  ぼくと...
早川沙織からの手紙

8.沙織1

<<前へ 早川沙織からの手紙 -8- 次へ>>  HRが終わって教室でのんびりしていると、沙織からメッセージが届いた。『まだ教室?』『さっきHRが終わったとこ』『一緒に帰らない? 校門にいるから1分以内に来て』 沙織が誘ってくるなんて、はじ...
早川沙織からの手紙

7.古墳4

<<前へ 早川沙織からの手紙 -7- 次へ>>  1986年の学校新聞に、ヤガミ老人の写真はなかった。 沙織の話によると、生前の写真は、地元の新聞や企業の広報誌にも残っていないらしい。 生徒の質問に答える形で、本人が生い立ちについて語ってい...