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9.マンション

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 プール終わりの詩織が連れてこられた場所は、駅から歩いて10分ほどの住宅街にある、タイル張りをした外観の低層マンションだった。
 目の前にはコンビニがあり、入り口はオートロックになっている。
 その3階にハヤシの部屋はある。

「おじゃまします」
「適当に座っててよ。荷物はその辺に置いて」
 詩織をリビングに案内すると、ハヤシはクーラーを入れる。キッチンスペースに移動した。
「公園が近くにあって、とても静かな場所ですね。部屋も思ったより広い」
「ワンルームだと思った?」
「うん……料理も先輩がしてるんですか」
「コンビニ弁当が多いけど。あとカップ麺だろ」
「インスタントばかりだと栄養のバランスが良くないですよ」
 グレーの色合いをした、ゆったりとしたカウチソファーに詩織は両足を揃えて座る。
 荷物の入ったプールバッグを床に置く。スマホのボイスレコーダーアプリを起動した。
 部屋の中を見回す。引き戸に仕切られたすぐ隣に寝室のある1LDKの間取りだ。
 窓にはリーフ柄のカーテンかけられ、ガラスのテーブルにはノートパソコンとマンガ雑誌の他、ゲーム機と繋がった大型のテレビがある。ゴミ箱にゴミがたまっている以外は、男の一人暮らしにしては清潔感があるといった部屋だ。
「ヤバいブツでもあった? 詩織ちゃんがくるってわかってたら掃除機でもかけとくんだったな」
「先輩はどうして一人暮らしをしてるんですか?」
「つまんない話だよ。うちは両親が早くに離婚しててさ。おふくろが再婚して、居づらくなったってわけ」
「知らなかった。そんな事情があったんだ」
「一人のが気楽でいいし、好都合だけどね。はい、これ。オレンジジュース。よく冷えてるよ」
 ハヤシはジュースの入ったグラスを差し出す。
「ありがとうございます」
 真夏を思わせる炎天下を歩いてきたこともあり、詩織はなんの疑いもなく口をつける。
 ゴクゴクと飲み干した。
「おかわりならあるよ」
「ううん。もう大丈夫です。いつもと味がちがうかも」
「どんなふうに」
「ちょっと苦味があって、お薬みたい」
「果汁100%のせいじゃないかな」
「ふ~ん。そうかしら」
 詩織は空になったグラスをテーブルに置いた。
「テレビゲームでもする? 発売されたばかりのFPSが熱いよ。マルチプレーで協力して敵を倒すんだけどさ」
「……あの、体育祭の写真は?」
「べつに急がなくてもいいじゃん。せっかく遊びに来たんだし」
「ゲームをしにきたわけじゃありません。もしないなら帰ろうかな、私」
「わかったわかった。きっちりしてるな、あいかわらず」
 ハヤシはカラーボックスから写真の束を取り出した。
 そのまま詩織の隣に腰を下ろす。

「これは応援合戦のね」
 詩織は1枚1枚めくって懐かしそうにながめる。
 体操シャツにブルマ姿の愛が頭に赤いハチマキをして両手にボンボンを持って写っている。
 きらめき高校はいまだにブルマだ。小柄な体で両腕を目一杯広げて、真剣な表情で応援をしている。
 体育祭では詩織と愛のいる赤組が優勝した。
「メグ、かわいい」
 詩織は体育祭のことを思い出した。
 他にもリレーや玉入れなどの競技に参加している写真がある。
「全部、先輩が撮ったんですか?」
「プロのカメラマンみたいだろ」
「へぇ~。すごい」
「こっちはメグちゃんと昼ご飯を食べた時のやつだよ」
 ハヤシは写真を覗き込むふりをして、さりげなく詩織の肩に腕を回す。
 首筋の匂いをクンクンと嗅いでいる。
「いないと思ったら先輩のところに行ってたのね」
「メグちゃんがお弁当を作ってくれてさ。玉子焼きがおいしかったな」
「……これ」
 詩織の指が1枚の写真で止まった。
 愛の写真に混じって、制服姿で登校する詩織の写真があった。
「私……ですよね」
「よく撮れてるだろ。たまたま校門のところで見かけてさ」
「撮るなら一言いってもらえると嬉しいかも」
「声かけても無視するくせに」
「そんなことありません」
「じゃあ、次回からは本人の許可ありってことで」
 肩に回されていた腕が下にずれて、ノースリーブのシャツ越しに詩織の胸を触っている。
 重量感をたしかめるようにモミモミと揉んだ。
「先輩、ちかい……それに手が」
「手がどうした?」
「もう、いいです」
 注意するだけ無駄だと思い、詩織は無視をきめる。
 図に乗ったハヤシの手が大胆に胸をまさぐりはじめる。
「創作ダンスで、ブルマ姿の詩織ちゃんがパカーって開脚してるのも良かったよな」
「見てたんですか」
「みんなガン見してたぜ」
「いやだわ。男子ってほんと子供なんだわ」
「そうツンケンすんなよ。ああいうのが体育祭の見どころだろ。高校生にもなってスプーンリレーなんてやってられねーっつーの。そうだ、いいのがある」」
 思い出したようにハヤシは急に立ち上がり、隣の寝室に消える。
 詩織がホッとしているのもつかの間、戻ってきたハヤシの手には、きらめき高校のセーラー服とスカートがあった。
「学校の制服。先輩がどうして?」
 詩織は怪訝そうに見る。
「勘違いすんなよ。メグちゃんがこのまえ泊りに来た時に忘れてさ」
「メグ、先輩の部屋に泊まったの? ここに」
「あれれ、聞いてない?」
「えっと……電話で話してはいたけど……」
 詩織は唖然とした。
 ハヤシの部屋に泊まったということは、つまりそういうことだ。
(メグは誰に外泊のアリバイを頼んだのかしら)
 詩織はふと疑問に思った。
 愛が無断外泊などできるはずがない。ウソのアリバイを頼めるクラスメイトはかなり限られているはずだ。
「メグの他にも女子を泊めたりしてるんですか? ちょっと気になって」
「詩織ちゃんには関係ないだろ。いたとしても、メグちゃんと付き合う以前の話だけどさ」
「やっぱり……」
「そんなことより、こいつに着替えてくれよ」
「えーっと……いってる意味がわかりません」
「写真をながめてたら詩織ちゃんの制服姿が見たくなってさ」
「急に言われても困ります。だいたい学校でもないのに」
「今日のデートはたのしかったなー。人生で最高の思い出だよ」
「あれがデートっていえるのかしら」
「デートはデートだろ。一日、俺の彼女になるって約束を忘れたのかよ」
「それは……たしかにいったけど」
「延長サービスでさ。ちょこっとだけ。この通り!」
 ハヤシは理屈をこねくって拝み倒している。
 詩織は床のプールバッグにチラリと視線を落とした。アプリが作動しているのを確認した。
 うまくすれば浮気の決定的証拠になるかもしれない。
「……制服に着替えればいいんですね」
「やったね。脱衣所は廊下に出てすぐのドアだよ」
 詩織は制服を持って、教えられた場所に移動する。
 ・
 ・

 いつもの制服姿に着替えた詩織がリビングに戻ると、テーブルが部屋の隅に片付けられ流行りの音楽がかかっていた。
「サイズがちょっと小さいみたい」
 空色のセーラー服を下に引っ張る。プリーツスカートは膝上5センチほどで心細く、とくに黄色いリボンの胸元が窮屈に感じる。
「メグちゃんが1年の時のやつだからね」
「それでなのね」
 サイズが一回り以上小さい理由に詩織は納得した。
 ハヤシの視線に気づいた詩織は、挑発するようにその場でクルリと回転した。
 さらさらのストレートヘアとスカートがふわりと円を描いて、甘い美少女の香りが辺りに漂う。
 無邪気な笑顔を振りまく。
「どうですか、先輩。私の制服姿は?」
「普通に100点満点。スカートが短い方が今っぽい。やっぱ詩織ちゃんは制服姿が一番だよな。トレードマークのヘアバンドもよく似合ってるよ」
「ふふっ、それって私服姿は魅力がないってことですか」
「逆逆。私服姿もイケてるけど、制服姿だと清純さが萌えるだろ。真面目な女子高生って感じでさ。ちょっとそこに立って」
 詩織に部屋の中央に立つように指示する。
「ちょ、ちょっと! 先輩、どこを見てるんですか!?」
 いきなり床にしゃがんだハヤシが制服のスカートの中を覗こうとしたのだ。
 詩織はあわててスカートを押さえた。
「ケチケチすんなヨ。下着も水着も似たようなもんだろ」
「いくら先輩でも怒りますよ」
「水着は見られても平気なのに下着はちがうっておかしくない。さっきまで大勢の前で水着で泳いでたくせに」
「それとこれとは。プールはみんな水着だし」
「パンティー見せるだけじゃん。つーか、詩織ちゃんって俺のことを嫌ってないか」
「べつにそんなこと」
「とかいいつつ、メグちゃんと別れさせようとしてるだろ」
「どうしてそのことを……いったいだれに聞いたの」
「あんま俺を甘く見んなよ。態度を見てたらバカでも気づくさ」
「私は、このままだとメグが傷つくと心配して」
「そこまでいうなら、詩織ちゃんが代わりになってくれたら、別れるのを考えてやってもいいけど」
「どういう意味ですか?」
「説明しなくてもわかるだろ? 勉強できんだし、へへっ」
「本当にメグと別れてくれるの?」
「そいつは詩織ちゃんの態度しだいってところかな。まずはスカートをめくってパンティーを見せてもらおうか」
「……約束ですよ」
 緊張した様子で詩織は、スカートの裾を握りしめる。慎重にたくしあげた。
 ムチっとした、色白の太腿が見える。
「もっともっと。まだ見えないぜ」
 本性をあらわにしたハヤシが調子にノッて煽る。
 詩織は深呼吸をした。覚悟を決めて、制服のスカートをお腹の高さまでめくりあげる。
 優美にくびれた腰のカーブ。小さなリボンの飾りがついた、純白のショーツを身に着けている。
 詩織の下半身からは、処女特有の清純な色気がムンムンとあふれている。
「うひょー。詩織ちゃんの純白パンティー!」
「へんな声に出さないでください……はずかしいわ」
 詩織は恥じらいに目元を上気させ、腰をモジモジとさせる。
「ブラもブラも」
「は、はい……」
 詩織はこれも愛を救うためだと自分に言い聞かせる。
 セーラー服を両手で下からめくる。
 パンティーとお揃いの、純白のブラジャーに包まれた胸元を晒した。
 そこだけ発育した、果実のようなバストがたわわに弾む。
「セクシー! 水着よりマブいじゃん。当たり前か」
「もういいですか」
「この程度じゃ水着と変わらないだろ」
「でも……」
「ブラを自分でずらして乳首を見せろよ。プールでは拝めなかったからな」
 ハヤシの命令に詩織は絶句する。
「その顔はなんだ。まさかできないとは言わないよな。メグちゃんは大事な場所の奥まで、自分の指で開いて見せてくれたぜ」
「ウソでしょ!? メグが!?」
「親友の意外な一面を知ってびっくりしたか。ほらほら、メグちゃんの身代わりになるんだろ」
「はあ……するしかないのね……」
 ジリジリと肌を焦がすような感覚。詩織はあきらめにも似た気持ちだ。
 伏し目がちに、指先をブラジャーのカップに引っかけて下にずらす。
 可憐に色づいた乳首が顔を覗かせる。
「キター! 詩織ちゃんの生乳首。ピンク色をして、豆粒みたいに小さい」
「見ないでください、先輩っ」
「他の男に触られてないんだよな? マジうまそうな乳首」
 ハヤシが指先で乳首を軽くつつく。
「あんっ!!」
 感電したように上ずった声を漏らして、詩織はあご先を逸らした。
 時間差で乳首がぷっくりと起き上がる。
「ハアハア、詩織ちゃんの乳首が勃起したぞ。すげええ」
「だ、だめです。私の体に勝手に触らないで」
 詩織は乳首を守るように片手で隠した。
 顔が真っ赤になっている。
(どうしたの、私の体……先輩に軽く触れられただけなのに、すごく熱い……)
 詩織はいままでに経験したことのない肉体の違和感に困惑する。
 さっきから頭がクラクラとして、冷静な判断ができないのだ。
 全身が火照って足元がフワフワとするような、それでいて見られているだけで心臓がバクバクと早鐘を打つ。まるで魔法にかかってハヤシに恋をしているような気分だ。
 密かにオレンジジュースに盛られていた、覚せい剤の成分を含んだドラッグによる影響だとは詩織は知る由もない。
「詩織ちゃん、顔が赤いよ」
「えっ、あっ……先輩のせいです」
「へへへっ、すごく敏感な体だね。軽く触れただけなのに、飛び跳ねたりしてさ」
「やだ……変なんです、私の体」
「じゃあさ、この乳首を舐めたらどうなるかな。手をどけろよ」
「ぜ、絶対にだめです」
「メグちゃんと別れる話はなかったことになるぜ?」
「くっ……待って……わかりました……」
 ここまできてあきらめれば、すべてが水の泡となる。
 詩織は悔しさを押し殺して、胸を隠していた手をどけた。
 前髪のかかった眉を斜めに下げて、中空を見つめるように愛くるしい瞳を潤ませる。
「詩織ちゃんの可愛い乳首はどんな味がするかな」
 体勢を低くしたハヤシが顔を近づける。
 かすかに震えている乳首をペロリと舐める。
「あんっ!」
「まだまだ」
「んっ……先輩が私の乳首をっ……!?」
「ハアハア、詩織ちゃんの乳首が甘いよ。口の中でコリコリしてる」
 怯えたように後退する詩織のバストを掴むように支えて、ハヤシはレロレロとしゃぶる。
 乳房の半分近くを口の中に含んでベロで転がした。
 チュパチュパと音を立てて吸い、唾まみれに変える。
 その間、詩織は瞼を閉じて、しきりにイヤイヤをして、ヘアバンドをしたストレートヘアを揺らしている。
「だめっ、だめです、先輩……へんになっちゃうわ!」
「ハアハア、乳首だけでイケよ」
「いやああーーっ!!」
 アニメのヒロインのような顔立ちをしかめた詩織が甲高い声を発した。
 膝をガクガクと震わせて、まつ毛の先まで全身をビクビクとさせる。
 乳首を責められただけで軽いアクメに達したのだ。
 ハヤシが乳首を舐めるのをやめても、詩織は「はあはあ……」と肩で息をしている。
「気持ちよかった? 詩織ちゃん」
「こんなの……信じられない。自分の体じゃないみたい……」
「へへへ、こっちはどうなってるかな」
 ハヤシは右手をスカートの中に忍ばせる。
 大事な場所に触った。
 詩織のパンティーはすでにぐっしょりと濡れていた。
「おいおい。詩織ちゃんのパンティーがヌレヌレじゃん。きらめき高校のアイドルが乳首だけでイッたのか」
「ああ……いわないで……もうダメ……立っていられない」
 恥ずかしさの極致に達した詩織は崩れるように床にしゃがんだ。

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