作者:ブルー
昼休憩――。
公人が教室でのんびりしていると好雄がやってきた。
「暇そうだな。食堂に行かなかったのか」
「めんどくさいから購買部のパンで済ませた」
「青春真っただ中の高校生がぼっちかよ。さびしいねー」
「うるせー」
「ボッチマンのおまえにいいのを見せてやろう」
「新作のゲームで買ったのか?」
「もっと価値のあるのだよ。ほら」
好雄はスマホの画面を公人に見せた。
体育館の練習場で、青と白のレオタード姿をした詩織がフープを手に真剣な表情で練習をしてる画像があった。
「新体操部の練習を盗み撮りしたのか」
詩織は新体操部に所属している。
2年生ながら都大会で入賞するほどの実力の持ち主だ。
放課後には専用の練習場で汗を流している。
詩織が入部して以来、放課後になると見学者が殺到したため、いまでは関係者以外立ち入り禁止になっている。
「なんだよ、見たくないのかよ」
「そうはいってないだろ」
「こんなのもあるぜ」
「うお!」
レオタードの食い込みを指で直している画像に、思わず公人はくぎ付けになる。
レッスンをした直後で、詩織の色白い肌は薄っすらと汗ばんでいて色っぽい。
「バッチしだろ」
「好雄は盗撮の天才だな。ナンパは失敗してばかりだけど」
「一言多いだろ。またいいのが撮れたら見せてやるよ」
「あんまりやりすぎるなよ。バレたら殺されるぞ」
「そんなヘマするかよ。あーあ、詩織ちゃんなら絶対トップアイドルになれたのに」
「まだいってるのか」
「このビジュアルだぜ。国家レベルの損失だと思わないのか」
「本人にその気がないんだからしょうがないだろ」
「お前はいいよな、幼なじみだし。うらやましい奴だぜ、まったく」
「幼なじみつっても、家が隣ってだけだしな」
「詩織ちゃんが他の男と付き合ってもいいのか。俺なら速攻で告るぜ」
家族ぐるみの付き合いで、物心がつくまえから一緒に育ってきた。
公人にとって詩織はあこがれの少女だ。
一方の好雄は、高校に入学した時からの大ファンだ。
校内には非公認の詩織ファンクラブまで存在する。
「詩織は高校の間は彼氏は作らないってさ。いまは勉強と部活に忙しいんだろ」
「それでこそきらめき高校のマドンナだよな。勉強もできてスポーツも万能、おまけに性格もいいし。まさに高根の花だよ」
「怒ると怖いけどな。好雄のことも薄々気づいてるみたいだぜ」
「マジか?」
「この間も、好雄くんって、いつも女子の写真を撮ってるのかしら? っていってたぜ。詩織はガキっぽい男子は嫌いだからな」
「ガーン。もし詩織ちゃんに嫌われたら、このさき生きていく自信ない」
「ハハハ。オーバーだな」
落ち込む好雄を見て公人は笑い飛ばした。
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