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7.売れっ子アイドル

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 あれから、次々に新しい仕事が決まったの。
 シャンプーのCMにファッション誌のモデル、歌番組の出演。
 なんといっても、大手清涼飲料水メーカーが発売しているスポーツドリンクのイメージキャラクターに就任したのが大きい。歴代のイメージキャラクターには、有名なタレントさんばかりなの。一度はCMを目にしたことがあると思う。駅の構内には、制服姿の私が青空の下でスポーツドリンクに口をつけているポスターがずらりと貼ってある。
 新曲はヒットチャート1位。露出を一気に増やして、口コミで一般層に働きかけるマーケティングがうまくいった。駅前のオーロラビジョンには、アイドル衣装で歌う私のPVが流れている。

 ドラマの撮影もはじまった。
 制作発表会の日、会場にたくさんのマスコミ関係者が詰めかけてた。
「ヒロイン役を務めさせていただくことになった、藤崎詩織です。よろしくおねがいします」
 目がくらむぐらいフラッシュが一斉にたかれた。
 壇上には、監督や共演者が並んでる。
「意気込みを聞かせてください」という記者の質問には、「ヒロインは自分とかぶる部分も多いので、多感な女子高生らしさを表現できるように頑張ります」と答えたの。

「お疲れ、詩織ちゃん」
 控室で一息ついていると、花束を抱えたプロデューサーが入って来た。
 赤いバラの花束なの。私にプレゼントしてくれた。
「バラの花がとっても綺麗」
「受け答えも堂々としてて、まるで作品のヒロインがそこにいるみたいだった。明日のスポーツ新聞のトップだ。ドラマ界のニューヒロイン誕生」
「台本を読んでると、スッと入ってきたみたい」
「監督も褒めてたよ。飲み込みが早くて、演技がどんどん上達してる」
「毎日が勉強ばかりです。全部、プロデューサーのおかげです」
 私は感謝を伝えた。
 現場は大勢のスタッフがいて大変。大人ばっかりだし、NGを出さないように必死なの。

 正直、あんな形で処女を失ったことを、すごく後悔していた。
 もしかしたら騙されてるんじゃないかって……。そういう悪い大人も多いでしょ、芸能界は。

 プロデュサーが、テレビ局やスポンサーに声をかけて、直接売り込んでくれたの。
 ただのスケベなおじさんかと思っていたけど、どうやら私の誤解だったみたい。
 社長が業界の大物と媚びていただけある。影響力は絶大ね。
 周りの人の応対もかなり変わった。まえは無名の新人という感じの扱いだったのに、いまはVIPみたいに大切にされてる。社長の服装が高いスーツになったし、送迎の車も新車になったの。事務所のスタッフも増えて、すごく活気がある。

「このあとの予定ある?」
「雑誌の取材に宣材撮影かな」
「売れっ子アイドル。分刻みのスケジュールだ」
「まだ夢を見てるみたい。ドラマに出られるだけでも信じられないのに。学校の友達にも自慢しました」
「日本中が詩織ちゃんの魅力にようやく気づいたんだよ。男子があこがれる理想の女の子」
「うふふ」
「詩織ちゃん、今夜もいいかな。いつものマンションで」
「はい……」
 私は頬を染めてうなずいた。

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