中庭にある小さな花壇は、彼氏との思い出の場所です。
綾菜にとってはじめての恋人です。
昼休憩には、ここで落ち合って、いろんなことを話していました。
将来の夢や、友達の話、部活のこと……。
彼は１学期の終わりに転校してしまいました。
いまは絶賛・遠距離恋愛中です。
出会いは、学校の階段でつまづいて転倒しかけた時でした。
偶然通りかかった彼がドラマの一場面のように受け止めてくれたのです。
ほかのクラスの、名前も知らない男子でした。
それ以来、廊下ですれ違うと言葉をかわすようになりました。
意識するようになるのに、それほど時間はかかりませんでした。
はじめてのデートは水族館でした。
恋愛に興味がなかったこもあり、それまでデートに誘われてもすべて断っていました。
彼だけは、二つ返事でＯＫしました。
どうしてなのか、その時の綾菜にはわかりませんでした。
カラフルな熱帯魚の水槽を見て回り、子供のようにはしゃいでいました。
手を繋ぐこともなかったけど、とても微笑ましい初デートの思い出です。
そういう彼の誠実な人柄に惹かれていたのです。
彼が転校するのを知った日ーー。
屋上で、お互いの気持ちをたしかめ合って結ばれました。
遠く離れ離れになってしまうけど、気持ちは通じあえたのです。
卒業式の日に、彼が迎えにくる約束をしました。
いまは同じ大学を目指して勉強中です。
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