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4.過去編③~招かれざる訪問者達~

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作者:しょうきち

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 時刻は一時間ほど遡る。
 昼下がりの鏡家。長女の魅羅を夕飯のお使いに行かせ、魅羅の母は洗濯したシャツのアイロン掛けをしていた。
 未就園児である末子の鏡は先程昼寝に就いたところで、横ですやすやと寝息を立てている。
「あなた……」
 子供達の手前、平静を装っていたものの、夫の葬儀が一段落しひとまずほっとした心の隙に、今更ながらに喪失感がどっと胸へとのし掛かってきていた。
 忙しさに紛れて心の片隅で鳴りを潜めていた感情が、やもすると一気に解き放たれてしまいそうで、鋭く尖った暗鬱な牙が胸をかきむしってゆく。
(あなた……どうして逝ってしまったの……。 私達家族を残して……)
 夫を想い、胸の内で呟く魅羅の母。
 その顔色は、端正ながらも青白くやつれ切っていた。年齢は40歳を超えているものの、女としての魅力は損なわれておらず、むしろかえって凄艶な悲壮美を漂わせていた。
 結婚して18年。夫の生前は平均週4回程のペースで夜の生活を欠かさない程のラブラブ振りで、年齢を感じさせないグラマラスなプロポーションも未だ健在である。
 結果として7人もの子宝に恵まれた。そして、これからも優しい夫と可愛い子供達との生活は続いてゆくものと思っていた。それなのに……。

 一人ごちていると、不意に呼び鈴が鳴った。
「……はーい」
 玄関扉を開けると、鏡家の玄関先には閑静な住宅街には似つかわしくない厳つい二人組が立ちはだかっていた。
「……あの、どちら様ですか?」
 二人の容貌は、一人は金髪のリーゼントにスカジャン、もう一人はスキンヘッドに黒スーツで、互いにお揃いのサングラスをかけており、とても堅気の様には見えない出で立ちであった。
 スキンヘッドの方は恐らく40歳前後、金髪の方は20代になりたて頃の年代と思われた。
 二人で魅羅の母の肢体を頭頂部から爪先まで舐めるように見回すと、スキンヘッドの男が口を開いた。
「鏡さん……の、奥さんですね? 我々、旦那さんとは生前お仕事でお付き合いさせていただいてもらっていた仲でしてね。この度はお悔やみ申し上げます。ひとつ我々も、ご焼香させて頂こうと思いまして」
「ああ、弔問のお客さまでしたか」
「奥さん、お仏壇は、どちらですかな?」
「え、ええ……。こちらですわ」
 怪しい男二人組に多少の訝しみを感じてはいたが、弔問とあらば理由なく断ることはできない。あまりに色々な事が重なりすぎて、これから始まる悪夢のような出来事に対し、警戒心が鈍っていたという事情もあったのかもしれない。

 魅羅の母は宅内奥、居間にある仏壇へと男二人を案内した。案内された男達は線香をあげると、しめやかに合掌した。
 線香から火を消しつつ、スキンヘッドの男は懐から一枚の茶封筒を取り出すと、魅羅の母へと差し出した。
「奥さん。生前旦那さんにお世話になった我々から、せめてものご香典です。どうぞ。今ここで、中身をご覧頂けますか?」
「え……? あ、はい……」
 魅羅の母は言われるがまま、手渡された封筒の封を切った。すると中から出てきたのは、紙幣ではなく、A4コピー紙に印刷された書類であった。
「な、これは……?」
 魅羅の母が狼狽していると、金髪リーゼントの方がサングラスの隙間から狂暴そうな目を覗かせて捲し立てた。
「おうおう奥さん。貸した金、耳揃えて返してもらおうか? ウチの会社が貸した金300万、利息が膨らんで今は707万飛んで3843円だ。一円たりともまからねえぞ、アァン?」
 封筒の中に入っていた書類は、借用書の写しであった。金300万円也と書いており、確かに鏡家の認印が押印してある。
「ちなみに、先伸ばしにしよったってそうは いかねぇぞ。 元金が膨らみ続けて、トイチだから10日後には利子が70万7384円増える。返しきるまで続く無限の倍々ゲームだぜぇ」
「そ、そんな……」
 金髪の男は魅羅の母に対し、唾が飛びそうな距離で詰め寄っていた。
 金髪の男を慇懃になだめすかし、スキンヘッドの男が後を続けた。
「会社の急場を凌ぐためとして、生前の旦那さんから300万円を用立てるよう懇願されたのが3ヶ月前。それからばったりと連絡が付かなくなり、やっとこさ行方が分かったのがつい先日。電話も通じないし家ももぬけの殻になっていると思っていたら、まさか知らない内に引っ越していたとはねぇ。こんな不幸に見舞われるとは全くもって気の毒だが、借金は借金。旦那さんがもういないなら、奥さん、あんたが払うんだよ」
 最後の一言は、底冷えしそうな程のドスの効いた声色であった。
 3ヶ月前といえば、丁度きらめき市への引っ越しでバタバタしていた時期である。随分急に長年暮らした街を出ることを決断したものだと思っていたが、裏ではまさかそうした事情があったとは。
「そ、その、ウチにはそんなお金はもう……ありませんわ。どうか、お引き取り願います」
「あァ…………!?」
 金髪の男が、ギロリと凄んで見せた。
「おうおう奥さんヨォ、貸した金返さねぇってか!? 今日び小学生でも守るぞ、約束はなァ。返さねぇって言うなら、毎日毎日何度でも弔問させてもらうぞォ、アァん?」
「ひ、ヒィッ……!」
「おい、あんまり怖がらせるなよ。……なに、我々も鬼ではない。交通事故なら保険金や賠償金が入ってくる筈だ。その一部から捻出すればいいだろう?」
「それが……お金はまだ……、入ってこないんです……。交通事故を起こした方が入院していて、病院から退院するまでは交通裁判も始められないと……。何ヵ月先になるか……。ですから今ウチには、本当にお金なんて無いんです……」

 交通事故を起こした老人は、かつて高度経済成長を支えた経済官僚であったが、昨今叫ばれる産業のグローバル化の波に安易に乗り、大企業に対し新興国への下請けを推奨するなど、この国の製造業の空洞化を招いた中心人物でもあった。そのため、間接的に魅羅の父親の鉄工所を苦境に追い込んだ張本人であるとも言える。
 退官後はエリート官僚の例に漏れず、テレビ局の社外取締役や、電機会社の顧問等、これまでの経歴と全く関係の無い、様々な業界へと天下りを繰り返していた。
 75歳まで週1日3時間程度、椅子を尻で磨くだけの悠々自適とした勤務を続け、遂に引退したのが10年程前である。しかし引退後の今でも妖怪のような嗅覚を持って様々な団体への影響力を保持しており、可愛い後輩達の天下り先の確保のため、長年培った人脈力を振るっていた。
 交通事故を起こしたその日も、来年定年を迎える某省事務次官のの天下りの口利きのため、○×銀行の社外取締役を務める男と高級フレンチで会食の予定があり、急いでいるところであった。
 ウィンカーすら出さない二車線変更や、信号ギリギリの急発進、急停車を繰り返した挙げ句、赤信号の交差点に全速で突入し、通行人を撥ね飛ばした。人を轢いてしまったことでパニックになり、ブレーキと間違えてアクセルを全力で踏んだ結果、更なる多数の死傷者が出る大惨事となった。そして事故後も救急車や警察を呼ぶこともせず、即座に大学の後輩でもある警察官僚へ電話を掛け、事件に対する忖度を迫ったり、自身の息子へ電話を掛け、ネット炎上や誹謗の引き金となりうるSNSのアカウントを削除させたりしていた。
 これらの事実は、この場にいる3名にとっては全くあずかり知らぬ事情である。
 しかし、もしもこのような卑劣な工作が巡り巡って何の罪もない鏡家にを窮地をもたらしていることを糾弾されたとしても、老人は決して悪びれることは無いだろう。
 それがこの国に巣食う巨悪が巨悪たる所以である。
 
「ふーっ、ま、そういう事なら仕方ない。その現状じゃあこんな大金、払いきれんだろ」
「そ、それなら……!」
「おっと! まさかチャラにしてくれるなんて思っていないだろうな? こっちもいつ入ってくるか分からん賠償金やらを待っている余裕なんてない。そこで奥さん、いい働き口がある。我々は取り立てじゃあなくて、むしろ救いの手を差し伸べに来たんだよ。なぁ、『玻璃』さん?」
「…………っ!?」
 その言葉を聞いた瞬間、魅羅の母は額に一筋の冷たい汗を浮かべた。
 金髪のリーゼントは、隣でにやにやと下卑た笑みを浮かべていた。
「奥さん、あんた旦那と結婚する前は、名うての風俗嬢だったんだろ? 工場街の玻璃姫といったら、界隈じゃちょっとした有名人だ」
「そ、そんなの……知らないわ……」
 魅羅の母の声は震えていた。
「ふふ、シラを切っても無駄さ。俺も若い頃、盃を受けた記念に一度入らせてもらった事があるんだぜ。ま、20年以上前の話だ。アンタも覚えてないだろうがな」
「……っ!」
「ま、しょうがない。恨むなら旦那さんを恨みな。借金の事を秘密にしたまま逝っちまったバカな旦那をなァ」
「う、うぅっ……。 非道すぎるわ……」
「有難い事に、四十路を過ぎていても、あんたを抱きたいって男はゴマンといるんだ。なに、またソープで働けば、多少の借金なんてすぐに返せるよ。感謝しなよ、そいつらに」
「う、ううぅ……」
「メソメソしてても、あんたに選択肢は無いんだよ。ホレ、本当に今でもソープで働けそうか、俺達が確かめてやる」
「うあっ、な、何をするの?」
 スーツの男が、魅羅の母を後ろから羽交い締めにしていた。
 身動きが取れなくなったところを、金髪の男によってフレアスカートをズルリと脱がされた。薄紫の下着が露となる。
「い、嫌ぁっ!?」
「ヒヒッ、 年の割に腰も括れて、ムチムチしたうまそうなケツしてるじゃねぇか。どうせ旦那が死んでご無沙汰だったんだろ? 」
「ケ、ケダモノ……。あなた達はケダモノです!」
 金髪の男がショーツを下ろす。未亡人の禁断の部分が露になった。魅羅の母親の身体はワナワナと震え、股間は恐怖と屈辱でぐっしょりと濡れていた。
「ひ、人を呼びますよ!」
「おっと、この時間は最寄りの交番が丁度勤務の交代時間で、たとえ110番しても、駆けつけて来るには時間がかかるぞ」
「た、助けて……。誰か……!」
 か弱い懇願も虚しく、薄手のセーターを胸元までたくし上げられ、ブラジャーも剥ぎ取られる。7人の子供達を育て上げた、グラマラスな乳房が露となった。
「ヒヒッ、これはこれは良く張った、予想以上にデカいパイオツしてやがる。まだ乳は出るのか? こりゃまた違った需要も出そうだな」
 スキンヘッドの男は、小指の第一関節から先が欠けたごつごつした掌で、重たげに実った豊かな乳房を揉みしだいていた。ぼってりと充血した乳首をこすられるたび、魅羅の母の切れ長の目が赤みを帯びてゆく。
「オマンコもビショ濡れだぜ、兄貴。こいつ、旦那が死んで相当欲求不満だったに違いねえ」
 そして金髪の男は、ムチムチとした柔らかな内腿から、秘奥へと指を潜り混ませていた。その陰裂は、これから始まる狂宴に対する恐怖にビッチョリと潤んでいた。
「んっ……あぁっ……、違……やめて……。夫の遺影の前で、こんな事……」
「ハハッ、何ならさっきから隣で可愛い寝息を立ててる赤ん坊、起こしてやろうか。ほーら、新しいパパでちゅよー 、ってなァ」
「しかも、二人もいるぜ」
「ハハッ」
「ワハハッ」
「お願いッ! ほ、本当に、許して下さいっ。お金なら働いて必ず返しますから……」
「なに、大人しく犯られてくれりゃあ、今回の利子の支払い分くらいはチャラにしてやる。そらっ、観念して俺様のデカ魔羅を喰らえッ」
「い、嫌ッ、止めてぇッ!」
 魅羅の母は激しく腰を揺すり、嫌悪の叫びを放った。それがまた、鬼畜男達の嗜虐心をエスカレートさせる。
 スキンヘッドの男は漆黒のスラックスを床まで下ろし、極限までパンパンに膨れ上がったシリコン・ボールが埋め込まれたペニスを露出させた。そして、凶暴な怒張を、一息に粘液滴る秘裂へとねじ込んでいった。
「いっ……、あぁーっ!?」
「おっと、デケぇ声を出すと赤ん坊が起きちまうぜぇ。そらそらっ」
 逞しい突き上げを魅羅の母に送り込みながら、スキンヘッドの男は獣めいた欲望剥き出しの唸り声を上げていた。
 天女のような魅羅の母の裸身が、悩ましくプルンプルンと前後に揺れる。
 悦楽の裂け目へヌチャリと肉塊を埋め込んでゆくと、次第に上下のヒダ肉がざわめくように締め付けていった。
「ホラホラ奥さん、オマンコいいんだろ? 我慢しないで、旦那さんに色っぽい声、聞かせてやれよ」
「うぅゥン……、んゥゥン、ああ……あなた……許して……」
「ハハッ、オバさん、こっちがお留守だぜ」
 正面に立つ金髪の男は、魅羅の母の首をぐいと引きずり下ろすと、ズボンを下ろし眼前にペニスを突き付けた。毛むくじゃらの陰毛や性器から立ち上る淫臭に、魅羅の母はむせかえりそうになった。
「ひっ……!」
「オラ、黙ってねえで咥え込むんだよ」
「ん……むぅん……」
 無理やり口膣にねじ込まれたペニスに、嘔吐感が込み上げる。
「おらァ、もっとエロい声で哭けや」
「ン、フゥ、いやン、あふン、ムフゥンっ……だ、駄目ェ……!」
 前後から犯され、発する艶声のオクターブがじわりじわりと上がってゆく。体の芯から火が着いて来るような自らの肉体を戒めるように、魅羅の母は嫌悪の声を上げた。
 しかし、寂しさを抱えた媚肉に、ヌチャリヌチャリと愛液を迸らせ前後からの杭打攻勢を受けると、女としての本能は熱く燃え上がり、生身の肉体が蕩け出してゆくのだ。
 魅羅の母は、そんな己を激しく呪った。
「フゥッ、フゥッ、ババアだ何だってバカにしてたけどよう、中々味わい深いもんだなぁ、兄貴」
「ふふ、情熱を秘めた肉体ってヤツだなあ。これならきっと人気が出るぞ……、ん?」
「どうした?」
「待て……」
 遠くの方から、ドタドタと足音が聞こえてくる。
(しまった……、隣家か何処かに感づかれたか? それとも、ガキの誰かが帰ってきやがったか?)
 次の瞬間、大きな音を立て、強烈な勢いで突然襖が開かれた。そこから姿を表したのは魅羅であった。
「か、母さん!?」
「み、魅羅っ!? 嫌ぁっ!」
「あ、あ、あ、あんた達! 母さんに、何してるのよおっ! 離れてェェっ!」
 魅羅は、手にしていた金属バットを、怒りのままにスキンヘッド男の頭部目掛けて全力で振り下ろした。

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