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3.ヒーローは好雄?

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作者:ブルー

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 放課後、公人は一人で下校していた。
 4時をすぎたばかりでまだ空は明るい。電車通学組は駅へと流れることもあり、住宅街へと続く通学路に生徒の姿はまばらだ。
 郵便局前のバス停をすぎた先で「きゃああ!」という女子の悲鳴が聞こえた。
 公人は声のした路地へ走った。
「!?」
 マンションの駐車場に青ざめた顔色をした詩織の姿があった。
 詩織の物と思われる学生鞄が転がっていて、ただ事ではないと直感する。
 すぐ目の前に男子生徒がうずくまっていた。
「あれは……好雄!? あいつ、写真で飽き足らずに詩織を襲ったのか!!」
 公人は頭に血がのぼった。
 間に割って入って好雄のシャツを引っ掴んで立たせる。
 拳を振りかぶった。
「うわわわっ!」
「えっ、公人!?」
 突然あらわれた公人に詩織はハッとする。
「見損なったぞ、好雄!」
「ちがうのよ!」
 あわてた様子で詩織が止めに入る。
「止めるな、詩織。二度と近づかないようにわからせてやる!」
「バカッ! 好雄くんは私を助けてくれたのよ!!」
「へっ? ……襲ったんじゃなくて?」
「だから、いってるでしょ。二人組の不良に絡まれてたのを助けてくれたの。好雄くんがいなかったら危なかったわ」
「そうだったのか。すまん、好雄」
 公人は掴んでいた手を放した。
「早とちりね、公人」
「いててて……もう一発殴られるかと思ったぜ」
 地面に座り込んだ好雄の顔にはすでに殴られた痕があった。
 鼻から血が垂れる。
「大丈夫、好雄くん? これを使ってちょうだい」
 詩織はスカートのポケットからハンカチを取り出すと、それを好雄の顔に当てた。
 隣にしゃがんで心配そうに見つめている。
「詩織ちゃんのハンカチが血で汚れちゃうよ」
「いいのよ。それより好雄くんのケガが心配だわ」
「これぐらいたいしたことないよ」
「他に痛む場所はない?」
「ほんと平気平気」
「好雄くんってとても勇気があるのね。怖そうな不良相手に一歩も引かないんだもの。見直しちゃった、私」
「へへっ、詩織ちゃんが危ないって思ったら考えるより先に体が動いてたんだよね」
「でも、危険だから次からは自分の安全も考えてね」
 詩織は好雄のケガをいたわるように話しかける。
 もう少しでさらわれて、人気のない場所に連れ込まれて乱暴されていたかもしれない。好雄は詩織のピンチを救ってくれた命の恩人なのだ。
「不良たちはどこだ?」
 公人が辺りを見回す。
 野次馬が集まってきた。
「騒ぎを聞いた人が警察を呼んでくれて逃げたみたい」
「あいつら、他校の生徒だよ。例の雑誌を見てきたファンじゃないかな。詩織ちゃんファンは学校以外にも大勢いるし」
 好雄が殴られた顔を押さえながら状況を説明した。
「詩織の帰りを待ち伏せしてたわけか」
「たぶん」
「物騒なやつらだな」
「強引に私の腕を引っ張って、路地に連れていかれたの。ほんと好雄くんのおかげだわ。それで殴られたのよ」
「やるじゃん、好雄。俺からも礼をいうよ」
「へへっ、女子を守るのは男の役目だろ。詩織ちゃんが無事なら殴られるぐらい屁でもないさ」
「ねえ、立てる?」
「この通り、ピンピンさ」
 立ち上がった好雄は元気をアピールするように頭をかいて笑った。
 公人は地面に落ちていた荷物を拾って渡す。
 遠くからパトカーのサイレンが近づいてきた。

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