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16.祭りの中で

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作者:しょうきち

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      1

 3ーAの女子達が待機する空き教室。
 藤崎詩織はひとり現状に焦りを感じていた。
 その理由はたったひとつ。
 初日いなかった魅羅は知る由もなかったが、当初の予測とは裏腹に、詩織の指名数が著しく伸び悩んでいたためである。
 正午を回っても指名はたったの一件。
 それも受付のポラロイド写真を見て顔のみで指名したようなクチである。裏オプションはやってないと丁重に謝ると、露骨に残念そうな表情で帰っていった。
(こんなの、おかしいわ……。でも、でも……)
 クラスメイトの女子は、もはやその殆どが何らかの裏オプションに手を染めている。
 詩織はそう確信していた。
 待機室で直接そうした事を口にする女子はいない。
 だが、何となく分かってしまうのだ。実際に相対したお客さんの反応もそうだが、高額のチップを貰った事を自慢する女子、疲れたわと言って顎をさする女子、個人的な連絡先交換は禁止のはずなのに、お客さんとおぼしき相手と電話(それも金の話)をしている女子。
 待機室に居る時間が長いこともあって、他の子に散見される一つ一つの要素が、どう考えても皆裏オプに手を染めているという残酷な推測に確信を与えてしまう。
 このままでは、文化祭の思い出は売り上げ最下位という屈辱とともに記憶に刻み付けられることとなってしまう。それだけは絶対に嫌であった。
 懊悩としていると、待機室の扉が開けられた。美樹原愛が一仕事終えて帰ってきたところである。小脇には使い捨てのおしぼりが大量に 入ったバスケットを抱えていた。
 愛とは昨日の一件以来、一言も話していない。
 愛は詩織の元へと歩いてくると、隣の席に座った。
「詩織ちゃん……」
「メグ……」
 悩んでいるのを察したのか、心配げな瞳を向けてくる。
「メグ……、あの……昨日は、私……、っっ!?」
 愛に話しかけようとした詩織は、その襟元を見て思わず息を呑んでしまっていた。
「め、メグ……。何かついてるわよ。ごっ……ゴミ……かしら?」
 内心の動揺を隠しつつ、さっと払った。
「ありがとね、詩織ちゃん。昨日は私も言い過ぎちゃった……。ごめんね……」
「え、ええ……」
 見間違いであって欲しいと思った。
 襟元にあったそれは、埃などではない。栗色ストレートの愛の毛髪でもない。
 それは、数センチほどの黒い縮れた毛。要するに陰毛のように見えた。
 恐るべき想像が、圧倒的なリアリティをもって詩織の脳内に像を結んでいた。
 つまりは、ついほんの先程。その辺りの位置に男性器が来るような何かをしていたということである。
 気のせいであると信じたいものの、こうして近づくと分かる事がもう一つある。
 注意深く感覚を研ぎ澄ませると、愛の口唇からは何やら生臭い匂いが漂ってきている事が分かる。放課後や休み時間、妙にスッキリした顔でトイレから出てくる不良男子から漂う、あの匂いだ。
 詩織は戦慄した。
「メグ……。さっきのお客さんに、フェ……」
「わっ! まっ、待って詩織ちゃん! いきなり何を言いだすのっ!?」
「ごっ、ごめんなさい……。なんでも……何でもないわ」
 混乱のあまりとんでもないことを口走ってしまった。
 親友の顔がもう、まともに見られない。
 赤面して沈みこむ詩織に、愛がそっと耳打ちした。
(詩織ちゃん。さっきのお客さんね、いっぱいザーメン出してくれたの。私も気持ちよくしてもらえたよ。優しかったし、追加チップも貰えたよ)
「んんんんっ!?」
 詩織は思わず椅子から転げ落ちそうになった。目の前の彼女は、ぼんやりと熱に浮かされたような表情をしている。見上げたその顔が、ゾクゾクする程色っぽい。
(メ……メグって、こんな表情ができたの? 私……一体、メグの何を知ってたのかしら……?)
 背筋に冷たいものが走り抜けた。
 目の前に座る親友は、詩織の知る愛とは別人のような表情をしている。男を知ったから? そんなたった一つの事で、これほどまでに人は……女は変わってしまうものなのか。
「め、メグ……あ、あの……あの。ほっ、本当……なの……?」
 やっとそれだけ言葉を絞り出した。
「ふふっ。詩織ちゃんってこういうお話は苦手なの? まるでバージンの子みたい」
 愛はヒソヒソ声で応えた。
「み……みんなこういう話を……いえ、それ以前に、やっぱりみんな、エ、エ、エッチな事……してるっていうの……?」
「このくらい普通だと思うけど……。テレビに出てる人だって、『バージンだと病気だと思われちゃうよ』って言ってたし……。それにこういうお祭り事の日とかは、みんなパアッと開放的になるし。表立っては言わなくても、多分みんなしてるんじゃない?」
 詩織は再び衝撃を受けた。
 他の女子がエッチな事に興じているという事実にではない。自分がいつの間にか、愛の言うところの『みんな』から外れた存在となっていた事実にである。
 これは多くの女子にとって死より恐るべき根元的恐怖と同義であり、詩織も例外ではない。
「あっ、着信」
 詩織のポーチからメール着信を知らせる電子音が鳴った。携帯を取り出して、内容を確認する。
「1時から……。お散歩コースだわ」
「いってらっしゃい、詩織ちゃん」
「え、ええ……。メグ……やっぱり私も……う、裏オプション……やった方がいいのかしら……?」
 普段は自らの正しさに疑いを持つことの無い、詩織らしからぬ発言である。このような事を愛に聞くこと自体が、自分への自信を喪失していた証左と言っていい。
「詩織ちゃん……」
「ごっ、ごめんねメグ! 今のナシっ! 変なこと聞いちゃって……。私、行ってくる」
「待って、詩織ちゃん」
「えっ……?」
「これ。持っていって」
 そう言って渡してきたのは、元々愛が抱えていた使い捨ておしぼりが詰まったバスケットである。
「……これは?」
「使っていいよ。きっと役に立つと思うから」
「そ、そう……。ありがとね、メグ」
 愛から渡されたバスケットを小脇に抱え、詩織は指名客の元へと向かっていった。
 見送る愛の口許に微かな笑みが浮かんでいたが、それに気づくことはなかった。

      2

「はじめまして。詩織です。今日はよろしくお願いしますね」
「おほぅっ、写真よりも美人だね。流石はきらめき高校のスーパーヒロイン」
「やだ、誰から聞いたんですか? そんなの、周りが勝手に言ってるだけなのに」
 魅羅と別れたあと、詩織を指名予約するために大急ぎで受付へ向かった蓮山であったが、あっさり予約がとれたことに若干拍子抜けしていた。
 まあ、例えば風俗店でもNo.1の嬢だからといって常に満員御礼となるわけではなく、皆が予約は既に埋まっているだろうと思い込んだ結果、朝一の枠だけ空いているというケースが発生することもある。そのため、今回の詩織もそういうものだろうと納得していた。
 それよりも、こうして肩を並べて歩いていると分かる。
 魅羅も美しかったが、それは云わば女子高生という枠を些か逸脱したものだった。今日が文化祭という特別な日でなければミスマッチ感すら感じる程である。
 対する詩織はというと、高校の校舎内という場、そして清楚さと肉感とが高いレベルで調和しており、まさに女子高生ならではの魅力を限界まで突き詰めたような存在である。
 指定のセーラー服を規定どおり真面目に着こなしているにも関わらず、フレッシュな魅力をムンムンに放ってくる。
 体型には無駄な肉は無く、ピンと伸びた背筋に均整のとれたプロポーション。それでいて平均を一回り上回るバスト。セーラー服の上からでも上品なラインが伺える。
 プリーツスカートは規定どおりの長さであるものの、何せ脚が長いので歩く度にふわりと揺れ、ムチムチした太腿と共に美脚を覗かせる。
 こうして相対して話していると、ほんの数時間前に射精したばかりだというのに、早くも股間がムズムズと疼き出してきた。抑え込むのが困難なほどだ。
「……? どうかされましたか?」
 きょとんとした顔で見つめてくる。
「い、いや……。あ、そうだ。今日はこれからどこを回ろうか? 何かコースとかあるのかな? それとも、自由に決めちゃっていいのかい?」
 股間に気づかれないよう、早口で捲し立てる。
「はい。このきらめき高校の校舎内となりますけど、お客様のご要望に応じてお好きなところをご案内いたします。特段オーダーが無ければ、色んなクラスの模擬店や展示を中心にご案内しますね」
 鈴の鳴るような声。
 先程魅羅と獣のように求めあったばかりであるためか、セックスのときにはどんな風に哭くのかどうしても気になってしまう。
「好きなところって言ったね。じゃあ、好きなところで好きなことをするのはいいのかい?」
「お、お客様……。それって……」
 詩織の声色が硬いものを帯びた。
「いや、何でもないんだ。忘れてくれ。私は少なくとも詩織ちゃんが望まないことを無理矢理するつもりはないよ。安心してほしい」
「そ、そうですか……。よかった……」
 ほっとした表情を見せてくる。
 今はまだ、彼女の信頼を得るため尽力しなくてはいけない。ここまでの話しぶりからすると、彼女は少なくとも積極的には裏オプションをしていないようだ。さらにこの反応。魅羅から聞いた話も総合すると、まだ処女である可能性は限りなく高まった。
 新宿や池袋にあるJKリフレでは、基本料金のほとんどは店が召し上げるため、ハグやチェキなどのオプション代が直接キャストに入るまともな収入となる。
 だがそれだけでは普通のバイト以下の収入にしかならないので、高収入を求める子はより過激な性的サービスを━━すなわち裏オプションが横行しているのが常である。
 裏オプをしていないとしたら2パターンが考えられる。一つ目は、まだ仕事を始めたばかりで業界の常識や裏オプの持ち掛け方が良く分かっていないケース。二つ目は、裏オプをしなくてよいくらい人気があるケース。
 肉体を使わないからといって後者が健全というわけではない。ではどうやって稼いでいるのかというと、その答えは色恋営業である。要はモテない客から恋愛感情を餌にプレゼントやお手当てを搾り取っているということだ。
 ある意味ではより悪質であると言えるし、実際痴情のもつれから客がストーカー化し、トラブルに発展することも珍しくない。
 だが、詩織は明らかに前者のケースだ。
 男なら誰でも持つ耐えがたい衝動を受け止めたり、男女間にある愛と肉欲を伴う駆け引きといったものを、知識としては知っていても実体験した事はまだ無さそうに思える。
  JKリフレに訪れる客は、自分のように紳士的な人間ばかりではない。
 そうした類の男性に無理矢理押し倒されて一生消えない心の傷を負ってからでは遅いのだ。そしてそうした機会に遭遇してしまうのは、何もJKリフレに限った話ではない。
 彼女の将来のためにも、世の理を教育してやらねばならないのだ。
 蓮山の心中では、身勝手な使命感が沸々と沸き起こっていた。
 

      3

「……というわけで、きらめき高校は約半世紀の歴史を持ち、現在の理事長は━━」
 詩織の案内を聞きつつ、二人で模擬店を巡り歩いていた。
 話す内容そのものにはまるで興味が湧かなかったものの、清純な声色と淀みない語り口は聞いているだけで心地よくなってくるものがある。バスガイドやCAの仕事なら明日からでも務まりそうだ。
「こういうの、慣れてるのかい?」
「えへへ、いっぱい練習したんです」
 感心してみせると同時に、内心では愕然としていた。
 努力は素晴らしいことだが、方向性がズレている。いや、ズレているというのは正確でない。真っ直ぐ過ぎるのだ。
 魅羅ほど過激な事をやるのは極端にせよ、このJKリフレは既に援助交際の温床だ。アングラサイトではそういった情報が現在進行形で走り抜けており、プチ『祭り』と言っていい状況にある。そのことを彼女は知らないのだろうか?
 いや、知らないはずがない。
 それはさっきのリアクションからも分かる。
 彼女は恐らくは真っ当な両親、真っ当な友人、真っ当な教師に囲まれてこれまでの人生を過ごしてきたのだろう。
 悪貨が良貨を駆逐すると思っていない。
 正義が敗北する事は決して無いと思っている。
 そんな彼女を前に、蓮山はある思いを益々強くしていた。
 どんな思いかというと、真っ白な打掛に墨汁をぶちまけるが如く、見た目だけでなく心まで清らかな彼女を思うがままに汚してみたいという欲望であった。
「詩織ちゃんは、やっぱりこの模擬店では一番人気なのかい?」
 表情にやや陰りが見えたような気がした。
「そ、それが……」
「あれ、そうでもないのかな? だとしたらここに来るお客さんたちは見る目がないんだねえ」
「そ、そうでしょうか……」
 不安げな顔を見せてくる。
「詩織ちゃんは魅力的だよ。私が保証する」
「あ、ありがとう……ございます……」
 彼女の頭をポンポンと撫でた。
 嫌がるそぶりは見せなかった。
 セミロングの髪からは清潔ないい匂いが漂ってくるようだった。
 頭を撫でながら、しばらくその香りをうっとりと堪能していると、不意に彼女が身をこわばらせた。
「あの、そろそろ……」
「おっと、もうこんな時間か」
 気づけば早くもお散歩コースの制限時間である30分が過ぎようとしていた。
「ええと、あの……」
「ん?」
「も、もしよろしかったら……」
 もじもじとしながら、何か言いたげに身をよじらせる。
 何を言おうとしているのかは分からないが、かなりの覚悟を胸に秘めていることだけは分かる。
(ひょっとして……、まさかっ! う、裏オプの誘いかっ? 清純な彼女が……いや、まさか?)
 欲望に満ちた期待が胸中を駆け巡る。
 だが、その期待は半分当たり、半分外れといった形で叶えられることとなった。
「もしよかったら、延長……してくれせんか? 私、正直言ってあんまり指名とかも取れなくて、あんまり売り上げにも貢献できてなくて……。ご迷惑じゃなかったら、静かなところでお話とか楽しんだり……できたらなぁって。お客さん、いい人そうですし……」
 たかだか延長のお願いくらいでここまで意を決されてもと思ったが、これはこれで願ってもみなかった展開である。これで彼女との距離を縮められるなら御の字だ。
「……やまだ」
「えっ?」
「蓮山。私の名前だよ。ここからはお客さんじゃなくて、名前で呼んでくれるかい? 名前で呼んでくれるならね、延長くらいお安いご用さ」
「は……はいっ。蓮山さん。よろしくお願いしますねっ」
「それじゃ、場所を変えようか。静かでゆっくりできるところがいいね。この辺りはどうもちょっとね……うるさ過ぎる」
「あっ、それならお勧めのスポットがありますよ。行きましょう、蓮山さん」
 詩織に案内され、向かった先は音楽室であった。確かにここなら展示も無く人はいないだろうし、防音も行き届いており静かだろう。
 同時に、内心では欲望にまみれた期待が膨らんでゆく。
(音が出ても大丈夫。そう、ナニをしても、どれだけ大きな声をあげても……。ムフフフッ……)

      4

「あっ!?」
「ホワッツ!?」
 音楽室に入ると、既に先客がいた。
 きらめき高校の生徒だ。
 男女二人組であった。
 教卓の上に男子生徒が腰掛け、その上に女子生徒が脚を広げてまたがっている。
 その女子はねっとりと頬を紅潮させ、結い上げた髪がはらりと乱れていた。男の首に手を回し、セーラー服の前を開けてブラジャーを露出させていた。
 驚愕に目を見開く詩織と、同時に入口へ目を向けた二人組とで視線が重なっていた。男子生徒は自身の上に乗っていた女子を突き飛ばすと、脱兎のように逃げ出した。それを見た女子生徒は「ソー、バッド」などと言いながら慌てて服を着て駆け出していった。
 沈黙が流れる━━。
 蓮山が咳払いをした。
「……クラスメイトかい?」
 詩織は無言で首を横に振った。
「盛り上がってたところ、邪魔しちゃったかな。それにしても大胆だねえ。これもお祭という非日常がそうさせてるのかな?」
「い、いくら文化祭だからって……。が……学校は、そんなことする場所じゃないのに……」 
 肩をわなわなと震わせ、沈痛な面持ちだ。どうやらかなりのショックを受けたようである。
 蓮山は詩織の肩にポンと手を乗せた。
「このくらいの年代なら、何も珍しいことじゃない。みんなバレないように上手くやっているだけのことさ。そうやって大人になっていく。その点、今の彼らは甘かった。ヤる資格━━大人になる資格のない、まだお子様だったと言ってもいいね」
「そ……そうなん、ですか?」
 蓮山は力強く頷いた。
 詩織の向けてくる目線は、少しずつ尊敬の念を帯びたものとなっていた。
「あっ、あの……」
「なんだい?」
「少し、お話を聞いてもらってもいいですか?」
「もちろんさ」
 教卓前の座席に向かい合って腰掛けた。
 詩織はとうとうと語りはじめた。
「私、こう見えても結構真面目なんです」
 見てればわかるよと言いかけたが、喉元に押し込めて注意深く次の言葉を待った。
「親とか、先生とか……、色んな人の期待に応えようと、勉強もスポーツも真面目に頑張ってきたつもりなんですけど、なんだか最近は友達との間に壁を感じるんです……」
「壁っていうと? 嫌われてるって事かい?」
「そ、そういうわけじゃ……。い、いえ、それさえも分からなくなってきちゃいました……。私、本当は周りの子が何を考えてるのかなんて、何も分かってなかったのかも……。友達だと思ってた子も、私の知らないところでは……その……」
「さっきの彼ら……みたいな?」
 詩織は涙目で首肯した。
「友達だけじゃなくて、クラスのみんながそうみたいなんです。知らない内に私だけが置いてきぼり……」
「まあ、高校三年くらいの年頃ならそんなもんだろうね。私の若い頃もそうだったよ。男も女も半分くらいは高校生のうちに初体験を済ませ、もう半分は大学か就職先か━━いずれにせよ進路先で1~2年の内に経験するのが普通だったよ。二十歳で未経験だとさ、ヤラハタなんて言われてからかいの対象になったもんさ」
 詩織は涙目で肩をわなわなと震わせている。その様子が可愛らしく、ついついからかいたくなってしまう。
「おいおい、今時の女の子なんてもっと進んでるだろ? 18歳成人……だっけ? 詩織ちゃんだってもう成人年齢で、そういうことに全く興味ないって無いわけじゃないんだろ? 彼氏とは週何回くらいしてるんだい?」
「か、彼氏なんていません……! それに私、ま、まだなんです!」
「まだって、まさか……ヴァージン?」
 詩織は勢いよくコクコクと顎を引いた。
「セ、セ……セックスって……、そんなに凄いことなんでしょうか……? 経験済みの子って、なんだか信じられないくらいグッと大人びてるんです……。それこそ人が変わったみたいに」
「そんなに難しく考える必要はないよ」
「えっ……?」
「学校では教えてくれないけど、みんないつかは経験することなんだ。詩織ちゃんの友達
クラスメイトだけじゃない。詩織ちゃんのパパもママも、そこら辺を歩いてる男も女もみんな経験してることなのさ。なんなら詩織ちゃんも一度経験してみるといいよ」
「え……で、でも、はじめては……その……」
「まだ、怖い?」
 詩織は首肯した。
「ああ……女の子はそういうの、あるよね。じゃあこうしよう。これから一つゲームを始める。何も本当にセックスするわけじゃあない。云わば練習、イメージトレーニングだよ。私から詩織ちゃんに触ったりとか、直接エッチな事をしたりははしない。そのかわり、エッチなことを聞いたり話したりはする。そういうゲームだ。これぐらいなら大丈夫だろ?」
「え……あ、はい……。でも、ゲームって……、一体どういうルールなんですか?」
「ああ、説明しよう。手順はこうだ。私から詩織ちゃんに質問をする。詩織ちゃんは質問に答える。質問に対して、答えたくないと思ったり答えられなかったりする場合は嘘八百でもなんでもいいから答える。私はその答えを聞いて、嘘だと思ったらダウトとコールする。コールが当たりなら私の勝ち。本当の事を言ってるのにダウトとコールしちゃったり、嘘の答えに対してコールしなかった場合は詩織ちゃんの勝ち。どうだい、簡単そうだろ?」
「質問しても……いいですか?」
「なんだい?」
「しゃべった答えが本当で、コールもしなかった場合はどうなるんですか?」
「それなら単なる質疑応答だね。何も無し。質問を続ける。あとは……、詩織ちゃんが勝ったら、少しばかりチップをあげよう。私が勝ったら……そうだな、このJKリフレのオプション無料なんてのはどうかな。この方がちょっと勝負めいて燃えるだろ?」
「わかりました。いいですよ」
 彼女の目に火が灯った。どうやら意外と勝負事には熱くなるタイプらしい。

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コメント

  1. pncr より:

    ついに蓮山が詩織と接触しましたね。
    それにしても、詩織の予約がないことがげせないw
    前も書いたとおもうけど、詩織ほどの美少女ならオプションなしでも大人気ですよ。
    散歩から延長の流れも自然です。
    質問ゲームがどうなるのかワクワク。
    ひとつ気になったのは、詩織がよくどもることかな。
    美樹原さんみたいな弱気のイメージを受けました。
    どちらかといえば詩織は真面目そうに見えるけど、気が強くて指摘されると言い返すイメージで、よどみなくしゃべるタイプだと思います。(怒ると怖い)

  2. しょうきち より:

    ブルー様。コメントどうもです。
    詩織の指名数が伸び悩んでいるのは好雄の差し金が大きいです。
    前日からの裏工作により、もはやこの模擬店に来る客は、きらめき高校を風俗店だと思ってる生粋の風俗オタばかりです。
    そんな感じなので、客はお話だけさせてくれる100点の美少女よりも、金次第でHさせてくれる80点90点の少女の方に集まってます。
    そうでない客もたまに来ますが、受付の好雄が裏オプ有りの子へ優先的に回してます。その結果こうなっています。こうした心理的葛藤も好雄の狙い通りです。

    詩織がどもりがちなのは、(書いてる私自身が)美樹原さんに引っ張られたというのもあるんですが、それだけショックで自信を失って迷走している、ということでご理解ください。
    その証拠に、次話以降はだんだん自信に満ち溢れた感じとなってゆきます。

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