イラスト・小説投稿サイト
登録者数: 33
today: 1371
total: 1721754
lion
作品閲覧
彼女の後悔
8
create
2017/11/20
today
5
total
1229
good
1

クマ紳士

4月13日

「……まったく、なぜ僕がこんな雑用を請け負わなくてはならないんだ」

図書委員長として、僕に担任教師から送られた話は、転校生を案内しろとの事だった。

何でも図書室で調べ物をしたいと教師に言ったらしいが、自分で案内すると口にした教師が急用で案内出来ないらしい。

別に図書室ぐらい自分で調べて来いと言いたいが、約束した手前、案内しない訳には行かないらしい。

クソ! この僕を使いっ走りに使いやがって! 覚えていろ、あの教師め!

僕は学年でもトップクラスの学力を有している。自慢だが、全国模試も30位以内には入っているのだ。

図書委員は、僕の株を上げる庭だ。

この学校は蔵書が多く、図書の量も多い。故に学校側も管理を大切にしている。

……僕からして見れば、古臭いカビの生えた本など、捨てるべきだとは思うが……時期が来たら、直訴するべきだな。

僕の親は、この学校の校長に顔が効く。この学校に工面している資金の1部を僕の親が払っているからだ。

校舎の渡り廊下に出て、辺りを見回す。確かあの教師は、東棟と西棟の渡り廊下で待たせてあると言った。

ここまで来てるなら、後は西棟に入り2階に上がるだけだ。なぜそれすら出来ない、なぜ自分で調べて行かないのか。

僕はさらに腹が立ち、眉根を寄せた顔のまま視線を動かすと……渡り廊下にある飲み物の自販機近くで、ぼうっと過ごす女子を見つけた。

飲み物を片手に、自販機の前で何やら考え事をしている女生徒。

長身で背が高く、腰まで届く長髪はサラサラと揺れていた。

……この女が噂の転校生か。

最近、三年のどこかのクラスに転校生が来たとクラスの男子共が騒がしかった。

僕も同じ三年だが、一々女子の転校生一人に騒ぎ立てるのが馬鹿らしく、興味もなかった為に無視していた。

僕は無遠慮に、君が転校生君かい? と渡り廊下から呼ぶと、長髪の女生徒がこちらに振り向いた。

「転校生君? あぁ、あなたが案内役の図書委員長さん?」

薄く笑みを作るこの女は、こちらを見定めるように視線を投げかける。

こちらも怒りを隠さず、彼女の身体を隅々まで見定めてやった。

「何で怒ってるのか知らないけれど、案内してもらっていいかしら? 自分で行こうとも思ったけれど、先生が呼んで来ると言ったから、私も待っていたの」

空になったコーヒーを見せびらかせ、暗に待ちぼうけを食らったと言いたいらしい。

その態度に腹が立ち、ますます表情を顰める。

僕は彼女に背を向け、こっちだとだけ口にし、図書室に向け歩き出す。

彼女は軽く肩を竦め、空になったコーヒー缶を自販機側のゴミ箱へ投げ入れ、僕の後に付いて来た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここだ。僕は仕事があるんでね、後は自分で調べ物でも何でもするといい」

返事を待たず、さっさと図書室の奥、管理室へと足を進める。

彼女もまた僕を呼び止める仕草もなく、図書室の本棚へと足を進めていた。

視界の端でそれを捉えながら、管理室のドアを開けると、

「あ……お疲れ様です」

一年の図書委員女子が、僕の机に陣取り、管理室のパソコンを弄っていた。

「君、そこで何をしている?」

「え……? この学校の図書って何が置いてあるのかなぁって……先輩のパソコンに一覧があるって聞いて……」

僕の表情で機嫌が悪いのが伝わったのか、一年の台詞が尻すぼみに小さくなっていく。

僕は苛立ちを隠さず、女生徒へ退けと命じると、目を白黒させた女生徒が慌てて席を退けた。

「君、勝手に僕のパソコンを使うなんて覚悟は出来ているんだろうね?」

「え……だ、だって、これは学校の……」

「僕のパソコンだ。学校側に申請し、僕が管理している物だ。無断使用は禁ずると前回の図書委員会で忠告しただろう」

パソコンを操作し、開いていたページを閉じる。パソコンの中には、パスワードを設定しているとはいえ、見られては不味いデータもある。

二、三年の他の図書委員達は僕の言いなりだが、どうやらまだ一年生には僕の恐ろしさが理解出来ていないらしい。

「君、僕の親はねこの学校の校長に顔が効くんだ。君の内申点を下げる事だって簡単なんだよ」

「え……そ、そんなの……」

おどおどしながらも、口答えが出来るようで顔がまだ屈していない。

僕はこうした、聞き分けの悪い生意気な女は大嫌いだった。

「じゃあ退学か。校長には、学校の大事な古書を勝手に売りさばこうとしたとでも言っておくよ」

「は……? な、何言ってるんですか? わ、私そんなこと……」

「君の意見を誰が信じるかな。校長は僕の意見を尊重するよ。君は早ければ明日、家に連絡が行くだろうさ」

口元を曲げ、くっくっくと声を押し殺して笑えば、ようやく頭の悪い一年が状況を理解した。

「や、やめてください! 家に連絡なんて! 退学って! わ、私この学校に入りたくて……友達だって出来たのに!」

血相を変えて、青ざめた顔の一年が僕の方へ詰め寄り、勝手な考えを口にする。

友達が出来た? 学校に入りたかった? なら、ルールを守りたまえ。

「君の話など知らん。ルールを破ったんだ、当然の処置だろう」

彼女の顔すら見ずに吐き捨てれば、一年はその場で膝をつき、がっくりと項垂れる。

声を押し殺し、泣いているようだ。

……本当に馬鹿な女だ。いくら校長に顔が効くと言っても、簡単に生徒一人を退学になんて出来るわけない。

退学にまで追い込む事は出来るが、明日明後日の問題でない事は、少し考えれば分かるだろうに。

泣きじゃくる一年の名も知らぬ女子を見下ろし、ゴミを見るような視線を向けた。

無様に泣きじゃくる姿はうっとおしく、目障りだ。

「許して欲しいかね?」

「え……?」

「許して欲しいかと聞いている」

二度聞き返してやれば、一年は僕の目の前で膝をつきながら、懇願するような台詞を吐いた。

「許して欲しいです! わ、私何でもしますから!」

……本当に馬鹿だな、この女。

「じゃあ裸踊りでもしたまえ。面白かったら、許してやる」

「え……そ、それは……」

僕の提案に絶句した一年が視線を落とす。床へと落ちた視線は、色々な場所をさ迷っていた。

「早くしたまえ。ノロマは嫌いだ」

「あ……あ……」

口をぱくぱくと金魚のように開き、言葉を連ねようとしていたが、上手く声が出ないようだった。

身体を震わせる一年を見ていると、徐々に制服に手を掛け始めた。

その場で制服のリボンを解き、上着のボタンを外し、胸元を開いた。

小ぶりな胸を覆った黄色い下着が顔を出す。

「ほら、まだ裸にはほど遠いぞ。早く脱ぎたまえ」

目を逸らさずに見ていてやると、恥ずかしさからか、女は顔を赤くして目を瞑っていた。

スカートのホックを外し、彼女の股を隠している下着が姿を現す。

僕は興奮が止まらなく、はやる気持ちのまま、女生徒を促し下着も脱ぐよう命じた。

華奢な身体の女は先ほどからずっと泣いている。

そのすすり泣く声すら心地よく、胸元と股を隠す姿に愉悦を感じる。

馬鹿な女は、僕のような知的な人間に使われてこそ本当の価値を得られるというもの。

早く脱ぎたまえと、もう一度催促すると……ようやく胸元を隠すのを止め、意を決したように、下着を外そうと手を伸ばした。

……くく、丁度いい暇つぶしだ。僕に二度と逆らえないよう、今日ここで調教してーー

″ーーコンコン。″

「「!?」」

管理室のドアがノックされ、僕と一年2人は思わず息を呑む。

僕は慌てながらも、一年に服を着るよう命じ、裏返った声で、だ、誰かね?とドアの前の人物に問いかけた。

「……先ほどはありがとう。委員長さん。お陰様で用は済んだわ」

この声……さっきの転校生か。

舌打ちし、無粋な邪魔者に苛立つ。

僕を使いパシリにしたばかりか、さらには余興の時間まで奪うとは、よっぽど僕を怒らせたいらしかった。

「君か。なら、さっさと帰りたまえ。僕の仕事の邪魔をするな」

苛立ちを隠さない声で吐き捨てると、ドアの前から深いため息が聞こえた。

「ねえ、その女の子、泣いてるわよ。どうしてかしら?」

「!?」

ドアの前からの問いかけに、二の句が告げなくなる。

まさかと思った時にはもう遅く、僕の許可もなく、管理室のドアが開いた。

先ほどの転校生が、管理室へと足を踏み入れ、部屋の中にいる僕と……。

「あ……あ、あ……」

泣き顔のまま、まだ服を着れずに身体を隠したノロマが驚きの表情を転校生へ向ける。

「……ホント、男ってどうして……こうなのかしら」

こめかみを抑え、呆れたように肩を竦める転校生に、僕は怒りのままに台詞を吐き出す。

「か、勝手に管理室に入って来るな! ここは図書委員以外は立ち入り禁止だぞ!」

席から立ち上がり、指を指して無礼な乱入者を言及するが、

「大丈夫? 立てる?」

転校生は僕を無視し、一年の女子を気遣う言葉を吐いた。

さらには一年の制服を早々と着させ、部屋から出て行くよう口にしていた。

何を勝手に! と口に出すが、またもこちらを無視し、一年の背中を押し、部屋から退出させた。

一年は何も口に出来なかったが、転校生がドアを閉めた途端、逃げるように駆け出して行くのが分かった。

「あなた、最低ね」

吐き捨てるように言われた台詞に、顔が歪む。

「ふざけるなよ……! この僕に逆らうな! この場所で! この学校では、僕は偉いんだ! この学校の校長とも話が出来るし、僕が言えば二つ返事で事が進むんだ! そうだ! あの一年の代わりに、お前が裸踊りしろ、転校生!」

自分でも自分が抑えられず、気付いた時には転校生の衣服を脱がそうと飛びかかっていた。

あんな醜態を見られ、何とか口封じしようとしたのだ。

しかし、

「いっ!? は、離せ! 痛い痛い痛い!?」

簡単に腕をひねり上げられ、地べたに這いつくばってしまう僕。

あまりの痛さに、半泣きになってしまう。

「有りもしない権力を振りかざそうとするなんて、呆れたわ。貴方、本当は頭悪いんじゃない?」

「ふ、ふざけ!? あいたっ! いた、いた、痛いぃ! 離せ! 離して! 」

反論しようとするが、この暴力女は華奢な二の腕に反してゴリラのような力で僕の腕をひねり上げてくる。

あと少し力を込められたら、僕の腕は簡単に折れてしまうだろう。

「こ、こんな真似して、タダで済むと思うな! すぐにでもうちの親や学校側に掛け合って……!」

涙目で転校生を睨み上げれば、口角を僅かに上げられ、悪戯好きな悪魔のような表情を見せられた。

「……言ってみなさい。その時、あなたを泣かせたのは″向坂環″だって、はっきりと、あなたの両親や学校側に言えばいいわ。ただし、こちらもあなたのした事を包み隠さず公開するけどね」

顔を寄せられ、僕の視界いっぱいに悪魔のような女の顔が映る。

……向坂環? 向坂……向坂っ!?

何度か頭で彼女の名前を繰り返し、ようやく頭の回路が繋がる。

どこかで聞き覚えのある名前だと、記憶の糸を辿れば、その糸の先が絶望だったと思い知らされる。

僕の両親から、つい先日、直接話があった。曰く、向坂家のご令嬢が転校して来たとの事。くれぐれも無礼の無いようにと……うちの親らしからぬ態度を見せられた。

さらには、その次の日、校長に呼び出され……向坂君に手を出してはいけないと諭された。

僕は両親、校長の話を不満げに思いながらも分かりましたと口約束したが……

「き、君が向坂家の……」

青ざめた僕に対し、彼女は愉快そうに満足げに笑顔を作った。

「あら、ご存知なの? じゃあ話が早いわ。あの一年生の子に謝罪しなさい。彼女が許したなら、この場での事は全て忘れてあげる。どうかしら?」

言いながらも、この女はまるで力を緩めていない。口答えしようものなら、僕の腕は折られ、また彼女の口から僕の醜態は明るみになってしまうだろう。

向坂家に畏怖の念を抱いているかのような大人達。彼らが従うのは、僕なんかの言葉じゃなく……。

「どうするのかしら、図書委員長さん?」

にっこりと微笑みながら、僕をひれ伏させる……悪魔だ。

「あ、謝らせて……ください……」

がっくりと項垂れた僕に、向坂環は満足そうに笑みを返した。

作品の感想はこちらにおねがいします
1
© 2014 pncr このサイト上にある画像・文章の複製・転載はご遠慮ください。
since 2003 aoikobeya