lion
イラスト・小説 投稿サイト
today: 2504
total: 1417764
登録者数: 23
作品閲覧
http://pncr.jp/
ヤモリの狙う七日間
2 平凡な朝の風景
create
2017/09/05
作:メルト
today
11
total
537

「ふぁ~。 やべえ今日は彩花姉が体調を崩してるんだった」
康輔は、眠気でぼーっとする頭とだるい身体を起こし、着崩れたパジャマ姿のままキッチンへと向かった。
「確か昨日買っておいた、冷凍のオカユとヨーグルトがあったはず。 彩花姉は、それでいいとして俺は……トーストとハムでいいか」
 普段なら、夏休みは昼まで寝て過ごす康輔だったが、昨日体調を崩し帰宅した彩花の姿を見てはそんな事はできず彩花に代わり家事を行う
事となった。
「まあ、幸いなのは優花姉は出張、花梨は女子高の高原実習でいない事だよな」
 階段を下りながら、ぐーだらな長女と自分も家事ができない癖に、人のやることに文句ばかりいう三女の花梨の事を思い出しながらリビングへと向かう。
「とりあえず、今日と明日はがんばらないと」
 パンッ!と、両頬を叩き気合を入れてリビングの扉を開けた康輔は、その光景に一瞬停止してしまう。
「あ、おはよう! もうじきご飯できるから、早く顔洗ってきなよ」
 そこにいたのは、体調を崩しベッドの上で寝ているはずの彩花が、エプロン姿でフライパンを持ちながらできた料理をテーブルに並べる姿だった。
「彩花姉……、なんで起きてるの? 具合悪いんだから、寝てなきゃ駄目でしょう」
「それがね、昨日はあんなに調子が悪かったんだけど……一晩寝たら治ったみたい」
 フライパンをコンロの上に戻すと、棚の上に置いてあった検温済みの体温計を康輔に渡し料理に戻る。
「37度……平熱だけど、大丈夫なの?」
「うん、むしろ前よりも調子がいいかも」
 おとなしくテーブルに座った康輔に元気のある所を見せつけるかのように、両手をあげガッツポーズをする。
『うっわ、エプロン越しなのにすっごい揺れている』
 ポーズをした際に揺れる学年でもトップクラスに入るだろうといわれる巨乳に一瞬、目を奪われつつも、彩花が気づく前に視線を
そらすことに成功した、
 「ねえ! 大丈夫でしょう」
 「確かに、元気そうだけど……」
 「それじゃあ、いただきます!」
 納得ができないものの、いつも以上にキビキビと動く彩花の姿に何も言い返す事ができず朝食に手を付けた。
 テーブルの上には、焼きたてのトーストにサラダ、中に溶けたチーズが入った熱々のオムレツにミルクの入ったコップが置かれている。
たっぷりとジャムを付けたトーストを口に運び、表情がほころぶ彩花を見つめつつ、自分の視線を動かしチーズの入ったオムレツを引き寄せ口へ運ぶ。
 「彩花姉、朝から凄いボリュームなんだけど……」
 「康輔事だから、私が倒れちゃったから、昨日はコンビニのお弁当かインスタントラーメンしか食べてないんでしょう! だから、昨日の分も含めて
少しボリュームのある朝食にしたんだけど……もしかして多すぎた?」
 昨日の自分の行動を完璧に言い当てられ、ぐうの音も出ない康輔を見つめその表情や仕草で正解だと確信したのか、ちょっと困った表情を浮かべ
ながら言う。
 「今度、康輔でもできそうな料理を教えてあげるから」
 「え、いいよ……めんどくさい」
 「ダメ、結局できないで困るのは康輔なんだから!しっかり覚える、いいね」
 「……はい」
 彩花に押し切られ、結局料理を教わることになってしまった康輔は、ため息をつきつつも目の前の料理を味わうことで逃避することにした。
『食べきれないと思ったけど……やっぱ、彩花姉の作るご飯は美味いな』 
「ご馳走様」
 先にご飯を食べ終えた彩花は、食器をキッチンへ置きながら辺りを見回し頭の中で本日の予定を立てはじめた。
 「さてと、プールへ行く前に簡単に掃除と洗濯ものだけでも済まして置かないと」
 「ちょっ、プールって! 彩花姉、病み上がりでしょう」
 「大丈夫だよ!それに、さっきも言ったけど本当に調子がいいの」
 その言葉を証明するかのように、テキパキと動き散らかり過ぎたリビングをテキパキとかたづけ家の中を綺麗にしていく。
 「でもさ、やっぱり今日は休養を取るべきだと思うよ」
 「……大丈夫だって、心配性だな」
 彩花を心配し、家事を手伝いながら必死にプールへ行くのをやめるように説得する康輔。
 一方で、自分の身体の健康をアピールしいつも通りにプールへと向かうという彩花、二人の意見が平行線を
描きはじめしばらく経った頃。
 「だったら、康輔も一緒にプールに行こうよ」
 「え」
 康輔の頭の中であることが思い浮かぶ。
 神薙家の三姉妹は、何かというと日頃運動不足な康輔をプールへと連れていき、強制的に泳がせる傾向にある。
 以前、泳がされた時は連休の半分を筋肉痛で潰すという酷い目にあった事を思い出し顔を青くさせる。 
 「でっ、でも、俺、部員じゃないからプールサイドに入れないんだけど」
 「今日は、隣の女子高も合宿だしお姉ちゃんもいないし、きっと康輔が泳いでも大丈夫だと思うよ」
 結局、康輔はこの後、十分近くわたって行われた彩花の説得に押し切られる形で水泳部の自主練に付き合うことになった。
作品の感想はこちらにおねがいします
since 2003 aoikobeya to 2014 pncr