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雨宿り
~中章~
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2017/02/28
作:白雲
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――4――
 浴槽から大量のお湯があふれ出る。
 頭まで潜って、勢いよく身体を起こした。熱いお湯で身体を温めても、頭の中のもやもやは消えない。ついつい衝動的に激しい行動を起こしてしまう。
「……」
 思わず排水溝を見詰めて、動きが止まった。
 私はどうして……。
 火照った身体に微かに尿意を感じる。
「ばかばかしい」
 慌てて、シャワーヘッドを掴んで、水をザッとかけた。
 お気に入りのパジャマに着替えて、部屋に戻る。そして、けだるくベッドに倒れ込み、可愛らしいピンクのタオルケットに包まれた。
 衝動が治まらない。
 タオルケットを太腿で挟み、股間に端の厚く堅くなった部分を押し当てる。
 外で犬が人懐っこく吠えている。幼馴染が返ってきたのだろう。その姿を思い浮かべると、胸の奥が温かくなって幸せな気分になる。
 タオルケットをゆっくりと動かす。硬い部分がすすっと股間を通り抜けていくと、ピリピリっと線香花火のような衝撃が下腹部に生じて、ぱっと甘い感情が胸の中に弾ける。思わず、唇を僅かに開いて、微かな吐息をもらした。
 何時もならば、何度か往復すれば治まる筈が、今夜は違う。あの日、あの雨音の響く古いプレハブ小屋の中で、知ってはいけない快楽を知ってしまった……。
……
………
 偶然にも、親友の痴態を覗き見た。
 彼女があんなにも大胆な行動をするとは思ってもいなかった。あの行為は、フェラチオというと合宿で一緒だった女子高の生徒が持っていた本に書いてあった。彼女も目を丸くしていたから、初めて知ったはずなのに、あっさりと経験してしまった。
 恐ろしいほどの行動力である。それともそれが今時の女の子なのだろうか……。自分だけが取り残された気分である。
 もしかしたら、彼女は私を奥手のダサい子と思っているのかもしれない……。そう想うと身体が緊張して堅くなる。
 否、そんな事はない。あってはいけない。私は浅倉南なのだから!
 その時、彼女が口にすっぽりと咥え込んで、男が低く呻く。
 思わず音を立てて生唾を飲み込んだ。その音が身体中に響いた。半ば反射的に口を押さえる。覗き見しているこの姿は、余りにも無様である。絶対に気付かれたくない。全身に震えが走った。
 行為は程無く終わり、二人は小屋を出て行った。
 ホッとした。途端に、全身の力が抜けていく。
 そして、ダイエットのために、コーチが用意していた利尿作用のある紅茶を飲んでいたのが災いした。膀胱にはたっぷりの尿が溜まっていた。
 あの男は、私の失態をすべて目撃した。
 呆然自失とした私に、男は優しくささやいた。今思えば騙されたと分かるが、私に逃げ場所はそこにしかなかった。
 男はキスした後に、私の前に跪いた。
「こうしないと匂いが消えないよ」
 そう言われれば、従うしかない。
 舌が、下のもう一つの唇にふれる。
「き、きたなぁいぃ……」
 震える声で告げ、男の髪を掴んだ。しかし、押しても揺らしても、ピクリとも動かない。ぴったりと張り付いている。
 激しい息が、一度も外気に触れたことのない柔肉に吹きかかり、淡い繊毛を揺らす。
「ひっ、ひゃ~~ぁ!」
 背筋を悪寒が駆けのぼり、堪らず、両腕を胸の前で交差させて、搾るように捩り、絞り出すように悲鳴をもらした。
 私は生まれて初めて腰が抜けた。男の腕に支えられながら、ゆっくりと尻餅をつき、壁に凭れる。
 男は私の太腿を小脇に抱える。
「だ、ダメぇ!!」
 咄嗟に、頭の中に激しく警鐘が鳴り響く。そして、素早く股間を手でガードした。
「それだけはイヤ!」
 そのけたたましい声に、男の動きが止まった。まだ辛うじて理性が残っていたのだろう。だが、すでに高まった欲望は爆発寸前だったらしい。
「ッ……!」
 男は私の鼻を摘まんだ。堪らず、口を大きく開ける。そこへいきり立った一物が口に押し込まれた。
「うぐぁ!」
 嫌悪感に、吐きそうになる。触れるのも嫌で、舌を引き、口を閉じることもできない。
「うっ!」
 男はすぐに射精した。口の中に苦味が広がり、思わず顔を顰める。
「ごほ、ごほごほっ……」
 憎い男性器が口から抜けると、涙をにじませ、顔を真っ赤にして、咳き込む。粘り気の強い液体が喉の奥から零れ落ちてきた。
「ひどい、酷過ぎる。絶対に訴えます」
 咳が止まると、睨み付けて、怒鳴りつけた。
 男は自分のしでかしたことに明らかに動揺している。
「す、すまない」
 そして、土下座した。
 自分よりはるか年上の男性の土下座に、今度は私の方が狼狽した。生まれて初めて見る大人の真剣な土下座に対して、どう対処していいのか分からない。これ以上罵声を浴びせて、責め続けるのは、人として間違っているような気さえした。
 そして、きっと今鬼のような形相をしているに違いない、と気付いた。それは私らしくないと決断した。
「もう顔を上げて下さい」
 ついつい寛容な声で告げている。
 私の中で、彼に対する恐怖心が薄らいでいることに気付く。紳士とは思わないが、所詮、社会の常識から逸脱することのできない小心者、否、臆病者に過ぎない。そんな見下すような気持ちがわいていた。優越感と言えるかもしれない。
「本当に申し訳なかった」
「もういいです。南も男の人の性について、暴走することを知らない訳じゃないから……」
 髪を直しながら、ぼそぼそと呟く。
「南にも、油断……軽率なところがなかったわけじゃないし……」
 男は土下座したまま嗚咽をもらしている。
「でも、ちゃんと反省して下さい」
 少し強い口調で言う。
「はい」
 男は神妙な声で頷く。
 その瞬間、胸が信じられないほどに高鳴った。大人の働く男性を完全に屈服させた。その優越感は目も眩むような快感に達した。
「もういいですから、立って下さい。お話もできません」
 あとは、少しだけ語尾に優しい音色を加えて、微笑んでやった。男にはきっと女神のように思えたことだろう。
 男は甲斐甲斐しく動き、古いロッカーから同じ色のジャージを取り出した。バイトが置いて行ったものだという。
 私はそれを穿いた。
 合宿場の部屋に駆け込み、すぐに着替えれば、誰にもわからないと考えた。その時、汚れたパンツとジャージの後始末については完全に失念していた。
「このことは秘密に……」
 彼は別れ際に、念を押す。
「僕は君が何処の誰なのかも知らないし、もう合う事もない。ここを出たら、僕達は全くの無関係だからね」
 無論である。私は小さく頷いた。
………
……
 パジャマのパンツの中に手を忍ばせる。陰部の部分が、明らかにお湯や汗とは違う体液で濡れている。
 シャツの上から胸を揉む。胸の鼓動が高まり、うっとり悦に入った。
「はぁ……」
 乳首を摘まんだだけで、頭が眩まんばかりに興奮して、甘い吐息を一つ吐き出す。
 それは本能というべきものだったろう。
 パンツの染みの部分を、無意識に指の腹で擦る。
「ああぁんん」
 ぞくぞくする興奮が込み上げてきた。思わず、両太ももで腕を挟み、背筋をうねらせ、喉を反らせる。咄嗟に、猫が寝返りうつようだと思い、そして、自分が発情した雌猫なのだと気付く。
(駄目よ……こんなの……)
 不意に罪悪感を抱いた。自慰自体に抵抗感もあったが、一瞬思い浮かべた相手の顔が、いつもの幼馴染ではなく、絶対にあってはいけない人間のものだったからだ。
 しかし、もはや快楽を求める心は止まらない。
 うつ伏せの体勢となると、脚の間に指を立て、体重を利用して強く陰部を指に擦り付ける。
「うっ、ぅうぅ……」
 枕に顔を埋めて、零れる呻き声を押さえる。
 次第にぬちゃぬちゃとした水音が大きくなっていく。でも、いつまでも指の悪戯を止めることができない。指ではあの柔肉を抉るような舌の動きを再現できず、悶々とした想いが胸の奥に澱みを作る。


――5――
 平穏に時が過ぎていく。
 誰も私がした経験を知る由もない。ただ私の中で、取り巻く友人たちより、少し大人の女性になった気持ちがしているだけ。
 今なら、男の子たちの話す下ネタにも余裕ある態度で応じられるだろうし、女の子たちの恋の相談にも的確にアドバイスできる自信がある。
 でも、雨の日には憂鬱な気分になる。また、駅前を通ると、この線路の先にはあの別荘地がある、と不意に考え、胸を締め付けられるような不安が募る。
 しかし、行き交う人々の中に紛れ込んでみると、彼の顔をよく覚えていないことに気付く。会ったのは僅かな時間だったし、それほど特徴的な顔立ちだった訳でもない。
 ただ、指の爪がきれいに切り揃えられていて、髪の毛の毛先も整えられていた。体からは微かに石鹸の香りがしていた。とても清潔な印象が残っている。
 それに、お互いに、住んでいる所さえ知らないのだ。あの別荘地に近付かなければ、もう二度と会うことはない。
「……」
 下校途中、歩道ですれ違ったサラリーマンを振り返って見た。寂しげな背中が何事もなく遠ざかっていく。これと同じ、一瞬すれ違っただけのイレギュラーな存在でしかない。
 自分のテリトリー外の人物、と改めて確証すると、ほっと安心すると同時に、胸の中にぽっかりと穴が空いたような気分がした。
 気が弛んだせいだろうが、不意に、自分のアバンチュールは終わってしまったのだと不謹慎な感想を持つこともある。

 そんなある日、コーチに半ば強引に強要されて、バレエ公演を観に行く。
 巨大な商業施設の地下の会場へ向かう。金の手摺に赤い絨毯が敷かれた階段を途中まで下りていき、エントランスホールを見下ろすと、心臓が止まりそうになった。
 受付で、紺の制服姿のOLとスーツ姿の彼が仲良く話している。慌てて、パンフレットを見ると、彼の会社が特別協賛となっていた。
 私は頭が真っ白になり、何度も瞬きしながら口を押える。
 その時、彼が振り返り、目が合った。彼が驚きの表情を見せて、周囲を気にした瞬間、私は振り返り、逃げるように階段を駆け上った。
 心臓が破裂したような衝撃が胸を貫き、沸騰せんばかりに滾った血液が頭に駆け上っていき、脳をマヒさせてしまった。
 足の裏に床の感触はない。まるで宙に浮いたような非現実的な感覚である。
 どのくらい時間が経っただろう。訳も分からず無我夢中で走ったせいで、自分が今どころいるのか全く分からなくなった。巨大な商業施設はまさに迷路である。
「許せない!」
 思わず口走っていた。意外に大きな声だったので、恥ずかしさのあまり目に入ったトイレに逃げ込む。
「南にあんなことしておいて、平然と……普通に生活しているなんて」
 悔しさに、ぐっと奥歯を噛み締める。目の奥が熱い。OL風の女性とすれ違うと、更に感情が乱れた。
「別の女と仲良くしているなんて……!」
 便座に腰掛け、スカートを捲り上げる。
「どうして、こんなに…なっているの……?」
 下着の上から陰部に指を宛がうと、ぷちゅ、という卑猥な水音がした。お気に入りの下着は、熱い蜜を含んで、恥ずかしいシミを描いている。
「こ、こんな、ところで、南、オナニーするんだ……」
 罪悪感抱きながらも、指は迷わず、クリトリスへと向かう。
「あっ…んっ!」
 凄く敏感になっているクリトリスを指先で捏ねると、簡単に身体が火照っていく。
「はッあッ…はあ…ああっ…ああんッ……」
 脳裏には、咥えた彼のペニスが鮮明に浮かんでいた。
 無意識に、左手の指を舐める。
「ダメ、ダメ、でも、もっと、もっと……」
 涎をだらしなく垂らして、指を只管しゃぶる。そして、第二関節まで深く咥え込んだ。
「はぁ…んんっ…あっ……痺れちゃう…」
 何時しか、パンツの縁から指を差し込み、直接触り出していた。柔らかな肉は燃えるように熱く、漏らしたように濡れている。
 ぐちゅう、ぐちゅっ、という淫靡な水音がトイレの個室に響く。
 割れ目をなぞる度に、びりびりと神経に電流が流れる。その甘美な刺激に酔い痴れながら、足をもぞもぞと持ち上げて、便座の上に踵を乗せた。そして、パンツを膝まで脱ぐ。お気に入りのパンツが横に引き千切れんばかりに伸び切ってしまう。
「ああ……なんてエッチな女の子なの……こんなに濡れているなんて……」
 パンツの底には、粘り気のある液体が水たまりを作り、陰部まで細い糸をピーンと張っている。
 その事実が、さらなる刺激となった。視界がぐしゃりと揺れて、思考がぼんやりと霞んでいく。
「あああ、気持ちイイ」
 右の人差し指で、蜜を掻き出す。
「んっ……んんっ……はぁっ……!」
 滴が床に飛び散る。
「はぁ…はぁん…はぁっ……あんっ」
 喘ぐ声が切なさを増し、しゃぶっていた左手も股間へ送り、クリトリスを擦る。
「ど、どうして、こんなに気持ちイイの!」
 腰が自然と浮かんで、小さな円を描く。しかし、いつもより激しい自慰に及んでも、湧き上がる肉欲は治まる気配すら感じられない。「どうして、鎮まってくれないの?」
 瞳は蕩けて、呆けた口から涎がこぼれる。
「恐いよぉ~」
 恐慌にも似た心境の中で、思い浮かんだのは、あの狭い密室で身体を密着させた時に感じた彼の体温であり、その微かな体臭であった。そして、何より、あの瞬間の開放感だった。
「ひゃぁぁぁっ!!」
 背を反らせて、ブリッチのように腰を上げる。
「見て、みて、見て、もっとみて」
痙攣する腰から、これまでになく激しく尿を吹き零していた。
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