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アジュールロー
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2014 / 06 / 27
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「そうそう。ありがとうね、詩織ちゃん」
 画面の詩織ちゃんが赤い髪を揺らして不思議そうに小首をかしげる。
 今日はピンクのヘアバンドに、ベージュ色のパジャマを着ていた。
「車では話してくれなかったけど、してくれてたんだね」
「なにがですか?」
「昨日の約束」
 私の意味深な言い回しに詩織ちゃんが固まっていた。
「嬉しかったな。沙希ちゃんとメグちゃんの他に、夕子ちゃんと魅羅ちゃんも誘ってくれたんだね」
「待って。誰に聞いたんですか!」
「それは私がエスパーだからかな」
 私は笑ってはぐらかしたが、詩織ちゃんは間髪入れずに「きっとヨシオくんね!」と食い下がってきた。
 さすが詩織ちゃん、鋭い。


 例のサイトには新しく二つの動画がアップされていた。夕食を食べたあとのことだ。
 学校から戻って急いで編集作業をしたのだろう。再生ボタンをクリックすると、詩織ちゃんが一人で校舎の階段を上がっている映像が動きはじめた。
 次の授業が行われる特別教室に移動しているらしく右腕に教科書やノートなどを抱え、左手でスカートの後ろを押さえるようにして階段を一段ずつ上がっていた。それでもかなり短いせいで下尻のラインが見えそうになる。
 周りにはにぎやかな休憩時間の騒がしさがあった。制服の背中では、赤い髪が階段を上がるリズムに合わせて左右に動いていた。片手で押さえているせいでよけいにエッチっぽく見える。 上下に揺れていた画面が内側を狙うようにローアングルに移動すると、一瞬だけ白い下着が映った。

 踊り場のところで詩織ちゃんがくるりと振り返った。ムッとした表情で、耳元の髪をかきあげる。
 『ヨシオくん!』という尖った声を発した。
『なんだよ、詩織ちゃん。怖い顔してさ、へへへっ』
 どこかおちゃらけた声だった。それでその映像を撮影しているのが『ヨシオ』という名前の男子生徒だとわかった。
『あたりまえでしょ! なによ、その手に持ってる物』
『カメラだよ。なにか面白いハプニング映像はないかと思っててさ。すんごい高かったんだぜ』
『そうじゃなくて、いまスカートの中を撮ろうとしてたでしょ』
『俺が? やだなー。そんなことするわけないじゃん。詩織ちゃんの気のせいじゃないの、へへへっ』
『うそっ! それならどうして私のあとをついてくるの』
『それは同じクラスだからだろ。忘れたのかよ、ひどいなー』
『下手な言いわけしないで。本気で怒るわよ、私』
 詩織ちゃんは切れ長の眉をひそめて、あからさまに軽蔑のまなざしでこちらをにらんでいた。
 まるで私が怒られているような気分になってくる。
『そういえば今日って合唱のテストだったかな』
『ヨシオくん! 話をごまかさないで!』
『なんだよ。機嫌が悪いなー。ごまかしてないよ』
『このまえも勝手に私のこと撮影してたでしょ、教室で。全部わかってるのよ』
『さあー。いつのこと?』
『○月×日の3時間目。英語の授業。それに昨日の体育のときと、放課後の練習のとき』
『あー、あれね。あれは学校の風景を撮ってたんだよ。運動場とか授業の様子とか。べつに詩織ちゃんを狙ってたわけじゃないよ、へへへっ。今日もスカート短いよね。上はノーブラだろ?』
『!!』
『他の奴の目はあざむけても、このヨシオ様の目はあざむけないぜ。もしかして誰かに命令されてるのか。ただでさえ詩織ちゃんは胸がでかいんだしさ』
 詩織ちゃんは持っていた教科書類を盾に制服の胸を隠す。さらに強くにらんでいた。
『知ってるんだぜ、俺』
『な、なにを……?』
『生徒指導の××に怒られただろ』
 一瞬こわばっていた詩織ちゃんがほっとした顔をする。おそらく私とのことがバレたのかと動揺したのだろう。
『私の勝手でしょ』
『冷たいなー。これでもファンクラブの第一号なのにさ』
『それもあなたが勝手に作ったんじゃない。ヨシオくんはもっと女の子の気持ちを考えるべきよ』
『あいつみたいにか?』
『……』
『最近、あんまりデートしてないらしいじゃん』
『それこそヨシオくんには関係ないことでしょ』
『うへえ。幼なじみなのに。まー、どっちでもいいけどさ。それよりさ、例のお願い考えてくれた?』
『なによ、いきなり』
『1回でいいから撮影のヌードモデルになってくれよー。学校中の噂だぜー、詩織ちゃんにとうとう男ができたんじゃないかってさ』
『!?!?』
『おっ。もしかしてマジで――』
『い、いるわけないでしょ。憶測で人を疑うなんて最低の人のすることよ』
『そのわりにはあやしいんだよな』
『しつこいわよ。それにヌードモデルなんかなりません。いいかげんにして!!』
『えー、そこをなんとかさー』
『とにかく、今後無断で撮影したりしないで。でないと先生に報告します!』
 それだけ言いつけて、詩織ちゃんは逃げるように画面から走って消えていた。


 下の動画ファイルには『昼休憩の神風』というタイトルがつけられていた。
 冒頭、詩織ちゃんを真ん中に、虹野沙希ちゃんと美樹原愛ちゃんと朝日奈夕子ちゃんと鏡魅羅ちゃんの五人が横一列に並んで映っていた。場所は晴れ渡った青空の広がる屋上だった。
 詩織ちゃんは別格としても、残りの4人もかなり可愛い。知らない人が見たら、まだデビューするまえのアイドルグループのプロモーションビデオだと思うかもしれない。
 様子がへんだなと思ったのは、詩織ちゃんたちは鉄製のフェンス際にこちらを向きで並んだままで、たまに一言二言おしゃべりをする程度で、まるで何かを待っているように見えたことだ。とくに詩織ちゃんと沙希ちゃんとメグちゃんの3人がそわそわとして落ち着きがなかった。周囲を気にするように盛んに目を動かして、手と手の指をもじもじさせたり、ついてもいないゴミを払うようにしてたりした。
 それをカメラは離れた位置から撮影している。他に生徒はあまりいないようだった。
 私はやっぱり詩織ちゃんが抜群可愛いなと思っていた。同じきらめき高校の制服を着ていても、それぞれルックスからスカート丈などの着こなしまでかなり違う。

 そのとき画面で、風が吹き上げる気配がして、『きゃぁっ!』とか『やだぁ』というマンガみたいな声が聞こえる。
 一斉に5人の美少女たちのスカートがお腹の高さまでめくれた。
(うおお! これはすごい!! まさに神風パンチラ!!)
 思わず生唾を飲み込んでしまった。
 5人ともがめくれ上がったスカートを手で下げようとせずに、まるではじめからそう打ち合わせていたように両腕を後ろにしてカメラに向かって、それぞれ違う表情で生パンチラをしていた。おかげで停止ボタンを押さなくても、彼女たちの下着のデザインから下半身の肉付きや股間の膨らみ具合までじっくりと観察できた。

 小動物系の美樹原愛ちゃんは、性的経験のもっとも乏しそうな彼女らしく、いますぐスカートを下げたい様子で背中にした両腕の肘をぷるぷるさせ、泣きそうな顔をしていた。パンティーは中学生の女の子がはくような、面積の広い淡いピンク色のショーツだった。小さな花柄がある。足は細くて華奢で、血管が透けるように色白く、まだ子供子供している。5人の中で唯一か弱いロリ少女の雰囲気を醸していた。

 その隣では、水色のショートカットをした虹野沙希ちゃんが唇をまっすぐにして、つぶらな瞳を潤ませ複雑な感じの表情で正面を見ていた。かなり緊張しているふうだった。スカートがヒラヒラとめくれている下で、白地に水色の縞々模様をした、いたってノーマルなパンティーが丸見えになっていた。ほどよく引き締まった下半身はまさに食べ頃で、サッカー部のマネージャーをしているだけあってとても健康そうで、かつけなげに見えた。股間の盛り上がり具合はあきらかにバージンのそれだった。

 右端の鏡魅羅ちゃんはフェンスにもたれかかって、ファッション雑誌の1ページみたいに美脚を惜しげもなく晒していた。それだけでも魅羅ちゃんが自分のプロポーションにどれだけ自信があるのかわかる。はじめて写メで見たときもそうだったが1人だけ女子大生が混じっているみたいだった。むしろ彼女の場合は制服姿が妙なエロスを感じさせた。太腿も腰つきもムチムチで、リボンの揺れる制服の胸はまさにボインボインだった。
 スカートが舞い上がっても平然としていて、むしろ風で髪が乱れるのを嫌がっている様子だった。濃いマスカラの似合いそうな視線を伏せて、やや鬱陶しそうな顔をしていた。面倒くさそうにウエーブした紫の髪を片手でかきあげたりする。そういう女王様っぽい感じに私は痺れた。
 下着はレースの刺繍がある紫のランジェリータイプで、高級なブランド品に見えた。後ろはTバックなのか。本当に下着モデルか、放課後にはどこかで大人相手に愛人でもしてそうだった。
 私は、今度帰りの魅羅ちゃんに声をかけてみるかなと考えてしまった。彼女ならあっさりOKしてくれそうだ。

 問題は詩織ちゃんの左隣で、口もとに薄笑いを浮かべて映っている朝日奈夕子ちゃんだった。
 シャギーのかかったオレンジの髪をなびかせ、片手には派手にデコレーションされた携帯を持っていた。軽く日焼けをしていて、他の4人がごく普通の白のソックスを履いているのに対し、彼女だけおしゃれな紺のハイソックスを履いていた。スカートも詩織ちゃんと同じぐらい短い。
 そのスカートがヒラヒラとおへそのあたりまでめくれている。
 下着はローライズでラメの飾りもある、真っ赤な紐パンティーだった。生地の三角形がマイクロビキニ並みに小さい。おそらく普段から男子にパンチラを見られてもいいように対策しているのだろう。そんな余裕があった。
 途中、詩織ちゃんに話しかける。それがどういう言葉なのか映像からはわからないが、軽いノリで詩織ちゃんをからかってそうな唇の動きだった。まるでカメラの位置がわかっているように悪戯っぽい目でこちらを見る。
 そうして夕子ちゃんは他の4人に見えない位置に右手を下げて、隠れてピースサインをしていた。

『マジでやりやがった、夕子のやつ。チェックだ、チェック!』というヨシオの声が聞こえた。
 そのまま画面はセンターの詩織ちゃんに寄る。足下から舐めるように、スカートがお腹までめくれているパンチラを撮影した。短いせいで完全に逆になっている。
『ハアハア、大スクープだぞ。詩織ちゃんがパンティー丸出しだぜ』
 詩織ちゃんは小さなリボンの飾りのある、純白のコットンパンティーを履いていた。真ん中の柔らかい部分がぷにっとして、マンスジの形に食い込んでいた。しかも汗ばんだようにそこだけじっとりと濡れている。磨き抜かれた美脚のラインに、いつも見ている私でさえ動悸が速くなる。
 当の本人はピンクの唇を真一文字に、ヘアバンドをした長くて赤い髪をキューティクルにたなびかして、両腕を背中にそっぽを向いてスカートがめくれていることなどまったく気づいていないようにすまし顔をしていたが、その無関心な立ち姿がかえってわざとらしかった。
 この横顔は視線を強く意識して、マンコの奥を濡らしている顔だと私にはわかった。しかも、先の動画で毛嫌いしていたヨシオに生パンチラを盗撮されているのに気づいている。どうしてそうしているのかは謎だが。
(詩織ちゃん、パンチラを盗撮されて濡らしてるな。どうりで今日は反応が良かったわけだ。これで処女なのだから信じられん)

 吹き続いていた風がようやくやんで、スカートがもとの高さに戻る。止まっていた時間が動きはじめたように詩織ちゃんたちは何事もなかったようにおしゃべりをはじめた。みんな、さりげなくスカートを手で直す。
 画面が詩織ちゃんの顔に寄ると、彼女の顔が熱っぽくなっているのがわかった。
 隣の沙希ちゃんと話しながら風で乱れた髪に手をやり、恥ずかしそうに指先でちょっといじる。チラリとこちらを見た気がした。



「それでパンチラを見られた気持ちはどうだったのかな」
「気持ちって言われても……」
「正直に話してごらん」
「……恥ずかしかったです。すごく」
「それだけ?」
 詩織ちゃんは私の質問に小さくうなずいていた。
 そのときの状況を思い出したように顔を赤くしていた。
「ところで、ヨシオくん以外の男子は何人ぐらいいたの?」
「たぶん、4人か5人か」
「その男子にも詩織ちゃんたちのパンティーを見られたわけだ」
「……」
「ヨシオくんって、同じクラスなんだよね?」
「はい……。早乙女好雄くんです。彼、ちょっと変わったところがあって……」
「どんなふうに?」
「女子の電話番号とか全部調べたりしてるし、あと無断で写真を撮るんです」
「それは詩織ちゃんが可愛いからだよ」
「ちがいます。迷惑してるのは、私だけじゃないんです」
「なるほどねー。いわゆるカメラオタクなのかな。女の子好きの」
「さあ……。クラスのお調子者だって、みんなは言ってます」
 言葉の節々に詩織ちゃんが早乙女好雄に好感を抱いていないことがひしひしと伝わってきた。
「それでどうしてあんなことになったの? まさか詩織ちゃんが夕子ちゃんにまで声をかけたわけじゃないよね?」
 詩織ちゃんはちょっと悲しそうな顔をした。
 おそらく無関係な沙希ちゃんやメグちゃんを巻き込んでしまったことを後悔しているのだろう。
「教室でメグと沙希ちゃんといっしょに話してたら、夕子ちゃんが来て屋上に涼みに行きましょうって言われました」
「昼休憩のときだよね?」
 詩織ちゃんは無言でうなずく。
「みんなでおしゃべりしてると、夕子ちゃんがあっちに好雄くんがいるからからかってやりましょうって言って。魅羅ちゃんがべつにいいわよって……」
 気まずいみたいに詩織ちゃんの声がどんどん小さくなる。
 それで私は頭のすみに引っかかっていたことが解けた。
 夕子ちゃんと好雄はおそらくグルだったのだろう。ノリいい夕子ちゃんを使って、ゲーム感覚での公開パンチラをさせたわけだ。ネットにはそういう女子高生が悪ふざけをした写メが大量にある。これが普段であれば詩織ちゃんがブレーキ役になって実行に移されないのだろうが、詩織ちゃんには詩織ちゃんで私の命令という課題があった。
(ふむふむ。どうやら詩織ちゃんたちは悪運が重なって公開パンチラをさせられたらしいな。私にとってはラッキーだが)


「ひどすぎる。私の知らないところでこんなサイトを作ってるなんて」
 詩織ちゃんは青白い顔色をして、前髪のかかった細い眉を斜めに下げていた。厳しい表情でパソコンを見て、マウスを握りしめていた。
 私がサイトのことを教えた。そうしなければ逆に私が疑われて絶交されかねない勢いだった。
「学校に報告します。好雄くんの仕業に決まってるわ」
「無理だと思うよ。身元がバレないように外国のサーバーを利用してるみたいだしね」
「それなら直接いいます。もう我慢できない」
「それもどうかなー。とぼけられて終わりじゃないの。決定的な証拠がないからね。もちろん一時的にサイトは閉鎖するかもしれないけど、また別の場所に作られておしまいだよ」
「……でも、このままなんて、メグがかわいそう」
 詩織ちゃんはすっかり表情を曇らせて落ち込んでいた。自分のことよりも親友のメグちゃんのことを心配しているみたいだった。
 その深刻な様子を見て、私はある作戦を思いついた。うまく運べばもっとすごい物が見られる。
 もったいぶるように間を置いて、「ふむう。いい手がないわけじゃないよ」と言った。
「ほんとですか?」
 すぐさま詩織ちゃんが飛びついてくる。愛くるしい瞳ですがるようにこちらを見ていた。サイトを完全に閉鎖させる、それしか頭にない様子だった。
「そのためには詩織ちゃんの協力が必要だけど、できるかな?」
 私の問いかけに詩織ちゃんは力強くうなずく。生気のみなぎった目をしていた。
「私、なんでもします。教えてください。こんなの絶対に許せません!」
 私は面白くなってきたぞと思っていた。