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アニバーサリー
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2014 / 06 / 27
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 午前中で授業が終わった教室――。
 残るようにいわれていた詩織は、好雄が来るのを待っていた。
 風になびく赤い髪にヘアバンド、通り過ぎる男子が足を止めて振り返る可憐なルックス。個性的な美少女揃いのきらめき高校にあって詩織はアイドル的存在だ。学校には詩織の非公認ファンクラブまである。

「お待たせ、詩織ちゃん」
「好雄くん」
「廊下で先生に呼び止められちゃってさ」
「ねえ、みんなは帰ったのかしら」
「荷物もないし、そうなんじゃない」
「教室にカメラや跳び箱があるのはどうして? 体操マットもあるでしょ。誰が運んだのかしら」
 さらさらの赤い髪を揺らして不思議そうに辺りを見渡す、詩織。教室は机が半分片付けられ、代わりにビデオカメラなどの機材や体育用具が空いた場所を埋めるように置かれていた。

「あー、俺が運ぶように頼んどいたんだよ。それより、おめでとう」
「おめでとう……??」
「あれ、その様子だとまだ聞いてない?」
「なんの話かしら」
「詩織ちゃんがきらめき高校創立20周年記念事業のモデルに選ばれたんだよ」
「創立20周年記念事業??」
「そのうち校長先生から話があると思うよ」
「ごめんなさい。まだ話が掴めないみたい」
「つまりさ、創立記念として詩織ちゃんを被写体に写真集とDVDを出すわけさ。鼻が高いでしょ」
「私が?? いきなりそういわれても……そもそもどうして創立記念に写真集とDVDを出す必要があるの?」
「ぶっちゃけ建前だよ」
「たてまえ?」
「にぶいなー。少子化でうちの学校も生徒が減ってるだろ?」
「ええ」
「女子生徒をアイドルとして売り出したら新入生が増えると思わない? で、全校男子で投票して詩織ちゃんが見事選ばれたわけ。ミスきらめき高校だし、当然と言えば当然だけどさ」
「好雄くん……?」
「嬉しくておしっこちびりそう?」
「そうじゃなくて、私、そういうのはちょっと」
「理事会も承認済みだぜ。テレビCMも発注したし、いまさらどうすんのさ」
「魅羅ちゃんは? そういうの好きそうでしょ」
「鏡さん? 派手すぎて逆にPTAからクレームが入るよ。学校を代表するのはやっぱり、清純・清楚・清潔じゃなきゃ。その点詩織ちゃんはぴったりだろ」
「みんなが私のことをどういうふうに思っているのかは知らないけど――」
「あれれ、詩織ちゃんは学校がなくなってもかまわないの?」
「えっ?」
「廃校になったら伝説の樹も枯れちゃうんだろうなー。寂しいなあー。詩織ちゃんは自分さえ良ければいい女の子なんだ」
「そういうつもりじゃ……」
「だよねえ。詩織ちゃんは誰よりもきらめき高校のことを大切に思ってるよね」
「え、ええ……」
「じゃあ、引き受けてくれる?」
「わかったわ……学校のためなら」
「やりぃ! こっちで教頭先生に連絡入れとくよ。あ、ちなみにカメラマンは俺だから」
「ちゃんとした人じゃないの?」
「安心してよ、そのへんのプロより腕はたしかだぜ。機材もこの通り最新のを用意しといたからさ。学校の経費だけど。それと撮影中はカメラマンの指示は絶対だからそこのところ忘れないでくれよな」
「はぁ、やっぱり引き受けるんじゃなかったかしら」
「何かいった?」
「ううん、なんにも……」
「そんな浮かない顔しないでさ。詩織ちゃんは断トツの人気で選ばれたんだよ、もっと喜びなよ」
「どうしてかしら、そんな気持ちにはなれないみたい」
「さっそくだけど黒板の前に立ってくれる? すぐ準備するからさ」
「もうはじめるの?」
「善は急げっていうだろ」
「……」
「ぼさっとしてないで、そっちそっち」
 詩織はやや困った様子で前髪のかかった眉を斜めに下げた。

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

「まずは制服姿でスナップ写真だよ。こっち向いて~」
「そっち?」
「なんだ、その気あるんじゃん」
「いっておきますけど、私が協力しているのは学校のためよ」
「わかってるって。そういうツンケンしてるところが詩織ちゃんっぽいよな」
「はあ、なんだか好雄くんが一番嬉しそう」

 まだ納得のいかない詩織は、いつもの感じで黒板を背に両手を前にカメラを見つめる。
「ちょっと表情が硬いかな。にっこり笑ってよ、詩織ちゃん」
「……」
「緊張してる?」
「そういうわけじゃないけど」
「アイドルスマイルで目線はこっちだぜ。カシャッと、一枚目いただき!」
「ふぅ」
「次は軽く耳元の髪を指でかき上げるようにさ。自然に自然に。いいじゃん、イケてるよ」
「ねえ、投票っていってたけど2位は誰だったの?」
「あー、やっぱり気になるんだ」
「勘違いしないで。生徒の一人として知っておく必要があると思っただけよ」
「ちょっと待ってくれよ。どこやったかな。あー、あった、これだこれ。えーっと、2位は虹野さんだよ。3位が館林見晴ちゃん。ちなみに男子の84%が詩織ちゃんがきらめき高校で一番の美少女にふさわしいって選んでくれたよ」
「男子もよほど暇なのね」
「あれ、なんとなく得意そう」
「気のせいじゃないかしら」
「またまた。ほんとは嬉しいんでしょ、ライバルの虹野さんに圧倒的差をつけて選ばれたのが」
「沙希ちゃんもすごく可愛いと思うわよ」
「おー、超余裕じゃん」
「からかわないで」
「まー、みんなのしおりんにビジュアルで勝てる女子なんているわけないよ、虹野さんも他の学校ならかなりイイせんいってたと思うけどさ。ちょっと小首をかしげて、丸めた指先を口もとに当てて微笑んでくれる? ぶりっこポーズでさ」
「こう?」
「そうそう、だんだんアイドルっぽくなってきた。やっぱ詩織ちゃんって絵になるよな」
「そうかしら」
「っていうか、他の女子とオーラが違うよ。髪はさらさらだし、ルックスは愛らしいし、スタイルも抜群だし。まさに理想の女の子だろ。本物のアイドルでも詩織ちゃんに比べたら霞んじゃうよ」
「さすがにそれは褒めすぎよ」
「マジマジ。この好雄様がいうんだから間違いないよ。ちなみに他のアンケートも聞いてみたい?」
「他のアンケート?」
「えっと、付き合いたい女子生徒第1位・制服姿がよく似合う女子生徒第1位・ブルマ姿がまぶしい女子生徒第1位・バレンタインにチョコが欲しい女子生徒第1位・一緒に下校したい女子生徒第1位・体育祭で二人三脚をしたい女子生徒第1位・水着姿が魅力的な女子生徒第1位・デートに誘いたい女子生徒第1位・卒業式の日に伝説の樹の下で告白してもらいたい女子生徒第1位」
「聞いてるだけで頭が痛くなりそうね」
「まだあるぜ。パンチラを見たい女子生徒第1位・ヌードを拝みたい女子生徒第1位・オカズにした女子生徒第一位・ほんとはエッチそうな女子生徒第1位・セックスをしたら気持ちよさそうな女子生徒第1位」
「えっ……?」
「あくまでアンケートだよ、詩織ちゃん」
「そ、そう……」

「じゃー、黒板に数学の公式をなんか書いてさ、こっちを振り向くポーズ撮ろうか」
「積分の数式的応用でいいかしら」
「いいんじゃない、よくわかんないけど。チョークはそこにあるよ」
「区間[a,b]においてf(x)≦g(x)ならば……」

 黒板にすらすらと難解な数式を書きはじめる。右手にチョークを持って、愛らしい瞳で見つめる笑顔で半分カメラに振り向いた。
「う~ん」
「どうしたの、好雄くん?」
「思ったんだけどさー、スカート長くない?」
「スカート?」
「ほら、みんな膝上だろ。詩織ちゃんは膝が隠れる長さじゃん」
「普通だと思うけど……?」
「いやいや、いまどき珍しいでしょ。夕子や鏡さんは膝上15センチはあるよ」
「夕子ちゃんや魅羅ちゃんはスタイルに自信があるから」
「それって嫌味?」
「そんなつもりじゃ」
「とにかく創立記念の写真集なんだしさ、スカートを折って短くしてくれる?」
「ねえ、校則でスカートの長さは決められてるのよ」
「詩織ちゃんはそれでいいかもしれないけど、きらめき高校の女子生徒はみんな個性がないって思われるよ」

 詩織は渋々とスカートの腰を折りはじめる。つるりとした膝が顔をのぞかせた。
「これでいい?」
「まだまだ」
「このぐらい?」
「まだ膝上10センチぐらいだよ。せっかく鏡さんにも負けないスタイルしてるのにさ、もったいないよ」
「でも、下着が見えそうじゃない?」
「見えない見えない見えない」
「んー……」
 好雄に促されるままに、詩織は制服のスカートを膝上20センチにした。
 健康的な色白の太ももがマイクロミニスカート並みに露出して、立っているだけでも下着が見えそうになる。
「おお、今どきのJKらしくなったじゃん。意外とムチムチしてて色っぽいなー、詩織ちゃんの太もも」
「好雄くん、私の脚ばかり見てない?」
「へへへっ、気のせい気のせい」
「なんだか不安だわ」
「グラビアアイドルみたいにセクシーだよ。ちょっとその場でクルッて回ってみてよ」
「ええ、回るのね?」
 教壇でクルリとターンする、詩織。
 かすかな石鹸の香りと共にさらさらとした赤い髪がスローモーションに広がり、プリーツスカートがフワリとする。優等生らしい純白の下着がチラリと見えた。

「おおお、白か」
「えっ!?」
「なんでもないよ」
「そう……」
「いいじゃん、さっきのポーズしてよ」
 改めてチョークを手に黒板の前で振り向きポーズをする。
 好雄が足下にカメラを構え、詩織は慌てて逆の手でスカートの後ろを押えた。

「好雄くんっ!」
「なに?」
「なにじゃなくて」
「それより左手が邪魔だよ、詩織ちゃん」
「だめよ、スカートの中が見えたら困るわ」
「べつに減るもんじゃないだろ」
「そういう問題じゃないわよ」
「下着なんか水着と一緒だよ。A○BのPVとか見たことないの? 下着姿で踊ってるんだぜ」
「A○B? ほんとうなの?」
「詩織ちゃんは芸能界とかあんまり知らなそうだよね。ウソだと思うなら後で調べてみなよ。だいたいパンチラぐらいで恥ずかしがってたらアイドルなんかできないよ」
「でも、こういうのはやっぱり……」
「あのさー、そういうチラリズムがあったほうが写真集とDVDを買ってくれるファンも喜ぶと思わない? みんな、天使みたいな詩織ちゃんのサービスショットに期待してるんだぜ。きらめき高校の知名度アップのためにもパンチラ・ブラチラ・胸チラぐらいは我慢してよ」
「胸チラ??」
「わかったら手をどけてどけて。それとも学校が潰れてもいいの?」
「……好雄くんがそういうなら」
「そうそう、モデルは素直じゃないとさ」
 小さくため息をして、詩織はスカートの後ろを押えていた左手を横にどけた。
「へへっ、しおりんの生パンチラゲットだぜぇ!!」
 好雄はさっそくローアングルでの撮影を開始する。スカートの内側にピントを合わせて、忙しくフラッシュを焚いた。
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