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ボルスター
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2016 / 03 / 05
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 あれから先輩は以前にも増して私に話しかけてくるようになったの。練習のたびにデートに誘われて大変よ。あんなこと友達に相談もできないし、どうすればいいのか……。とても困っているの。
 こんなときこそ幼なじみの出番なのになぁ。彼って肝心なときに頼りにならないのよね、ほんと。
 その日は、クラブハウスでテニスウェアに着替えてコートに行こうとした途中でたまたま好雄くんを見かけたの。場所は水泳部の更衣室があるすぐ脇よ。好雄くんは大きなカメラを持っていたわ。写真部だから当然といえば当然かしら。
「なにをしてるの、好雄くん?」
「うわああ! びっくりした。詩織ちゃんか」
「そんなに驚くことないのに」
「急に話しかけられたからさ。詩織ちゃんはいまからテニス部?」
「ええ。好雄くんは?」
「女子の着替えを盗撮……じゃなくて、校庭の風景を撮影にさ」
「ここで? 好雄くんって女子の写真を撮ってばかりじゃないのね」
「やだなあ。誤解だよ。今度の文化祭に出展するので、きらめき高校の四季がテーマだよ」
「とても素敵だと思うわ。感心しちゃうな」
「詩織ちゃんは自然とか芸術が好きだもんね」
「そうね。瞳を閉じて深い森を想像しながらクラシック音楽を聴いてるととても気持ちがなごむのよ」
「女の子らしいなあ」
「昼の校内放送でもかけてくれたらいいのになぁ。みんなとても気に入ると思うの」
 話していると好雄くんが唐突にカメラを構えて私を撮影したの。
「テニスルックのしおりんいただき!」
「いきなりなのね。急に撮るから驚いちゃった」
「自然な詩織ちゃんを見てたらどうしても撮りたくなってさ」
「ねえ、私はいいけど、撮る前に一言声をかけるのがマナーよ」
「ごめん、つい。何枚か撮らせてよ」
「えっ、いま?」
「ここなら人目もないし。テニス部の美少女を撮ろう記念日としてさ」
「なによそれ、ふふっ」
「いま俺が作ったんだよ」
「好雄くんって人を笑わせる才能もあるのね」
「OKしてよ、詩織ちゃん。言われたとおりちゃんとお願いしたんだしさ?」
「しかたないわね」
 普段なら断っていたわ。
 でも、私の忠告を素直に受け入れてくれたわけでしょ? ちょうど周りには誰もいなかったし、すこしぐらいならいいかなって思ったの。そうしないと逆に好雄くんがかわいそうよ。
 私はラケットを両腕で抱えて、カメラににっこり微笑んだわ。友達と集合写真を撮る時みたいに。
「いいじゃん、しおりんスマイル! ほんときらめき高校のアイドルだよ、詩織ちゃんは」
「おおげさね、好雄くんったら」
「マジマジ。ルックスで詩織ちゃんに勝てる女子なんてどこを探してもいないよ」
「え~、ほんとかなぁ。クスッ」
「俺がいうんだから信じてよ」
「そういわれると悪い気はしないわね」
「へへへっ、今度はラケットを後ろに持ってお嬢様っぽくこっちを見てよ」
「いいわよ。こう?」
 好雄くんってとても口がうまいわね。右足のつま先を前にしてモデルポーズをしたわ。好雄くんのリクエストで、すこし首をかしげてカメラをまっすぐに見つめて。
「いいなあ、そのすまし顔」
「うふふ、好雄くんってカメラを持つと別人みたい」
「シャツの胸が窮屈そうだね」
「そうなのよ、また新しいの買わないと」
「成長盛りだからさ、詩織ちゃんは」
「どういう意味よ」
「そこに男子の夢が詰まっているんだよ」
「もうっ」
「後ろ姿も撮らせてよ」
「後ろ姿??」
 私の返事を待たずに好雄くんは背後に回ったわ。私は半身で振り向いたわ。
「ちょっと前屈みに、両手でテニススカートの後ろを押えるようにさ……そうそう、そのまま恥ずかしそうにこっちを見てさ。すげーいいよ。見えそうで見えない感じとか」
「好雄くんに撮られているとまるでモデルになったみたいな気分よ」
「でしょでしょ。後ろ姿も超清純だよ。さらさらの髪が背中で揺れてて」
「うふふ。ありがとう。髪を褒められると嬉しいわ」
「すこしローアングルで撮らせてね」
「え……?」
「いいでしょ? べつに普通の写真だし」
「ええ……まあ、いいかしら」
 好雄くん、カメラを地面近くまで下げて足下から撮影したの。
 スカートの中を撮られてるんじゃないかって心配だったわ。
「こいつは入学して以来のお宝写真になるぞ」
「……」
「テニスシューズはナ〇キの?」
「うん。ウェアとお揃いよ」
「へえー、高かったんじゃない?」
「さあ、そんなにしなかったと思うけど」
「ソックスも? アンスコはどんなの履いてるの?」
「アンスコ……?」
「アンダースコートだよ。テニス部なんだから当然履いてるよね」
「それは履いてるけど……」
「軽く見せてくれない?」
「それはちょっと……」
「どうして? アンスコって見られてもいいように履いてるんだよね? ブルマみたいに」
「そうだけど……」
「それなら平気だよね? 体育の授業だといつもブルマを履いてるんだし。この通りおねがいだからさ、詩織ちゃん」
 なにか理屈がおかしい気も……。好雄くんったら拝むみたいに両手を合わせてお願いしてくるの。ものすごい必死なんだもの。断れないわよ。
「じゃあ……今日だけ特別よ?」
 片手を後ろにして、テニススカートの後ろを軽くめくったわ。そのまま振り向いて、小さく舌を出して悪戯っぽい表情をしたの。
「おおお! しおりんがアンスコサービスショット! 色は白か! ヒラヒラが可愛いね!!」
 好雄くんったらすごい勢いでシャッターを切ってたわ。
 すごく恥ずかしいの。耳まで赤くなっちゃた。
「はい、終わりよ」
 私はすぐにスカートを下げたわ。これ以上続けてたらもっとすごいポーズを要求されそうな気がしたの。さすがにそんなのムリだもの。
「ええっ、もう? 早いよ、詩織ちゃん」
「だーめ。そろそろ練習に行かないと先輩に怒られるわ」
「チェッ、残念だなァ」
「十分でしょ。たくさん撮らせてあげたんだし」
「詩織ちゃんってさ、思ってたより大胆なんだね」
「そうかしら」
「ガードがユルユル。おかげでいいオカズがゲットできたんだけどさ」
 好雄くん、すっかり満足したみたい。終わったあとで、ちょっとサービスしすぎちゃったかな? って後悔したわ。アンスコだし平気よね?? それぐらい好雄くんって女の子をノせるのがうまいのよね。
「ありがとうね、詩織ちゃん」
「それよりこのことは……」
「わかってるって、みんなに内緒だろ?」
「良かった」
「今度は制服姿で撮影させてよ」って嬉しそうにいっていたわ。
 私は「気が向いたらね」って、返事をしてコートへ歩き出したの。
 制服姿って、好雄くんはどんな写真を撮るつもりなのかしら? 私も気をつけないとダメね。
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