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ボルスター
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2015 / 10 / 16
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「……いまいい?」
 顔を上げると虹野さんが立っていた。俺は自分の席で次の授業の準備をしていた。気になったのは、彼女の目の下には大きなクマが出来てて少しやつれて見えたことだ。
「古典のプリント……私、日直だから……」
 声まで暗い。詩織と人気を二分してた頃とは別人のようだ。
「ごめん。出すの忘れてた」
 俺は机からプリントを取り出すとそれを虹野さんに渡した。
 プリントを受け取った虹野さんは、他のプリントの上に重ねてその場を動こうとしなかった。
「まだなにか?」
「……すこし話ししたいな」
「べつにいいけど」
「元気? 運動してる?」
「体調には気をつけてるよ。虹野さんこそ少し痩せたんじゃない?」
「ちょっとね」
「あんまり無理しないほうがいいよ」
「うん……デートに誘ってくれないのね」
(き、気まずいなぁ)
「以前はよく誘ってくれたのに」
「虹野さんは小増先輩と」
「卒業して会ってないよ」
「そうなんだ……ハハハ……」
 こういうときこそ好雄がいればいいのにと思った。
(まだワル山たちとかかわってるのかな。心配だな)
 体育倉庫で見た衝撃的な場面が脳裏をよぎった。
「どうしてサッカー部のマネージャー辞めたの?」
 言ったあとで今年一番後悔した。
「いろいろあっていずらくなったし」
「無神経なことを聞いてごめん」
「いいの、べつに……最近詩織ちゃんと仲がいいみたい」
「俺? そう見えるのかな」
「……詩織ちゃんも私みたいになればいいのに」
「!?」
「冗談よ、ふふっ」
(うわあ。昔の明るかった虹野さんはどこにいったんだ)
 虹野さんは口もとに笑みを浮かべて、集めたプリントを持って教室を出ていった。

「ねえ、沙樹ちゃんと何を話してたの?」
 入れ替わるようにして詩織がやって来た。
「プリントを集めに来ただけだよ」
「それだけ? 他には何かいわれなかった?」
「とくに」
「そうなんだ。沙希ちゃん変わったでしょ」
「また元気になればいいけど」
「私も心配だわ」
「詩織は優しいな、ほんと」
「クラスメイトだし、当然よ」
 いつも変わらない笑顔で詩織はそういった。
「あのさ、日曜暇か?」
「なぁに?」
「見たい映画があるっていってただろ」
「えーっと……そうだったかしら」
 予想に反して詩織の返事は歯切れが悪かった。もっと喜んでくれるかと思っていた。
 気まずそうに「その日はちょっと」といった。
「駅前に新しく予備校が出来たでしょ?」
「CMで名物講師がやってるやつか。明日でしょ! みたいな」
「うふふっ、物マネが上手いのね。夏期講習の体験授業があって、それに行くつもりなの」
「それじゃしかたないな」
「ごめんなさい」
「いいって。俺も行ってみるかな、その夏期講習」
「あなたがその気なら私が申し込みしてあげるわよ。そろそろ自分の席に戻るわね」
 俺だけにわかるように小さく手を振って詩織は自分の席に戻っていった。

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 日曜日――。コンビニに少し遅めの昼食を買いに行った帰りに見覚えのある車を見つけた。
 この辺では見かけない黒のワンボックスカー。エンジンがかかったままで、角を曲がった路地に停まっていた。大音量の音楽が流れていた。たぶんEXILEかなにかだと思う。
 不思議に思っていると玄関からデニムのジャケットにオレンジのシャツ、黄土色のキュロット姿の詩織が出てきた。生き生きとした笑顔で、これからボウリングデートにでも行くような格好だ。小物入れのポーチを持ち、助手席に乗ろうとして1回辺りを見回す。
 さらさらの赤い髪をなびかせて振り返った横顔。俺は反射的に自動販売機に隠れていた。見てはいけない物を見たような気がしたからだ。
 車のドアが閉まる音がして、詩織を乗せたワンボックスカーは街の方に走っていった。
「体験授業に行くんじゃなかったのか??」
 いま自分の目で見たことに混乱した。
 急いで家に戻ると俺は階段を駆け上がった。ネットで駅前の予備校を調べて電話をかけた。
「はい。〇×予備校です」
 いかにも予備校の受付といった事務的な女性の声だった。
「もしもし今日って体験授業していますか? 夏期講習とかそんなのの」
「大学受験コースですか? 高校受験コースですか? それとも――」
「大学受験コースです」
「医学部特別コースと、志望校対策コースと、在宅受講――」
「普通の高校生が受けるようなコースなんだけど」
「通常の大学受験コースでしたら、体験授業は来週になっております。本日は、有名講師をお招きして超難関大学の受験生を対象とした特別講習が――。もしご入り用でしたら夏期講習のパンフレットをお配りしています」
 寒気がした。
「ありがとうございます。失礼しました」
 俺は手短に通話を切った。
(体験授業じゃないとしたら先輩とデートに行ったのか?? 二度と会わないっていってたのに)
 放心状態だった。
 俺は詩織の携帯にかけて直接聞いてみるべきか悩んだ。考えた末、俺は詩織の携帯に電話をかけた。

 プルルル、プルルル――。
 何度鳴らしても出ない。そのうち携帯の電源が入っていないか電波の届かない場所にいますとメッセージが流れた。
 俺はあきらめきれずにメールを送った。
 20分ぐらいして、俺の携帯が鳴った。
 詩織からの電話だった。
「もしもし、詩織」
「うん。電話くれた?」
「いまどこにいるんだ」
「いったでしょ? 予備校よ」
 俺が直接予備校に確かめたのを知らずに詩織は言い切った。それどころか俺に忘れたの? とでも聞き返すような口調だった。
「……1人なのか? 誰か横にいるみたいだけど」
 暗に先輩と一緒だろうと認めさせたかった。
「ううん。A子がいるの」
「A子?」
「中学で同じだったでしょ。あなたも覚えてる? 偶然予備校で一緒になったの」
 あくまで詩織はしらを切るつもりだ。
「何度も携帯鳴らしたけど出なかったろ」
「授業中なのに出れるわけないでしょ。いまは休憩中よ」
「あのさ、A子にかわってくれるか? 俺もひさしぶりに話してみたいからさ」
「えっ、A子? 声の調子が悪くて電話に出られないみたい。風邪かしら」
 詩織の声がたどたどしくなった。
「ちょ、ちょっと……ダメです、いま電話中っ」
「どうしたんだ詩織?」
「なんでもないの。隣のA子がふざけてて」
 A子がそんなことするわけがない。ウソがバレバレだ。そんなに先輩といることを俺に隠したいのかと思った。
「ごめんなんさい。授業がはじまるから切るわね」
「なあ、何時に帰ってこれるんだ?」
「たぶん夕方になるかしら」
「そんなにかよ」
「ねぇ、家に帰ったらまた連絡するわね。切るわね」
「あっ、おい」
 俺の呼びかけに返事はなかった。

 20分ほどしてメールが届いた。
 メールには、【A子に撮ってもらったの】という短いメッセージと一緒に、駅前の〇×予備校をバックに、昼に見かけたのと同じ格好をした詩織がすまし顔で写った写メが添付されていた。
(まるでアリバイメールみたいだな)
 俺の詩織に対する疑いはますます強くなった。
 A子なわけがない。きっと先輩に撮ってもらったに決まっている。
 見つめる視線の先にヤリチン先輩がいるかと思うと、俺は無性に心配になった。
 俺はすぐに折り返し携帯をかけた。
 でも、また携帯の電源が切られたらしくさっきと同じメッセージが流れた。
(詩織の声が聞きたい。先輩にデートに誘われて行っただけだよな??)
 それならそうと正直にいってほしかった。これじゃ夏祭りの時とおんなじだ。
 俺は【このメールを見たら連絡をくれ】とメールを送信したし、LINEでも同じようなメッセージを送った。
 でも、俺の携帯が鳴ることはなかった。返信メールもなかった。

 30分経ち、1時間経ち……。一向に詩織からの連絡はなかった。
 俺はイライラして、何度も携帯をチェックした。それからふいに詩織が帰ってくるような気がして窓の外を見た。
 携帯が鳴った。俺は慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、詩織」
「メール見たけどなぁに?」
「あのさ……いまどうしてる?」
 その質問をするのにもかなり緊張した。
「授業が終わってA子とカフェで休んでたところよ」
「どこのカフェだ? 今度の試合のことで詩織に聞きたいことがあってさ」
「……」
 急に詩織が黙った。俺はもしかしてほんとはカフェじゃないんじゃないかと思った。カフェにしては静かだし、なんとなく詩織の声もいいわけっぽく聞こえる。
「ごめんなさい。まだ寄るところがあって帰るのが遅くなりそうなの」
「遅くなるって、さっきは夕方には帰れるっていってただろ」
「うん。家には自分で連絡するから平気よ。7時には帰れると思うわ」
「おい、詩織」
 一方的に通話は切れていた。

 しばらくしてメールが届いた。
 てっきり詩織からだと思ったら知らないアドレスだった。
 とりあえず開いて見ると、短い動画ファイルが添付されていた。タチの悪いウィルスかなにかと警戒しつつも再生しないわけにはいかなかった。
 画面にスマホで撮影したと思われる映像が映った。
「どこだここは?? 誰も映ってないぞ??」
 淡いピンク色のムードランプと橙色の壁に囲まれた内装。部屋の中央にはスイッチ類が並んだ大きなベッドがあり、2つのクッションが意味深に置かれていた。他にはテレビとソファーとティッシュ、小さな冷蔵庫とエアコンがあって窓がない。
 こういう感じの部屋をたまに目にする。好雄が貸してくれるAVによくある部屋だ。
「ラブホテルっぽいような」
 画面がソファーセットをズームアップする。そこには見覚えのあるデニムのジャケットと黄土色のキュロット、オレンジのシャツがあった。どれも詩織が着ていた服だ。その横にはお揃いのショーツとブラジャーがあった。色は白で、どれもいまさっき脱いだみたいにそこに置かれていた。
 男の手がフレームに映り込む。ショーツを広げてクロッチの部分に汚れがないかたしかめるように入念に映していた。
 気配を感じたみたいにカメラが横に動いた。
 水の流れる音がした。扉があって壁がすりガラスになっていた。
 気持ち良さそうにシャワーを浴びている女の子が中世のステンドグラス状に写っていた。確実に本人だと断定できるわけではないが、特徴的な髪色といい背格好といいほぼ詩織に間違いない。
(なにのんきにシャワーを浴びてるんだよ。ラブホだぞ)
 目を背け続けてきた現実を突きつけられた気がしてめまいがした。さっきの電話もラブホテルからしていたと考えれば辻褄が合う。
 シャワーの音が止まり女の子のシルエットが動いた。おそらく体を拭いている。俺は固唾を飲んで見守る。
 ドアが開いて、体をバスタオルで隠した女の子が出てきた。
「先輩、なに撮ってるんですか?」
 詩織だ。詩織本人だ。声も顔もさらさらの赤い髪も言い逃れのしようがない。人形みたいに愛らしい瞳を揺らして、不思議そうにこちらを見ていた。トレードマークのヘアバンドに、シャワーでわずかに濡れた髪を気にするような仕草で片手で払う。バスタオルの裾からは色っぽい生脚が伸びている。
 俺の携帯を持つ手が震えた。
「いつもより早いじゃん」
「今日はあんまり時間がないし」
「藤崎とラブホに来るのはひさびさだろ」
 聞き覚えのある声だ。やっぱりという落胆しかない。
 詩織の様子からすでに何度かラブホテルに来ていることが伝わった。
「ダメです。やめてください」
 詩織が画面に手を伸ばして奪おうとした。
「残念でしたァ」
「顔は写さないで」
「へへへっ、バッチリうつってまーす」
「もう」
 詩織がちょっと不機嫌そうな顔をする。といっても本気で怒っているのではなくて女子がよくするふりだ。
「ここんとこ会わなかった仕返しだぜ」
「そんなこといわれても勉強とか部活が忙しいし」
「ほんとか。いいわけだろ」
「ほんとです」
「あいつもしつこいよな。何回も電話してきて」
「……」
「俺とデート中なのにシコシコメールしてよ」
「彼は私が予備校にいってると思ってるから」
「またもてあそんだわけだ。ヤルゥー」
「べつにそういうわけじゃ」
「時間ないんだろ。バスタオル取れよ」
「えー、どうしようっかなー」
 口ではそういいながら詩織は惜しげもなくバスタオルを脱いだ。
 笑顔で生まれたままの姿をさらす。赤い恥毛も肌もシャワーを浴びていたせいでしっとりと濡れていた。
(俺の時はあんなに嫌がってたのに、先輩が相手だと別人みたいに素直だな)
 詩織は恥ずかしそうにはにかんでいた。右肩のところに片手をやって体をやや横に傾ける。詩織が照れたときによくするポーズだ。
「ヒョー、いつ見てもビンビンにそそられるー」
「やだ。先輩は私の裸を何回も見てるじゃないですか」
「さすが高校のアイドル様だよな」
「見つめられると困るわ」
「隠すなよ」
 片腕を伸ばして、ピンク色をした乳首を指で弾いた。
 それだけでおっぱいが弾むように揺れる。
「あんっ!」
「エロイ声」
「指で弾かれたら痛いわ」
「ウソつけ。やらしい乳首しやがって、反応もやらしくなってきたな」
「先輩のせいですよ。……こんなのじゃなかったのに」
「ぶりっ子ぶんな。家オナニーしまくりなんだろ」
「ちがうわっ、それは先輩が」
「見ててやるからここでしてみろよ。ご褒美に大好きなクンニしてやるぜ」
「せっかくシャワーを浴びたのに」
「してほしくないのか? 尻の穴までベロンベロンに舐めて欲しいだろ」
 詩織がため息をついた。無言でベッドに歩く。
 その後ろ姿が哀愁を帯びていて同い年の女子とは思えないほどセクシーすぎる。
 悲しげな表情でベッドの端に座り、やや控え気味に両脚を開いた。左手を胸に右手の指先を股間にあてがう。早くも詩織のアソコがわずかに濡れているのが見えた。
「へへへ、ビチョビチョになるまで派手にマンズリしろよ」
「はずかしいです、先輩」
「ウソいえ。今日こそ藤崎の処女マンにぶち込んで、俺の女にしてやるぜぇ」
「あん、それだけは許してください。せめて口で。他のことならなんでもしますから」
「おしゃぶりはしても処女は卒業するまで守りたいってか。まるで処女ビッチじゃん」
「ひどい」
「ここで藤崎を襲ってやってもいいんだぜ。どうせ邪魔な奴はいないしな」
「……おねがい。こわいことをしないで」
 怯えた様子でこちらを見つめる。左手で片乳房を持ち上げるように揺さぶり、右手がゆっくりと陰毛の生えた割れ目をいじりはじめた。グチュリと音がする。
 うつむき加減で、「ンッ」とわずかに声を漏らす、詩織。
 俺は呆然とその痴態を注視した。
(どうしてそんな奴のいうことを聞くんだ。俺にしてるみたいに本気で怒れよ!)
 詩織が膝をさらに開いた。股間に添えられた指使いにだんだんと熱がこもってきた。乳房を揉む手も思いっきり掴んで乳首を夢中になっていじりだす。
「ああん、気持ちいいっ。私、感じちゃうわ、先輩っ!」
 涙目になった詩織が切なげな息づかいで、スマホのスピーカー越しでもはっきりわかる声でそう叫んだ。
 そこで動画は終わっていた。
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