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ボルスター
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2015 / 04 / 24
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 久しぶりに練習に出ようとクラブハウスへ向かっていると、テニスウェア姿の詩織が歩いているのを見つけた。ラケットケースを肩に下げて清潔な白いポロシャツに、折り目のきっちりとしたプリーツスカート。お嬢様大学のテニスサークルにいそうな完璧なテニスルックだ。
 「詩織っ!」と呼ぼうとして止めた。隣に並んで歩くタラシの姿が目に入ったからだ。

(バスケ部は体育館だろ。フナムシみたいに現れるな)
 大きめのTシャツにハーフパンツのタラシは、指の先でバスケットボールを回して詩織に話しかけていた。近ごろ教室でも廊下でもやたらと一緒にいるのを見かける。俺はおどかしてやろうと2人の後をつけた。

 突然「せんっぱーーーい」と真横から強烈なタックルを受けて転倒した。
「うわああっ!!」
「みいぃぃ~~~つけた」
「ゆ、優美ちゃん」
「うふふ。驚きました?」
「驚くよ、そりゃ」
 優美ちゃんは可愛らしく舌を出して笑った。
 優美ちゃんは好雄の妹だ。いつも騒がしいぐらい元気で、どういうわけか俺にとても懐いてくれている。まだ幼さの残ったあどけない瞳とオレンジの髪をリボンで束ねたポニーテールをしている。女子バスケ部の練習を抜け出してきたのか、優美ちゃんは体操着の上に赤いビブスを着ていた。ついつい体のラインを目で追ってしまう。
「優美、先輩を見つけたら体が勝手に走り出してました」
「へ、へぇ~」
「ぶううー。先輩は優美と会えて嬉しくないんですか?」
「嬉しいよ。嬉しいにきまってるけどさ。詩織が……」
「藤崎先輩……? どこですか??」
「あれえ?」
 会話に夢中なのか、詩織とタラシはこちらに気づくことなく歩いていた。
 2人の後ろ姿がどんどん小さくなる。
「ねえねえ、先輩っ。今度はいつデートに誘ってくれるんですか? 優美、首をながーーーくして待ってるのに」
「まいったなぁ」
「優美、遊園地に行きたいです!!」
「また遊園地?」
「えーー。じゃあー、プロレス観戦っ! 獣神タイガーマスクVSビッグパンダースベイダーのビッグマッチがあるんです。獣神タイガーマスク選手、ビッグパンダースベイダーの巨体を持ち上げた! パワースラムだ!! ウォー、ウォー!!」
「優美ちゃん、プロレス好きだよねえ」
「えへへ、このあいだも優美のアイスを勝手に食べたお兄ちゃんにコブラツイストをかけてKOしたんです」
「好雄も難儀だな」
「お兄ちゃんはいっつも優美に負けてばかりですよ。それより先輩っ」
「ん?」
「優美、ちょっと大人っぽくなったと思いませんか?」
「そ、そうかな……」
「ええーー。これでもですか?」
 優美ちゃんは俺の手を取ると、体操シャツの校章がある場所に持って行って押し当てた。
 ビブス越しに盛り上がった膨らみと押し返す感触があった。それも予想以上にプルンプルンとだ。
「藤崎先輩ほどじゃないけど、優美の胸、大きくないですか?」
「ゆ、優美ちゃん。まずいよ」
「どうしてですか?」
「どうしてっていわれても、誰かに見られるかもしれないし、好雄の妹だし」
「お兄ちゃんは関係ないです。優美は先輩ならいつでも優美の初めてを全部あげるつもりなのに」
「ゴクリ……」
「もっとしっかり触ってみてください」
 優美ちゃんの目もとが赤く染まって、いわゆるときめき状態になっていた。
 大胆な優美ちゃんに触発されたわけじゃないけど、思わず体操服の上から優美ちゃんのおっぱいを揉んでしまった。それも両手でだ。
 伸ばすように引っ張って、いたいけな優美ちゃんの胸をモミモミした。とても柔らかかった。
「んっ……先輩っ、いたいです」
「ご、ごめん」
「そうじゃないです。先輩が触ってくれて、優美うれしぃです」
「ほんとに?」
「先輩なら優美はどんなことをされても平気ですよ?」
「鼻血が出そう」
「えへへ、またデート誘ってくださいね?」
「う、うん……」
「やったーー!!」
 優美ちゃんは残り1秒でスリーポイントシュートを決めたみたいに飛び跳ねて喜んでいた。ホントに嬉しそうだった。
「約束ですよ、先輩」
「ハァ、皇国の興廃この一戦にあり、各員いっそう奮励努力せよ、か」
「なんですか、それ」
「とにかく目の前の戦いに全力を尽くせってことだよ」
「ふ~~ん。やっぱり先輩って物知りですね。尊敬します、優美っ」
「ハハハ……」
「どこに行きます? それとも先輩の部屋で――キャッ!」
「まいったな」

 大喜びの優美ちゃんをなだめてなんとか別れると、俺は早足でテニスコートに向かった。
 途中、気配がしてそちらを覗いて見ると、人目につきにくい木陰に詩織とタラシがいるのを見つけた。ほとんど偶然だ。
 両腕でラケットケースを抱えた詩織は幹に背中で寄りかかって立って、タラシは片手を着いていわゆる壁ドンみたいにしていた。
(こんなところで……詩織も油売ってないで早く練習に行けよ)
 俺は2人に見つからないように茂みに隠れて聞き耳を立てた。

「駅近くにおしゃれなジェラートのお店が出来たの知ってた?」
「そうなの?」
「スゲー並んでるよ。帰りに一緒に行ってみない?」
「んー……どうしようかしら」
 タラシの話題に詩織はコスモスがそよ風に揺れるように笑っていた。
「甘い物はあんま好きじゃない?」
「そういうわけじゃないけど」
「藤崎さんってさ」
「なぁに?」
「アイツとどういう関係なわけ?」
「あいつ?」
「またまた。とぼけたりしてさ」
 俺も気になる質問を投げかけながら、タラシは空いたほうの手で詩織の腰回りにソフトタッチしていた。
 その手がだんだんと下りて太ももをなでるように触る。スカートの内側に伸びて、ヒラヒラの飾りがついた白いアンスコがのぞいていた。
 詩織は腕を下げて押さえようとした。
「ダメよ、鱈島くん……」
「いいじゃんか、アンスコは見せるために履いてるんだろ」
「それでも恥ずかしいわ」
「ヒラヒラがついてて、本物の下着みたいだよね」
「やだ……エッチなことをいわないで」
「それよりさっきの質問に答えてよ」
「答えるも何もただの幼なじみよ」
「へぇー、そのわりには仲がいいじゃん」
「そ、そうかしら」
「小中と一緒だよね? たまに一緒に帰ってるだろ?」
「それは家が隣だから」
「じゃあ、藤崎さんはフリーなんだ」
「……そうよ」
 一呼吸を置くように詩織は答えた。
 俺はそんなことよりタラシが詩織の下半身を触りまくってるのが気になってしょうがなかった。
「たとえば、俺が藤崎さんに告白しても問題ないわけだ」
「えっ」
 詩織がドキッとした様子でタラシの顔を見返す。
 少女漫画ならそのまま恋がスタートするんじゃないかと思うぐらい近い。
「鱈島くんは付き合ってる女子がいるんじゃないの」
「いないよ。いたとしても別れるし。逆に藤崎さんは俺のことどう思う?」
「ずるいわ、そういういいかた」
「いい匂いがするよね、藤崎さん。石鹸の匂い?」
「……やだ、ちかい」
 詩織が視線を逸らした。
 さっきの優美ちゃんと同じだ。目もとを赤く染めてときめき状態になっていた。
「藤崎さん、こっちを見てよ」
「……そうやって私の事をからかってるんでしょ? もうっ」
「藤崎さんこそ俺のことをムリにクラスメイトだと思おうとしてない?」
「……」
「すごく魅力的な唇だね。困った顔も写メに残したいぐらい可愛いよ」
「ダメよ、学校で」
 タラシの顔がどんどんと近づく。

(あの野郎……図々しいにもほどがあるだろ)
 俺は聞こえるように咳払いをした。
 同時に2人がこちらを見た。そのまましばらく固まっていた。
「練習に遅れるからもういくわね」
「ちょ、藤崎さん」
「ごめんなさい」
 詩織は捕まえようとするタラシの腕をすり抜けて、テニスコートへ走って行った。
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