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ボルスター
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2015 / 02 / 26
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 虹野さんは青いショートヘアがよく似合う、明るくてとても元気な女の子だ。
 部活動の時間にはサッカー部のマネージャーをしている。とにかく頑張っている人を応援するのが大好きで、マラソン大会などでは「〇〇くん! 根性よ!!」と誰よりも大きな声で応援してくれた。家庭的で、彼女にしたい女子生徒として詩織のつぎに虹野さんの名前を挙げる男子も多い。
 それだけに虹野さんが処女を失ったというニュースは2年の男子に衝撃を持って伝わった。
 相手はサッカー部のキャプテンだった小増先輩、通称コマシだ。
 虹野さんがコマシ先輩とデートしているという噂は以前から俺の耳にも入っていた。そういう情報は好雄を通じて特急便で入ってくる。サッカー部のキャプテンとマネージャーという関係上時間を共有する機会が多かったのだろう。自然と親しくなったとしても不思議はない。
 そのうち虹野さんがそいつと付き合うことになったと聞いても、俺はしっかりした考えの持ち主である虹野さんが簡単に体を許すはずがないと思っていた。せいぜいキスどまりだろうと。
 しかし、サッカー部が地区大会で優勝したその日の夜、虹野さんはご褒美として処女を捧げてしまった。これまで先輩と付き合った女子がそうだったのと同じように、先輩の部屋で。
 なぜそこまで詳しいかというと、コマシがサッカーボールを蹴るよりも女子の股間にバナナシュートを決めるのが得意な奴で、こうこうどうやってきらめき高校ナンバー2の虹野さんを攻略したか吹聴してたからだ。
 虹野さんにすれば彼女として先輩の頑張りに応えたかったという気持ちもあっただろう。よっぽど全国大会に進めたことに感激してたのかもしれない。
 虹野さんは自ら股を開いて、コマシ先輩のゴム無し生チンポを虹野スマイルで受け入れた、と先輩は証拠の写メ付きでそう自慢していた。俺は虹野さんがそんなふうにして簡単に処女を捨ててしまったという現実がどうしても受け入れられなかった。
 その後どうなったかというと、コマシ先輩は地方の大学に進学して虹野さんはあっさりと捨てられてしまった。つまり散々体を弄ばれたあげくヤリ逃げされたわけだ。



 学校のエントランスを出たところで、詩織が一人でいるのに気づいた。
「あなたもいま帰り?」
 めずらしく詩織から話しかけてきた。
「詩織もか?」
「ええ。今日は練習は休みなの」
 詩織はテニス部だ。幽霊部員の俺とは違い、欠かさずに練習に出てる。ちなみに古式ゆかりさんも同じテニス部だ。
 それにしてもと制服姿の詩織を足元から眺めて思う。
 ブラウンのローファーに、白のローソックス、きらめき高校の女子の制服は水色のセーラー服で、胸元には大きな黄色のリボンがある。まるで詩織の清純さを際立たせるためにデザインされたような制服だ。両手でしっかりと学生鞄の取っ手を持ち、体操服のときと打って変わって模範的な学生らしさがはえる。
「なに?」
「いや……今日も綺麗だなって」
「うふふ、なにそれ」
「べつにー」
「あなたもやっとデリカシーがわかってきたのね、な~んてっ、ふふ」
「幼なじみをからかうなよ」
「お互い様でしょ」
 詩織はクスッと笑っていた。
 春の夕日に似た赤い髪の耳元に指先をやり、にっこりと微笑む。

「ねえ、体育の時間、私のことを見てたでしょ」
「いいやー」
「えー、ほんとかなぁ」
「好雄だよ、好雄」
「ふ~ん。好雄くんのせいにするんだ」
「なんだよ」
「だめよ。女子のことをあんなふうに見たら。そうでなくても恥ずかしいのに」
「体型とか?」
「さあ、私の口からは一概にはいえないわ」
「詩織はそういうのないだろ」
「あら、そんなことないわよ」
「へー、どこらへんが」
「そんなこといえるわけないでしょ」
「とにかく好雄にいっとくよ」
「ええ、おねがいね」
「あのさ」
「なに?」
「良かったらだけど、いっしょに帰らないか……?」
 勇気を振り絞ってそこまで言ったところで、車のクラクションが聞こえた。
 校門の前に黒のワンボックスカーが止まっているのが目に入った。
 詩織がそちらのほうを見て軽く会釈をした。
「ごめんなさい。今日は先輩に送ってもらう約束をしていたの」
「先輩?」
 俺は運転席の男に見覚えがあることに気づいた。
(あれは……ヤリチン先輩??)
 卒業したときよりもDQN具合が増していてわからなかったが、去年の肝試しで詩織とペアになった槍地先輩だった。卒業したはずなのにまだ先輩と親交があることに驚いた。先輩はたしか進学ではなく就職したと聞いた。
「それじゃあ、私は先に帰るわね」
 詩織は小さく手を振ると、車に小走りで向かい、窓越しに「お待たせしました、先輩」と挨拶をして助手席に乗った。
「サイゼでも寄るべ」
「先輩のおごりですか」
「いいぜぇ、そのぶん藤崎も俺を楽しませろよ、ヘヘヘッ」
「えー、なんですかそれぇ」
「いくべ」
 俺は車が走り去るのを黙って見送るしかなかった。

「見事に振られちまったな」
 右手に持った鞄を肩に引っかけて好雄が立っていた。
「見てたのかよ」
「まあな。詩織ちゃんも冷たいな。いまのヤリチンだろ」
「あいつはいい先輩だと思ってるからな」
「マジかよ。そいつは重傷だな」
「どうせ優しい先輩=いい先輩だと思ってるんだろ」
「のんきなこと言ってていいのかよ。このままだと虹野さんの二の舞だぜ」
「しかたないだろ。いっても信じないんだし」
「だらしないなー、お前も」


 家に帰ってベッドに寝転がってもモヤモヤは晴れなかった。
 詩織はまだ帰ってくる様子はなかった。
 詩織の部屋は俺の部屋から目と鼻の先で、窓の向こうにはピンクのカーテンや辞書や参考書の並んだ勉強机に女の子らしいベッドなどが見える。
(先輩の車でドライブでもしてるのか?)
 そういえば詩織と最後にデートに行ったのはいつだろう? と俺は考えた。最近は電話でデートに誘ってもその日は予定があるからと断られることが多い。1・2年の頃は毎月一緒にどこかに出かけていた。
 昼間に好雄がいっていた、3年になって詩織の雰囲気が変わったという言葉がぶり返してきた。

 俺はベッドの下に腕を伸ばし、例の雑誌を手に取った。
 『素人ナンパ天国』――。
 ヤラセなしでライターが素人の子に声をかけてガチ交渉するのが売りの雑誌だ。とくに読者から寄せられた情報をもとに地元で一番可愛い子をナンパするコーナーが人気で、その他のページもナンパされたJKやJDのパンチラや胸チラを含む、かなり過激な写真で埋め尽くされていた。そのほとんどが人気のない路地裏や公園、雑居ビルの階段、駐車場などでゲリラ的に撮影されている。

 折り目の付いたページを開いた。
 すでに500回以上は見た、制服姿でこちらを見つめて、前屈みになって胸元を寄せている詩織の写真が飛び込んできた。
 スタッフの指示なのだろう。詩織は制服の胸当てを外していた。そのせいでたわわな胸の谷間がこぼれそうに見えていた。
 何回見てもすごい迫力だ。この写真だけでも日本中のスケベな男たちのオカズになったと思うと複雑だ。
 写真の横にはデカデカと『きらめき高校のスーパー美少女 ガチナンパ攻略!!』と煽り文字が書いてある。
 次のページでは、どこかの公園と思われる水飲み場で、耳元の髪に指をやりながら水に唇をつけている詩織が写っていた。ステンレス製の蛇口が上を向いているタイプなので、見ようによって男性器に口づけをしているようにも連想できる。
 さらに次のページでは、薄暗い男子トイレの個室(おそらく同じ公園の公衆トイレ)で壁に寄りかかり、左手でセーラー服の上着を軽く上にめくって、カメラに向かって無邪気に微笑んでいる。引き締まったなめらかな腹部がのぞいて、あとちょっとでブラジャーの下側が見えそうだ。
 
『熱心な読者からの情報で、きらめき市にものすごい美少女がいるということで本誌スタッフが急行! 地元ではかなり有名な女子高生らしく情報を集めるとすぐに名前が出てきました。ターゲットが一人で下校中のところを待ち伏せてキャッチ。スタッフが話しかけるのを無視して通り過ぎようとする彼女を、粘り強い説得によってどうにか撮影にこぎつけた! はじめは表情の固かった彼女だが、慣れてくると本誌スタッフの指示に素直に従い、天使のようなスマイルを見せてくれるようになった。その清楚なビジュアルと発育度満点のボディにスタッフもメロメロ! ここまで透明感のあるJKは見たことがない。学校では優等生で男子生徒あこがれの美少女だという彼女、スタッフのぶしつけな質問にも丁寧に答えてくれた。』

 インタビュー記事を読んでいる途中、外で気配がした。
 俺は壁を背にして様子をうかがうとドアを開けて詩織が帰ってきた。
 詩織は学生鞄を机に置いて、カーテンを開いたまま着替えはじめた。
(このまま着替えるつもりか? 不用心だな)
 明るいうちに帰ってきたことにほっとした。
 詩織は鼻歌でも口ずさんでいる様子だった。
 指で胸の黄色いリボンをシュルリとほどいた。
(先輩になにもされなかったのか?)
 詩織はセーラー服の横にあるチャックを上げ、両腕をクロスするようにしてめくって首から脱いだ。フワリと赤い髪が広がり、制服の下からレースの刺繍がデザインされた白いブラジャーに包まれたバストが、弾むように重たく上下に揺れた。
 スッとしたたたずまい。下がスカートだけの詩織はそのまま「うーーん」と背伸びをした。
 傾きはじめた日差しに詩織の体がまばゆく反射していた。
 両手でスカートの腰のホックを外す。片足ずつスカートから抜いた。脱いだ制服をきちんと畳んで置く。几帳面なところは子供のときから変わらない。
(詩織の下着姿……ゴクリ)
 好雄の盗撮動画で見ていたがそれとは興奮度合いが違う。ブラとお揃いのショーツが限界まで引き延ばされて肉感的なヒップラインを形作っている。ミルクを溶かしたような肌のきめ細やかさは瑞々しくて女の子らしい。
「あとで英語の宿題をしないと」
 思い出したように、詩織は学生鞄の中から教科書やノートを取り出して机の上に並べた。
 それから大きな鏡の前に立ち、腰に両手を当てて体を斜めにしたりして体のラインをチェックするようにした。
「やだ、また大きくなったみたい」
 両手でバストを持ち上げてため息をした。
(ほんと鏡さんより大きいんじゃないのか)
 好雄が詩織のヌードを撮りたいという気持ちがよくわかる。下着姿になるとさらに大きく見えた。
 詩織がしなやかな背中にかかる赤い髪を揺らし、肘を曲げて両腕を後ろにしてブラのホックを外そうとした。
(ついにブラを外すぞ)
 俺は瞬きをするのも忘れて息を飲んだ。
 いよいよというときに電話の着信音が鳴った。
 詩織が机に置いてあった携帯を取る。
「はい、もしもし?」
 電話の相手が誰かわからないが、心なしか詩織の表情が明るくなった気がした。
 窓のほうに歩いてきて、俺がいないか確認するようにこちらを見る。
 片手でカーテンを掴んで閉めた。
 俺はチッと舌打ちをした。もうすこしで詩織のヌードが見れるところだったのに。
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