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ボルスター
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2015 / 02 / 21
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 青と白の絵の具を塗りたくったような青空が広がった日の午後。体育の時間――。
 男子はサッカーで、少し離れた場所では女子がバレーをしていた。
 俺はグラウンドの端に座って、のんびりとそっちを眺めていた。隣には一眼レフを取り出して、膝に肘を乗っけて構える好雄がいた。
「そーれ」とか「そっちいったよー」という、女子のよく通る声が聞こえていた。

「暑いなー」
「ああ」
「今年も猛暑か」
「ああ」
「みんないいケツしてるよな」
「ああ」
「1年とは比べ物にならないな」
「ああ」
 女子の体操服は袖の部分が青い、白地に校章の入った体操シャツと空色のブルマで、生地がポリエステル100%なので体にピッタリとフィットしてヒップラインが丸わかりになる。そのせいで女子にはかなり評判が悪い。
 高校3年間、女子を眺めててわかったことがある。顔がそれぞれ違うようにお尻にもいろいろあるということだ。
 まん丸とした標準的なお尻、大きくでっぷりとしたお尻、肉が薄くて骨ばったお尻、尻えくぼが見えるぐらい締まったお尻――。
 好雄は息を吸うようにパシャパシャと撮影を始めた。
「やっらしー。早乙女の奴、また盗撮してるわよ」
 ジャガイモみたいな顔をした背の低い女子がうざそうにこっちを見ていた。

「いるよなー、ああいう勘違いブス。お前なんか撮らないっての」
「すげえ毒舌」
「ブスはメモリの無駄だ」
「せめてバレないようにしようとか思えよ」
「こっちからだとネットの影にならないんだよ。それよかお前も拝んどけよ。卒業したら金を払っても見れなくなるんだぞ。ブルマを履いたJKのケツ、ケツ、ケツ。シャングリラだろ」
「よかったな、うちは伝統のブルマで」
「他校も羨む美少女揃いだしな」

 いつも軽口ばかりの好雄だが、女子に関してウソや誇張をいったことを俺は知らない。きらめき高校といえば自由な校風と個性的な美少女が多いことで有名だ。面接でビジュアルの優れた子だけを選んで合格させているという都市伝説まである。
「ガンバレ―! 望! ナイスサーブ!!」という、女子の声。

「清川さん、今日もキレキレだな」
「スポーツ番長だからな」
「腰がくびれてて、流線型のバディ」
「そっちかよ」
「片桐さんも胸が弾んでるぜ、いつも変な英語を使うのに」
「変な英語はよけいだろ」
 清川さんの豪快なサーブを、腰を落とした片桐さんが正面でレシーブした。
 ボーイッシュな清川さんは超高校級のスイマーだ。一方の片桐彩子さんは芸術や音楽に造形が深く、しゃべっているとちょくちょく英語を交えてきて独特の空気感がある。二人とも男子にも女子にも人気がある。清川さんの場合はむしろ同性からの人気が高いかもしれない。
 清川さんのブルマはスポーティーにキュッと引き締まってて余分な肉付きがほとんどなく、片桐さんのブルマは女の子らしくプリンとしていて柔らかそうだ。胸は片桐さんのほうが一回り大きい。
「あれでさばさばした性格ってのがポイント高いよな」
 さばさばしてるのは片桐さんで、清川さんはどちらかというと普段は男勝りでその反面、女の子らしい一面もある。

「一番ボリュームがあるのはやっぱり鏡さんだよな」
 好雄がそう絶賛する鏡魅羅さんは学校一のグラマーな女子生徒で、バレーに参加せず壁に寄りかかって、私は興味ないわよ、とでもいうふうにめんどくさそうに髪をかきあげていた。ウェーブした紫の髪もゴージャスで見た目もかなり大人っぽい。スリーサイズは(93・61・89)。卒業後は進学せずにモデルになる予定らしい。そのほうが彼女らしいと俺も思う。ちょっと高飛車だし。鏡さんの場合は背中越しでもゴージャスな紫の髪と肉厚のヒップラインだけで区別がつく。
 でも、好雄の狙いは鏡さんでないことを俺はよく知っていた。
「いたいた、詩織ちゃんだ」
「ふ~ん、どこ」
「あそこだよ。古式さんと同じチーム」
 ほんとはずっと前から気づいていた。
 日差しを浴びて輝く赤い髪、トレードマークのヘアバンドをしてややあどけなさの残った顔立ち。見つめられるとこちらがドキリとしてしまうような愛くるしい瞳を詩織はしている。プロポーションも抜群で、手足がスラリとしてブルマの位置が他の女子より腰ひとつ分高かった。そのせいでたくさんの女子に囲まれていてもいつも目立つ。詩織が振り向いてニコリと微笑むと、それだけでその周囲にいる男子がみんなみとれてしまう。
 よく好雄は、詩織ちゃんはオーラが違う、詩織ちゃんは全校男子生徒のアイドルだよ、きらめき高校はじまって以来の美少女! という。
 なにを隠そう、詩織と俺は家が隣同士の幼なじみだ。子供の頃はなにをするのでもいつも一緒だったが、高校生になったいまではたまに教室で口をきく程度だ。容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能、性格も優しく、欠点を探すのが難しいぐらいだ。校内には詩織の非公認ファンクラブがある。

「画になるよなー」
 好雄が詩織にフォーカスして、しきりにシャッターを押した。
「見ろよ、あのキラキラした横顔」
「あきないねえ、いっつも」
「しょーがねぇだろ、マジで可愛いんだからさ。お前も詩織ちゃんが一番だって思ってるだろ」
「俺は詩織がこどもの頃から知ってるからな」
 詩織は小さいときから特別だった。そんな詩織がきらめき高校でも人気者であり続けるのは、俺にとってある意味当然だった。

 レシーブの姿勢をしていた詩織が片手で額の汗を拭うと、背中まで伸びた赤い髪がさらさらと風になびいていた。
「詩織ちゃんに比べたら他の女子は野菜だな、アルパカだな」
「アルパカは可愛いだろ」
「おっぱいもでけー! ジャンプするとプルンプルン弾んでるぞ」
 トスを受けた詩織がネット際でジャンプしてアタックをすると、体操シャツの胸が重たく弾んでいた。見事に相手コートに突き刺さる。
 サッカーそっちのけで観戦していた男子から「おお~」という歓声が上がった。

「チラリと見えるお腹が超セクシー!」
 着地しても詩織の胸はブルンブルンと上下に波打っていた。
 男子の視線を意識してか、体操シャツを下に引っ張って下げる。卒業まで1年を切り、胸のあたりがかなり窮屈そうに見えた。
「バレー部でも通用しそうだな」
「たまたまだろ」
「すげえ迫力。92はあるよな。Fカップか」
 詩織のスリーサイズは、表向き(85・57・86)ということになっていた。これは俺と好雄が保健室に忍び込んで調べた数字だ。
 しかし、男子の間では詩織のバストは90センチをゆうに超えているだろうというのは語り尽くされたエロネタだった。

「あの顔であの体、もはや犯罪だな」と、好雄は嬉しそうに語る。
 実際、詩織と鏡さんが横に並ぶと、前方に突き出した体操シャツの膨らみは鏡さんのそれに遜色ない重量感だった。詩織のほうが細身のため、かえってバストが大きく見えた。
「好雄みたいな男子に好奇の視線で見られるのが嫌なんだよ」
 それが詩織がウソの数字を記録した理由だろうと俺は思っていた。詩織はイメージを大切にする。大きくなりすぎた自分の胸にコンプレックスを感じていたと考えたらしっくりくる。

「ウエストはキュッと引き締まってるのに、ブルマのケツはムチムチ。ズリネタに最高だぜ」
 好雄が鼻息を荒くするのも無理はない。詩織のヒップラインは優美なハート形に盛り上がっていて、空色のブルマが内側からはち切れそうになっていた。スケベな男子たちの視線から手で隠そうとしても隠しきれない。
「体は完璧に大人だよな。つーかエロエロ」
「あんまり見てると、また詩織に嫌われるぞ」
「ギャップがすげえよ。鼻血出そう」
「マンガか」
「あー、あのデカパイを両手で掴んでモミモミしてー」
「女子なら誰でもいいんだろ、好雄は」
「みくびんなよ。詩織ちゃんの生乳を揉めるなら10万払ってもいいぜ」
「鏡さんのは?」
「3万。いや、5万か」
「やけに落差があるじゃん」
「それだけ詩織ちゃんの体には値打ちがあるってことだろ。マジなはなし、詩織ちゃんがヌードを撮らせてくれたら10万ぐらい出すのにさ」
「AVでシコっとけよ」
 俺は鼻で笑ったけど、好雄が金を払う気があるってのはマジだった。奴は人気の女子生徒を隠し撮りしては、ブロマイドとして学校の男子や他校の生徒にまで高値で売ってぼろ儲けしていた。あとネット経由で、体育祭や文化祭・クラスマッチなどの動画の他に詩織たちの際どい盗撮動画など。
「ブルマが食い込んでうっすらマンスジが。男子がたくさん見てるのに、あいかわらず無防備だなー」
 ブルマにマンスジが浮かぶのを気づかない女子は多い。運動をしているとどうしても食い込むからだ。たまにブルマから下着がはみ出したり、ハミケツをしてる女子もいる。これは男子とってはかなり嬉しいが、女子にとってはかなり恥ずかしいらしい。
 好雄の独語をよそに詩織はゲームに集中していた。
 ボールを追って、司令塔としてチームメイトに指示を出す。
「いちいち気にしてたらきりがないからじゃないのか」
 優等生でお堅いイメージのある詩織だが、ときどき男がどんなに危険かクラスの男子がどんな目で詩織のことを見ているのかよくわかっていないのではないかと思うことがある。無警戒というかガードが緩いというか。夏の泊まり込み合宿で夜にみんなで集まって花火をしたときなんか、サイズの大きめのタンクトップとショートパンツというかなりラフな恰好で、脇から柔らかそうな横乳が見えてて男子がかなり騒いでた。あと去年の肝試しで詩織のことを狙ってた3年のヤリチン先輩とくじ引きでペアになって、怖くて先輩の腕をしがみつくように持ってボインボインと胸を押し当てていたりした。そのまま先輩と二人きりで夜の神社にしばらく消えた。とにかく詩織はそういう肝心なところで無防備なことがある。

「お前からも詩織ちゃんに頼んでみてくれよ」
「ヌードモデルになってくれって?」
「謝礼ははずむぜ」
「ムリムリ。幼なじみっていっても家が隣ってだけだしな。下校のときに帰ろうぜって誘っても、一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし、とかいいやがるんだぜ」
「難しい年頃ってやつか」
「よせよ」
「でもさ、3年になって詩織ちゃんってずいぶん雰囲気変わったよな」
「どこが」
「まえはツンツンっていうか真面目すぎる印象があったけどさ、物腰が柔らかくなったというか、1年ときはラブレターを送っても読まずに捨てそうな感じだったろ。いまはクラスの男子とも気楽に話してるし、土下座して頼んだら、えーーっていいながらもパンチラぐらい撮らせてくれそうな気がするんだよな、なんとなく」
「パンチラ? 詩織が? 夕子じゃあるまいし」
「まあ、聞けって。このあいだもタラシが掃除の時間にふざけて詩織ちゃんの胸にタッチしても、詩織ちゃんは、もー、鱈島くんのエッチーって、クスッて笑って許してたぜ」
 タラシは同じクラスでバスケ部に所属している男子だ。ほんとの名前は鱈島で、ちょっと女子にチヤホヤされてて女たらしなのでタラシと呼ばれている。
「ウソつけ。そういうガキっぽいのが詩織の一番嫌いなタイプだぜ」
「マジマジ。お前はゴミ捨てに行ってていなかったけどさ」
 俺はにわかには信じられなかった。
 が、好雄がそういう心当たりがあった。
 詩織はこの春、某ナンパ雑誌で『街で見つけた噂の美少女!』という特集記事にデカデカと載って学校中の話題になっていた。
 その雑誌では、制服姿の詩織が前屈みになって両手を膝に着いたポーズで、胸を寄せている写真が使われていた。キョトンとした表情でこちらを見つめていて、たまたま学校帰りに声をかけられて、しつこくて断り切れずに取材を受けたらしい。(と、詩織は俺に説明したが、雑誌の記事には粘りまくったスタッフが褒めまくって、そうこうしているうちに打ち解けてきて最後にはノリ気で取材をOKしてくれたようなふうに書いてあった)
 その雑誌はいまも大事にとってある。詩織はそういうのに興味がないと思っていただけに俺もかなり驚いたのを覚えている。
 あと、3年になって詩織の制服のスカートが短くなった。それまではせいぜい膝上5センチだったのが、いまでは膝上15センチぐらいだ。あとはとくに変わった様子はない。アクセサリーや化粧も、爪も伸ばしていない、昔と変わらない清純な詩織そのままだ。

「あれやるぜあれ」
「あれ?」
「キター-! シャッターチャンス!!」
 コートで、後ろ向きの詩織が後ろに両手の指をやり、ブルマの食い込みを直す仕草をした。
 パチン! とゴムの音がここまで聞こえてきそうな気がした。
「うひょーー! いろっぽっっ!!」
 好雄は身を乗り出してシャッターを切った。
「エロス満点っ!」
「唾を飛ばすなよ」
「いま白いのが見えなかったか」
「……気のせいだろ」
「チェックだ、チェック! セクシーショットゲットだぜぇ!」
「いいかげんにしとけよ」
 そのときふいに詩織がこっちを見た。一瞬、目が合った気がした。
「詩織ちゃん、いまこっちを見たよな?」
「かな」
「やばっ」
「いまさら、バレバレだろ」
 好雄は急いでカメラを後ろに隠した。
 詩織は他の女子と交代して、コートを出てスポーツタオルで汗を拭いていた。
 地面に体育座りをして、先に休んでいた親友の美樹原さんとおしゃべりをはじめた。
 たぶん今日の帰りどうする? とかそんな他愛のない話題だろう。

「セーフ」
「そういうときだけは素早いな」
「他の誰にどう思われてもいいけど、詩織ちゃんだけにはこれ以上嫌われたくない。卒業するまで仲のいいクラスメイトでいたいからな」
「デジカメにしろよ、いくらでも小さいのあるだろ」
「あんな玩具。いい写真を撮るにはこいつじゃないとな。ちなみに30万な」
「たかっ」
「お宝写真が撮れると思えばこれぐらい安いもんさ。チャンスは貯金できないからな」
「どういう意味だ?」
「さあ、俺も知らん」
「なんだ、受け売りか」
「とにかくチャンスは逃すなってことだな」
「やすっぽ」
「うるせー。幼なじみという立場を生かせない奴にいわれたくないね」
「悪かったな」
 好雄の(可愛い)女の子を撮ることにかける情熱はすごいと思う。それは俺も認める。学校の女子の情報はなんでも知っているし、誰々の電話番号や誕生日に血液型などすべてだ。ただ学校のいろんな場所に小型カメラを仕掛けるのはやりすぎだと思う。ここまでくると異常だ。
「なあ」
「なんだよ」
「ふと思ったんだけどさ」
「だからなんだよ」
「詩織ちゃんって処女なのかな」
「アホか」
 俺はマジメに答える気も起きなかった。
 詩織はまだ誰とも付き合ったことない。これは幼なじみである俺が保証できる。
「だけどよー、詩織ちゃんぐらいイケてる子で処女ってありえるか? 高3で。
 あんがいすでに経験してたりして。たとえばLINEで知り合った大学生あたりにあっさりとさ」

 その一言にかなりドキリとした。
「お前だってあの雑誌のこと忘れたわけじゃないだろ」
「あれはしかたなくだろ」
「そうか? 業界人にチヤホヤされたらまんざらじゃないだろ、詩織ちゃんも。おまけにあの体だぜ? スケベな男がほっとくか?」
「じゃあ、逆に聞くけど、詩織がホイホイついてく女の子に見えるか?」
「もしかしてだよ、if」
「それこそファンタジーだね」
「ちぇっ、熱くなんなよ」
「好雄がありもしないことをいうからだろ」
「でもよー、よくいうだろ? 女子高生の性体験率は40%とか、女子は年上の男と初体験を済ませるって。実際問題、虹野さんはサッカー部の先輩に食われたわけだし」
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