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エレメンタルスフォルツォ
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2014 / 12 / 09
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 私が彼女を初めて見かけたのは5月の連休明けのことだ。
 朝の通勤客がごった返す駅のホームに彼女はいた。スッとした立ち姿。両手でしっかりと通学鞄を持ち、白いリボンのポニーテールとオーソドックスなセーラー服。そこだけ日常から切り離されたように時間がゆっくりと流れていた。
(どこの学校の制服だろう……すごい可愛い子だな)
 喧噪が通り過ぎるように私はその子だけに釘付けになっていた。
 どことなく昭和を感じさせるおとなしめの顔立ちで、前髪のかかったしっかりとした眉と穢れのないまっすぐな瞳をして、育ちの良さがうかがえた。おそらくいい家の娘なのだろう。肌は色白で瑞々しく、休日の昼下がりにはピアノを弾いてそうだった。髪もさらさらの黒髪で、ホームで携帯をいじるようなこともなかった。ただ、すこし他人を寄せつけないような雰囲気も……。

 私は自然と近くに足を進め、電車が来ると彼女のうしろに並んで乗った。
 車内では私は彼女の真後ろに立って密着することになった。
 わずかに見下ろした目の先には背中を向けた彼女の白いリボンとポニーテールがあって、とてもいい、フローラルな香りがした。
 はじめはほのかに伝わる彼女のぬくもりとフローラルな香りを嗅いでいただけだった私だが、電車に揺られる彼女のうなじに生えているうぶ毛の一本一本を観察しているうちにムラムラとしてきて、つい右手で、そっと彼女のお尻のカーブを確かめるようにスカートの生地を触ってしまった。むしろ、手を置いたという感覚に近い。
「あっ……」という、かすかな声がレールを走る車輪の音にかき消されて聞こえた。
 だが、それ以上は何もいわなかった。
 まるで何事もなかったかのように前を向いたまま、学校の最寄り駅であろう駅につくまで彼女は電車に揺られていた。
 その間、騒がれて痴漢で捕まるのではないかとドキドキだった。
 もしかすると偶然に手が当たっただけだと思ったのかもしれない。それとも怖くて声がでなかっただけかもしれない。
 どちらなのか私にはわからなかった。ただ、私の右手には彼女のほのかな体温と女子高生らしい臀部の張り詰めた触感だけがたしかに残されていた。
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