登録者数:91
作品閲覧
http://pncr.jp/
ベネディクション
4
create
2014 / 06 / 28
today
1
total
1174

 
「気分が良いねぇ」
「こちらも行きます」
「隙だらけ……だよ。ふっ」

 ――ジャラパァァ!!

「完璧、だな」



「ふぅ……」
「どうしたんだい。ため息なんかついたりして」
「やあ、ソワレか」
「ハハ、返事まで気が抜けたみたいだね」
「そんなつもりはないんだけどね」
「わかった。ここのところ出撃してないもんで体がなまってるんだね。それならボクが相手になるよ」
「はあ、ソワレは今日も元気だな」
「おかげさまでね。さっきも屍兵を真っ二つにしてやったさ」
 ソワレは右手に持っていた槍を軽々と振り回して、敵を一振りになぎ払う動きをしてみせた。
 切り裂くような風圧が地面を走る。
「そういえばルキナがヴィオールと歩いてたのを見たよ」
「え……!?」
「あの二人、ずいぶんと仲が良くなったみたいだね。今からデートでも行くみたいにヴィオールがエスコートしてたよ」
「!!」
 脳裏にこのあいだの事件がよみがえった。
「どこで見たの?」
「さあ、武器庫の方に行ったみたいだけど?」
「ありがとう」
「おい、ボクとの手合わせは」
「ごめん。また今度たのむよ」
 理解不能の様子で両手を広げるソワレを置いてきぼりにして、僕は武器庫へと急いだ。
 あのあとルキナは何の相談も僕にしてくれなかった。
 おそらくイーリス軍の和を乱したくないという彼女なりの判断が働いたのだろう。個人よりも全体を尊重するルキナらしい。

 武器庫に二人の姿はなかった。
 慌てて武器庫の周りを探してみると、すぐ横の雑木林の奥から人の気配がした。
 僕は背の低い草を慎重にかき分け、そちらへと足を進めた。

「!!」
 素早く草むらに身を低くした。
 苔の生えた樹木を背に立ったルキナが、肩に両手を置いたヴィオールとキスをしていた。
(ルキナがヴィオールとキスをしてる?? こんな人目を避けるような場所で!!)
 敵に混乱の魔法をかけられたみたいだった。
 わずかに顔を上向かせ、まるで恋愛小説に出てくるような口づけを続けている、ルキナ――相手のヴィオール。くすんだアメジスト色の長い髪が森の風に柔らかになびく。
 木々のざわめきが、かえって僕の心を大陸の彼方へと遠のかせた。
「ジュテーム。とても甘美な唇だよ」
 たっぷりとルキナの唇を味わったあとで、ヴィオールが満足げな笑みを浮かべる。
 ルキナはサッと顔を動かし、気まずそうに視線を足下に落としていた。かすかに彼女の頬が紅潮してる気がした。
 そのルキナの長い髪を、ヴィオールが指先に絡ませてもてあそぶ。
「こういうのは困ります」
「ふっ、見目麗しい女性と愛を語らうことはごく自然なことだよ、貴族的にね」
「だから、それが……私はルフレさんの妻です」
「妻? ベッドを共にしていないのに?」
「っっ……!!」
「それにデュアルを組むペアなら二人でいて不思議はないだろ」
「ですが、軍内に根も葉もない噂が」
「ルキナくんが私と不貞を働いているという噂かな」
 ルキナが唇をきつく噛む。凛々しい顔立ちが曇った。まるで悶々とした秘密を抱えているように。

「心配しなくても人の噂は飽きやすいよ。それとも噂が真実に変わるかな」
「い、いけません」
「おや、また少年みたいな声をしてる」
「っぅ!!」
 ファルシオンが発光した。
 ヴィオールの片手がルキナの着ている軍服の留め金を外し、横の隙間に入り込む。優しく円を描くように動かしていた。
「そうまでしてなぜあの男を慕う? 君にふさわしい相手とは思えないのだがね」
「卑怯です」
 ルキナが後ずさりし、樹にマントの背をぶつける。
「私の質問に答えてないよ」
「これが貴族的なやり方ですか」
「ふっ。欲しい物は手に入れるのが貴族だよ。とくに高貴で美しい物はね」
「あなたにはセルジュさんが」
「彼女はただの従者だよ」
「あんなに綺麗なのに」
「王女がジェラシーかい。ルキナくんの胸が脈打ってる」
「ああん」
 肩先でくすんだアメジスト色の髪を揺らし、勇ましかったルキナが急に顔をしかめた。
 ガクンと膝から崩れそうになる。
 ヴィオールの手が、ルキナの軍服の内側で何かを摘む動きをしていた。
「ほうら、ルキナくんの乳首がコリコリだ」
「だ、だめですっ」
「ルキナくんは実に乳首が弱いね。凛々しい顔がすぐに崩れる」
 まるで、すでにそうやって何度もルキナの乳首を弄ったことがあるような口ぶりだった。
「こうして捻ってあげよう」
「ぁぁ……んーー!!」
 幹に背中を預けて、体を捩るようにしてルキナが唇を引き縛る。
 完全に性感を操られた顔だ。ガクガクと震えていた。
「ふふっ。イーリス聖王国の王女様が乳首だけでイッた。まだ成人前だというのに、いったいどこでこんなふしだらな体に育ったのかな」
「はあ、はあ、はあ……こんなはずでは……」
「これもデュアル効果をアップするための訓練だよ」
「う、うそです」
「ウソかどうかは実戦が一番正直だ」
「くっ……」
「続きは夜にしよう。せいぜいルフレくんに気取られないよう気をつけたまえ」
 ヴィオールは、追い詰めたルキナの唇を再び奪っていた。


(奴め、絶対に許さないぞ!! 二度とキザな台詞を叩けない顔にしてやる!!)
 僕はルキナと別れたヴィオールの後をつけた。
 金輪際ルキナに近づくなと言って、あいつを殴るつもりだった。夫としても軍の一員としても許せるわけがない。
 ヴィオールは、僕があとをつけているのに気づくこともなく自分の天幕へと戻っていった。
 あいつの天幕は、貴族出身だけあって一際豪華な作りで、小さな家ぐらいの広さがある。
 これは僕にとって好都合だった。なるべくなら他に人間のいない場所で穏便に済ませたいと思っていたからだ。

 入るタイミングを見計らっていると、足音が近づいてきた。
 僕はとっさに樽を並べた場所に隠れた。
(スミアだ。どうして一人でこんな場所に??)
 輝く長いグレイの髪を巻き髪にして、白銀色をしたペガサスナイトの鎧をまとったスミアは、周囲を何度も見回してから、まるで人目を避けるようにヴィオールの天幕へと入っていった。
(これはまいったぞ。スミアがいたんじゃ、奴を殴れない)
 まさかルキナの母親であるスミアの前で、「二度とルキナに近づくな!」とは言えなかった。
(それにしもてスミアはヴィオールに何の用事だろう??)
 僕は一刻も早くスミアがヴィオールの天幕から出てどこかに行くのを願っていた。
 だが、しばらく待ってもスミアが出てくる様子はなかった。
 そのうち天幕の中から「あん……あん……ヴィオールさん、もっと優しく……」という、鼻がかったスミアの声が漏れ聞こえてきた。

(??)
 忍び足で入り口へと近づく。息を殺して中をのぞき見した。
(……!! スミアが!?)
 ルキナの母であるスミアは、クロムの妻でもある。つまりイーリス聖王国の王妃だ。
 そのスミアがベッドに両手を着いて、背後から覆い被さるヴィオールの男根によって深くひとつに繋がっていた。
 床には、スミアがさっきまで身につけていた、鎧と衣服、それに下着が散らばっていた。
「あん、あん……は、激しすぎますっ、もっとゆっくり」
「フゥゥ、またイーリス聖王国・王妃の花園が締まるぅ」
「ああっ……ウソですっ、クロムさま、ごめんなさいっ……ぅぅ」
 名家育ちで箱入り娘のスミアは、半泣きの様子だった。
 ヴィオールが腰を叩きつけるたびに輝くグレイの髪が散り乱れ、垂れ下がった二つの乳房が重たげに前後に弾んでいた。
 スミアはルキナと違い、性格はおっとりしていてかなり豊満な体つきをしている。グラマーと言ってもいい。
 ヒップもムチムチで、ロングブーツから伸びた太ももなどはかなり色っぽい。ヴィオールが掴むと成熟した肉尻に指が食い込んでいた。
「いいかい、スミアくん」
「あっ、くぅ、んー、ああっ」
「全身が汗ばんできた。ここからルキナくんが生まれたわけだ。欲求不満の王妃様は泉の奥が感じるのかな」
「あ、あんっ、だ、だって、最近、クロム様がかまってくれないからっ、んっ」
「ハハ、とうとう白状したな。イーリス聖王国の王妃様も一皮剥けばただの雌ブタというわけだ。これがスミアくんの本性だよ」
「んっ、んっ、ああっ、深すぎますっ」
 スミアが上品に並んだ白い歯をカチカチ鳴らして、身震いする。
 清楚な美貌の表情がくしゃくしゃだ。スミアでさえ、ああも変わる者かと僕を驚かせる。
 匂い立つほどに熟した割れ目がヴィオールの男根をきっちりと咥えているのが、僕のところからもしっかり見えた。
 ピストン運動のスピードが上がる。
「はあん、、んああ、もうっ、もう、だめです」
「ふぅふぅ、このまま王妃様の中に出すよ」
「あ、ああっ、待ってください、せめて外に」
「くぅぅ。また急激にきつくぅ。そんなに中出しされるのが怖いのかい」
「んっ、あー、ゆ、許して」
「そら、私がシンシアの父親になってやる!」
「い、いくーー!!」
 双乳を力強く掴み絞るヴィオールの一撃によって、全身を震わせてスミアが甲高い声を発した。



「見てしまわれたのですね」
「うわああ!!」
 僕は思わず飛び退いた。
 そこにはフリルのついたカチューシャに、ドラゴンナイトの甲冑を着込んだセルジュが落ち着き払った様子で立っていた。
「セ、セルジュ……」
「しっ。とにかくこちらへ」
 ・
 ・
 ・
 僕はセルジュの後を歩いて、赤茶色の大きな岩が転がる荒れ地へと着いた。
「ここなら誰もいません」
「セルジュは……」
 そこで一息ついた。日差しが暑いはずなのに、額を伝う汗は妙に冷たかった。
「まえから知ってたの?」
「私はあの方の従者ですから」
 そう言ってセルジュがにっこりと微笑む。
 砂っぽい乾いた風が、彼女の夕焼け色の長い髪を緩やかに波打たせる。娘のセレナと同じ髪をしている。
「それならどうして!」
 僕は思わず大声を出してしまった。
「話せますか?」
「え……?」
「クロム様やルキナさんに向かって、母親である女性が他国の貴族と密通していると」
「そ、それは……」
「もしそうすればどうなるか。軍師であるあなたであれば言うまでもないことだと思いますが」
 冷静なセルジュの言葉に、僕は彼女が何を言いたいのかすぐに理解した。
 きっとイーリス軍は瓦解する。
 そうならなくとも兵士の士気は著しく低下して、規律は乱れるだろう。
 人心を失った軍に民衆が味方するだろうか? 考えるまでもなく、大軍を擁するヴァルム帝国に対して勝ち目がなくなる。
「正義感の強いクロム様のことですから、私の主は追放されて終わりでしょうね。そしてフェリアもイーリスもヴァルム帝国に滅ぼされる」
「っっ!!」
「わかって頂けましたか?」
「だからって……僕はクロムの親友なのに、このまま黙っているのは」
「ルフレさんにはもっと気にかけないといけない人がいるのではないのですか?」
「……!!」
「言っておきますが、私の主は狙った女性を落とすためには手段を選びませんよ」
「くっ」
 セルジュが誰のことを忠告しているのかは明らかだった。

 
1 2 3 4 5